「空き家問題」の問題点と原因
空き家問題とは、管理されず、放置された空き家が増え続けることで生じる、周囲の景観や安全、衛生上の様々な問題のことです。
たとえば安全面の問題で言えば、空き家が老朽化して倒壊し、近隣住民や近隣の住宅へ被害を与える、といったことが挙げられます。
空き家問題が深刻なのは、現に日本の空き家が増え続けているからです。実際、総務省の調査でも、1958年には総住宅数における空き家率は2.0%であったのに、2018年には13.6%にまで上昇しています。
参照元:総務省(平成 30 年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計)
空き家問題とは「放置された空き家の増加による社会問題」ということができます。しかし、全ての空き家が放置されているのかといえばそうではありません。
空き家は以下の4つに区分することができ、空き家問題の対象となる、放置されやすい空き家は主に「4」の「その他の住宅」になります。
- 賃貸用住宅(入居者が決まらず結果的に空き家となってしまっている住宅)
- 売却用の住宅(売りに出しているため、一時的に空き家となっている住宅)
- 二次的住宅(別荘など)
- その他の住宅(1~3どれにも当てはまらない住宅)
まず、「1」、「2」に関しては基本的に不動産業者の管理下にあるため、放置されることはほとんどありません。「3」についても、所有者が利用するタイミングで掃除など、管理が行われます。
一方、「4」は「1」~「3」のどれにも当てはまらない、個人が所有している活用されていない空き家になります。「1」~「3」の空き家と違い、「4」のような個人所有の活用されていない空き家は放置されやすく、空き家問題として騒がれている空き家も、ほとんどが「その他の住宅」に区分される空き家になります。
実際、下記の国土交通省が公表した空き家数の推移のグラフを見ても、「その他の空き家(住宅)」の数が大きく増えていることがわかります。
なお、空き家の問題点については、以下の記事でも詳しく解説していますので、参考にしてください。
2030年には3割が空き家になる!?
前節で空き家が増え続けているという現状をお伝えしましたが、このまま空き家が増え続けると、以下のグラフを見ていただくとわかる通り、2030年には日本の空き家率は30%を超える恐れがあります。
ドイツの研究によると、空き家率が30%を超えると以下のような問題が引き起こされ、都市環境が悪化するといわれています。
- 放火など空き家に関する犯罪が増える
- 人口が減り、税収も減ることにより、下水道など公共サービスが維持できなくなる
実際、ドイツではベルリンの壁が崩壊し、旧東ドイツから旧西ドイツへ大量に人が移動した際、東ドイツの空き家率が30%を超え、地域全体が荒廃してしまったという歴史があります。
日本でも、2006年に北海道の夕張市が財政破綻しましたが、当時の夕張市の空き家率が30%近かったことが以下の2つのグラフからわかります。
上のグラフから2006年の空き家数は約2600戸であることがわかります。また、下のグラフより同年の空き家ではない住宅数は約6000戸であることがわかります。すると2006年時点の夕張市の総住宅数は約8600戸ということになり、これに2600戸を除すると、約0.3となります。このことから2006年時の夕張市の空き家率は約30%であったといえるわけです。
空き家が増加している理由3選
空き家問題が、放置された空き家が増えることによる問題であること、そして、このまま放置された空き家が増え続けるとどういった弊害があるかについて、わかっていただけたかと思います。
ではなぜ、そもそも空き家がこんなにも増えているのでしょうか。その理由をこれから解説します。
【理由1】所有者が空き家を放置しているため
まず理由の1つ目に挙げられるのが、空き家の所有者自身が様々な理由から空き家を放置してしまっているということです。主な理由として以下の4つが挙げられます。
1つずつ解説します。
なお、空き家を放置する理由については、以下の記事でも詳しく解説しています。
空き家と現住所が離れているため
所有者が空き家を管理するためには、当然ですが現地まで行かなくてはなりません。
しかし、所有者の現在の住まいが空き家から遠く離れている場合、現地まで行くのが面倒になってしまい、結果的に空き家を放置してしまうケースがよくあります。
室内に思い出の品が多く片付けられないため
空き家を放置せず、活用したり、売却したり、解体するためには、まず室内を片付けなくてはいけません。しかし、室内に思い出の品や、愛着がある品が多い場合、感傷的になってしまい、手が止まってしまいます。結果的に片付けが進まず、空き家を放置してしまう所有者もいます。
なお、空き家を片付ける方法については、以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
売却や解体の費用が出せないため
空き家の室内の片付けが済んでいたとしても、経済的な理由で空き家を放置してしまっている所有者もいます。売却したくても、売却するためのリフォーム費用が出せなかったり、解体したくても、解体費用が出せないといった理由です。
一般的に、空き家をリフォームするにも、解体するにも、数百万円単位の費用がかかるため、費用の問題で空き家を放置してしまっている所有者は多くいます。
なお、空き家の解体費用を抑える方法については、以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
空き家を共有で所有しており意思統一できないため
親族と空き家を共有で所有している場合、空き家を売却や解体する際は、共有者全員の承諾が必要です。
実際、民法251条でも以下のように定められています。
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
参照元:e-GOV(民法251条)
そのため、1人でも売却や解体に反対している共有者がいると、空き家をどうすることもできず、結局、放置されてしまうケースも多くあります。
【理由2】少子高齢化が進んでいるため
少子高齢化により、高齢者が増加すると、結果的に空き家が増加することになります。なぜなら一般論として、高齢者はそうでない方より亡くなるリスクが高いためです。
実際、下の表を見てもらえばわかる通り、単身の高齢者世帯が増えているため、一人暮らしの高齢者が亡くなることにより、その家が空き家になってしまうケースは多くあります。
また、亡くなる前から、高齢者は病院へ入院したり、老人ホームへ入居することがあるため、それを機に、それまで住んでいた家が空き家になってしまうこともあります。
【理由3】中古住宅より新築住宅の方が人気が高いため
日本では中古住宅より新築の方が人気が高いことも、空き家が増加している一因です。
前節で述べたように、高齢者の増加などにより、空き家は増え続けています。しかし不動産を求める方の需要は新築に集まっており、中古住宅の需要が少ないため、空き家はなかなか売れない現状があります。そのことが、空き家の増加に拍車をかけています。
実際、2018年の住宅の総流通量に対する空き家の流通量は14.5%であるのに対し、新築の着工戸数の割合は85.5%であり、6倍近い差があります。しかも、この流通量の差は2012年頃からほぼ変わってなく、今後もしばらくは続くと予想されます。
参照元:国土交通省「既存住宅流通市場の活性化 (令和2年3月)」
日本で新築が人気である理由
日本で新築が人気な理由は、主に以下の2つです
- 新築購入には補助金や税制上の優遇措置があるため
- 購入した住宅の資産価値を少しでも長くもたせたいため
「1」については、新築の購入に対し、国や自治体から「こどもエコ住まい支援事業」などの購入補助金が支給されます。また、新築戸建の場合、固定資産税が3年間1/2に軽減される税制上の優遇措置もあります。こうした補助金や、税制上の優遇措置があるため、住宅を購入する際、新築を選ぶ人もいるでしょう。
「2」については、せっかく住宅を購入するのであれば、誰だって、少しでも資産価値を長くもたせたいと思うはずです。そうなると、必然的に中古住宅ではなく新築が選ばれることになります。中古住宅は売りに出された時点で既に資産価値が目減りしているためです。
人口減少が中古住宅の流通機会を減らす
日本の人口が減少していることも、中古住宅が流通しにくくなっている原因といえます。何故なら人口が減っているということは、住宅を購入する人の数も減っているということだからです。
実際、下の表を見てもらえばわかる通り、日本の人口は2008年をピークに減少傾向にあります。
先ほど述べたように、ただでさえ中古住宅は新築に比べて需要が少ないのに、その上、人口減少により、住宅の購入者自体が減ってしまったら、ますます中古住宅は流通しにくくなってしまいます。
活用しない空き家を所有することのリスク7選
活用しない空き家は所有するだけで様々なリスクがあります。特に活用しないからといって、空き家を放置してしまうと、リスクが増します。具体的にどのようなリスクがあるか解説します。
資産価値が下がり売却も活用もできなくなる
空き家に限った話ではありませんが、建物は所有すればするだけ資産価値が下がっていきます。下の図でも示したように、築年数が経つにつれ、経年劣化が進むためです。
そして、資産価値が下がってしまうと、将来、売却することも、活用することも難しくなってしまいます。なぜなら、売却も活用も、建物にそれに値するだけの資産価値があることが前提だからです。
特に、空き家を放置すると、建物の資産価値は急速に下がってしまいます。なぜなら、管理していれば多少は遅らせることができた空き家の老朽化を、遅らせることができなくなってしまうためです。
たとえば、管理された空き家であれば、定期的に換気が行われ室内の湿気がたまるのを防げます。しかし放置されると換気が行われなくなるため室内に湿気がこもり、カビやシロアリが繁殖します。その結果、柱などの木の建材の腐食が一気に進んでしまうことがあります。
空き家は所有すればするだけ資産価値が下がり、手放したくても、手放せないどろ沼にハマっていくリスクがあります。手遅れになる前に手を打つべきです。その方法については次章以降で紹介しています。
老朽化により倒壊する
空き家を放置していると、老朽化が進み、建物が倒壊するリスクがあります。
万が一、空き家が倒壊し、隣家を全壊させた場合、全壊させた家の住人から多額の損害賠償を請求される恐れがあります。
実際、民法717条でも所有する建物が他人に損害を与えた場合の賠償について、以下のように規定されています。
民法717条
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う
空き家は上記の民法の「土地の工作物」にあたり、空き家が放置し老朽化したことは「瑕疵」といえます。その結果、倒壊して「他人に損害」(今回の例では他人の家を全壊させる)を与えた場合は、「損害を賠償する責任を負う」というわけです。
なお、下記の試算によれば、隣家を全壊させてしまった場合、隣家の住人から1500万円もの損害賠償を請求をされるという試算もあります。
さらに、上記の試算によれば、空き家倒壊により建物の下敷きになるなどして、人が亡くなってしまった場合、損害賠償請求額は1億9千万円以上になる恐れがあります。
これほど多額の損害賠償請求をされてしまったら、破産するしかない人もいるでしょう。そうなればその後の人生設計まで狂ってしまいます。
仮に、他の建物や人に被害が出なかったとしても、空き家が倒壊すれば、それだけで所有者であるあなたは近隣住民から管理の仕方を厳しく問い詰められ、精神的な苦痛を味わうことになります。
空き家を所有し続けると、いずれ倒壊し、経済的・精神的ダメージを負う恐れがあることを認識しておきましょう。
なお、空き家の倒壊リスクについては、以下の記事でも詳しく解説していますので、参考にしてください。
庭が荒れ隣家に迷惑をかける
空き家を放置すると庭の雑草や庭木の枝が伸び放題になってしまいます。それにより隣家に迷惑をかけるリスクがあります。
なぜなら庭の雑草が繁茂すると、そこに蚊やダニなどの害虫が大量に集まってきてしまうためです。また、庭木の枝が選定されずに伸び、隣家の敷地を侵食してしまう恐れもあります。いずれも隣家や周辺住民にとっては、非常に迷惑なことであり、近隣トラブルに発展するリスクがあります。
なお、自分でできる空き家の雑草対策について知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
ゴミを不法投棄されやすくなる
空き家を放置すると人目がないことから、ゴミを不法投棄されるリスクが増します。
不法投棄され、放置されたゴミからやがて悪臭やコバエなどの害虫が発生する恐れがあります。そうなれば、庭の草木同様、近隣住民に迷惑を与えることになります。
放火が発生しやすくなる
空き家を放置すると人目がないことから、放火の被害に遭うリスクも増します。
放火に遭うと、もし空き家に資産価値のある現金や大切な遺品を置いていた場合、焼けて失われてしまう恐れがあります。
また、火災保険に未加入であった場合、火災の後処理の費用を自腹で支払わなくてはいけなくなります。たとえば、30坪の木造住宅の場合、焼け残った柱などを解体するには、業者に頼むと200万円程度かかります。
ちなみに、火災によって隣家を延焼させてしまった場合でも、火元である空き家所有者の責任は問われません。実際、失火法でも以下のように定められています。
失火(過失による火災)による火災で他人や、他人の所有物に被害を与えたとしても、損害賠償はしなくて良いという法律。ただし重大な過失の場合を除くとされている。
しかし、隣家を延焼させてしまったら確実に隣家の住人の恨みは買います。ですから、損害賠償を請求されなくともお詫びの意味も込めて、お見舞金として数万円程度は包んでおいた方が賢明です。
なお、火災についてのリスクを回避するためには火災保険に入ることが一般的ですが、空き家は基本的に人が住んでいないため、通常の火災保険には入れません。
以下の記事では空き家でも加入できる火災保険について解説しているので、併せて参考にしてください。
犯罪に利用されやすくなる
空き家を放置すると人目がないことから、犯罪に利用されるリスクがあります。たとえば下の図のように、大麻の密売グループによって、放置された空き家が、大麻栽培の場所として利用されてしまったケースもあります。
最近でも以下のように、空き家に空き巣が入る事件が起きています。
「石川県・内灘町の空き家に侵入し、800万円相当の貴金属などを盗んだとしてかほく市に住む51歳の男が逮捕された。
邸宅侵入と窃盗の疑いで逮捕されたのは、かほく市大崎潮見台の無職の男(51歳・以下容疑者)だ。
容疑者はことし2月から3月にかけ、内灘町の空き家に侵入し、現金50万円や、貴金属およそ60点、800万円相当を盗んだ疑いが持たれている。」
ひとたびこうした事件が起きてしまうと、事件が起きた空き家だけでなく、「事件が起きた空き家がある地域」として地域全体の不動産の資産価値が下がってしまいかねません。もしそうなれば、近隣住民から怒りと不信感を抱かれてしまうことでしょう。
また、事件の現場となった空き家の所有者であるあなたは、警察から普段の空き家の管理状態など、痛いところを聞かれ、面倒な目に遭う羽目になります。
なお、空き家があいやすい犯罪リスクについては、以下の記事でも解説していますので、併せて参考にしてください。
固定資産税がかかり続ける
活用していない空き家でも所有し続ける限り、毎年固定資産税を払わなくてはいけません。そのこと自体が空き家を所有するリスクといえます。
毎年1月1日時点に土地や家屋などの固定資産の所有者に課される税金
一般的な戸建ての固定資産税は10万~15万ほどですが、正確な金額を知りたいのであれば、固定資産税の納付書に記載されていますので、確認してみてください。
いずれにせよ、活用する当てのない空き家に毎年10万円近い税金を納め続けることは非常にもったいないことです。
なお、空き家の固定資産税についてより詳しく知りたい方はこちらの記事をご確認ください。
特定空き家に指定され行政処分を受ける
空き家を所有したまま、放置し続けると、最終的に自治体から「特定空き家」に指定され、行政処分を受けるリスクがあります。
特定空き家とは、自治体から景観上・安全上・衛生上、問題があると判断された空き家のことです。
参照元:国土交通省|「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針
特定空き家に指定される空き家の詳しい条件については、下図の「Check」を参照してください。
では具体的に特定空き家に指定されるとどのようなリスクやペナルティがあるのか詳しく解説します。
固定資産税が6倍になる
特定空き家に指定されると、土地の固定資産税が最大6倍に跳ね上がってしまいます。たとえば、毎年の土地の固定資産税が10万円前後だとすると、いきなり60万円も支払わなくてはならなくなるということです。
そもそも、住宅用の建物(空き家含む)が建つ土地の固定資産税は、以下のように「住宅用地の特例」が適用され、1/6に軽減されています。
参照元:総務省|固定資産税制度について
しかし、特定空き家に指定されると、その特例から除外されてしまうため、固定資産税が6倍になってしまうわけです。
特定空き家指定による固定資産税の増額についてより詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてみてください。
「管理不全空き家」として固定資産税が6倍になるリスクがある
前節で、空き家を放置し、特定空き家に指定されると固定資産税が6倍になるとお伝えしました。しかし、特定空き家に指定されなくても空き家を放置しているだけで、固定資産税が6倍になるリスクがあります。
なぜなら、2023年3月に空き家をめぐる法律が一部改正され、現在放置されており、将来、特定空き家に指定されそうな物件を「管理不全空き家」に指定し、特定空き家同様、住宅用地の特例を解除することが決まったためです。
参照元:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案」を 閣議決定
なお、「管理不全空き家」に指定される条件など、詳しい情報を知りたい方は、下記の記事をご確認ください。実際に国土交通省に問い合わせた情報を元に作成した記事ですので、他のどのサイトの記事よりも正確な情報となっております。
罰金50万円と高額な解体費用を請求される
特定空き家に指定されたあとも自治体の改善命令に従わないでいると、罰金50万円を徴収された上、行政代執行により空き家を解体されてしまいます。
行政上の義務を義務者が行わない場合、行政(または行政が委託した者)が代わりに行い、そのためにかかった費用を義務者に請求すること
上の行政代執行の説明にもある通り、行政代執行による解体費用は全額、空き家所有者に請求されます。
実際、今年に入ってからも広島や三重で行政代執行が行われ、数百万円の解体費用が空き家所有者に請求されています。
しかも、行政代執行による解体費用は、所有者自ら解体業者に依頼して解体してもらうより高くなる傾向にあります。所有者が解体業者に依頼する際は、なるべく安く済む業者を吟味しますが、行政代執行の場合は、費用よりも手早く解体することが重視されるため、大手の解体業者などに工事が発注されることが多いためです。
実際、1000万円以上の解体費用が請求されることがあります。「そんな大金、支払えない」と思うかもしれませんが、行政代執行による解体費用の支払いからは、たとえ破産したところで逃れられません。
なぜなら行政代執行による解体費用は国から強制徴収が認められており、強制徴収が認められている請求については、たとえ破産しても支払い義務がのこると、破産法で定められているためです。
参照元:e-Gov破産法
税金などの滞納者に対し、国や自治体が強制的に滞納者の財産を差し押さえ、滞納している税金などに充てる手続き
なお、行政代執行についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事もご確認ください。
現在放置している空き家によるリスクの回避法6選
この章では、現在所有していて、放置してしまっている空き家に対するリスクの回避法をお伝えします。基本的には、空き家を放置しないために管理するか、活用するか、売却するかを選ぶことになります。
なお、これから相続する予定の空き家のリスク回避法を知りたい方は、「今後相続予定の空き家によるリスクの回避法8選」をご覧ください。
【管理】空き家管理代行サービスを利用する
自分で空き家を管理できない場合は、業者が代わりに管理してくれる、空き家管理代行サービスを利用する方法もあります。
管理代行サービスを利用すれば、業者が庭の草木のチェックや室内の換気、簡単な掃除など、最低限の管理を行ってくれるため、少なくとも特定空き家に指定されるようなことにはならないでしょう。
ただし、サービスを利用するには毎月1万円程度、委託費がかかります。また、業者は修繕が必要な箇所があっても、報告してくれるだけなので、修繕自体は所有者自身が行わなければなりません。
もし空き家管理代行サービスについて詳しく知りたい方はこちらの記事もご確認ください。サービス内容や費用などについても詳しく解説しています。
【活用①】自分で住む
相続した空き家に自分で住めば、空き家ではなくなるため、放置のリスクもなくなります。
ただし、空き家に住むとなれば、現在住んでいる場所から空き家へ引っ越す手間や費用がかかります。中には仕事や家庭の事情で引っ越すことができない方もいるでしょう。
もし仮に引っ越せたとしても、放置されていた空き家は老朽化が進んでいるため、住むためにはリフォームが必要です。空き家を住めるようにリフォームするには、最低でも100万円程度の費用がかかります。
また、リフォーム費用を捻出できたとしても、シロアリの被害などで柱が腐食している場合は、倒壊の恐れがあるため、いずれにせよ長期間住むことはできません。
【活用②】活用して収益化を図る
空き家の立地や状態が良い場合は、賃貸や駐車場として活用し、収益化を図ることで、空き家のリスクを回避する方法もあります。
なお、空き家の活用方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
賃貸に出す
空き家を賃貸に出し、入居者がつけば、室内の掃除などは入居者に任せられます。その上、賃貸収入を得ることもできます。
ただし、賃貸に出すにはリフォーム費用として200万円~400万円ほどかかります。また、仮にリフォーム費用を出せたとしても、賃貸で収益化を図るためには、空き家の立地として、以下のような条件が求められます。
- 徒歩圏内にスーパーや病院など生活するための施設があること
- 周囲に競合となる集合住宅などが少ないこと
生活するための店や施設が近くにあることは賃貸物件の重要な条件ですし、周囲に競合となるアパートやマンションがあれば、入居者が決まる確率が下がってしまうためです。
また、賃貸物件は、たとえ入居者がいなくても、設備の修繕や交換費用がかかります。なぜなら、設備が古かったり、壊れている空き家に入居したいと思う人はいなからです。
さらに、空き家を賃貸に出すには所有者であるあなた自身も賃貸経営や不動産について勉強し、知識を身につけなくてはなりません。なぜなら、そうした知識は銀行に融資の申し込みに行く際など、賃貸経営をしていく上で、あらゆる場面で必要となるからです。
解体して駐車場にする
空き家を解体して駐車場として収益化を図る方法もあります。
しかし、空き家を解体して駐車場として整地するには1000万円近く費用がかかります。しかも、空き家を解体してしまうと先ほど述べた「住宅用地の特例」が解除され、土地の固定資産税が6倍になってしまいます。なぜなら「住宅用地の特例」は居住用の建物がある土地に適用されるからです。
さらに、駐車場として収益化するには以下のような立地が必要不可欠です。
- 駅前や人気の観光地から徒歩圏内であること
- 周囲に競合する駐車場が少ない住宅地であること
なぜなら、駅前や観光地はそこまで車で来る人が多いので需要がありますし、周りに駐車場がない住宅地も、月極駐車場としての需要が見込めるためです。
駐車場経営には維持管理の手間もかかります。たとえば、駐車場は放っておくと、整地したアスファルトの隙間から雑草が生えてきてしまうため、定期的な除去が必要です。
また、駐車場内を定期的に見回り、違法駐車がないか確認する必要もあります。見回りを怠り、違法駐車などを見逃せば、駐車場経営にとって不利益になるだけでなく、利用者同士のトラブルのもとにもなるからです。
このように、空き家を活用して収益化を図るには、賃貸でも駐車場でも決して小さくはない費用がかかります。加えて、立地などの厳しい条件もあります。しかも、費用や立地の条件をクリアしたとしても、収益化できるかどうかは、博打のようなところがあります。
ですから、もしあなたが、もっと安全に費用もかけず空き家のリスクを回避したいと思うなら空き家を「売却する」ことをお勧めします。
【処分①】第三者に無償譲渡する
空き家を第三者に無償譲渡することで空き家のリスクを回避する方法もあります。以前からその空き家を欲しがっている親戚であれば無償譲渡に応じてくれる可能性があります。
また、空き家がある地域の自治体が、空き家バンクを運営していれば、空き家バンクに登録して譲渡希望者を募ってもいいでしょう。
自治体が運営する、空き家の売り手と買い手を結びつけるマッチングシステムのこと
もし、空き家バンクについて詳しく知りたい場合は、こちらの記事をご確認ください。
ただ、実際は、たとえ無償とはいえ、そう簡単に空き家をもらってくれる人など現れません。また、個人間で譲渡を行った場合、譲渡された側に贈与税が発生するので事前に伝えておく必要があります。
参照元:国税庁|贈与税がかかる場合
贈与(当事者の一方がもう一方に無償で財産を譲渡する行為)によって財産が移転する際に、その財産に対して課される税金
事前に譲渡税が発生することを説明しておかないと、「無償だから譲り受けたのに、税金がかかるなんて知らなかった!」と、後から恨みを買ってしまう恐れがあるからです。
また、第三者に譲渡するのであれば、無償譲渡ではなく、売却した方が譲渡益が手に入る分、お得ともいえます。
【処分②】国庫帰属制度を活用して国に寄付する
所有している空き家のリスクを回避する方法として、国庫帰属制度を活用し、空き家の土地を国へ返還する方法もあります。
しかし最初に結論をお伝えすると、この方法は現実的ではありあません。国庫帰属制度を活用するには多額の費用や条件をクリアすることが必要だからです。
一定の要件を満たせば、相続や遺贈により取得した土地を国が引き取ってくれる制度
まず制度を活用するには、先ほど「土地を国へ返還」と書いたように、空き家を所有者の費用負担で解体しなくてはなりません。
また、国が土地を管理するための費用として、「10年分」の標準的な管理費用の負担も必要です。具体的な負担金額は以下の表の通りです。
面積区分 | 負担金額 |
---|---|
50㎡超100㎡以下 | 2720円×面積+27万6千円 |
100㎡超200㎡以下 | 2450円×面積+30万3千円 |
200㎡超400㎡以下 | 2250円×面積+34万3千円 |
400㎡超800㎡以下 | 2110円×面積+39万9千円 |
一般的な空き家は「100㎡超200㎡以下」に収まることが多いため、おおよその負担金額は55万円~80万円ほどになります。
さらに、以下のような土地は引き取ってもらえません。
(1) 申請をすることができないケース(却下事由)(法第2条第3項)
A 建物がある土地
B 担保権や使用収益権が設定されている土地
C 他人の利用が予定されている土地
D 土壌汚染されている土地
E 境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地
(2) 承認を受けることができないケース(不承認事由)(法第5条第1項)
A 一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
B 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
C 土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
D 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
E その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地
引用元:法務省相続土地国庫帰属制度の概要
このように多額の費用がかかること、厳しい引き取り条件が設けられていることから、国庫帰属制度を利用して、空き家を手放すことは現実的ではないといえます。
なお、相続土地国庫帰属制度については以下の記事で詳しく解説しているので、併せて参考にしてください。
【処分③】売却する
ここまで、放置してしまっている空き家のリスク回避法をいくつかお伝えしてきましたが、正直に申し上げて、これから述べる売却するという方法が、リスクを回避するための最も賢い方法です。
なぜなら売却してしまえば空き家の所有者ではなくなるため、放置してしまうリスクだけでなく、管理や税金の支払いといった、空き家にまつわるあらゆる悩みから完全に解放されるからです。しかも、無償譲渡とは違い、売却益も手にすることができます。
とはいえ、放置されていた空き家は一般的な不動産業者(不動産仲介業者)に頼んで、一般の個人に売却しようとしても、まず売れません。
なぜなら、一般の個人は居住用の物件を探しており、購入後すぐに、快適に住める物件を望んでいるためです。そのため、売却するにはリフォームするなど費用や手間をかけなくてはいけません。
しかし、不動産の売却には、上で述べた不動産仲介業者に依頼して一般の個人に売却する方法とは別に、不動産買取業者に売却するという方法もあります。
不動産買取業者に依頼すれば放置した空き家でもリフォームなどの費用をかけず、そのままの状態で買い取ってもらえます。なぜなら、買取業者は事業用に物件を買い取っており、買取後に運用・再販するため、業者自ら物件にリフォームなどを施すことを前提としているためです。
放置してしまった空き家は、老朽化も進んでいることが多いため、仲介業者に依頼するより、買取業者に買い取ってもらった方が、スムーズに売却できるでしょう。
買取価格は、買取業者が行うリフォーム費用などが差し引かれるため、仲介業者に依頼して売却するより安くなります。しかし、仲介業者に依頼していつまでも売れないよりは、多少安くなっても売却できた方が得といえます。
なお、仲介と買取の違いをより詳しく知りたい方は、こちらの記事をご確認ください。
買取業者に売却するなら空き家専門の業者を選ぶ
前節で放置してしまった空き家は買取業者に売却するのが良いとお伝えしました。しかし、一言で買取業者といっても、業者によって何を専門に買い取っているかは異なります。空き家が専門の業者もいれば、マンションの買取が専門の業者もいます。
その中で、空き家の買取依頼をする際は、空き家の買取を専門にしている買取業者に依頼しましょう。空き家専門の買取業者であれば、空き家を活用するノウハウに長けているため、高額で買い取ってくれる可能性があるためです。
買取業者が何を専門に買取りをしているかは、その業者のホームページで、「買取実績」や「業務内容」を確認すればわかります。
なお、弊社Albalinkは空き家専門の買取業者として年間600件を超える買取実績(※2023年1月~10月の実績)があります。その中で、下記のように長年放置され、老朽化が進んだ空き家も数多く買い取ってきました。
参照元:Albalink(買取実績)
ですから、放置してしまった空き家を売却し、空き家のリスクや面倒から解放されたいのであれば、ぜひ一度、弊社の無料買取査定をご利用ください。なお、無料買取査定を利用したからといって、その後、無理に買取りの営業をかけるといったことはございませんので、ご安心ください
>>【放置された空き家も買取OK】無料買取査定依頼はこちらから!
なお、空き家の特徴別の希望にあうおすすめ買取業者については、以下の記事でも詳しく解説していますので、参考にしてください。
今後相続予定の空き家によるリスクの回避法8選
前章では、すでに空き家を所有しており、放置してしまっているリスクの回避法をお伝えしました。そこでこの章では、まだ空き家を所有していないけれど、今後、相続で所有する可能性がある空き家のリスクを回避する方法についてお伝えします。
なお、実家をどうするべきかについては、以下の記事でも詳しく解説していますので、併せて参考にしてください。
親が亡くなっているが、まだ相続はしていない場合
親が最近亡くなり、まだ空き家を相続していない場合、そのまま空き家を相続しなければ、空き家を所有するリスクを回避できます。そのための具体的な方法が1つあるのでお伝えします。
相続放棄する
親が亡くなり、まだ遺産相続をする前なのであれば、相続放棄をすることで、空き家を所有するリスクを回避できます。
相続人がプラスの財産もマイナスの財産も含め、全ての遺産を相続しないこと
参照元:裁判所|相続の放棄の申述
ただし、相続放棄をするには、被相続人(親)が亡くなったことを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所へ申請する必要があります。3ヶ月を過ぎてしまうと、相続放棄をしたくてもできないため、注意が必要です。
また、相続放棄には以下のようなデメリットもあるため、空き家を相続したくないという理由だけで、安易に相続放棄をすることはお勧めできません。
- 相続したいものも相続できなくなる
- 相続放棄しても管理責任が残る
上記の相続放棄の説明にも記載した通り、相続放棄をすると、全ての遺産を相続できなくなります。そのため、空き家だけでなく、現金や車など、資産価値のある遺産も相続できなくなってしまいます。
また、相続放棄をしてもすぐに空き家の管理責任が無くなるわけではありません。次の相続順位の法定相続人が空き家を相続し、管理を始めるまでは、管理責任が残ります。
そもそも民法では、下画のように、故人の財産を相続できる人の範囲と優先順位が決められており、この範囲内にいる人を「法定相続人」と言います。
ですから、たとえばあなたが被相続人(親)の子供である場合、相続放棄したら、次の相続順位である被相続人の親(あなたにとっての祖父母)が相続を開始するまでは、あなたに空き家の管理責任が残るということです。
こうしたデメリットがあるため、遺産が明らかに負債の方が多い場合や、親族と仲が悪く、遺産相続についての話し合いをしたくない場合以外は、一旦相続し、早めに売却することをお勧めします。
なお、相続放棄については、以下の記事でも詳しく解説していますので、参考にしてください。
親が生きている場合
次に親が生きている場合、どのように将来の空き家所有のリスクを回避するかについてお伝えします。
親が生きているあいだに実家を売却する方法3選
親が生きている間に実家を売却してしまえば、将来、空き家を相続するリスクを回避できます。しかし、実家を売却してしまったら、親が住む場所をどうするのか、といった問題があります。その問題をクリアして売却する方法を3つお伝えします。
子供の住居に親が引っ越し、実家を売却する
子供と親が別々に住んでいる場合、子供の住居に親が引っ越せば、空き家となった実家を売却することができます。
しかも子供にとっては親が元気なうちに同居すれば、離れて暮らすより親孝行をする機会も増えます。親にとっても、将来的に自分が体調を崩したりした際、子供に面倒を看てもらえるという安心感があるでしょう。
ただし、実家を売却できる保証はありませんし、子供が親との同居を承諾することや、子供の住居が親を迎え入れられるだけの広さがあること、といった条件をクリアする必要があります。
実家を売却し親が住み替えを行う
前節で述べた、親子での同居が難しい場合は、実家を売却し、売却益で親が住み替えを行うという方法もあります。
売却益で親が分譲マンションなどに住み替えができれば、将来的に子供が相続することになっても、老朽化が進んだ実家よりも売却しやすいでしょう。
また、もし思ったような金額で実家が売れず、賃貸などに入居することになったとしても、子供にとっては実家を相続しなくてよくなるため、助かります。
ただし、ここまで読んでもらったらわかる通り、この方法は子供にとってはメリットがありますが、親にとっては環境の変化など負担が多いため、親の同意が不可欠です。
それでも、一度親と話し合ってみる価値はあるでしょう。子供に実家という負の遺産を遺したくないと考えている親は、意外と多いためです。また、子供が出て行った後の実家は、親だけが住むには広すぎる場合があります。ですから中には、マンションなどもう少し狭い住居の方が暮らしやすい、と考える親もいるかもしれません。
実家を少しでも高く売却し、親も子供もWin-Winの状態を作りたいのであれば、ぜひ弊社Albalinkへの売却を検討してみてください。できる限り高値で買い取らせていただきます。
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親の代理として子供が実家を売却する
親が実家の売却に承諾しており、年齢や健康上の問題で、親本人が売却活動を行えない場合は、子どもが代理人となって実家を売却することができます。
ただし代理人になるためには、親本人の記名押印がある以下のような委任状を用意しなくてはなりません。
委任状
受任者(代理人) 山田太郎
住所 〇〇県〇〇市〇〇
氏名(本人) 山田花子
私(以下「甲」という)は、上記の者(以下「乙」という)を代理人と定め、
下記の条件で甲所有の下記不動産の売買契約を締結する一切の権限を委任し、その代理権を付与します。
1.売買物件の表示
(土地)
所在:◯◯県◯◯市〇〇町〇〇
地番:〇〇番〇◯
地目:宅地
地積:〇〇〇.〇〇平米
(建物)
所在:◯◯県◯◯市〇〇町〇〇
種類:居宅
構造:木造瓦葺2階建
床面積:1階〇〇.〇〇平米 2階〇〇.〇〇平米
2.売却条件
売却価額:金〇〇〇〇円
引渡予定日:令和〇年〇月〇〇日
違約金の額:売買価額の〇〇%相当額以上で、乙が買主※と協議のうえ決定する。
金銭の取扱い:売却価額の〇〇%は甲へ、残り〇◯%は乙へ贈与。
その他の条件:その都度甲乙協議のうえ決定する。
3.本委任状の有効期限 令和◯年◯◯月◯◯日
以上。
令和〇年〇月〇〇日
甲 本人(委任者)
住所 ◯◯県◯◯市〇〇町〇〇
氏名 山田 花子 印
乙 代理人(受任者)
住所 ◯◯県◯◯市〇〇町〇〇
氏名 山田 太郎 印
なお、委任状は自身で作成することもできますが、売却を依頼する不動産業者に依頼すれば、無料で作成してもらえることも多いです。自分で委任状を作成する時間がない方や、自信がない方は、一度不動産業者へ相談してみましょう。
弊社、株式会社Albalinkでも、委任状が必要な不動産の買取を行っており、委任状の作成を無料で承っております。
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実家に子供が住み続ける
現在、親と子供が実家で一緒に暮らしている場合、親がなくなり、実家を相続した後もそのまま子供が実家に住み続ければ、実家が空き家になることはありません。
もし、親と暮らすうえで、実家が狭く感じたり、お互いのプライバシーを確保したいと感じた場合は、実家を二世帯住宅に建て替える方法もあります。
二世帯住宅に建て替えるには費用がかかりますが、実家の土地に建てるため建物だけの費用で済みます。そのため、子供が実家を出て新たに新居を購入するよりは安く済む可能性が高いです。
等価交換する
実家の売却方法として「等価交換」という方法もあります。
土地を所有している場合、土地を建築会社に売却し、土地上に新たな不動産(マンションなど)を建築してもらい、建築後に土地の一部と建物の一部(マンションの一室など)を等価で交換する建築方式
上記の説明を図で説明すると、下図のようになります。実家を等価交換で売却する場合、下図の「土地所有者A」と「建物所有者A」が親となり、「土地所有者B」と「建物所有者B」が建築会社となります。
等価交換のメリットはローンを組まずに実家のある土地に新たな不動産を建築してもらうことができ、その一部を所有できることです。もしマンションを建築してもらえば、マンションの一室を所有することができるため、たとえ子供が相続しても実家よりは売却しやすいでしょう。
デメリットとしては、等価交換は建築会社から依頼がなければ行えないことと、仮に依頼があったとしても、等価交換するには空き家を解体しなくてはならず、その費用がかかることです。
成年後見制度を利用して実家を売却する
親が生きているのであれば、成年後見制度を利用して実家を売却する方法jもあります。
成年後見制度とは、判断能力が失われてしまった方の代わりにその方の財産を管理・保護するために後見人を立てる制度のことです。
参照元:厚生労働省|成年後見制度とは
ここでいう「判断能力」とは、自分が行おうとしていること(今回の場合でいえば自分が住んでいる家の売却)が法律上どのような意味を持ち、それを行った結果どのようなことが起きるかを、自分で認識できない状態のことを指します
参照元:東京都宅地建物取引業協会
この成年後見制度を利用し、子どもを「成年後見人」に指定しておけば、将来、親が認知症や精神疾患などにより、判断能力が失われしまっても、子どもが親の代わりに「成年後見人」として、実家を売却することができます。
なお、上の図に記載があるように、成年後見制度には、「任意後見制度」と「法定後見制度」の2種類があり、親の状況に応じてどちらを利用すべきかが変わります。それぞれどういった場合に活用すべきなのか、解説します。
なお、成年後見人制度について詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
任意後見制度を利用する場合
親にまだ判断能力がある場合は、任意後見制度を活用しましょう。
本人に十分な判断能力があるうちに、将来に備えて財産管理を任せる成年後見人(任意後見人)を本人自身が選び、任意後見契約を結ぶ制度
任意後見制度は親が判断能力があるうちに任意後見人を選べるため、先ほど述べたように、子供を任意後見人に選んでおけば、将来、親が判断能力を失った時、子供が親の代わりに実家を売却できるようになります。
ただし、将来、子供が親の代わりに実家を売却するには、任意後見契約書の代理目録(成年後見人に代わってやって欲しいことを記載したリスト)を作成し、「実家の売却」を記載しておく必要があります。代理目録に記載がない行為は成年後見人であっても行えないためです。
なお、任意後見契約書は公正証書で作成すると決められています。そのため、任意後見契約書を作成するにには、契約内容(どういったことを代わりにやって欲しいかなど)をまとめた原案を公証役場に持ち込み、公正証書を作成してもらうことになります。
家族以外(弁護士など)を任意後見人に選んだ際は報酬が必要になりますが、子供など、家族の場合は任意後見人本人が希望しなければ報酬は発生しません。
ただし、一度任意後見人に選ばれると正当な理由(大病を患い、後見人の役目を果たせないなど)なく辞任できません。そのため、子供を任意後見人に選ぶ際も、事前に親子でよく話し合いましょう。
任意後見制度による実家売却までの流れ
任意後見制度の概要が理解できたところで、具体的にどのような流れで、どのタイミングで子供が任意後見人として実家を売却できるようになるかを解説します。
まず、下図は任意後見制度の手続きの流れとなります。
前節で述べた、任意後見契約書の作成は上図の「STEP3」にあたります。ここでしっかり実家の売却を契約内容に入れておく必要があるということです。
そして、実際、子供が任意後見人として実家の売却が可能になるのは、親が判断能力を失い、任意後見監督人が選定された後になります。
任意後見監督人とは、任意後見人が本人(親)の不利益になるような行為(代理目録にない物品を不当に売却するなど)を行っていないか監督する者になります。その役割から任意後見監督人は弁護士など親族以外の第三者が家庭裁判所から選定されます。
先ほど、任意後見人が親族であれば報酬が発生しないこともあるとお伝えしましたが、任意後見監督人は第三者であるため、月1万円~2万円の報酬の支払いが必要となります。
法定後見制度を利用する場合
親が判断能力を失ってしまっている場合は法定後見制度を活用しましょう。
本人の十分な判断能力が失われてしまった後に、家庭裁判所が成年後見人(法定後見人)を選任し、本人の財産管理を任せる制度
法定後見制度では、弁護士などの第三者が法定後見人に選任されることが一般的です。そのため、現時点では、直接子供が法定後見人として実家を売却できるケースは多くありません。
しかし、2019年3月に行われた厚生労働省の専門家会議で、最高裁判所は法定後見人の選定に関して、「後見人にふさわしい親族がいる場合は、本人の利益保護のため親族を選任することが望ましい」という考えを示しました。そのため、今後は子供など、親族が法定後見人に選定されるケースも増える可能性があります。
また、仮に子供が法定後見人に選ばれなくとも、選定された法定後見人(弁護士など)を介して、実家を売却することはできます。
なお、法定後見人を選定するためには家庭裁判所へ申し立てをする必要があり、その際の手数料などで1万円ほどかかります。また、法定後見人への報酬として、任意後見監督人と同様、月1万円~2万円ほどかかります。
法定後見人を選定して実家を売却するまでの流れ
法定後見制度の概要が理解できたところで、法定後見人制度を利用して実家を売却できるようになるまでの流れを解説します。
下図は法定後見制度の手続きの流れとなります。
上図のSTEP6にあるように、必要書類を揃えたのち、法定後見人を選定してもらうために、家庭裁判所へ申し立てを行うことで、家庭裁判所の審理(裁判官や書類や本人の状況などを調査すること)が開始されます。
審理内容がSTEP8の審判で検討され、問題がなければ法定後見人候補の中から法定後見人が決定します。その後、後見の登記(審理内容を東京法務局で登記すること)が行われ、法定後見人としての活動が始まります。
実家の売却が可能になるのは、法定後見人の活動が開始された後になります。ただし、実家の売却には家庭裁判所の許可が必要です。
なぜなら、基本的に後見人制度の根底には、判断能力が失われた方(この場合「親」)の財産を守るという考え方があり、売却して家がなくなることも、財産が減ると判断されるためです。
ここまで成年後見制度についてお伝えしてきましたが、成年後見制度を利用して実家を売却するのであれば、親が元気なうちに任意後見人を選定することをお勧めします。
お読みいただいた方ならお分かりいただけたかと思いますが、法定後見制度は、任意後見制度より売却するまでの手続きも多く、実家の売却に家庭裁判所の許可が必要なためです。
まとめ
今回は活用しない空き家を所有するとどのようなリスクがあるかについて解説しました。また、あなた自身と空き家の状況に合わせた最も効果的なリスクの回避方法もお伝えしました。
空き家によるリスクの回避方法は、空き家を賃貸に出すなど、いくつかあります。その中で、最も手間や費用が掛らない方法は、空き家を売却することです。
しかし、記事でもお伝えしたように、空き家は老朽化が進んでいることが多く、一般の個人に売ろうとしてもなかなか売れません。
ですから、空き家を売却するのであれば、不動産買取業者に依頼するのが賢明です。買取業者であれば、老朽化が進んだ空き家でもそのままの状態で買い取ってくれるからです。なぜなら、買取業者は事業用として空き家を買い取っており、買取後に再販・運用のために空き家に手を加えることを前提としているからです。
弊社Albalinkは空き家専門の買取業者です。弊社には、これまで蓄積してきた沢山の空き家を活用するためのノウハウがあります。そのため、他の買取業者では買い取れないような空き家でも買い取ることができます。
実際、最近も、老朽化が進んだ空き家を買取り、再生させる専門の買取業者として、フジテレビの「newsイット!」で紹介されました。
ですから「空き家のリスクから一刻も早く解放されたいけれど、あれこれ業者を選ぶのも面倒」という方は、難しいことは考えず、安心して弊社にAlbalinkへお任せ下さい。
弊社はスピーディーに買取可能ですので、弊社にご依頼いただければ、空き家のリスクや悩みから解放されることができます。そのための第一歩として、まずは下記のリンクから無料の買取査定を依頼してみてください(査定依頼をしたからといって、強引に買取の営業を行うことはありませんので、ご安心ください)
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