福岡都市圏の空き家問題と今後の見通し
地方都市の多くが深刻な人口減少に喘ぐ中、福岡市への人口集中は依然として続いており、各種の都市ランキングでも上位に名を連ねることが珍しくありません。
しかし、そうした華やかな都市の光の影には、確実に進行しつつある構造的な変化が潜んでいます。
ここでは、マクロな人口統計データと地域の住宅状況を照らし合わせながら、福岡都市圏が抱える空き家問題の真の現状と、私たちが2030年代に向けて見据えるべき未来の予測について、上杉先生に詳しくお伺いしていくことにしましょう。


宗像市周辺の現地調査にて撮影
福岡都市圏は「まだ対策できる地域も多い」
── 本日はお時間をいただきありがとうございます。
私たちは日々、全国各地で空き家の買取や利活用のご相談をお受けしているのですが、九州、特に福岡エリアへの注目度は年々高まっていると感じます。
まず、先生がご研究の拠点とされている福岡都市圏の空き家問題について、現在の実態や今後の見通しをどのように見ていらっしゃいますか。
上杉昌也准教授:現在の福岡都市圏における空き家問題の現状を一言で表現するならば、現時点では「まだ致命的な状況には至っていない地域も多く、事前の対策を打つだけの時間的な猶予が残されている段階」だと言えます。
確かに全国的なニュースを見れば、過疎地域や他の地方大都市圏を中心に、高齢化や空き家の急速な同時進行が深刻な社会問題として連日のように報じられていますよね。
それに比べると、現在の福岡都市圏は中心部への人口流入が依然として堅調であることも手伝って、そこまで急激に住宅の空室化や放置空き家が目立っている地域ばかりというわけではありません。
不動産の需給バランスという観点から見ても、深刻な崩壊を起こしている地域はまだ限定的です。
── 中心部の活気が、郊外への深刻な影響を一定のところで食い止めているのですね。
上杉昌也准教授:ええ、まさにその通りです。ただ、ここで私たちが誤解してはならないのは、「だから福岡は安心だ」というわけでは決してない、ということです。
現在の堅調な状況は、あくまで過去の人口動態の遺産の上に成り立っているに過ぎません。
客観的な統計データや人口減少と空き家の推移予測を分析していくと、何の対策も講じなければ今後10年ほどで他の大都市圏と同様の深刻な空き家問題に直面する可能性が極めて高いです。
2030年代に向けて問題は確実に顕在化します。

── あと10年ほどで、他の深刻な地域と同じような状況になってしまう可能性があると・・・。危機感が募ります。
上杉昌也准教授:はい。しかし裏を返せば、本格的な破局を迎える前に予防施策を仕込める時間が残されているということです。
例えば、私が調査した福岡県宗像市の事例が参考になります。
宗像市では将来の空き家予防策として、市民向けの「住まいの相談窓口の設置」や専門家による「不動産セミナーの開催」など、空き家予防の啓発活動を数年前から展開しています。
こうした先進的な動きは、これからの10年を生き抜く大きなヒントになるでしょう。
民間不動産会社に期待される役割
上杉先生が指摘されたように、福岡都市圏に残された時間は決して無限ではありません。
この限られた猶予期間の間に、地域の住宅環境を健全な状態で維持し、次の世代へ引き継いでいくためには、行政の力だけでなく、市場の最前線で動く民間企業の存在が不可欠となります。
ここでは、これからの少子高齢化社会において、民間不動産会社が担うべき新たな社会的使命や、行政とのシナジーを生み出す仕組みについて対話を深めていきます。
官民連携が重要になる
── 今後10年が勝負の分かれ目になるということですね。そうした中で、私たちアルバリンクのように空き家のポテンシャルを見出して買取・再販を行う民間事業者や、地域に根ざす民間不動産会社には、具体的にどのような役割や社会的機能が求められるとお考えでしょうか。
上杉昌也准教授:民間不動産会社の皆さんに期待される役割は、単なる物件の仲介や売買という従来のビジネスの枠組みを超えて、地域の「住宅ストック活用」を最適化するコーディネーターとしての役割へとシフトしていくはずです。
すでに国内に建築され、市場に存在している住宅(既存住宅)の総量や資産のこと。
例えば地方都市の郊外やニュータウンには、老朽化や入居者の高齢化が進む公営住宅や古い民間賃貸住宅が集積しています。これらは市場価値を失っているように見えますが、立地を分析すると駅へのアクセスが良く、病院や商業施設が充実しているなど、生活拠点としてのポテンシャルが高いケースが多くあります。
── 建物の見た目や築年数だけで判断してはいけない、ということですね。隠れた価値を見出すことが重要なのですね。
上杉昌也准教授:その通りです。近年、東京等を中心に、低所得層や単身高齢者、若い子育て世代が無理のない価格で確保できる「アフォーダブル住宅(良質な低価格住宅)」の議論が活発です。
低所得者層、単身の高齢者、若年子育て世代などが、収入に対して無理のない適正な負担(家賃や住宅ローン)で確保できる、一定以上の品質が担保された良質な低価格住宅のこと。
参照元:人生100年時代における住生活を支える仕組みに ついて
福岡でも今後、こうした住宅へのアクセスが難しい人々を支える取り組みは、地域社会の安定に不可欠なテーマとなります。
── なるほど、アフォーダブル住宅としての再生ですね。
ただ、そうした物件は個別の事情が複雑で、民間単独の採算性という面ではハードルが高いことも多いのが実情です。
上杉昌也准教授:まさにそこが構造的課題です。こうした領域は民間単独では採算が合いにくく、行政も予算や人手の面からすべてを公営住宅として抱える財政的猶予はありません。
だからこそ、今後は行政と民間事業者が強みを持ち寄る「官民連携(PPP)」が決定的に重要になります。
行政が制度設計や補助金の用意、住民への信頼性担保を行い、民間がマーケティング力や不動産再生ノウハウを発揮する。この緊密な協働こそがこれからの空き家対策の主戦場になります。
ジオデモグラフィクスを活用した地域分析
官民連携を実効性のあるものにするためには、勘や経験だけに頼るのではない、客観的なデータに基づいた戦略的なアプローチが求められます。
ここで大きな武器となるのが、地理空間情報と人口統計データを高度に融合させた「ジオデモグラフィクス」という分析手法です。
上杉先生が日々研究されているこの最先端の知見が、実際の不動産市場や地域の空き家対策にどのように応用できるのか、その具体的な中身に迫ります。
「どこから着手するか」が重要
── 官と民が手を取り合うことで、初めて持続可能な対策が可能になるということですね。
ここで先生が専門とされている「ジオデモグラフィクス(地理学的属性分類)」という手法についてぜひ詳しくお伺いしたいのですが、このデータ分析の考え方は、実際の空き家対策の実務や民間の営業戦略において、どのように活かしていくことができるのでしょうか。
上杉昌也准教授:ジオデモグラフィクスというのは、簡単に言えば国勢調査などの詳細な人口統計データと、住所・地図などの地理情報システム(GIS)で扱う地理空間情報を掛け合わせ、近隣環境の特性をミクロな街区レベルで可視化する手法です。
これにより、「郊外」と一括りにされてきた地域の多様な違いが鮮明になります。
例えば「福岡の郊外住宅団地」でも、高齢化が進む高級住宅地、単身高齢者が孤立する公営住宅エリア、若者向け賃貸が集まるが更新が進まないエリアなど、隣り合う町・丁目でも背景は全く異なります。
── 地域によって全く顔が違うのですね。そうなると、一律のチラシ配布や画一的な施策では効果が出にくいのも頷けます。
上杉昌也准教授:その通りです。限られた予算や人手を効果的に投入するためには、データに基づいて「空き家リスク地域」を科学的に特定し、どこから優先的にどのような手法で対策を行うかというプライオリティを明確にすることが何より重要です。
── 具体的には、どのようなビジネスへの応用が考えられますか。
上杉昌也准教授:民間の実務に引き付けるなら、今後数年以内に相続契機の空き家リスクが高くなるエリアをピンポイントで抽出できます。
そのエリアへ重点的にチラシを投下したりセミナーを開催したりすれば、高い確率で潜在顧客を開拓できます。
自治体にとっては「エビデンスに基づく政策立案(EBPM)」に役立ち、民間事業者にとっては無駄なコストを削ぎ落とした高精度なマーケティング戦略を立てやすくなります。
── 実は弊社でも、全国の拠点でチラシ施策やマーケティングを展開しているのですが、エリアごとの反響の差に苦戦することが多く、今の先生のお話は非常に耳が痛いと同時に、目から鱗が落ちる思いです。
上杉昌也准教授:もともとジオデモグラフィクスは、欧米の大手企業が店舗の出店戦略やターゲットマーケティングを行うために発展させてきた考え方ですからね。
日本の不動産市場の現場においても、応用できる部分やイノベーションを起こせる余地は非常に多く残されていると思いますよ。
参照元:ジオデモグラフィクスからみた将来空き家の都市圏比較(「都市計画論文集」58巻2号、2023年)|上杉昌也准教授
空き家対策は「予防」と「事後対応」の両立が必要
データ分析により、対策の優先順位が明確になったとしても、いざ現場で施策を展開するとなると、限られた資源をどのように配分すべきかというジレンマに直面します。
未来の空き家発生の芽を摘む「予防策」への投資をどのように両立させていくべきなのか。
行政の苦悩と現場のリアルな葛藤を踏まえながら、上杉先生にその最適なバランスのあり方を提言していただきます。
啓発と現場対応を並行して進める
── データを駆使して、地域ごとの特性に合わせたアプローチを行うことの重要性がよく分かりました。
では、実際の具体的な施策の内容に踏み込んでいきたいのですが、空き家対策を推進するにあたっては、これから新しく空き家が生まれるのを防ぐ「予防策」と、すでに発生してしまって管理不全に陥っている物件に対処する「事後対応(対症療法)」の、どちらをより重視してリソースを傾けていくべきなのでしょうか。
上杉昌也准教授:理想論としては、両者を車の両輪として完全に並行して進めるしかありません。
しかし、実際の自治体の現場では、周辺住民からの苦情対応や所有者追跡など「今起きている問題への事後対応」に人員と予算のほとんどを注ぎ込まざるを得ないのが実態です。
── 確かに、今そこにある危機への対応で手一杯になってしまうのは、行政の現場としては避けられない部分ですよね。
上杉昌也准教授:そうなんです。しかし、対症療法を続けても根源を絶たなければ根本解決には至りません。
だからこそ、まだ問題が顕在化していない地域に対して、意識的な「予防」への投資が必要なのです。
具体的には、定期的な相談会やメディアを通じた啓発活動を行い、住民が元気なうちから将来の住まいについて家族で話し合う文化を醸成する必要があります。
空き家所有者の心理的ハードル
前章で提唱された「予防」を機能させるためには、制度や理論の整備だけでは不十分です。
頭では売却や片付けが必要だと理解していても、心理的な抵抗感から行動を先延ばしにしてしまう所有者は少なくありません。
この目に見えない「心理的ハードル」をどのように取り除き、当事者に一歩を踏み出してもらうのか。
上杉先生が実際に行った住民アンケートのデータをもとに、人の心を動かす情報発信のあり方を探ります。
情報発信による問題の可視化と「自分事化」へのアプローチ
── 対症療法と予防の両輪ですね。非常に共感いたします。ただ、私たちも買取の現場で多く経験するのですが、空き家の所有者様、あるいは将来的に実家を相続する予定の「空き家予備軍」の方々は、頭では「何とかしなければ」と分かっていても、「先祖代々の土地だから」「幼少期の思い出が詰まった実家を手放すのは忍びない」といった、非常に強い心理的な抵抗感やハードルを抱えていらっしゃることが多いです。
こうした人間のデリケートな感情の壁に対しては、どのようなアプローチが有効なのでしょうか。
上杉昌也准教授:非常に重要かつ、一筋縄ではいかない根深い問題ですね。
おっしゃる通り、他人の心や価値観の根底にある気持ちを、外部からの働きかけだけで急激に変えることはおよそ不可能です。
人間は理屈や損得だけで動くわけではありませんが、宗像市の住宅団地で行った住民調査の結果から、重い腰を上げて行動を起こすための「自分事化」の条件が見えてきました。
参照元:居住者の近隣空き家に関する認識と自宅の将来意向に関する団地内格差:福岡都市圏における宗像市の郊外団地を事例に(「都市地理学」20巻、2025年)|上杉昌也准教授
── その条件とは、一体どのようなものなのでしょうか。
上杉昌也准教授:住民アンケートにおいて、空き家問題に関心を持ったきっかけの多くが「近所に空き家が増えてきたから」という回答でした。
人間は自分に関係のない段階では啓発チラシを見ませんが、身近な風景の変化を目にした瞬間にリアルな危機感を持ち、「自分事化」が作動します。

宗像市周辺の現地調査にて
── 身近な風景の変化が、当事者意識を目覚めさせるのですね。
上杉昌也准教授:その通りです。そして意識が切り替わった瞬間に、悩みをワンストップで解決してくれる相談窓口が用意されているかどうかが行動変容を決定づけます。
宗像市の仕組みが優れているのは、窓口に相談すると、地元の不動産会社や専門事業者のネットワークへスムーズにつながるエコシステムが構築されている点です。
また、調査では「メディア報道を通じて知った」という回答も大きな割合を占めました。
行政や民間企業がウェブやマスメディアを通じてリスクを適切に情報発信し、問題を可視化する重要性を示しています。
情報をオープンにし、問題意識に火がついた瞬間にプロが手を差し伸べる流れをデザインすることが正攻法です。
福岡・北九州エリアの地域差
宗像市の事例は、福岡都市圏の郊外における注目される取り組みの一つですが、こうした成功モデルが他のエリアでもそのまま通用するとは限りません。
特に、経済の力強い成長が続く福岡都市圏と、早い段階から産業の成熟と高齢化に直面してきた北九州エリアとの間には、どのような地理的な「構造の違い」があるのでしょうか。
エリアによる空き家発生パターンの光と影について、専門的な見地から切り込んでいただきます。
交通アクセス、地価の上昇、需要のシフトがもたらす光と影
── 所有者の心に寄り添いながらも、適切なタイミングで選択肢を提示する仕組みが必要なのですね。
ここで少し空間的なスケールを広げて、福岡県内という大きな枠組みでの「地域差」について伺いたいと思います。
同じ福岡県内であっても、空き家が増えやすい地域にはどのような特徴や差異が見られるのでしょうか。
上杉昌也准教授:空き家問題の進行スピードを決定づける大きな要因は、「公共交通機関の利便性や中心部へのアクセス」、そして「自然災害リスクの有無」の2つです。
北九州市は早期から人口減少と高齢化に直面しており、特に郊外部や傾斜の厳しい斜面地、ハザードマップ上の災害リスクが高い地域では、若年層の流出に伴い急速に空き家増加やスポンジ化が進んでいます。
── 北九州の郊外や斜面地は、かなり厳しい状況を迎えているのですね。
上杉昌也准教授:ええ。一方で、福岡都市圏の中心部(博多・天神周辺)や、そこにアクセスがよく居住ニーズの高い春日市や大野城市、大宰府市などの人気エリア周辺は需要が堅調で安定しています。
しかしここで面白い現象が起きています。
現在の福岡市中心部は地価や新築マンション価格が急騰し、現役世代の手が届かないレベルになっています。
その結果、都心での購入を諦めた子育て世代などの需要が、周辺のセカンドエリアやかつての郊外ニュータウンへと移り変わる「玉突き」のような動きが見られます。
── 都心の価格高騰が、周辺郊外への需要のシフトを促しているのですね。
上杉昌也准教授:はい。このトレンドは、高齢化が進む古い郊外団地に若い世代を呼び込み、住宅ストックを循環させる絶好のチャンスになり得ます。
需要が流れてきている今このタイミングを逃さず、各自治体や不動産会社が地域特性に応じた情報発信や中古住宅の流通促進策を講じられるかが、地域の未来を分けます。
今後、自治体・不動産会社・住民に求められる役割
地域ごとの課題や需要の波を捉えるためには、行政・民間・住民という、不動産や街づくりを取り巻くすべての主体が、自らの殻を破って新しい役割を果たしていかなければなりません。
それぞれの強みを最大限に活かし、弱点を補い合うための「共創の仕組み」をどのように作っていけばよいのか。
地域全体が一体となって空き家問題に立ち向かうための、未来のグランドデザインについて詳しく提言をいただきます。
地域全体で支え合う「三方よし」の仕組みづくり
── 地域ごとの特性を冷徹に見極めた上で、強みを活かした先手を打つことが重要なのですね。
それでは、これまでのお話を総合した上で、これから本格的な成熟社会・ポスト成長社会を迎えるにあたり、行政(自治体)、民間(不動産事業者)、そしてそこに暮らす「地域住民」のそれぞれの立場に対して、具体的にどのような新しい役割や行動変容を期待されるか、先生の提言をお聞かせください。
上杉昌也准教授:これからの時代を生き抜くための空き家対策は、一つの組織の力だけで解決できるような簡単な問題ではありません。
先ほどから申し上げているように、行政、民間、住民の3つの主体が役割を自覚し、地域全体で住宅を支え合う包括的仕組みが不可欠です。
まず自治体に求められるのは、民間企業や住民がスムーズに行動を起こせる安心な制度設計と包括的な相談体制の整備です。
行政が自ら空き家を買い取る必要はなく、信頼できる情報に出会えるプラットフォームを構築し、官民連携の呼び水となる規制緩和や補助金制度を整える役割に徹することが重要です。
── プラットフォームとしての行政ですね。では、私たち不動産事業者のような「民間」の役割はいかがでしょうか。
上杉昌也准教授:民間不動産事業者の皆さんに期待されるのは、住民が困ったときに安心して相談できる環境の整備と、多様な選択肢を分かりやすく提示するプロフェッショナリズムです。
空き家問題は相続税、雨漏り、遺品整理、境界確定など多様な課題が絡み合っています。
売却、リフォーム賃貸、維持管理、あるいは貴社のようなスピーディーな買取など、所有者の状況に合致したカスタマイズ処方箋を提示することこそが民間の役割です。
── ありがとうございます。身が引き締まります。
では、最後のピースである「地域住民」の役割についてはどうお考えですか。
上杉昌也准教授:実は住民の主体的な関わりこそが、これからの空き家予防の隠れた最重要ポイントです。
「どの家が最近空き家になったか」といったリアルタイムの現場情報は、行政や遠くの民間企業では把握できません。
これらを察知できるのは地域コミュニティや自治会、町内会の方々だけです。
自治会等を中心としたネットワークの中で情報共有や相互扶助の仕組みを機能させることが重要です。
行政が場を整え、民間が専門知識で応え、住民が地域の目として情報を繋ぐ。
この「三方よし」の地域社会をデザインしていくことが唯一の処方箋です。
今後の研究テーマ
先生が示された包括的なエコシステムは、これからの日本の地域社会を救う強固な礎となりますが、学問の世界もまた、時代の変化に合わせて常にその先を見据えなければなりません。
一見すると近代的で、衰退とは無縁に見える高層マンションや都市型の共同住宅に潜む、極めて深刻で見えにくい新たなリスクとは何か。
インタビューの最後に、先生が今後挑まれようとしている最前線の研究展望についてじっくりとお話を伺いました。
マンション空き家問題という「見えにくいリスク」への挑戦
── 上杉先生が今後取り組んでいきたい新しい研究テーマについてお聞かせください。
上杉昌也准教授:これまでは一戸建てや郊外住宅団地を主なフィールドにしてきましたが、次に強い関心を持っているのが都市部における「マンションなど共同住宅の空き家問題」です。
一戸建ては外から見て空き家と発見しやすいですが、マンションの場合はオートロックに守られた建物内部で個別の部屋が長期間空室化していても、外側からは全く察知できません。
非常に「見えにくい形」で内部のスポンジ化が静かに進行する性質を持っています。
── 確かに、マンションの空室は外からは全く分かりませんね・・・。恐ろしい死角です。
上杉昌也准教授:ええ、かつ戸建て住宅よりも解決のハードルが一段と高いのです。
今後はこうした共同住宅・高層マンション特有のミクロな空き家発生メカニズムや空間的分布特性について、ジオデモグラフィクスや不動産データベースのビッグデータを駆使しながら研究を深めていきたいと考えています。
まとめ
今回、福岡工業大学の上杉昌也先生にお話を伺い、データが示す客観的な現実の冷徹さと、それを乗り越えるための地域連携の温かさ、その双方の重要性を強く再認識させられる極めて濃密な時間となりました。
「福岡都市圏はまだ対策が間に合う地域が多く残されている」という言葉は、大いなる希望であると同時に、これからの10年を無駄にできないという重い責任でもあります。
都心部の地価高騰に伴う郊外への需要シフトを捉え、科学的分析を実務に応用しながら、買取・再販、利活用のクオリティを高めていく必要があります。
大切な思い出の詰まった実家を、次の世代を支える良質な「アフォーダブル住宅」へと生まれ変わらせ、循環させていくこと。
それこそが「三方よし」の未来社会への具体的な貢献であると確信しています。
「2100年、空き家ゼロ」というミッションの達成に向けて、これからも地域社会の伴走者として挑戦を続けてまいります。
最後になりますが、お忙しい研究の合間を縫って、これからの地域社会の未来のために大変貴重で、かつ示唆に富む素晴らしいお話をたくさん聞かせてくださいました上杉昌也先生に、この場を借りて心より深い感謝と御礼を申し上げます。
株式会社AlbaLinkは東証グロース市場に上場している不動産会社です。

