不動産を相続する7つの流れ【手続き方法まで解説】
不動産の相続は、以下7つの流れで手続きが進んでいきます。
上記の流れに沿って、相続の手続き方法から費用の計算方法まで網羅して解説していきます。
ただ、相続の手続きはとても複雑で、知識のない者が行うとトラブルに発展する可能性もあります。ですから、相続を行う際は、弁護士や司法書士、税理士といった専門家へ最初に相談することをおすすめいたします。
遺言書を確認する
まずは、被相続人(故人)によって「遺言書が残されているかどうか」を確認します。
遺言書とは、財産を所有する人が自分の死後に財産をどう分けるのかの意思を示したものおよび書面のことです。
参照元:遺言執行制度と遺言執行者の義務について行政書士が解説
財産の分割方法を決める際は「遺産分割協議の内容」よりも「遺言書の内容」が優先されます。ですから、遺産分割協議が終わった後で遺言書が見つかった場合、協議を一からやり直しになる可能性があります。
相続人全員で遺産の分割方法を話し合う手続きのこと。
遺言書の種類は以下のように3つあり、どの遺言書に当たるかで調査方法が少しずつ変わってきます。
上記3つに遺言書の調査方法について詳しく解説していきます。
ただ、前述したように、弁護士や司法書士に依頼すれば遺言書の調査を代行してくれます。よって、あなたが遺言書の調査方法をすべてを把握しておく必要はありませんので、ご安心ください。
自筆証書遺言
「自筆証書遺言」とは、相続内容がすべて被相続人の自筆(手書き)で書かれた遺言書のことです。
自筆証書遺言の例
引用元:福岡相続手続き相談センター
自筆証書遺言が保管されている場所は、主に以下の4つが考えられます。
- 自宅の遺品の中に保管している
- 親族の一人が預かっている
- 懇意にしている弁護士が預かっている
- 法務局に保管している
ですから、まずは法務局以外の3つの保管場所を確認してみてください。
3つの保管場所になければ、法務局に遺言書を保管している可能性があるので、法務局の遺言書保管所に訪問し、遺言書情報証明書の交付申請を行ってください。申請に必要な書類は以下の通りです。
- 被相続人の死亡事実の記載がある戸籍
- 請求人が相続人であることを確認できる戸籍
- 請求人(相続人)の住民票
- 請求人の本人確認書類
なお、「自宅」に遺言書があった場合は、遺言書を家庭裁判所に提出して、「検認」を請求しなければなりません。
検認とは、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。
参照元:裁判所「遺言書の検認」
簡単に言うと、その遺言書が「正規の遺言書」であると家庭裁判所に認可してもらうための手続きです。
相続人が検認を受けていない遺言書を開けてしまうと、5万円以下の過料(罰金)を受ける可能性がありますので、遺言書を見つけてもすぐに開けないように注意が必要です。
被相続人から生前に遺言書の話はなかったとしても、被相続人があなたの知らぬ間に遺言書を書いている可能性もあるので、必ず自宅や法務局に遺言書の有無を確認しておくべきです。
公正証書遺言
「公正証書遺言」とは、被相続人が生前に「公証人」を通して作成した遺言書のことです。
公正証書遺言の例
引用元:翼法律事務所
被相続人が生前に口頭で話した相続内容を公証人が聞き取りしながら書き記した形式の遺言書なので、「正規な遺言書」として効力を発揮します。よって、家庭裁判所による検認は必要ありません。
公正証書遺言が存在するかどうか調べるには、まずは近くの公証役場に訪問し、「公正証書遺言の有無」や「実際に遺言書を保管している公証役場の場所」を担当者に検索してもらいます。(検索は無料です)
公正証書遺言が見つかった場合は、実際に遺言書を保管している公証役場に訪問し、以下の必要書類を提出して遺言書の謄本を受け取ります。
- 被相続人の死亡事実の記載がある戸籍
- 請求人が相続人であることを確認できる戸籍
- 請求人の本人確認書類
公正証書遺言についても、あなたの知らぬ間に被相続人が遺言書を作成している可能性もあるので、前述した法務局への確認と合わせて、公証役場にも確認しておいてください。
秘密証書遺言
「秘密証書遺言」とは、相続内容を被相続人が亡くなるまで秘密にしたまま、公証役場の公証人に遺言書の存在のみ証明してもらう遺言書のことです。
秘密証書遺言の例
引用元:オクルトキ「秘密証書遺言の検認」
秘密証書遺言を選択すれば、公証役場が遺言書の存在を証明してくれるので、相続人の一人が偽の遺言書を持ち出してくるといった遺言書の偽装や変造を防ぐことができます。
被相続人に「自分が死ぬまで遺言書の内容を誰にも知られたくない。でも、遺言書に効力は持たせたい」という意向が強い場合は、この秘密証書遺言を選ぶ傾向があります。ですから、保管場所も公証役場ではなく、誰にも見つからないように自宅に保管しているケースがほとんどです。
遺言書の内容を公証人もわからないということは、遺言書が法律で認められた方式で記載されているかどうかもわからないので、秘密証書遺言は家庭裁判所による検認を受ける必要があります。
秘密証書遺言も自筆証書遺言と同様に、検認を受ける前に開けてしまうと5万円以下の過料を受ける可能性があるので、秘密証書遺言を確認できてもすぐに開けないように注意してください。
財産を確定させる
遺言書の有無を確認したら、相続の対象となるすべての財産を確定させます。
被相続人の財産を洗い出し、「プラスの財産(現金、不動産、貴金属など)」と「マイナスの財産(借金など)」を把握して、以下のように「どの財産を相続の対象とするか」を決める必要があるからです。
- 単純承認
- プラスの財産もマイナスの財産もすべて相続すること。
- 相続放棄
- プラスの財産もマイナスの財産もすべて相続しないこと。
- 限定承認
- プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続すること。(マイナスの財産がプラスの財産より多い場合に有効)
被相続人の財産をすべて調べるには、まずは被相続人が遺言書と合わせて「財産目録」を作成していないかを確認します。作成していれば、あなた(相続人)が財産を把握する必要はありません。
財産目録の例
もし、財産目録がない場合は、相続人が被相続人の財産を全て洗い出して把握する必要がありますが、財産を洗い出す方法は、例えば以下の5つが挙げられます。
- 通帳、キャッシュカードなどを調べて「預貯金」の金額を把握する
- 通帳の引き落としや償還予定表などから「負債」を把握する
- 証券口座や保険証券などを調べて「金融資産」の金額を把握する
- 固定資産税課税明細書を調べて、保有していた「不動産」の有無を確認する
- 自宅や金融機関の貸金庫を調べて「貴金属」の有無を確認する
財産を洗い出し、財産目録を作成する際は、主に以下の3つが一覧で記載されていることがポイントです。
- 財産の種類(預金、不動産、証券等)
- 金額
- 保管場所
ですが、財産の洗い出しから財産目録の作成についても、弁護士や司法書士に依頼すればあなた(相続人)の代わりに作成してくれます。
「財産の確定」は、お金の絡む話となり、評価方法などを巡って相続人同士で揉める可能性があるので、弁護士や司法書士のサポートを受けながら進めるのが賢明です。
ちなみに、不動産の場合は不動産業者の査定を受けて金額を評価することになります。査定を行えば、不動産のプロによる査定で時価がわかるので、相続人同士で不動産の評価額を巡って揉めるのを回避できます。
相続人を確定させる
財産が確定したら、次に「相続人」を確定させます。
相続手続きがすべて終わった後に新たな相続人の存在が発覚した場合、遺産分割協議からやり直しになってしまうからです。
そもそも、相続人になる人は「配偶者と血族の一部」と決まっており、具体的には以下のように順位付けがされています。
- 配偶者
- 常に相続人になる。
- 第一順位(子)
- 子は嫡出子、非嫡出子(婚外子)、実子、養子(戸籍上養子縁組している者)に関わらず全員が相続分を持つ。配偶者と子が相続する場合は全体の2分の1を配偶者が、残りを子の数で等分する。
- 第二順位(親もしくは祖父母などの直系尊属)
- 被相続人に子供がおらず、片方でも親が生存していれば親が、親が両方すでに死亡していれば祖父母の生存している者が相続人となる。配偶者と直系尊属が相続する場合は全体の3分の2を配偶者が、残り3分の1を直系尊属の数で等分する。
- 第三順位(兄弟姉妹)
- 被相続人に子供も直系尊属もいない場合は、被相続人の兄弟姉妹が相続人となる。配偶者と兄弟姉妹が相続する場合は全体の4分の3を配偶者が、残りを兄弟姉妹の数で等分する。ただし、半血兄弟(父母のどちらかのみを同じくする兄弟)の相続分は、全血兄弟の2分の1となる。
上記の通り、後順位の人は「先順位の人がいない場合」や「先順位の人が相続放棄した場合」にのみ相続人になります。例えば、第一順位の相続人がいる場合は、第二順位の人は財産を相続できません。
実際に、相続人を確定する手順は以下の通りです。
- 被相続人の住所を管轄する役所で「被相続人の出生から死亡までのすべての連続した戸籍謄本」を取得する。
- 相続人に該当する人の現在の戸籍謄本までをたどる。
- 相続人の存在の有無を確認して、順位に沿って相続人を確定していく。
「相続人の確定」についても、相続に関する知識のない者には難しい作業なので、弁護士や司法書士に代行してもらうことをおすすめします。
遺産分割協議を行う
財産と相続人が確定したら、それらを元に「遺産分割協議」を行います。
前述したとおり、遺産分割協議とは、相続人全員で財産の分割方法について話し合うことです。
遺産分割協議で不動産の分割方法を決める際は、知っておくべきポイントや注意点がありますので、順を追って詳しく解説していきます。
遺産分割協議を行わなければ、不動産は「法定相続分」で相続される
もし、遺産分割協議も行わなければ「法定相続分」で自動的に不動産を分割することになります。
不動産の分割方法について話し合いがないからと言って、不動産の名義人(=正式な所有者)がいない状態ができてしまってはいけないからです。
例えば、親が亡くなり、三兄弟で不動産を相続することになった場合、遺言書もなく遺産分割協議も行わなければ、不動産は自動的に法定相続分に応じて3人の共有名義で相続されることになります。
この場合、それぞれの不動産の持分は、長男3分の1、次男3分の1、三男3分の1となります。
複数人が同じ不動産を所有している状態のこと。複数人で所有している不動産のことを「共有不動産」、共有不動産の所有者のことを「共有者」、各共有者が持つ所有権の割合を「共有持分」と言います。
この話を聞くと、「自動的に法定相続分で割り振られて相続されるなら協議なんて必要ないじゃん」と思うかもしれませんが、上記のように不動産を共有名義で相続することには大きなリスクが潜んでいます。
次の章ではそのリスクについて詳しく解説していきます。
不動産を「共有名義」で相続すると将来必ず揉める
不動産を「共有名義」で相続することはできる限り避けるべきです。
将来的に、共有者同士で揉める可能性が高いからです。
例えば、夫が亡くなり、妻と兄と弟で不動産を相続することになった場合、不動産は妻2分の1、兄4分の1、弟4分の1の持分割合で所有することになります。
このように、所有者が複数人いる共有不動産の場合、不動産を売却するには所有者全員の同意が必要になります。ですから、仮に共有者の一人が「売りたい」と言っても、他の共有者が「売りたくない」といえば売りに出すことができません。揉めるケースとしてはこれが一番多い傾向にあります。
また、毎年かかる固定資産税は、共有者が持分割合に応じた金額をそれぞれの支払うルールとなっていますが、実際は共有者の一人が固定資産税の全額を立て替えているケースがほとんどです。それにより「共有者の一人が固定資産税の負担分を払ってくれない」といったトラブルも発生しやすいです。
共有名義で不動産を所有するリスクは他にも多くあるので、不動産を相続する際は共有名義だけは避けるべきです。ですから、相続人全員でしっかり遺産分割協議を行い、不動産の分割方法を正式に決めましょう。
なお、共有名義で不動産を相続すると起きるトラブルについては、以下の記事で詳しく解説しています。
遺言書により法定相続分の財産も受け取れない場合は「遺留分侵害額請求」を利用できる
もし、被相続人の遺言書によって法定相続分の財産さえも受け取れない状況になった場合は、「遺留分侵害額請求」を行えます。
「遺留分侵害額請求」とは、被相続人が財産を遺留分権利者以外に相続し、遺留分に相当する財産を受け取ることができなかった場合、遺留分権利者は財産を相続された者に対し、遺留分を侵害されたとして、その侵害額に相当する金銭の支払いを請求できる権利のことです。
参照元:裁判所「遺留分侵害額の請求調停」
- 遺留分
- 兄弟姉妹以外の相続人へ法律によって保障される「最低限の相続分」。法定相続人であれば、法定相続分まで遺産をもらえると決められている。
- 遺留分権利者
- 遺留分を受け取る権利のある人
「遺留分侵害額請求」を簡単に説明すると、正規の相続人なのに、遺言書によって法定相続分の財産も受け取れなかった場合に、最低限の財産を受け取れるように請求することができる制度です。
例えば、夫が亡くなり、相続人となる妻がマンション1室を相続するはずだったにもかかわらず、遺言書が出てきて「マンションの1室は愛人に相続する」と書いてあった場合、妻は遺留分の財産を愛人に請求できます。
遺留分は法定相続分とは違い、以下のように遺留分として受け取れる財産の割合が決まっています。
例えば、前述した例において、マンション1室の評価額が1000万円だった場合、法定相続分であれば妻は「1000万円=マンション1室」を受け取れるはずです。しかし、遺留分となると、妻が受け取れる財産の金額は上記の表から換算すると「500万円」となります。
ですから、妻が愛人に対して「遺留分侵害額請求」を行った場合、愛人は妻に現金500万円を渡すか、不動産を売却してその利益の1/2を渡す必要があるのです。
もし、遺言書によって法定相続分の財産も受け取れない状況となった場合は、遺留分侵害額請求を活用して最低限の財産は必ず受け取るようにしてください。
不動産を遺産分割する一般的な方法
財産を遺産分割する際は、「不動産は長男」「車は次男」「現金は三男」のように、財産を個々に割り振っていくのが一般的な方法です。
現金なら相続人が複数人いても公平に分けられますが、不動産を綺麗に分けることは物理的に難しいからです。
よって、「不動産は長男に相続させよう」というように、相続人同士で特定の1人が不動産の所有者になることに同意しているならこの分割方法が最適です。
しかし、財産の中で不動産の価値が高く、特定の1人に相続させると不公平になる場合は、この分割方法は避けるべきです。高い確率で協議中に相続人同士で揉めることになります。
ですから、不動産の遺産分割で揉めたくない場合は、次の章で紹介する3つの分割方法を検討してください。
不動産を遺産分割する3つの方法
一般的に、不動産を遺産分割する方法は主に以下の3つがあります。
この記事では、不動産を遺産分割する場合のメリットやデメリットを含めながら解説していきます。
なお、相続する土地の分け方については、以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
土地を相続するなら「現物分割」が最適
「現物分割」とは、財産そのものを分割して相続人に割り振る方法です。
例えば、親が亡くなり、三兄弟で土地を相続する場合、土地を以下のように分筆すれば綺麗に相続することができます。
しかし、土地の面積が狭くてこれ以上分筆することが難しい場合や、分筆により価値が著しく低下するような場合は、現物分割は不向きと言えます。
また、土地に建物が建っている場合は、建物を物理的に分割することができないので、当然に現物分割での相続は不向きです。
よって、建物がなくて土地が比較的広ければ現物分割を検討しても良いですが、そうでないなら他の方法を検討してください。
相続人の一人に資金力があるなら「代償分割」が最適
「代償分割」とは、特定の1人が不動産を相続し、不動産を相続した人が他の相続人に法定相続分の資産を与えることで公平に財産を割り振る方法です。
例えば、三兄弟で1つの不動産(900万円)を相続する場合、兄が不動産を単独名義で相続し、兄が次男と三男に300万円ずつの現金を渡せば、公平に財産を分割できます。
よって、上記にように、不動産を相続する者に他の相続人へ現金を分配できるだけの資金力がある場合には有効な分割方法です。
しかし、相続人の中に、他の相続人へ現金を分配できるほどの資金力のある人がいない場合には成立しない方法なので、他の分割方法を検討するしかありません。
不動産を分割するなら「換価分割」が最も現実的
「換価分割」とは、不動産を売却し、その売却金を相続人同士で公平に分ける方法です。
例えば、三兄弟で資産価値900万円の不動産を相続する場合、実際に900万円で売却すれば、3兄弟で300万円ずつに綺麗に分けることができます。
よって、相続する不動産が買い手から需要があり、「早期」に「高額」で売れる見込みがあるなら、換価分割は不動産を遺産分割する最適な方法となります。
しかし、相続する不動産が老朽化した廃墟のような物件で、買い手から需要がなく、値段がつかずに売れない場合、換価分割は成立しません。
また、不動産を売却して利益を得ると、譲渡所得税と呼ばれる所得税を支払うことになる可能性があるので、その支払いに各相続人が納得できるかどうかも問題になってきます。
不動産を相続人同士で綺麗に分割する方法としては換価分割が最適ですが、不動産が売れるかどうかが肝になってきますので、一度相続する不動産を査定に出すことをおすすめします。
なお、弊社は相続が絡む不動産を専門に扱う買取業者で、無料で査定結果をお届けしていますので、気軽にご相談ください。
※「物件住所」「氏名」「メールアドレス」を伝えるだけで査定を依頼できます。(※個人情報保護は万全です)
※無料査定はサービスの一環であり、買取を前提とするものではありませんので、お気軽にご利用ください。
分割方法が決まったら「遺産分割協議書」を作成する
不動産を含めた財産の分割方法が決まったら、「遺産分割協議書」を作成します。
遺産分割協議書とは、遺産分割協議によって決まった財産の相続方法について記し、押印と署名を行うことで法的効力を持った書類のことです。
遺産分割協議書は、後述する「相続登記」や「相続税申告・納付」を行う際に必要な書類となるので、必ず作成してください。
遺産分割協議書の書き方は、以下の画像のように7つのポイントを抑えて作成します。
遺産分割協議書の例
- 「遺産分割協議書」と記載する
- 「被相続人の情報」を記載する
- 「誰が相続するのか」を記載する
- 「相続する財産の詳細」を記載する
- 「相続人が署名と押印した事実」を記載する
- 「協議が成立した日」を記載する
- 「相続人全員の氏名と住所」を記載する
前述したとおり、遺産分割協議書は「相続登記」や「相続税の申告」に必要な書類となるので、弁護士や司法書士のサポートを受けながら確実に作成を進めてください。
遺産分割協議で話がまとまらない場合は「調停」を行う
遺産分割協議を行っても、財産の分割方法が決まらない場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てることになります。
遺産分割調停とは、裁判官と調停委員が中立的な立場で各相続人から言い分を平等に聞き、財産の分割方法について具体的に提案して解決に導く方法です。
参照元:裁判所|遺産分割調停
調停に一般市民の良識を反映させるため、社会生活上の豊富な知識経験や専門的な知識を持つ人の中から選ばれる。具体的には、40歳以上70歳未満の人で、弁護士、医師、大学教授、公認会計士、不動産鑑定士、建築士などから選ばれている。
遺産分割協議を行っても、相続人同士が感情的になり意見をぶつけ合うことしかできない場合は、この調停を利用して裁判官や調停委員という第三者が間に入ってもらうことで円滑に話し合いを進められます。
遺産分割調停は、1ヶ月に1回のペースで開かれます。調停を行う期間は申立てから1~2か月ほどが一般的ですが、話がまとまらない場合は1年以上に及ぶこともあります。
調停でも話がまとまらない場合は「審判」に進む
遺産分割調停でも、財産の分割方法がまとまらなければ「遺産分割審判」に進みます。
遺産分割審判とは、相続する財産の分割方法を、すべて裁判所の判断に委ねる方法です。以下のような状況の場合、遺産分割審判に進むことができます。
- 遺産分割協議で話し合いがまとまらなかった場合(調停を行わずに審判を申し立てできる)
- 遺産分割協議でも遺産分割調停でも話し合いがまとまらなかった場合
遺産分割審判では、裁判官や調停委員が間に入って行った「調停」の内容などに基づいて裁判官が最終的な結論を出します。ですから、この遺産分割審判によって遺産分割の方法が必ず決定し、相続人はその決定に従わなければなりません。
遺産分割審判は1ヶ月に1回程開かれ、裁判官が最終的な結論を下すまでの期間は通常なら「3~8カ月程度」、長ければ「2~3年」かかることもあります。
調停や審判となるとかなり時間がかかるので、弁護士や司法書士のアドバイスをもらいながら、できるだけ遺産分割協議で決着をつけておきたいです。
相続登記を行う
財産の分割方法が決まったら、不動産の相続人は必ず「相続登記」を行ってください。
相続登記とは、相続した不動産の名義を被相続人から相続人へ変更するための手続きです。
この相続登記を行わないと、不動産を売却したり貸したりできません。また、後述しますが、相続登記を行わないと10万円以下の罰金を取られる可能性あります。
そして、相続登記を行う際は、必ず司法書士に手続きを代行してもらってください。相続登記は手続きが煩雑なので、知識のない素人が行うと間違って登記してしまう可能性があるからです。
とはいえ、必要書類や費用はご自身で準備する必要がありますので、それらについて以下で詳しく解説していきます。
相続登記の必要書類は相続するパターンによって変わる
相続登記を行う際に必要な書類は、相続のパターンによって少しずつ変わってきます。
具体的には、以下の3つパターンで必要書類が変わるので、あなたの相続パターンに該当する書類を準備してください。
【遺言書に沿って財産を相続した場合】
- 戸籍謄本(被相続人・不動産を相続する人の2通)
- 住民票(被相続人・不動産を相続する人の2通)
- 固定資産評価証明書(登記申請時の年度のもの)
- 登記申請書(法務局HPからダウンロード可能)
- 遺言書
【遺産分割によって財産を相続し場合】
- 戸籍謄本(被相続人・相続人全員の分)
- 住民票(被相続人・不動産を相続する人の2通)
- 固定資産評価証明書(登記申請時の年度のもの)
- 登記申請書(法務局HPからダウンロード可能)
- 遺産分割協議書(相続人全員の署名と押印が必要)
- 印鑑証明書(相続人全員の分が必要)
- 相続関係説明図(申請人が作成)
【法定相続分で相続した場合】
- 戸籍謄本(被相続人・相続人全員の分)
- 住民票(被相続人・相続人全員の分)
- 固定資産評価証明書(登記申請時の年度のもの)
- 登記申請書(法務局HPからダウンロード可能)
- 相続関係説明図(申請人が作成)
上記はあくまで一般的に必要とされている書類であり、実際の相続登記の際は追加で必要な書類が出てきたり、枚数が変わったりなど、細かい変更があります。
ですが、弁護士や司法書士に相続開始時点から相談を依頼していれば、具体的な必要書類を細かく提示してくれ、取得もサポートしてくれるので安心してください。
相続登記にかかる3つの費用
相続登記を行う際は、前述した必要書類の準備に加えて、以下3つの費用の準備が必要となります。
登録免許税
「登録免許税」とは、不動産、船舶、航空機、会社、人の資格などについての登記にかかる税金のことです。
参照元:国税庁「登録免許税のあらまし」
相続登記の際にかかる登録免許税は「不動産の固定資産税評価額の1,000分の4」なので、以下の計算式で算出されます。
例えば、不動産の固定資産税評価額が1000万円の場合、登録免許税は4万円となります。
登録免許税の計算も、司法書士に依頼すればあなたの代わりに算出してくれます。
司法書士報酬
「司法書士報酬」とは、司法書士に相続登記の代行料として支払う費用のことです。
司法書士報酬は価格の決め方について自由化されているため、各事務所で異なる価格が設定されています。
司法書士報酬の相場は不動産一つにつき「3万円~7万円」くらいです。
司法書士報酬が相場よりも高い場合は、その理由を聞き取りして妥当な金額に交渉するか、相見積もりを取ることをおすすめします。
必要書類の取得代金
前述した「相続登記」に必要な書類を取得するにも、以下のように費用がかかります。
戸籍謄本 | 1通450円 |
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除籍謄本、改正原戸籍謄本 | 1通750円 |
住民票、住民票の除票 | 1通200円~400円 |
印鑑証明書 | 1通200円~400円 |
固定資産評価証明書 | 1通200円~400円 |
登記簿謄本(全部事項証明書) | 1通480円~600円 |
登記内容によって、必要な書類や通数などが変わってきますので、必要書類を準備する際は必ず事前に司法書士へ確認してください。
2024年より相続登記は義務化されている
これまで、相続登記は強制されたものではなく、手続きを行わなくても特段罰則などはありませんでした。
しかし、2024年4月より相続登記は「義務化」されています。
義務化された理由は、相続登記されずに所有者不明のまま放置される不動産をこれ以上増加させないという目的のためです。
今回の相続登記の制度改正で、変更となった内容は主に以下の2つです。
- 相続により不動産の所有権を取得したことを知った日から「3年以内」に相続登記の申請が必要
- 相続登記の申請を怠った場合には、10万円以下の過料に処される
相続登記は義務化されていますが、2024年4月1日よりそれ以前に発生した相続でも不動産の相続登記がされていないものは義務化の対象になり、10万円以下の罰金を取られることになります。
相続登記を行わないと、前述したように売却できなくなるだけでなく、10万円以下の罰金も取られるので、相続登記は司法書士に依頼して必ず行ってください。
相続税の申告・納付を行う
相続登記が終わったら、相続税の申告と納付を行います。
相続税とは、相続等により財産を取得した場合に、その取得した財産に課される税金です。遺産分割協議により一定の財産を相続した場合はこの税金を支払うことになります。
相続税の申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10か月以内と定められています。
参照元:国税庁「相続税の申告と納税」
上記の期限内に、以下のような相続税の申告書を作成し、被相続人の住所地を管轄する税務署へ提出する必要があります。
また、以下の国税庁のHPを見てもらうとわかりますが、相続税の申告書の他にも、相続の状況によって何十枚もの必要書類を作成する必要があります。
ただ、税理士に依頼すれば作成を代行してくれるので、あなたがすべての書類の書き方を覚える必要がありません。
相続税の申告が終わったら、最寄りの金融機関(銀行、郵便局等)又は所轄税務署で相続税の支払いを行います。支払期日は申告記事と同じで「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内」です。
相続税の申告手続きはかなり煩雑になり、間違って申告してしまう可能性もあるので、必ず税理士のサポートを受けてください。
確定申告を行って譲渡所得税を支払う(不動産を売却した場合)
相続した不動産を売却して利益が出た場合は、確定申告を行って「譲渡所得税」を支払う必要があります。
譲渡所得税とは、資産を売却(譲渡)して得た利益にかかる税金です。
譲渡所得税は、以下の計算式で算出されます。
※譲渡所得金額=収入金額ー( 取得費 + 譲渡費用)ー特別控除額
参照元:国税庁|No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)
例えば、以下の条件で不動産を売却した場合、譲渡所得税は以下の通りになります。
不動産の譲渡価格 | 4,000万円 |
---|---|
不動産の取得価格 | 3,000万円 |
不動産の譲渡費用 | 200万円 |
所有年数 | 5年以上(長期譲渡所得税率20%) |
=4000万円ー( 3000万円 + 200万円)
譲渡所得税
=800万円×20%=160万円
※特別控除なしで計算
そして、相続した不動産を売却した場合、譲渡所得税の金額を軽減してくれる、以下2つの特例が用意されていますので、それぞれ詳しく解説していきます。
相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
相続発生から「3年10か月以内」に不動産を売却した場合、「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」が利用でき、譲渡所得税を安く抑えることができます。
「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(以下、取得費の特例)」とは、譲渡所得から相続税額の一部を差し引けることで、譲渡所得税が安くなる制度です。
参照元:国税庁|No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
譲渡所得から差し引ける相続税額は、以下の計算式で算出できます。
=売主が納めた相続税×不動産の譲渡価格÷売主が相続で取得した課税遺産総額
例えば、以下の条件で取得費の特例が適用になった場合とならない場合の譲渡所得税の違いを比較してみます。
不動産の譲渡価格 | 4,000万円 |
---|---|
不動産の取得価格 | 3,000万円 |
不動産の譲渡費用 | 200万円 |
売主が相続した課税遺産総額 | 5,000万円 |
売主が納めた相続税額 | 450万円 |
所有年数 | 5年以上 |
上記の条件で「取得費の特例」によって譲渡所得から差し引ける相続税額は以下の通りになります。
=売主が納めた相続税×不動産の譲渡価格÷売主が相続した課税遺産総額
=450万円×4,000万円÷5,000万円
=360万円
よって、取得費の特例を適用した場合の譲渡所得税は以下の通りになります。
=不動産の譲渡価格-不動産の取得価格-譲渡費用-相続税額の一部
=4,000万円-3,000万円-200万円-360万円
=440万円
譲渡所得税
=譲渡所得×所有年数に応じた税率
=440万円×20%
=88万円…(1)
前章で解説した「取得費の特例」を適用していない場合の譲渡所得税は「160万円」でしたから、取得費の特例を適用するだけで「72万円」も税金を安く抑えることができます。
相続する不動産の売却がすでに決まっているなら、譲渡所得税を少しでも安くするためにも、「3年10か月以内」に売却することをおすすめします。
「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」については、以下の記事でも詳しく解説しているので参考にしてみてください。
被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
不動産の相続発生から「3年以内」に売却した場合、「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」が利用でき、譲渡所得税を安く抑えることができます。
「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(以下、空き家特例)」とは、相続した居住用不動産を売却した際に、譲渡所得から3,000万円を控除でき、譲渡所得税を安くできる制度です。
参照元:国税庁|No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
特例を適用した場合の譲渡所得の計算式は、下記のとおりです。
=土地の譲渡価格-譲渡費用-3000万円
例えば、以下の条件で空き家特例が適用になった場合とならない場合の譲渡所得税の違いを比較してみます。
不動産の譲渡価格 | 4,000万円 |
---|---|
不動産の取得価格 | 3,000万円 |
不動産の譲渡費用 | 200万円 |
所有年数 | 5年以上 |
空き家特例を適用した場合の譲渡所得税は以下の通りになります。
=土地の譲渡価格-土地の取得価格-譲渡費用-3000万円
=4,000万円-3,000万円-200万円-3000万円
=0円
譲渡所得税
=0円…(1)
上記のように、空き家特例が適用されることによって、譲渡所得の金額が0円になり、税率をかけた後の譲渡所得税額も0円になります。
前述した、空き家特例を適用していない場合の譲渡所得税は「160万円」でしたから、空き家特例が適用になるだけで160万円も税金を節約できます。
ちなみに、前述した「取得費の特例」と「空き家特例」を、同じ不動産で併用することはできません。ですから、どちらの特例を使った方が良いのかは、税理士と相談して、あなたが一番得する方を選んでください。
「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」については、以下の記事でも詳しく解説しているので参考にしてみてください。
相続税を計算する方法
前述したように、相続登記を行ったら、相続税を申告して納付する義務があります。
ですからこの章では、その相続税の計算方法を以下の順で詳しく解説していきます。
とはいえ、相続税の計算方法についても、あながた完璧に覚える必要は全くありません。知識のないと難しいので税理士などの専門家に相談して、あなたの代わりに計算してもらってください。
不動産の評価額は「相続税評価額」か「実勢価格」で算出する
相続税を算出する際に用いる不動産評価額の算出方法は、主に以下の2つです。
- 相続税評価額
- 実勢価格
「相続税評価額」は相続税の基準となる評価方法
「相続税評価額」は、相続税や贈与税の計算をする際に基準となる不動産の評価方法です。
相続税評価額を使って不動産の評価額を算出する際は、「土地」と「建物」の2つに分けて算出します。
土地の評価方法
相続税評価額における土地の評価額の算出方法は「路線価方式」と「倍率方式」があります。
- 路線価方式
- 路線価(国税庁が定める道路に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額)を使った土地の評価額の算出方法。計算式は「土地の相続税評価額=路線価×土地の面積」となる。路線価は国税庁の「路線価図・評価倍率表」で調べることができる。
- 倍率方式
- 相続する土地に面する道路に路線価が設定されていない場合に用いる土地の評価方法。計算式は「土地の相続税評価額=固定資産税評価額×倍率」となる。倍率は、国税庁の「路線価図・評価倍率表」で調べることができる。固定資産税評価額は固定資産税の課税明細書の「価格」という欄を見るとわかる。
あなたの相続した不動産の土地の評価額を算出する際は、路線価が設定されている場合は「路線価方式」を優先して採用し、路線価が設定されていない場合にのみ「倍率方式」を採用してください。
建物の評価方法
相続税評価額における建物の評価額は、以下の計算式で算出します。
上記の通り、固定資産税評価額がそのまま建物の評価額となります。
前述したとおり、固定資産税評価額は、毎年納税者に送付されてくる固定資産税の課税明細書の「価格」という欄を見ると確認できます。
「実勢価格」は実際の不動産売買に用いられる価格
「実勢価格」は、実際に不動産売買の際に用いられる価格のことです。遺産分割調停や審判など、家庭裁判所で財産をどのように分けるか決める際の基準にも用いられます。
実勢価格の算出方法は、以下の5通りがあります。
- 不動産会社に査定してもらう
- 国土交通省が公表している「取引価格情報」を調べる
- 路線価から調べる(計算式:路線価×面積×80%×消費税)
- 公示価格から調べる(計算式:公示地価×面積×消費税)
- 固定資産税評価額から調べる(計算式:固定資産税評価額×70%×消費税)
国土交通省の土地鑑定委員会が毎年公示する標準的な土地の価格のこと。
上記の中で、最も精度の高い実勢価格を調べたいなら「不動産会社に査定してもらう方法」が最適です。
他の方法は、あくまで過去のデータや参考データから算出する方法であり、実際に売買する際の価格ではないからです。
相続する不動産の「今現在の価値」を正確に把握したいなら、不動産会社による査定の一択です。
なお、弊社は相続が絡む不動産などを専門に扱う買取業者で、完全無料で不動産の査定も行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
※「物件住所」「氏名」「メールアドレス」を伝えるだけで査定を依頼できます。(※個人情報保護は万全です)
※無料査定はサービスの一環であり、買取を前提とするものではありませんので、お気軽にご利用ください。
相続税の計算方法
不動産の評価額を算出したら、相続した不動産の「相続税」を算出します。
相続税を算出する計算式は以下の通りです。
=課税遺産額×税率-控除額
課税遺産額とは、相続税の対象となる財産の金額のことで、以下の式で計算されます。
=遺産総額(全財産の合計額)-基礎控除額※
※基礎控除額=3,000万円+(600万円×相続人の人数)
例えば、遺産総額8,000万円を3人の相続人で相続する場合、課税遺産額は下記のように算出されます。
=8000万円-(3000万円+(600万円×3))
=3200万円
上記のように算出された課税遺産額を法定相続分で割ることで、各相続人の課税遺産額が算出できます。
例えば、相続人が妻(配偶者)と長男と次男の合計3人なら、以下のように計算されます。
妻(2分の1):3200万円×1/2=1600万円
長男(4分の1):3200万円×1/4=800万円
次男(4分の1):3200万円×1/4=800万円
各相続人の課税遺産額に対して、それぞれに該当する税率をかけ、控除額を差し引いて相続税を算出します。
税率と控除額は、以下のように国税庁によって決められています。
引用元:国税庁「相続税の税率」
よって、前述した3人の相続人の相続税は以下のように算出されます。
妻:1600万円×15%=240万円
長男:800万円×10%=80万円
次男:800万円×10%=80万円
ここまで相続税の計算方法について解説しましたが、実際の相続税の算出は知識がなく慣れていない者が行うと誤って計算してしまう可能性もあるので、必ず税理士に相談してください。
相続税を減額できる2つの特例
相続税を算出する際、一定の条件を満たせば、以下2つの特例を利用できて相続税を安く抑えられます。
- 配偶者控除
- 小規模宅地等の特例
配偶者控除
「配偶者控除」とは、最大1億6,000万円までなら相続税がかからない制度です。配偶者の税負担を軽くし、配偶者の生活を守ることを目的としてます。
参照元:国税庁|財産を相続したとき
例えば、前章の例を挙げると、配偶者控除を適用した場合の妻の相続税は以下のように計算されます。
3200万円×1/2=1600万円
1600万円-1億6000万円=0円
妻の相続税
0円×10%=0円
上記のように、配偶者である妻の相続税は0円になります。
このように、配偶者控除は控除額が大きいので、相続税がゼロなるケースがほとんどです。
よって、相続の仕方によっては、すべての財産を配偶者に相続させることで、相続税を節約することもできます。
例えば、前章で例に挙げたように、配偶者である妻と子2人の課税遺産額の合計が3200万円だった場合、妻に課税遺産額のすべてを相続させれば、1億6000万円の控除を丸々使えるので、相続税がかかりません。つまり、配偶者も子2人も相続税を支払う必要がなくなるのです。
このような節税方法もあるので、不動産を含めた財産を相続する際は必ず税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
小規模宅地等の特例
「小規模宅地等の特例」とは、相続した土地の相続税評価額を「最大80%」減額できる制度です。
不動産の相続によって高額な税金を負担することになると、現金が足りず自宅を手放さなければならない事態が発生するケースがあります。そういった事態を考慮して、残された家族が自宅に住み続けられるよう創設された制度です。
「小規模宅地等の特例」が使える土地は大きく分けて以下の3種類です。
- 特定居住用宅地等(住宅で使っている土地)
- 貸付事業用宅地等(人に貸している土地)
- 特定事業用宅地等(事業で使っている土地)
減額される割合は、以下のように定められています。
引用元:国税庁「小規模宅地等の特例」
例えば、相続した土地が「特定居住用宅地等」に該当していて、土地の広さが330㎡以下だった場合、減額される割合は80%が適用されます。
ですから、土地の評価額が3000万円だった場合、相続税の算出に用いられる土地の評価額は600万円に減額されます。
あなたが相続する不動産が小規模宅地等の特例に該当すれば大きな節税効果があるので、相続税を計算する前に必ず税理士に確認してみてください。
不動産を相続する際の3つの注意点
不動産を相続する際、予め知っておいていただきたい注意点が以下の3つあります。
不動産の相続をトラブルなく終わらせるために必要な情報ですので、必ず確認しておいてください。
必ず弁護士か司法書士のサポートを受ける
これまでにもお伝えしてきましたが、不動産の相続手続きを行う際は、必ず弁護士や司法書士、税理士と言った専門家のサポートを受けながら進めてください。
知識のない者同士で相続について話し合うとトラブルに発展する可能性が高いからです。
また、相続手続きも煩雑なので間違って進めてしまう可能性もありますし、これまで解説してきた通り、相続税の節税に使える特例も多いので、適用できることを忘れて相続手続きを進めてしまうと、数百万円もの節税チャンスを逃すことにもなってしまいます。
前述した不動産の相続の流れにおいて、どの手続きをどの士業の方に依頼すれば良いかは、以下を参考にしてみてください。
- 遺言書の確認【弁護士・司法書士】
- 財産の確定【弁護士・司法書士】
- 相続人の確定【弁護士・司法書士】
- 遺産分割協議のサポート【弁護士】
- 相続登記の代行およびサポート【司法書士】
- 相続税の申告や納付のサポート【税理士】
- 確定申告や譲渡所得税の支払いのサポート【税理士】
1~4については、弁護士か司法書士のどちらに依頼するか迷うと思いますが、相続人同士で行う遺産分割協議で揉める可能性がある場合は、法律関係に詳しい弁護士に依頼した方がスムーズに解決に導いてくれます。
なお、お伝えしたように弊社でも相続に強い弁護士、司法書士、税理士と提携しておりますので、すべての士業からサポートを受けたいとお考えの場合は、気軽にご相談ください。
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マンションを相続する際は「築年数」を確認する
あなたがマンションを相続する際は、「マンションの築年数が古すぎないか」を確認してください。
築年数が古いマンションは、売却や賃貸に出すことが難しくなるからです。
例えば、築45年を超えるマンションを相続すると、後に売却が難しくなる傾向があります。築年数によって住宅ローンの借入額や借入期間が制限される可能性が高く、買主が見つかりにくくなるからです。
また、築年数の古いマンションを貸しに出しても、建物や設備の劣化が原因で人気がなく、賃借人がつかない可能性もあります。
ですから、築年数の古いマンションを相続する場合は、「ちゃんと売れるのか」や「ちゃんと貸せるのか」を不動産会社に事前に確認しておくことをおすすめします。
なお、弊社では、老朽化マンションのような訳あり物件を専門に扱う買取業者で、どんな状態のマンションでも無料で査定結果をお届けできますので、気軽にご利用ください。
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むやみに建物を解体してはいけない
不動産を相続した後、むやみに解体してはいけません。
建物を壊して更地にすると、毎年支払う固定資産税の金額が6倍に上がってしまうからです。
人が居住する家屋を建てるために利用される敷地は「住宅用地の特例」によって、以下のように固定資産税の金額が軽減されています。
引用元:大阪市HP「住宅用地の特例率」
例えば、土地の固定資産税評価額が1000万円だった場合、「住宅用地の特例(小規模宅地:200㎡未満)」の対象になる場合とそうでない場合では、固定資産税の金額は以下のように変わってきます。
【住宅用地の特例の対象】
土地の固定資産税=1,000万×1/6×1.4%=2万3,333円(年間)
【住宅用地の特例の対象外】
土地の固定資産税=1,000万×1.4%=14万円(年間)
このように、住宅用地の特例が対象となる場合と対象外となる場合では、固定資産税の金額が10万円以上も変わる可能性があります。
相続した不動産の建物が老朽化している場合、倒壊するリスクを恐れて建物を解体しようとしてしまうかもしれませんが、逆に固定資産税が6倍になるリスクがあります。ですから、もし解体を検討しているなら必ず不動産会社などの専門家に相談してください。
相続した不動産を放置する6つのリスク
これまで、不動産の相続の流れについて解説してきましたが、不動産の相続は「相続登記をして相続税を払ったら終わり」ではありません。
相続した不動産をこれからどうするのか、管理していくのか、それとも処分するのか、などを明確に決める必要があります。
相続した不動産の使い道が決まっていれば良いですが、もしそのまま放置する予定なのであれば以下6つのリスクが潜んでいるからです。
- 急速に老朽化して資産価値が下がる
- 老朽化による倒壊によって損害賠償を請求される
- 相続した不動産を犯罪に利用されやすくなる
- 相続した不動産にゴミを不法投棄されやすくなる
- 相続した不動産を管理するランニングコストがかかり続ける
- 相続した不動産が「特定空き家」に指定されて強制的に解体させられる
特に、2つ目の「相続した不動産の老朽化による倒壊で損害賠償を請求されるリスク」は、金銭面では最も大きいリスクと言えます。
もし、老朽化した不動産が台風や地震によって倒壊し、建物の屋根や外壁の破片が歩行者に当たって死亡させた場合、以下のように、最高で「2億円」の損害賠償を請求される可能性があります。
相続した不動産を放置してもメリットは何もない上にリスクしかないので、相続した不動産は放置せず、必ず活用方法を決めておきましょう。
上記6つのリスクについては以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
相続した不動産の活用方法4選
前述したように、相続した不動産をそのまま放置することには多くのリスクが潜んでいます。
ですから、不動産を相続したら、その不動産にとって最適な活用方法を決めましょう。
最適な活用方法を決めて実行することで、前述したリスクを回避できるだけでなく、活用方法によっては金銭的な利益を得ることも可能だからです。
相続した不動産の活用方法としては、主に以下の4つが挙げられますので、それぞれ詳しく解説していきます。
リフォームして住む
あなたに持ち家がないなら、相続した不動産をリフォームして自分で住む方法があります。
相続した不動産をリフォームして自分で住めば、内装が新しくなった家で快適な生活を送れますし、前述した老朽化した不動産を放置するリスクも解消できます。
例えば、あなたに持ち家がなければ、相続した不動産をリフォームすれば、リフォーム代金だけで最新設備が整った持ち家を手に入れられます。建物が新しくなっているので、倒壊する心配もありません。
しかし、もし相続した不動産の老朽化がかなり進んでいる場合は、リフォーム代金が老朽化していない不動産をリフォームする場合よりも高くなり、その金額はおよそ「500~2000万円」くらいかかります。
よって、あなたに上記のリフォーム代金が準備できるなら良い活用方法ですが、そうでない場合は他の活用方法を検討する必要があります。
賃貸運営を行う
相続した不動産に使い道がない場合は、「賃貸物件」に再生する方法があります。
相続した不動産を賃貸物件用に再生して運用すれば、あなたは大家さんとして家賃収入を得ることができます。おまけに、建物を再生しているので、倒壊するリスクも解消できます。
例えば、相続する不動産の立地が良く、商業施設も整っていて利便性が良い場合は、賃貸用の戸建てやシェアハウスに再生して入居者を募れば、すぐに借り手が見つかるでしょう。
しかし、相続する不動産の立地が悪く、近くにコンビニやスーパーもないほど利便性が悪い場合は、賃貸用に再生しても賃借人がつかないので、家賃収入を受け取るのはかなり難しいでしょう。最悪の場合は、投資したリフォーム資金が回収できず、借金だけが残る可能性もあり得ます。
よって、あなたの相続する不動産の賃貸需要が高いなら検討する価値はありますが、そうでない場合は、不動産投資家でもない限り、安易に手を出してはいけません。
空き家バンクに登録する
相続した不動産に使い道がないなら、「空き家バンク」に登録することも検討できます。
空き家バンクとは、使われていない空き家と、空き家を利用したい人とをつなぐマッチングシステムです。
空き家バンクへの登録は「無料」で、登録して待っているだけで勝手に買い手が見つかり、相続した不動産を手放せる可能性があります。
例えば、以下のサイトでは、日本全国の空き家情報がまとめられています。
>>空き家情報/ニッポン移住・交流ナビ「JOIN」
見てもらうとわかりますが、空き家の場所や条件、価格などが掲載されており、空き家を探している人は自分の欲しい物件をすぐに見つけられる仕組みになっています。
ですから、あなたの相続した不動産も使い道がなく放置されるだけなら、空き家バンクに登録しておけば買い手が見つかって手放すことができるかもしれません。
しかし、空き家バンクを運営している自治体によっては、仲介業者と提携していないケースがあり、その場合の空き家の売買は「個人間」で行うことになります。
それが原因で、「売買契約時に説明のない欠陥があった」や「近所の人から事故物件であることを伝えられた」といったトラブルが数多く報告されています。
よって、相続した不動産のある自治体が仲介業者と提携していれば空き家バンクの活用を検討する価値はありますが、提携していないようなら避けた方が無難です。
空き家バンクについては、以下の記事でも詳しく解説しているので参考にしてみてください。
売却する
相続した不動産に使い道がないなら、売却して手放すのが最適です。
売却することで完全にあなたの手から放れれば、前述した不動産を放置するリスクを解消しながら、まとまったお金も手に入れられるからです。
相続した不動産の売却方法としては、「仲介業者に売却を依頼する方法」と「買取業者に直接買い取ってもらう方法」の2種類があります。
- 「仲介業者」に売却を依頼する方法
- 売主から不動産の売却依頼を受けた不動産会社が、チラシやネットを活用して一般の買い手を探し、契約・決済までを取りまとめる取引方法です。
- 「買取業者」に直接買い取ってもらう方法
- 売主の所有物件を、不動産会社が直接買い取ることです。仲介業者のように広報活動や買主探しを行うことはしません。
「仲介」と「買取」の違いについては以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてみてください。
結論から言うと、相続した不動産が築古で老朽化が激しい場合は、「買取業者」に買い取ってもらうことをおすすめします。
仲介業者に依頼しても、買い手となる一般の個人はすぐに居住できる物件を探しているので、老朽化して住めない不動産を買うことはないからです。
上記の内容も含めて、両者の売却方法について詳しく解説していきます。
仲介業者に売却を依頼する
あなたの相続した不動産が「築浅」で「建物の状態も立地も良い」なら、仲介業者に売却を依頼すれば、市場価格に近い価格ですぐに売れる可能性があります。
前述したように、仲介業者は一般の買い手を探しますが、一般の買い手は今すぐ住める綺麗な物件や立地が良く利便性が高い物件を探しており、相続した不動産がその条件に該当すれば、需給が一致するからです。
例えば、相続した不動産が都心にあり、最寄駅から徒歩10分圏内、近くに商業施設や学校や公園などの公共施設も充実しているなら、一般の買い手からも需要が高く、すぐに買い手が見つかるでしょう。
しかし、相続した不動産が田舎にあり、老朽化が著しく人が住めない状況なら、仲介業者に売却を依頼しても一般の買い手の需要がないので、敬遠されて売れません。このような物件を仲介業者に依頼して売りたいなら、多額のリフォーム費用を費やして、新築同様にしなければならないでしょう。
よって、あなたの相続した不動産が前述した「需要のない状態」なら、仲介業者ではなく、次に解説する買取業者に売却する方法を検討してください。
買取業者に買い取ってもらう
あなたの相続した不動産が「築古」で「建物の状態も立地も悪い」なら、専門の買取業者に依頼するべきです。
専門の買取業者なら、あなたの相続した不動産が一般の買い手から需要がない状態でも、「そのままの状態」で「確実」に買い取ってくれるからです。
買取業者が老朽化していて人が住めない物件でも買い取れるのは、そのような物件でも安くリフォームして再生するノウハウを持っているからです。
例えば、弊社では埼玉県大宮市の老朽化が進んで放置されていた空き家を買い取り、賃貸用にリフォームして入居者を付け、不動産投資家に売却した事例があります、
このように、どんなに築古の物件でも「商品化」できるので、そのままの状態でもすぐに買い取れます。よって、あなたが数百万円以上のお金を払ってリフォームする必要は一切ありません。
相続した不動産を手間なく確実に手放したいとお考えなら、専門の買取業者に相談してみてください。
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まとめ
今回は、不動産を相続する一連の流れについて詳しく解説してきました。
不動産の相続は、被相続人の遺言書を探すところから始まり、相続人や財産を把握し、相続人同士で遺産分割協議を行って、不動産を含めた財産の分割方法を決定します。
不動産の相続人が決まったら、相続登記を行い、相続税の申告および納付を行います。もし、相続した不動産を売却すれば、確定申告を行って譲渡所得税の支払いまで行う必要があります。
この一連の相続手続きを、知識のない者だけで行うのは絶対に不可能です。相続は遺言書の探し方から手続きが煩雑になりますし、相続税申告では膨大な書類の準備と相続税の正確に算出が必要になるからです。
ですから、不動産を相続する際は、必ず弁護士や司法書士、税理士といった専門家に相談して進めてください。専門家に相談すれば、不動産の相続手続きの大半を代行してくれます。
ただ、弁護士や司法書士、税理士を1人ずつ探すのはかなり面倒に感じるかもしれません。その場合は、相続を伴う不動産を専門に扱う不動産業者に相談すれば一発で解決します。
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専門の不動産業者に相談し、専門家と協力して不動産の相続手続きを進めることで、トラブルなく相続が完了するだけでなく、不動産業者から相続した不動産の有効な活用方法についてもアドバイスをもらうことができます。
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