地域づくりにおける「関係人口」の実態
都市部での華やかなPRとは裏腹に、地方の現場では人口減少に伴うコミュニティの維持という切実な問題が横たわっています。
ここでは、単に住民票の数を追うだけでは見えてこない、地域を真に支える仕組みについて田口先生にお話を伺い、私たちが目指すべき「人口」の捉え方について紐解いていきます。
「人口」の数よりも本当に重要なのは地域を支える“担い手”の存在
── 本日はよろしくお願いいたします。
まず、先生が研究されている「関係人口」について詳しく伺いたいと思います。
移住した「人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、特定の地域に多様に関わる人々のこと。
参照元:関係人口・ふるさと住民|総務省
人口減少が急激に進行している現在の地方において、単に移住するわけではない地域外の人間が、継続的に特定の地域に関わり続けることには、具体的にどのような意味や価値があるのでしょうか。
田口教授:よろしくお願いいたします。
まず大前提として認識しなければならないのは、現在の地方、特に過疎化が進む農山村などでは、もはや「その土地に住民票を置いている人たちだけ」で地域社会を維持し、支えていく時代は終わっているということです。
── 住民票がある人だけでは、もう限界を迎えているのですね。
田口教授:その通りです。
しかし、視点を変えて現実をよく見てみると、住民票こそ別の場所に置いてはいるものの、週末ごとに通ってきたり、特定のプロジェクトの時期だけやってきたりして、地域外に住みながら深く関わっている人が実際にはたくさん存在しています。
さらに言えば、現代は人々の価値観も非常に多様化していますよね。
これは地方に住んでいる住民側にも言えることで、その土地に暮らしている人全員が、等しく地域活動や伝統行事に積極的に参加するわけではありません。
ですから、行政が単純に「定住した移住者の人口」という数字の増減だけを追って一喜一憂していても、その地域が維持可能かどうかの本当の実態は見えてこないわけです。
── なるほど。定住している人の数だけが指標ではないと。
田口教授:ええ。本当に重要で本質的なポイントは、その地域を維持するための具体的な活動を支えてくれる“担い手”が、一体どれくらい存在するのかという点に尽きます。
私はこの、実際の活動を動かす人々のことを定住・非定住を問わずに「担い手人口」と呼んでいます。
多くの行政は、人口減少という現象そのものを最大の危機として問題視しがちですが、本当に頭を悩ませ、真剣に考えるべきなのは人口の数ではありません。
「誰がこの地域の日常を支えていくのか」という、具体的な役割の担い手についての議論なのです。
「関係人口」という言葉のブームは地域の持続的な維持につながっているのか
── 確かに「関係人口」という言葉自体はここ数年で広く定着し、行政の施策でもよく使われています。
しかし、その実態については先生はどのように分析されていますか。
田口教授:例えば東京などの都市部では、「地方の地域と関わりを持ちましょう」「関係人口になりましょう」といったお洒落なセミナーやイベントが盛んに開催されていますよね。
しかし、その多くが示している実態は、地域のイベントやお祭りへの一時的な参加であったり、収穫体験を楽しんだりといった、いわば地域の“キラキラした魅力的な部分”との関わりが中心になっているケースが圧倒的です。
その一方で、地方の現場が日々直面しているのは、果てしない草刈りや冬の雪かき、あるいは集落の命綱である水源の清掃管理、さらには伝統的なお祭りの運営といった、地道な日常の維持管理の作業です。
こういった、泥臭くて本当に大変な部分にまで進んで関わろうとする地域外の人は、現実にはそれほど多くはありませんし、そういう現実のことを知らない人も多いのではないでしょうか。
── 華やかな交流と、日々の泥臭い維持管理との間には、大きな隔たりがあるのですね。地域の本当の大変さは、外からは見えにくいと。
田口教授:まさにそこが盲点なのです。
だからこそ、都市部でいくら関係人口の登録者数が増えたからといって、その数字がそのままダイレクトに将来の移住につながったり、地域のインフラやコミュニティの維持に直結したりするわけではないのです。
それにもかかわらず、行政の発想はどうしても短絡的になりがちです。
「人口が減ってしまったから、まずは移住者を呼び込もう」と考え、それが上手くいかないとなると「移住者が来ないから、今度は関係人口という枠組みを増やして数合わせをしよう」というステップを踏んでしまう。
しかし本来であれば、「一体何のために、どういう役割を担ってもらうために人を呼び寄せるのか」という目的の根幹を、最初に徹底して議論しなければならないはずなのです。
空き家問題と地方の現実
関係人口の課題からは、外から見える魅力と内部の日常とのギャップが浮き彫りになりました。
次に、地方移住の受け皿として期待されながらも、実態としてはなかなか活用が進まない「空き家」のリアルな問題について、地域ごとの特性や先生ご自身の体験を交えて掘り下げていきます。
都市部と農山村では「空き家」が持つ社会的意味が異なっている
── 続いて、地方創生と切っても切り離せない「空き家問題」について伺います。全国的に空き家の増加が深刻視されていますが、先生はこの問題をどのように捉えていらっしゃいますか。
田口教授:空き家と一言で言っても、実は「都市部」にある空き家と、「農山村(地方の集落)」にある空き家とでは、その持つ意味合いや周囲に与える影響が根本から大きく異なっています。
ここを混同して一律に語ってしまうと、解決の糸口を見失います。
例えば都市部における空き家は、隣家との距離が近いこともあり、適切に管理されずに放置されると、防災上のリスクや治安の悪化、あるいは衛生環境の悪化を招くため、非常に強い危機感を持って危険視されます。
しかし一方で、自然豊かな農山村の集落などでは、家がポツンと一軒空き家になったとしても、周囲の自然景観の中に自然と溶け込んでしまっているようなケースも珍しくありません。
そのため、地域住民自身もそこまで差し迫った強い危機感を抱いていないという地域が、実は非常に多いのです。
── 地域の人自身が、あまり問題だと思っていない場合もあるのですね。
田口教授:ええ、そうなのです。
ただ、それは問題がないという意味ではありません。地方に移住して暮らしたいと望んでいる都市部の希望者はたくさんいるのに、適切な状態で市場に出てこないために活用されていない。
つまり、地域を活性化させるためのチャンスを逃しているという意味で、非常に「もったいない資源」として放置されてしまっている状態なのです。
── なるほど、地域ごとの立地や特性によって、切実さの度合いや問題の現れ方が違うのですね。
田口教授:その通りです。地域特性による違いの最たる例を挙げれば、例えば密集した漁村集落などが分かりやすいでしょう。
漁村では家々が狭い路地を挟んで隙間なく密集して建てられているため、ひとたび大きな地震が発生した際に古い空き家が倒壊してしまうと、住民の唯一の避難路を完全に塞いでしまうという重大な危険性を孕んでいます。
このように、その土地の空間構造によって、空き家がもたらす問題の牙の剥き方は全く異なってくるのです。
空き家は放置すべき厄介者ではなく、本来は地域を救う重要な資源になりうる存在である
── 先生ご自身も、実際に地方の集落に身を置いて生活されているとのことですが。
田口教授:はい、そうです。私は現在、わずか10世帯ほどしか暮らしていない、非常に小さな農村部の集落で日々を過ごしています。
その地域にあった築90年の古民家を借り受け、リノベーションを施して実際に住んでいました。
── 築90年の古民家リノベーションですか。まさに先進的な取り組みですね。
田口教授:ええ、楽しんでやっていました。
ただ、ここで非常に考えさせられるリアルな経験をしたのです。
私がこだわり抜いて古い家を綺麗にリノベーションしたことで、その建物に見違えるような不動産価値や利用価値が生まれてしまいました。
そうすると、それまで何年も放置していた元の家主さんから、「そろそろ家を明け渡して出ていってほしい」と言われてしまったのです(笑)。
── ええっ、そんなことが起きてしまったのですか。せっかく苦労して綺麗にしたのに……。
田口教授:多少は想定しておりましたが、驚きました。これが人間の、そして地方のリアルな心理なのです。
それまではただのボロボロの空き家で、固定資産税だけがかかる厄介者として放置されていたのに、いざ他人の手によって魅力的な価値が吹き込まれると、急に惜しくなって手放したくなくなってしまう。
この経験から痛感したのは、家が完全にボロボロになって誰も住めなくなる前、つまり「空き家になった最初の段階」で、地域コミュニティや自治体に気軽に相談し、管理を委ねられる信頼の仕組みが絶対に不可欠だということです。
いきなり賃貸や売却の契約を結ぶのはハードルが高くても、「まずは地域の人に定期的な風通しだけをお願いする」といったように、小さな管理委託を通じて少しずつ関係性を紡いでいくアプローチが大切になります。
なぜなら、空き家というのは適切に扱われさえすれば、地域にとって重要かつ貴重な「資源」そのものなのですから。
移住促進政策が抱える課題
空き家の活用が進まない背景には、単なる物件の条件だけでなく、所有者の心理や地域との距離感が深く関係していることが分かりました。
ここからは、こうした地域生活の現実が、行政の推進する移住政策の中でどのように歪められて伝わっているのか、そのミスマッチに迫ります。
華やかな移住フェアでは隠されてしまう、地方暮らしの“現実”
── ここからは移住政策の課題について深く切り込んでいきたいと思います。
現在、多くの自治体が熱心に移住施策を行っていますが、先生はどのような部分に最も大きな課題を感じておられますか。
田口教授:現在、都市部で開催されている多くの移住フェアやPRイベントを見ていると、とにかく「自然が豊かで素晴らしい環境です」「空気が美味しく、水も綺麗です」といった、ポジティブで耳当たりの良い話ばかりが前面に押し出されて発信されています。
もちろんそれは嘘ではないのですが、実際の地方での日常生活には、先ほども申し上げたような毎週末の草刈りや、地域の消防団活動への参加といった、切っても切り離せない共同作業がセットでついて回ります。
例えば、夏の時期の雑草の成長スピードは凄まじく、必死に刈り上げても2週間も経てばまた元通りに青々と伸びてしまう。
農業にしても同じで、「家庭菜園の延長でのんびり自給自足」のような甘いイメージで始めようとすると、その周辺にある草刈りなどの手間に心が折れてしまうことも多々あります。
── 理想の田舎暮らしというイメージと、シビアな現実との間に大きなギャップがあるわけですね。
田口教授:まさにそのギャップこそが最大の罠なのです。
そして、こうした地方暮らしの切実な現実や生活のサイクルというものが、移住を呼びかける手前のPR段階で十分に伝わっていないことで、移住者が思わぬ壁にぶち当たってしまうことがよくあります。
移住とは地域社会との「結婚」である── お互いを知らない“ゼロ日婚”の危うさ
── 先生は移住を「結婚」に例えていますよね。
田口教授:はい。私は常々、地方への移住というのは、単なる引っ越しではなく「その土地の地域社会、そして住民コミュニティと移住希望者の“結婚”」のようなものであると説明しています。
結婚生活を始めるにあたっては、相手の長所だけでなく、短所や生活習慣の癖、家族関係なども含めて深く理解し、受け入れる覚悟が必要になりますよね。
しかし、現在の行政が主導している移住施策の多くは、お互いの深い内面やドメスティックなルールをほとんど知らないまま、いきなり同居生活を始めてしまう、いわば“ゼロ日婚”のような状態になってしまっているのです。
── “ゼロ日婚”ですか。そう考えれば確かに、後からトラブルが起きても不思議ではない危うさを含んでいますね。
田口教授:そうなんです。本来であれば、正式に籍を入れる前に、何度もデートを重ねて相手を見極める「交際期間」を設けるのが理想ですよね。
私自身の話を例に出しますと、私が徳島市の中心部から現在の村へと移住を決めた際には、実際に家を借りて住民票を移すまでに、あえて1年半という長いかけて、集落の皆さんとの相互理解の時間を取りました。
その準備期間の間、地域の住民が集まる寄り合いの席に混ぜてもらったり、集落の共同活動や草刈りに実際に参加させてもらったりしながら、地元の人たちとの関係を築いていったのです。
── 1年半もの交際期間を設けられたということですね。
田口教授:ええ。それだけ時間をかけてじっくりと付き合ってみることで、「この地域には一体どんな人が住んでいるのか」という、リアルな実態が肌感覚で見えてくるようになります。
このプロセスを経て納得した上で移住したからこそ、私はミスマッチを感じずにスムーズに地域に溶け込むことができたのです。
変わらなければならないのは移住者だけではない── 地域側が抱える古い体質
── 移住を成功させるためには、受け入れる側である「地域側」の意識改革や課題の解決も同様に求められるのでしょうか。
田口教授:それについては、おっしゃる通りで、移住者側だけの問題ではなく地域側の抱える課題も山積みです。
例えば、地方の古い集落などでは、未だに強固な「昭和的な価値観」や、絶対的な「年功序列」のルールが色濃く残っている地域が多々あります。
また、先ほども言ったように時間に対する感覚一つをとっても、都市部のビジネスライクな感覚とは全く異なっています。
── 都市部で培ってきた常識やスピード感が、地方では通用しない、あるいは煙たがられることもあると。
田口教授:通用しないどころか、衝突の原因になることもあります。
さらに象徴的なのが「プライバシーに対する感覚」の違いです。
地方では良くも悪くもプライベートの垣根が低く、他愛もない会話の中で、「昨日の帰りは遅かったね」とか「昨日どこどこにいたね」といった一見「監視されている?」とも捉えられそうな会話がなされることも時々あります。
これを「温かい絆」と捉えられるか、「プライバシーの侵害」と捉えてしまうかで受け止め方は180度変わります。
だからこそ、お互いがどのような価値観を持っているのかをじっくりと擦り合わせ、理解し合うための「お試し期間」が絶対に省けないのです。
この丁寧な相互理解のプロセスをすべてすっ飛ばして、行政の補助金や家賃の安さだけで安易に移住を成立させてしまうからこそ、「こんなはずではなかった」という悲劇的なミスマッチが後を絶たなくなってしまうのです。
これからの行政と仕組みに求められる新たな役割
移住を「結婚」に例えることで、事前の丁寧な対話がいかに重要であるかが明確になりました。
これからの地域づくりにおいて、行政は単なる仲介役にとどまらず、どのようなビジョンを持って動くべきなのか、具体的な施策の改善点について伺います。
「なぜ人を呼ぶのか」を考える必要がある
── お話を伺っていると、これまでの行政の画一的なアプローチでは限界があることがよく分かります。
今後、自治体や行政にはどのような役割へのシフトが求められるとお考えですか。
田口教授:再三にわたって強調したいのは、行政は単に「統計上の人口が減っているから、とにかく人を呼び込んで数字を埋めよう」という、数字合わせの発想から一刻も早く脱却しなければならないということです。
本当に考えなければならない根幹は、「私たちは、なぜこの地域に外から人を呼び寄せる必要があるのか」という、地域の未来に向けた明確な思想と目的の整理です。
そのためには、行政が独走するのではなく、現在そこに住んでいる地域住民の方々と議論を重ね、意識共有を図っていくプロセスが不可欠になります。
「5年後、10年後に向けて、自分たちは一体どんな地域を目指していきたいのか」、そして「そのビジョンを達成するために、どんな人に新しく来てほしいのか」というストーリーを、地域全体で丁寧に整理し共有しなければいけません。
しかし悲しいかな、そこまで時間と手間をかけて丁寧な土台作りを進めることができている自治体は、全国を見渡しても未だにほんの一握りであるというのが実情ではないでしょうか。
空き家バンクに不足している情報
── 移住希望者が家を探す際のプラットフォームとして、多くの自治体が「空き家バンク」を運営していますが、こちらのシステムについてはどのように見ていらっしゃいますか。
地方自治体が運営する、空き家の情報を登録・公開するシステム。 空き家を売りたい・貸したい所有者から提供された情報をウェブサイト等に掲載し、移住希望者などの利用希望者へ紹介する仲介の仕組み。
田口教授:現在の多くの空き家バンクが抱えている最大の弱点は、掲載されている中身が「築年数」「間取り」「賃料」といった、一般的な“不動産情報”にとどまっているという点です。
しかし、ここまでの話でお分かりいただける通り、地方移住を志す人々にとって、移住後に幸せに暮らせるかどうかを左右する本当に重要な情報は、建物のスペックなどではありません。
「その家がある集落には、一体どんな人たちが暮らしているのか」「どんなコミュニティが形成されているのか」という、人間関係や地域の空気感に関するソフト面の情報なわけです。
── 確かに、隣にどんな人が住んでいるのか分からないまま家を買ったり借りたりするのは、地方では特にリスクが高いですね。
田口教授:その通りです。移住者側に限らず、地域側にとっても「どんな移住者がやってくるのか」というのはある意味でリスクになります。ですから、空き家バンクのウェブサイトを眺めてネット上だけで完結させようとするのではなく、まずは目指す自治体の窓口へ直接足を運び、担当者を介して地域住民とリアルにつながりながらステップを進めていくことが極めて大事になります。
日本全国を見渡せば、「地方に移住して新しい生き方に挑戦したい」と本気で願っている熱意ある人々は、実際には今でもたくさん存在しているのです。
それにもかかわらず、地域側が心を閉ざしてしまっていたり、適切な仕組みがないために「実際に安心して住める状態の家」が市場に供給されず、結果として移住を断念せざるを得ないケースが頻発しています。
これは地域にとっても、移住希望者にとっても、本当にもったいないことであり、社会的な大損失だと感じています。
家を余らせている所有者へのアドバイス
── 最後に、親から実家を相続したものの、遠方に住んでいるためにどう活用すればいいか分からず、結果的に空き家として放置してしまっている所有者の方々に向けて、何か具体的なアドバイスをいただけますでしょうか。
田口教授:もし、そうした扱いに困っている空き家を所有されているのであれば、まずは悩む前に、その物件がある現地の自治体の「空き家対策窓口」や移住促進課などに直接相談を持ちかけてみてください。
最近では、毎年送られてくる固定資産税の納税通知書の封筒の中に、自治体が運営する空き家バンクへの登録案内や相談会のチラシが同封されているケースも非常に増えています。
いきなり見ず知らずの他人に家を売ったり貸したりすることに抵抗があるならば、まずは地域おこし協力隊や地域のキーマンと連携を取りながら、「定期的な建物の換気や風通しだけでも、地元の若い世代やNPOにお願いしてみる」というような、緩やかな管理の委託からスタートしてみるのも非常におすすめです。
都市部から過疎化が進む地方に住民票を移し、地域ブランドの開発や住民の生活支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る国の制度(総務省推進)およびその隊員のこと。
参照元:地域おこし協力隊~移住・地域活性化の仕事へのチャレンジを支援します!~|総務省
そうして地域との接点を少しずつ作り、信頼関係を構築していくことが、結果的に建物の長寿命化や将来の有効活用につながっていきます。
何度も言いますが、空き家は放置すれば地域の厄介者ですが、適切に開かれれば地域に活力をもたらす可能性のあるかけがえのない資源です。
移住を希望する人々の中には、単に消費活動をするだけでなく、地域住民の一員として寄り添い、一緒にこれからの暮らしを豊かに創っていきたいと願う素晴らしい人材がたくさんいます。
そうした人たちが「住める家がない」という物理的な理由だけで地域に入ることを拒まれてしまうのは、本当にもったいないことです。
ぜひ、皆さんの所有している資産を、地域の未来をつなぐ架け橋として活かす一歩を踏み出していただきたいですね。
まとめ
田口先生のお話は、メディアが喧伝する「スタイリッシュな地方移住」という幻想を心地よく打ち砕き、私たちに地方創生の本当のスタートラインを示してくれるものでした。
移住を「地域社会との結婚」と捉え、地道で泥臭い「交際期間」の重要性を説く先生の言葉には、ご自身も過疎集落に身を置き、地域自治の最前線で実践を続けてこられたからこその、圧倒的な説得力と重みが宿っています。
単に数字の上の人口を増やすための「ゼロ日婚」のような移住政策をいくら繰り返しても、その先に待っているのはお互いの不幸せなミスマッチでしかありません。
大切なのは、地域の光も影も、すなわち豊かな自然の恵みも草刈りの過酷さも、そのすべてを包み隠さず共有し合えるような、丁寧な関係性の構築です。
私たちがこれから地方のあり方を考えていく上で、目の前にある空き家という物理的な空間をどう再生するかだけでなく、その背後にある人と人とのつながり、すなわち「コミュニティの網の目」をどのように編み直していくべきなのか。
その本質的な問いを、深く突きつけられた大変有意義なインタビューとなりました。
田口先生、今回は地域のリアルが詰まった貴重なお話を本当にありがとうございました。
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