耕作放棄地とは放置されている農地のこと
耕作放棄地とは、「以前耕地であった土地で、過去1年以上作物を栽培せず、今後数年の間に再び耕作する考えのない土地のこと」と、農林業センサスにおいて定義づけられています。
つまり、耕作放棄地は今後も耕作する予定のない、放置された農地のことといえます。
ただし、農林業を営んでいるすべての農家、林家や法人を対象に5年ごとに調査を行う農林業センサスでは、耕作放棄地は2020年から調査項目から外れています。
なお、農地売却にかかる税金や農地の売却が難しい場合の対策については、以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
耕作放棄地の面積推移
農地面積は下図のように毎年減少していますが、耕作放棄地は増加しています。
引用元:農林水産省|令和5年耕地面積
現在わかっている最新の情報では、耕作放棄地は平成27年に42.3万ヘクタールにも及び、今後も増加すると予測されています。
荒廃農地との違い
荒廃農地とは、耕作を放棄していることによって荒廃しており、通常の農作業では作物の栽培が客観的に見て不可能な農地のことで、以下の2種類に分類されます。
再生利用が可能な荒廃農地 | 抜根や整地、区画整理、客土などで再生が可能な農地 |
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再生利用が困難な荒廃農地 | 森林化しているなど復元しても継続して利用することが困難な農地 |
客土とは新たな土を搬入して土壌改善を図る方法のことです。
荒廃農地は調査員が状態を見て判断する客観ベースに対して、耕作放棄地は農家の耕作の意思で判断する主観ベースで決まります。
農林業センサスでは5アール未満の農地は集計対象ではないため、耕作放棄地には5アール未満の荒廃農地は含まれません。
遊休農地との違い
遊休農地は農地法によって、以下のように2つに分類されています。
現に耕作されておらず、かつ、引き続き耕作されないと見込まれる農地のこと
1号遊休農地に該当しない農地で、農業上の利用の程度が著しく劣っていると認められる農地のこと
遊休農地と耕作放棄地はほぼ同じ意味合いで使われますが、遊休農地が農地法で定められた法令用語であることに対して、耕作放棄地は農林水産省が実施している統計調査で使用される言葉であるという点が主な違いです。
耕作放棄地が増加している3つの要因
耕作放棄地が増加している要因として、以下の3つのことが考えられます。
それぞれの要因について詳しく解説します。
高齢化や後継者不足
耕作放棄地が増加している要因として、高齢化や後継者不足が挙げられます。
農林水産省が公表している最新の「食料・農業・農村白書」によると、日本における人口減少は農村で先行しており、農業者の減少・高齢化が著しく進展しています。
基幹的農業従事者数は、2000年の約240万人から2023年には約116万人と半減しており、70歳以上が占める割合は半数以上です。
農家における高齢化が進むと労働力が低下するため、耕作放棄地が増加する要因となります。
また、同資料によると、2023年の農業経営体数は2000年に比べると半数以上減少しており、後継者不足が明確に表れた結果となっています。
今後も農家の高齢化は進展することが予測されており、後継者不足が解消されないと、さらに耕作放棄地が増加するでしょう。
農業資材の高騰による離農
農業資材の高騰による離農も耕作放棄地が増加する要因の1つです。
近年物価の上昇とともに農業に必要な資材も高騰しており、農家にとっては大きな問題となっています。
農林水産省が公表している令和5年農業物価指数によると、基準となっている令和2年と比べると農業生産資材価格指数(総合)は121.3となっており、上昇率が高いことがわかります。
農業資材が高騰すると、収益が下がって採算が合わなくなるため、農業をやめる人も増えてしまうのです。
環境要因による離農
耕作放棄地が増加する要因として、鳥獣被害や災害など環境要因による離農も考えられます。
近年農作物が鳥獣によって荒らされる被害は減っていますが、中間・山間農業地域では、いまだ被害が大きい傾向にあります。
また、台風による被害も大きくなる傾向にあり、日照不足や冷害などの自然災害による被害が大きくなる年もあるでしょう。
農作物が大ダメージを受けると収益に直結するため、鳥獣被害や災害など環境要因によって農業をやめる人も増加傾向にあります。
耕作放棄地が引き起こす5つの問題
耕作放棄地が増加すると、以下の5つの問題が発生します。
それぞれの問題について詳しく解説します。
食料自給率が低下する
耕作放棄地の増加が引き起こす問題として、食料自給率が低下することが挙げられます。
農林水産省が公表している最新の「食料・農業・農村白書」によると、2022年の食料自給率は38%となっています。
食料自給率とは日本の食料供給に対する国内生産の割合を示す指標のことです。
米が大凶作であった1993年や2018年と並ぶ過去最低水準の食料自給率だといわれていますが、耕作放棄地の増加だけでなく、新型コロナウイルスの影響などさまざまな要因が関係しています。
しかし、耕作放棄地が増加することによる農作物生産量の減少が食料自給率の低下に大きく影響していることは事実です。
国際関係が良好であれば、海外からの輸入で不足する食糧を補えますが、国際情勢が悪化して外国からの輸入が減少すると、食糧価格が大幅に上昇してしまう可能性があります。
食料自体足りなくなる可能性もあるため、耕作放棄地の増加を食い止め、食料自給率を上昇させる対策が必要です。
雑草が繁殖して近隣農地に悪影響が出る
耕作放棄地が増加すると、雑草の繁殖によって近隣農地に悪影響が出ることも考えられます。
農地で耕作する際には、雑草が発生していると収穫量に大きな影響が出るため、適切に管理されますが、耕作放棄地になって雑草が繁殖してしまうと、近隣の農地にも種子が飛散して迷惑をかける恐れがあります。
相続などで農地を所有することになり、耕作しない場合でも草刈りを定期的に行って雑草が繁殖しないように管理する必要があるでしょう。
害虫や鳥獣被害が出て近隣農家に迷惑をかける
耕作放棄地が増加すると、害虫や鳥獣被害などで近隣農家に迷惑をかける可能性もあります。
農地の管理を放棄して雑草が繁殖すると、害虫が発生しやすくなり、雑草の場合と同様に近隣の農地にも悪影響が出ます。
また、先述のとおり、鳥獣被害は耕作放棄地が増加する要因となっていますが、被害に遭った農地の管理を放棄すると、野生動物の棲み処となり、さらなる鳥獣被害を引き起こす要因となるでしょう。
防災機能が低下する
耕作放棄地が増加すると、防災機能が低下して災害リスクが高まります。
耕作されている農地は貯水機能があるため、台風や大雨などによる洪水を抑制できますが、耕作放棄地になると保水能力が低下するため、洪水が発生しやすくなります。
また、耕作放棄地は雑草が繁殖して枯れ葉なども散乱していることが多いため、引火して火災の原因となる可能性もあるでしょう。
ゴミの不法投棄が発生する要因となる
耕作放棄地はゴミの不法投棄が発生する要因となります。
管理されていない耕作放棄地は誰が見てもわかりやすく、また、雑草が繁殖していることも多いため、人目につきにくい場所となります。
人目につきにくいと、産業廃棄物などを不法投棄しやすい場所となって狙われてしまうのです。
環境省によると、令和4年度に新たに判明した不法投棄件数は134件で、不法投棄量は4.9万トンとなっています。
参照元:環境省|産業廃棄物の不法投棄等の状況(令和4年度)について
耕作放棄地が増加すると今後も不法投棄件数は増加してしまうでしょう。
耕作放棄地問題を解決させるための取り組み
耕作放棄地の増加は全国的に深刻な問題となっているため、国だけでなく、地方自治体や農業者団体などが耕作放棄地問題の解決に向けてさまざまな取り組みを行っています。
農地バンク(農地中間管理機構)
農地バンクとは農地中間管理機構の通称で、農地を効率よく利用するために、2014年に全都道府県に設置されました。
参照元:農林水産省|農地中間管理機構
高齢などを理由にリタイアしたい人や相続などで農地や耕作放棄地を所有していて農地を貸したい人と農業参入を希望する人など農地を借りたい人のマッチングをサポートします。
令和5年に行われた法改正により、これまで順調に利用されていた農地だけでなく、遊休農地なども対象となりました。
農地を借りたい人への貸付も行っており、中立な立場で農地の貸し・借りを円滑に進めます。
補助金制度
耕作放棄地の増加を抑制するために、国や自治体からの補助金が活用できます。
主な補助金は、以下のとおりです。
上記のほかにも、自治体独自の補助金もあるため、所有している農地や耕作放棄地が所在する自治体に確認することをおすすめします。
農福連携
農福連携とは障害を持った人などが農業分野で活躍することを通じて社会参画を実現していく取り組みのことです。
参照元:農林水産省|農福連携の推進
農福連携の取り組みは、障害者の就労場の創出となるだけでなく、農業就業人口の減少や高齢化が進む農業分野において新たな働き手の確保につながるものとして期待されています。
近年、全国各地において農福連携の取り組みが広がっているため、耕作放棄地問題の解決につながる可能性があるでしょう。
耕作放棄地活用ビジネス
耕作放棄地を有効活用するために、新しいビジネスを始めることも選択肢の1つです。
ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)は、作物を育てている農地にソーラーパネルを設置して発電するものです。
農地に支柱を立て、作物の上部に太陽光パネルを設置するため、農業をしながら発電できます。
千葉県匝瑳市では、地元農業法人「Three little birds」と企業「市民エネルギーちば」を中心として、ソーラーシェアリングと有機農業の融合による環境型の地域づくりが取り組まれています。
発電した電力は売電することも自分で使用することも可能なため、農作業における機械化が進んでいる現在ではメリットといえるでしょう。
耕作放棄地を活用できない場合はアルバリンクへ売却!
農地や耕作放棄地を相続して活用できない場合はアルバリンクへ売却しましょう。
弊社アルバリンクは活用しない耕作放棄地や田舎にある農地などの訳あり不動産専門の買取業者として、他社では断られるような物件なども多数買い取ってきました。
以下は、弊社が実際に「買取を行った空き家」の事例です。
【買取した空き家の概要】
物件の所在地 | 茨城県小美玉市 |
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物件種別 | 戸建て |
築年数 | 32年 |
買取金額 | 150万円 |
管理できておらず老朽化もしていた空き家の売却依頼でした。
体感で感じない程度だが、南側に6/1000ほど建物が傾ており、荷物が残ったままの状態でした。
築年数も30年を超えており、仲介での売却は難しいと判断し買取の方向で進めたい旨お伝えしました。
買取金額にも納得いただき、そのまま買取に至った次第です。
実際に空き家をはじめ、弊社に物件の買取依頼をしていただいたお客様からは「売れずに困っていたが買い取ってもらえた」「他社から断られたのに買い取ってもらえた」などの感謝の言葉を多数いただいております(下記Google口コミ参照)。
弊社は2011年に創業以来、2020年から2023年までの間で500件以上の空き家を買い取っている業者で、2023年に上場して社会的信用も得ています。
査定依頼をいただいても、無理な営業は行いませんので、ぜひ一度弊社の無料買取査定をご利用ください。
なお、アルバリンクの評判や口コミについては、以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
まとめ
今回は、耕作放棄地の問題点について詳しく解説しました。
相続などで農地を相続した場合は、耕作放棄地とならないように適切に対処する必要があります。
農地バンクを活用して売却する方法もありますが、登録しても売れるとは限りません。
また、耕作放棄地を相続した場合は活用することもできますが、費用や手間がかかります。
相続した農地や耕作放棄地を活用できない場合は、専門の買取業者に売却することも選択肢の1つです。
専門の買取業者であれば、田舎にある農地や耕作放棄地でも短期間での現金化が可能です。
なお、弊社アルバリンクも活用しない耕作放棄地や田舎にある農地などの訳あり不動産を全国から積極的に買い取っている業者で、「フジテレビ」をはじめとする各メディアにも取り上げられた実績があります。
整地していない土地が売却できずにお困りの方は、査定のみ、相談のみのお問い合わせでも受け付けておりますので、お気軽にご相談ください。