共有とは不動産を複数人で相続すること
共有とは、複数人が共同で何かを所有することです。
相続や共同購入など複数の所有者が共同で不動産を取得する場合がほとんどで、共同所有している不動産は共有不動産と呼ばれます。
不動産の共有でよく使われる言葉を簡単にまとめたのが下の表です。
共有者 | ひとつの不動産を共同で所有する複数人 |
共有名義 | 不動産の所有権を、共有するために出した金額や相続する比率に応じた割合で登記すること、もしくはその割合で共有している状態 |
共有持分 | 共有不動産の共有者ごとの所有権割合で、持分3分の1や1/3など分数で表すのが一般的、登記の際はこの分数を用いて法務局に登録 |
共有者の片方が死亡したら共有名義不動産を相続するのは誰?
共有持分に関する所有権を有しているのは、あくまでも該当の共有者です。
そのため共有者が死亡しても、もう一方の共有者が共有持分を相続することはできません。
共有持分を相続するのは、亡くなった共有者の相続人です。
したがって共有者が亡くなると、その相続人と不動産を共有名義で所有する形となります。
相続で不動産を共有名義にするデメリット
結果から言いますと、不動産を共有する、もしくは共有不動産の共有状態を解消しないのはデメリットしかありません。
相続だから公平に、一旦法定相続分で相続登記しようと考える方が多いのですが、共有にする前にまずは方向性を決めてから動くことをおすすめします。
相続で不動産を共有にするデメリットは下記の6つです。
・ 共有者の過半数の同意がないと貸せない
・ 共有者の1人が占有
・ 税金や管理費は共有者の持分割合に応じて負担
・ 共有者に相続が発生する度に共有持分が細分化する
・ 共有者が借金滞納したら自分の持分にも影響がある
共有者全員の同意がないと売却できない
共有不動産の売却は共有物の処分(変更)行為といって、共有者全員の不動産所有権を失うもしくは失う可能性がある行為は、共有者全員にとって多大な影響があるために、事前同意がないとできません。
ですから、共有不動産を一括で売却するには、共有者全員から事前に承諾をもらい、実印と印鑑証明書と契約に要する費用を用意してもらいます。
民法 第251条(共有物の変更)
第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
共有者の過半数の同意がないと貸せない
共有不動産の賃貸は共有物の管理行為といって、共有者のメリットのために共有不動産の利用や改良をおこなうことです。
賃貸すれば家賃が入るなどメリットがある反面、共有者がその不動産を利用できなくなるので、事前に過半数の同意がないとできないとしています。
ちなみに、短期賃貸借(建物は3年以内)の範囲内なら過半数の同意が要件です。
しかし、居住用として賃貸物件を借りた場合には、賃貸借契約の自動更新によって居住期間が3年を超えることは珍しくありません。
そのために、当初3年以内の賃貸借契約であっても共有者全員の同意を要件とする考え方もあります。
また、実際の賃貸借契約手続きや家賃収入の分配や不動産所得の納税などでも共有者全員に協力を仰ぎますので、共有者全員からの事前同意が望ましいでしょう。
民法 第252条(共有物の管理)
第二百五十二条 共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。
引用元:e-Govポータル「民法第二百五十二条」
共有者の1人が占有
もしも、共有不動産を共有者のひとりが使用していたとして、他の共有者からの無償使用の同意がなければ、使用者へ家賃の請求や明け渡しが認められても良いはずです。
しかし、明渡請求に関する過去の判例では、共有者の過半数をもってしても共有不動産を単独で使用する共有者に対する明け渡しを、当然のようには請求できないとしています。
共有者が信用できる身内だからといっても、一旦お金や使用に関して揉めごとが起きてしまうと、簡単には解決できないのです。
税金や管理費は共有者の持分割合に応じて負担
共有不動産の管理費用は、共有者の持分比率に応じて按分して全員で共同して負担するとされています。
たとえば、共有不動産である実家建物に住む長男から、家の石垣や崖が徐々に沈下しているので費用を出してほしいと言われた場合に、住んでいないからといって簡単に出費を断れません。
なぜなら、その石垣と崖が崩落して家が半壊以上のダメージを受ければ、家の不動産価値が大きく損なわれるという視点では、石垣と崖の補修は家の価値を守る保存行為といえるからです。
共有者に相続が発生する度に共有持分が細分化する
共有者のひとりが亡くなると、その相続人は亡くなった方の共有持分を相続しますので、相続が数次に発生(数次相続)するたびに、共有人数がどんどん増えていきます。
また、高齢の方よりも先にその子供(相続予定者)が亡くなった場合には、孫(亡くなった者の子)が亡くなった子の一切を相続(代襲相続)します。
このように、数次相続や代襲相続、そして養子縁組でも相続人の関係が複雑になり数が増えていきます。
ですので、相続人が15人いて持分が1/50のような大人数の相続登記なども、決して珍しくないのです。
ですから、できる限り当事者が少なくて関係が簡単なうちに手続きを終えたいものです。
共有者が借金滞納したら自分の持分にも影響がある
共有者の借金返済が滞り財産を差し押さえられる場合には、共有不動産全体が対象になるのではなく、その者が持っている所有権の共有持分のみが対象です。
ですから、差押後の強制競売も所有権の共有持分が売られるだけで、不動産全体は競売されません。
しかし、共有する持分の一部が競売となると、自分の持分も相場価格を維持でき無くなる可能性が高まります。
さらに、今後はその持分を競売で落札した見知らぬ第三者とともに、その不動産を共同所有していくことになり、不動産の活用方針や費用負担の交渉なども、その第三者と話し合っていかなければならないのです。
令和6年4月1日より相続登記が義務化される
前述したとおり、共有不動産をめぐる数次相続や代襲相続によって、相続関係が複雑になってもなお相続登記がなされず放置され、相続関係の究明や資料集めが難航している現状があります。
また、土地の売却や担保設定は相続登記が終わらなければできませんし、国や自治体の用地買収や防災対策も、山林原野の所有者が分からなければ計画が進められません。
それらを受けて、以前からあった相続登記義務化を望む声が次第に大きくなったのです。
相続登記の義務化は令和6年4月1日からはじまりますが、過去の権利関係をすべて明らかにする主旨から、それ以前の過去の登記もすべてが対象です。
違反者の罰則は10万円以下の過料ですが、通常の相続登記よりも簡便な「相続人申告登記」で手軽に義務を果たせる手続きが創設されました。
また、所有者の生年月日を法務局に記録しておき、定期的に法務局側で住基ネットと照合して生存確認をするチェック機構も予定されています。
相続で不動産を共有名義にしないための対策をパターン別に完全網羅
共有不動産として相続登記をするまえに、できる限り以下のパターンに応じた対策を講じてみましょう。
生前に可能な対策
不動産の共有者が高齢者なら特に、生存していて意識が確かなうちに早めに事実の究明と対策に動きましょう。
目指す理想の状態は、不動産を共有しないことと不要な不動産を洗い出して処分することです。
生前に可能な対策は下記の2つです。
現状が単独所有なら
不動産が単独所有なら、一般的な売却ができますので、簡単な手続きで相場並みの価格で売却できます。
単独所有の不動産であっても相続を経て共有になると一気に活用しづらく売りづらくなりますので、その不動産を子供らが相続していくべきかどうか検討して、不要なら早めに処分して身軽になると良いでしょう。
不動産がお金に変わったということは、相続時には分けやすい資産に変わるとともに次世代への課題を解消できたということなのです。
すでに共有状態なら
共有者と話し合って一括売却で協力できるなら、この機会に売却して現金化しましょう。
共有とはいえ全員が協力して契約するだけなので、単独所有の売却と変わりなく手続きは簡単です。
しかし、共有者のひとりがその不動産を単独所有したい場合には、他の共有者の持分をひとりに集めなくてはなりません。
相応の対価で共有者に売却するか、その折衝が面倒なら共有持分を買取ってくれる不動産会社へ売却するかのいずれかです。
いずれにせよ、共有や相続に関する専門的なことは、司法書士に相談しながら決めるようにしましょう。
相続発生後の対策
被相続人(故人)が生前に何の対策もしていなかった場合でも、相続発生直後の遺産分割協議で安易に共有名義にしないように対策を講じましょう。
相続発生後の対策は下記の5つです。
・ 不動産を1人が相続しそれ以外の財産を他の相続人に分配(現物分割)
・ 不動産を1人が相続し他の相続人に代償金を支払う(代償分割)
・ 自分の共有持分のみを放棄
・ 自分の共有持分のみを売却
不動産を売却して現金を分ける(換価分割)
相続から遺産分割協議が整うまでは、相続不動産は法定相続割合で共同相続したものとみなされます。
そして、共同相続人全員で不動産を売却して得たお金を、相続割合に応じて分配します。
この時のお金の配分が法定相続割合と異なる場合には、事前に遺産分割協議で相続割合を決めておかないと、法定相続割合以上のお金をもらったとして贈与税の対象になる可能性がありますのでご注意ください。
これは、不要な不動産を処分して全員で合意した割合にお金をきれいに分けられるので、もっとも望ましい選択のひとつです。
遺産分割協議書の作成や不動産の売却がありますので、司法書士に相談して得た方針に従って不動産会社に売却を依頼しましょう。
不動産を1人が相続しそれ以外の財産を他の相続人に分配(現物分割)
現物分割とは、不動産や金融資産など複数の資産を、時価換算した額が相続割合と等しくなるように調整して物理的に分けることで、不動産以外にも相続資産がある場合に有効な方法です。
その不動産が土地の場合は、分筆して分けることも現物分割の一種です。
このとき、相続割合と分けられた財産の時価総額による割合が合わない場合は、その差を埋めるためにお金のやりとりで精算することもあります。
特定の不動産を特定の者に相続させる合意を遺産分割協議書で示す必要があるため、司法書士に相談しましょう。
この現物分割も、不動産の共有を解消する効果的な方法であり、望ましい選択のひとつといえます。
不動産を1人が相続し他の相続人に代償金を支払う(代償分割)
代償分割とは、相続不動産を単独で所有したい者が、その者以外の共有持分の代償金を払ってすべて買取る方法です。
不動産以外に相続財産がないときに検討する方法ですが、その不動産を所有したい者が一人だけしかいないなら、他の相続人の共有持分買取りはスムーズにいくでしょう。
不動産を単独で相続させる合意を遺産分割協議書で示す必要があるため、司法書士に相談してください。
この代償分割は、自分以外の者の持分を買取りますので、資力によっては叶わない場合もありますが、この代償分割も不動産の共有を解消する効果的な方法であり、望ましい選択のひとつといえます。
自分の共有持分のみを放棄
共有持分の放棄は単独の意思表示だけで有効です。しかし放棄の意向が他の共有者に伝わっただけで、不動産の所有権や管理義務が移転したわけではありません。
また、固定資産税の納付義務は自治体が定める基準日時点での登記上の所有者に課されるため、登記名義を変更していなければ引き続き請求されることになります。
つまり、全員が協力して行う所有権移転登記手続きを完了させなければ、共有持分放棄の事実を第三者に主張することはできないのです。
ちなみに、相続不動産の共有持分放棄によって、その持分が相続割合に応じて他の共有者に分配されますが、相続放棄により持分を得たとしてもそこに贈与税は課税されません。
とくに、承諾を得ない勝手な放棄は、管理義務や管理コストを押し付けて親族間の関係悪化を招くだけですので、まったくおすすめできない方法です。
自分の共有持分のみを売却
自分の共有持分だけを売却するなら他の共有者の同意は要りません。
もしも、上記のいずれの方法も実現できない場合に、それでも共有を解消するには、持分を売却して共有メンバーから抜けるしか方法はないのです。
このように、処分が難しい共有不動産を持分買取専門の不動産会社が買取れば、売主買主が直接取引しますので仲介手数料は要りません。
また、所有権持分移転登記も自分と買取不動産会社の2者のみで行いますので、他の共有者の協力は必要ありません。
買取価格は相場よりも安い金額にはなりますが、長期間かけて何度も共有者間でやりとりし、場合によっては仲介手数料、最悪の場合には訴訟費用を負担するかも知れないことを考えると、安全で迅速に共有解消と現金化ができるのは本当に楽なのです。
すでに共有名義で相続してしまった場合の対策
すでに共同相続として登記が完了してしまった場合の対策は下記の5つです。
共有者全員で協力して不動産全体を売却
すでに共有関係であっても全員が売却する意向なら、全員で協力して不動産全体を売却すれば良いので、特に難しい問題はありません。気をつけるとすれば、いくらなら売るかという金額の折り合いくらいです。
基本的には、立地条件のよい不動産ほど高く売れる傾向にあります。
マイホームを購入する方の多くは、立地のよい不動産をほしいと考えているためです。
少しでも高く売れてほしいところですが、売却が中止になり共有に戻ったときの損失のほうが甚大だと考えて、少々金額に不満でも売却の流れをとめないようにしましょう。
共有者の中で代表を決めその方へ書類を集めて、その方メインで不動産会社との対応や登記手続きをするとスムーズに進みます。
共有者間で売買
共有者の中で不動産を所有し続けたい方がいれば、その方が他の方の持分を買うか、遺産分割協議で単独所有の合意をするかです。
親亡き後もこのまま実家に住み続けたい長男が、その家を単独で所有するために兄弟と話し合うような場合に該当します。
持分の購入か遺産分割協議ですが、いずれも司法書士に相談しながら進めるようにしましょう。
価格の折り合いや資金計画が難航して即時の解決が難しい場合には、持分買取の不動産会社を経由する方法をご検討ください。
共有物分割請求
共有物分割請求は、共有者が分割に応じないときに法的拘束力のある方法で現状を打開する手段です。
しかし、結果から言えばこの訴訟手続は最終手段にすべきで、その理由は以下の4つです。
・ 多くの資料をそろえて弁護士や鑑定士に有償で依頼
・ 競売で売却すれば価格が大きく下がる
・ 訴訟手続によって親族関係が悪化する
早く簡単に現金化したいのに、多くの場合はその逆になってしまうのです。
もしも、それでもその手段を取るなら弁護士に相談すべきでしょう。
持分放棄
共有持分の放棄は自分の意思だけでできるものの、その後の所有権移転登記では全員の協力がないとできませんので、結局は事前同意と協力を受けるしかありません。
また放棄する共有部分の管理義務や管理費用、そして固定資産税の納税義務も分配された人へ移転しますし、分配された財産は放棄者から他の共有者へ贈与されたものとみなし、贈与税の課税対象になりますので、他の共有者へ事前の説明が必要でしょう。
そもそも所有権を放棄するわけですから現金化はできず、登記費用だけかかって特にメリットは望めませんので、一度司法書士に相談して専門家の意見を伺ってみましょう。
また、このような場合なら持分買取の専門会社へ相談して、スピーディーに現金化できる買取を検討するのも良いかもしれません。
自身の持分のみ売却
共有持分の売却なら、他の共有者の同意は不要です。
また仲介手数料や共有者の移転登記協力も必要ありませんので、他の方と売却の合意がなくても、自分の費用と責任の範囲内で最も安全かつスピーディーに現金化できます。
それぞれの資金的な事情や価値観が違う中で、皆と歩調を合わせていろんなことを決めていくのは、想像以上に大変で面倒なのです。
この先の未来に待つそんな面倒を、この時点で解消することにメリットを感じるなら、持分の買取は最も良い選択肢になるでしょう。
各相談先ごとの選び方
状況に応じて相談する先がいくつかありますが、以下のような点に注意してください。
一般の不動産仲介業者の選び方3選
不動仲介業者の良し悪しは販売力の差ですが、その簡単な見極め方とは何でしょうか。
有名大手で歴史がありネットにたくさん広告があるからといって安心とは言えません。
ここからは、知っておきたい不動産仲介業者の選び方3選をご紹介します。
複数社と話してみて戦略を比較
売却で大切なのは、取引事例、競合物件、売出時期、物件のコンディションを見極めて、適切な戦略が臨機応変にできているかどうかです。
売却査定額を高く付けてくれたからといって、高額で売る力があるものと簡単に信じて、その仲介業者にすべて任せてしまうのは危険です。
初めは高値から売り出してもよいのですが、相場とかけ離れすぎて反応が悪いなら早い決断で思い切った変化が求められます。
取引事例、競合物件、売出時期、物件のコンディションから、適切な分析ができているかどうか、担当者の分析を裏付ける根拠と経験からくる自信が、成果に大きく影響するのです。
得意分野を見極める
仲介業者や仲介担当者にはそれぞれ得意分野があるものです。
例えば、この沿線で4,000万円前後の新築戸建て成約事例が多いとか、この学校区で2,500万円前後の土地情報に詳しいとか、仲介業者や仲介担当にとって、その売却する物件が得意かどうかで成約スピードは変わります。
そして、普段からその分野が得意なら、仲介業者も仲介担当者もそのターゲットの顧客を常にたくさん抱えているはずです。
査定報告書でその辺りの事情が詳しく深堀りされていて、質問に理論的に即答できるなら得意と見て良いでしょう。
担当者の能力が販売の良し悪しを決める
今は売却時にはどの物件もネットに掲載しますので、大手や中小など仲介業者の規模による情報スピードに差はなくなりました。
しかし、依然として変わらないのは担当者が物件と人を仲介してつなぐということです。
そして、宅建士資格の保有が必ずしも良い担当者の条件ではありませんが、知識が豊富なのは基本ですし、周辺取引事例、ローン、税制、リフォーム知識は、仲介経験と同じくらい重要です。
また、戦略や方針や対応策にポリシーを感じるのは、経験や理論や根拠に自信があるからです。
つまり、質問には間髪入れず、適切で分かりやすい情報量を、わかり易い言葉で説明してくれる。さらに、見た目に清潔感があり、レスポンスが早く、気遣いができて、話すリズムが心地よいなら、それは売れる担当者です。
司法書士の選び方3選
司法書士は、法的手続きを常に安定して正確に実行する能力に長けた町の法律家です。
ここからは、知っておきたい司法書士の選び方3選をご紹介します。
話をしっかり聞いてくれる
まず顧客がどうしたいのか希望を聞き出して、補足として伺った内容を踏まえたうえで、その顧客の意向をできるだけ叶えるための提案がほしいものです。
そして、将来の懸念や判断基準を明確に提示して、あくまで強制や誘導をしない範囲で、いくつかの選択肢を選べるようにしてくれる方が良いでしょう。
どうしても、効率的で最良の方法としてひとつの道を提案しがちですが、あくまで親族間の関係性が深く関わる共有関係ですので、できるなら波風立てず慎重に行きたいはずです。
かといって複雑で面倒な共有関係はこれを機に解消すべきだと信じて、うまく事を運んでくれる人間力のある方を見極めましょう。
必要なものだけ簡潔な説明
顧客は安全に手続ができればよく、実務以上の余計な知識の取得は望んでいません。
できる限り簡潔な情報を、必要なタイミングに簡単な言葉で、論理的に分かりやすく説明できる方が望ましいです。
よくありがちなのは、一度に大量の情報を大量の書類とともに渡されるケースですが、次のアクションに必要な情報だけを小分けに提示してくれる方が説明上手といえます。
例えば、今回は相続登記に使う住民票1通と遺産分割協議書につける印鑑証明書1通と実印、それに印紙代と報酬でおのおの5万円を現金で用意してください。という簡潔な感じです。
司法書士のサイトや名刺や挨拶文などを見れば、簡潔なのか回りくどいのか傾向がつかめますので、参考にしてみましょう。
周辺知識も勉強している
司法書士業務は不動産取引や訴訟や税務など多くの分野が交錯するジャンルの業務です。
しかも顧客は知識の乏しい素人なので何でも司法書士に質問しますが、そんなときに専門外だからといって断られると、顧客は萎縮してしまい質問できなくなります。
そうではなく、できるだけ不安を取り除けるように大まかなことを伝えて、これから起こることの輪郭を少しだけでも理解させてくれる方が丁寧だと言えます。
専門分野だけでなく周辺知識の習得にも貪欲で、不安の解消や理解度の確認をする配慮のある方が安心です。
弁護士の選び方3選
これから起こるかも知れない争いの火種を事前に知って対策する場合や、すでに対立している関係の決着を付けるのが、法律のスペシャリストである弁護士です。
ここからは、知っておきたい弁護士の選び方3選をご紹介します。
専門性、知識と経験
人間の活動のすべてが訴訟に絡むといっても過言ではないほど、訴訟業務は果てしなく幅広いといえます。
なぜなら、双方の意見が食い違えば争いに発展し、どんなことでも訴訟の可能性があるために、弁護士がカバーする分野に限度はないのです。
多くの決着は判例や通達など、判断の多くが前例主義であるため、過去の事例に詳しく有利な証拠をそろえられる方が凄腕弁護士と言われるのです。
ただし、不動産の相続や共有などは家事事件がメインなので、白黒や勝敗を付けるというよりは、示談や合意などで解決を図ることが多くなります。
相続や共有の案件を数多く経験した方にお願いするのが最善ですから、過去に携わった事例や考え方を聞いておくようにしましょう。
説明が分かりやすい
言葉で戦う弁護士にとって、相手に分かりやすく効果的に伝えるスキルはその方の力量を表します。
こちらの言い分を丁寧な物腰ではっきり主張する高いスキルも求められます。
これは、相談者ご自身が弁護士との会話を分かりやすく説明上手だと感じたかどうか、自分の感想がとても役に立ちます。
また、状況に対する適切な回答や今後の方針の策定は、じっくりと状況やご意向を聞き取るところから始まります。
状況を正確に把握しないと、その状況にピッタリ合ったオーダーメイドの対策はできません。聞く力、分析力、質問力の高さが求められるのは、不動産会社も司法書士も弁護士も同じでしょう。
人柄と考え方や方針
弁護士は、人と人との間に入っての仲裁や、人間関係を悪化させない、壊れかけた人間関係を修復する役回りが多くなります。
当然に、相手の主張を汲み取って、事案の内容や関係性や性格などを考慮しながら、良き相談相手という立ち位置でいる姿が求められます。
相性が合うか合わないかはとても大切ですし、これから長くお付き合いするかも知れませんので、信頼できるかどうかは感じたままの自分の感覚を信じて決めるのが良いでしょう。
共有持分専門の不動産買取業者の選び方3選
共有持分専門に扱う不動産買取業者の選び方で、スムーズに現金化できるかどうかが変わります。
良い業者を見つけるにはどこの何を見ればよいのでしょうか。
ここからは、知っておきたい不動産買取業者の選び方3選をご紹介します。
知識や経験が多い
買取業者は、少々こじれた親族間の共有関係に入っていくのが通常ですから、厳しいことをいわれても、冷静に対応しなければなりません。やはり知識と経験の量に勝るものはありません。
それに、担当者に専門知識があり相場に詳しいなら、採算が合うギリギリの買取限度額が分かるので、高値で買取ってくれる可能性も上がります。
また、取扱う不動産に関して関連する、民法、不動産登記法、税法、宅建業法など、共有持分の買取に関係する法令は数多く、それぞれが日々更新されていきますので、新たなルールをアプデートして法令を遵守する、誠実な買取業者に出会いたいものです。
そんな担当者の知識や経験量を確かめる基準のひとつに、質問の正確さを見る方法があります。
それは、状況に応じて解決策を絞り込んでいくために、担当者の頭の中に的確な質問が瞬時にひらめいているかどうか、また担当が投げかける質問とそれに対する回答を聞いた時の反応を見れば分かります。
くわえて、
・ 必要な手続きの詳細
・ 現金化までに要する期間
・ 用意する費用の額
・ 手取となる金額
などの提示が明確であるか?
それらに、確かな根拠が示せるかどうか、そんなやり取りの中からも潔白さを推し量るようにしましょう。
ネットのランキングや口コミを参照
このご時世は、会社の信頼性やサービス内容や対応の良し悪しなど、ネット記事や口コミが大いに参考になります。
共有持分の買取業者は、ただでさえ自ら利用する機会がなく、周囲で利用した方がいたとしても親族間の不動産のことですから、紹介も口コミもありません。
ただでさえ関わりがなくイメージもしづらいサービスですから、情報はインターネットだけが頼りです。
しかし、調べてみると情報は意外に多く、買取額は思ったよりも高かったとか、査定が安くて断ったとか、現金化のスピードやトラブルへの対処なども、ネットを調べれば出てきます。
共有不動産がある地域でも検索して、力を入れて取り組んでいる案件や得意分野や買取実績などを誠実に掲載している買取業者のサイトや、いくつかの口コミサイトを比較して調べてみましょう。
担当の人間力が成否を分ける
耳触りの良いことばかりを強調するのではなく、言いにくいことやデメリットこそ正確に伝えるのが誠実さです。
ここは一般の仲介不動産会社の選び方にもありますが、やたら査定金額の高さをアピールしているがその根拠は乏しく、もし他の対応にも不安を感じるなら、その買取業者はやめておきましょう。査定金額が安すぎる場合も同様です。
各業界の専門家と連携できる会社かどうかも大切です。一刻を争う手続きが必要な場合や、共有関係がこじれて難航している場合には専門家が前面に出る必要に迫られます。
そんなときでも、専門家が集まった解決チームを抱えている買取会社ですと、解決が確実で早くなり安心です。会社にそのような体制があるのか確認しましょう。
買取業者は、ただ単に共有持分を買取るだけではなく、解決するために動く人なのです。
人対人の間でバランスを取りながら調整していく仕事ですから、共有者との交渉が避けられないので、人当たりや物腰や誠実さなどが最も大切な仕事ではないでしょうか。
ご紹介したいずれの場合も、良いパートナーを見つけるために、すべてにおいて有効な方法は紹介です。
紹介は自分の顔でしますので、紹介先に迷惑をかけそうな悪い人は絶対におすすめしないうえに探す手間が省けるので、満足度の高い相手に出会える可能性は非常に高い傾向です。
相続登記の流れ
相続登記で必要な手続きは、相続人と相続割合を確定させる証拠集めが多くを占めます。
相続の流れは下記の5つです。
相続人の人数を確認する
被相続人(亡くなった方)の出生まで遡れる連続した戸籍を、本籍地が移っていったすべての自治体へ取り寄せます。
被相続人の子供を確定させるためですが、本籍地が移ったことがある自治体の役所へ請求していき、出生によってはじめてできた戸籍まで遡って集めます。
もしも何らかの事情で出生までの戸籍が集められなくても、少なくとも10歳前後までは遡って添付しなければなりません。
遺言書の有り無しを確認する
遺言書があればその場で開封せずに、封をしたままで家庭裁判所へ持ち込んで検認の手続きをします。
検認とは、遺言書の偽造や変造を防止するために家庭裁判所が遺言書の状態や内容を確認する手続きで、この遺言の執行には家庭裁判所の検認済証明書を添付して行います。
名寄帳から不動産財産を確認する
名寄帳とは、所有している不動産が載っている一覧表で、不動産の所在を管轄する自治体ごとに作られています。
同じ記載内容として、毎年4月から6月に所有者宛に送られてくる固定資産税納税通知書に同梱される課税明細書とも内容は似ていますが、名寄帳には非課税の不動産も記載されています。
遺産分割協議をおこなう
この財産は誰がどの割合で相続するのかが書かれた書類が遺産分割協議書です。その巻末には相続人全員の署名と実印押印、そこに印鑑証明書を添付した合意書となります。
これで相続人と相続割合を証明できますが、相続人が1人でも欠けた遺産分割協議書は無効であり、相続人に未成年がいればその法定代理人も参加します。
未成年者と共有する不動産の売却方法を解説!上手な相続登記の仕方もご紹介
登記簿の名義変更手続きをおこなう
相続を原因とする所有権移転登記を、相続不動産の所在を管轄する法務局へ提出します。
不動産が点在すれば、登記申請がいくつかの法務局に渡ることも珍しくありません。
登記申請の際には、登記申請書に登記印紙を貼付して、登録免許税を納税します。
相続税の計算方法
相続税の計算方法は、すべての相続財産の価額から非課税財産や債務や経費を引いたものが相続税の課税価格、そこから相続人数に応じて決まる基礎控除額を引いたものが課税遺産総額です。
相続税は、相続財産総額から非課税財産や経費や基礎控除を引いた課税遺産総額を、遺産分割協議書の指示に従って相続人ごとに振り分け、相続税率を掛けて相続人ごとに計算します。
相続税の計算式
相続税額を求める基本的な計算式は以下のとおりです。
相続税額 = 課税遺産総額 x 税率
税率及び控除額は以下の速算表のとおりです。
相続税の速算表
相続分に応じた取得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | – |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
路線価の調べ方
路線価とは、不動産の相続税額を計算する際に使う評価額で、不動産流通価格の約70%とされます。
誰でもインターネットで国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」を閲覧して調べることができます。
固定資産税評価額の調べ方
固定資産税評価額とは、所有権移転登記の登録免許税額を計算する際に使う評価額で、不動産流通価格の約60%とされます。
以下の3つの方法で調べることができます。
・ 毎年春に郵送で届く固定資産税の納税通知書に同梱される課税明細書をみる
・ 不動産を管轄する自治体の役所で固定資産税課税台帳を閲覧する
・ 不動産を管轄する自治体の役所で固定資産税評価証明書を有償で入手する
相続税の基礎控除
相続税の課税価格から控除する額で、相続人数によって異なります。
遺産に係る基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 x 法定相続人
相続税の具体例
以下の条件で相続税額の計算シミュレーションを行います。
不動産(路線価額):1,500万円
葬儀 + 借金:500万円 + 0円
金融資産(株式):3,000万円
生命保険:2,000万円
相続税は、相続財産のすべてに課税されるのではなく、相続財産総額から生命保険の非課税枠と経費を引いた残額である相続税の課税価格に対して税率を掛けて計算します。
・相続財産総額 = 不動産1,500万円 + 金融資産3,000万円 + 生命保険2,000万円
= 6,500万円
・生命保険の非課税枠 = 500万円 x 法定相続人2人 = 1,000万円
・経費 = 葬儀500万円
したがって、
・相続税の課税価格 = 相続財産総額6,500万円 – 生命保険の非課税枠1,000万円 – 経費500万円
= 5,000万円
次に、この相続税の課税価格から相続人数などで変動する基礎控除額を引いたものが、課税遺産総額になります。
・基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 x 法定相続人2人
= 4,200万円
・課税遺産総額 = 相続税の課税価格5,000万円 – 基礎控除額4,200万円
= 800万円
2人の兄弟それぞれの課税遺産総額は1/2の400万円となり、速算表から相続税率10%、控除額0円
・相続税額 = 400万円 x 10% = 40万円 と計算できました。
まとめ
法定相続割合で公平に分配すれば丸く収まるだろうと配慮したつもりが、活用しづらい状況や煩雑な手続も一緒に相続人全員へ分配していることになるのです。
おすすめする状況として挙げたいくつかの方法は、早期に共有状態を解消する方針で共有者が団結する行動です。
そのために移転費用や贈与税がかかったとしても、将来の懸念がなくなるほうが、その先へも面倒を繰り延べなくて済み、子や孫にとっても最良の策なのです。
状況や分野により、税理士、司法書士、土地家屋調査士、弁護士などの専門家、そして買取専門の不動産会社をうまく利用して、将来の不安を少しでも早く解消するために即時に行動することをおすすめします。