基本的に市は土地を買い取らない
一般的に、市が土地を買い取ってくれるケースはほとんどありません。
市が土地を買い取ってしまったら、土地管理の手間や費用を市が負担しなければならないからです。
また、市は土地の所有者から固定資産税を徴収していますが、市が土地を買い取ってしまったら所有者から税金を徴収できなくなり、税収が減ってしまいます。
ですから、市が買い取れるのは「公益性がある土地のみ」と制限されています。
参照元:神戸市「神戸市における土地の寄附受けの現状」
公益性がある土地とは、公園や学校、自治会館など、公共施設として活用の目途が具体的に立っている土地に限られます。そもそもその土地に学校や公園を造る計画がなければ、市は土地を買い取ってはくれません。
学校や公園を造る計画はそう頻繁にあるものでないですし、あえてその土地に公共施設を造る意義がなければ、市が土地を買い取ってくれることはないのです。
例外的に市が買い取る土地もある
基本的に市が土地を買い取ることはないと前述しました。
しかし、一部例外的に市が買い取ってくれる土地があります。「都市計画区域内の一定規模以上の土地」です。
「公有地の拡大の推進に関する法律」(以下「公拡法」)の第二章では、指定の土地の「先買い制度」が定められています。
「都市計画区域内の一定規模以上の土地」の取得を必要とする地方公共団体等に、該当の土地の買取を協議する機会を与える制度
「都市計画区域内の一定規模以上の土地」を第三者に有償で譲渡する際、売主は市をはじめとする自治体に「届出」をしなければなりません。
届出によって、自治体などの公共団体に土地の買取を協議する機会を与えなければならないのです。
もしくは、そもそも公共団体等への売り渡しを希望するのであれば「申出」を行って買取協議を行ってもらいましょう。
届出や申出を行った土地は、公共団体の買取協議が終わるまで(およそ3週間)、売却や有償での譲渡はできません。
協議の結果、土地の買取を希望する公共団体が現れた場合は、売主はその公共団体に土地を売り渡さなければなりません。
なお、公拡法で定められている「都市計画区域内の一定規模以上の土地」の条件は、具体的に以下の通りです。
では「都市計画区域内の一定規模以上の土地」について、1つずつ簡単に解説していきます。
市街化区域内の5,000㎡以上の土地
市街化区域とは、都市計画法で指定されている都市計画区域のひとつです。
参照元:江戸川区|市街化区域・市街化調整区域
すでに街の整備が進められて市街地になっている地域と、10年以内の市街地化を目指すエリアの2つが該当します。
ただ、一般の住宅用の土地が5,000㎡以上であることはほとんどないので、住宅用の土地を売却したいのであればこの条件に当てはまることはあまりないでしょう。
都市計画区域内で市街化区域以外の10,000㎡以上の土地
都市計画区域【姫路市】内の、市街化区域以外の10,000㎡以上の土地は、売却前に管轄の市区町村に申出・届出をしなくてはなりません。
市街化区域以外の土地とは、画像上の「市街化調整区域」と「非線引き区域」を指します。
ただ、一般の住宅用の土地が10,000㎡以上であることはほとんどありません。
一般住宅用の土地を売却するのであれば、この条件はあまり気にする必要はないでしょう。
都市計画施設がかかる一定面積以上の土地
都市計画施設とは、道路や公園、下水道のような都市施設で、その中でも都市計画により建設が決定されたものを指します。
都市計画施設がかかる一定面積以上の土地は売却前に管轄の自治体に申出・届出しなくてはなりません。
なお、指定の面積は自治体ごとに異なりますが、例えば東京都と大阪市であれば200㎡以上です。自身の土地を管轄する自治体に、指定の面積を各自確認しましょう。
参照元:東京都都市整備局|公有地の拡大の推進に関する法律に基づく届出と申出
都市計画区域内で道路・公園・河川の予定地として計画決定された土地
都市計画区域内で、道路・公園・河川の予定地として計画決定された区域内の土地は、売却前に自治体に申出・届出しなくてはなりません。
参照元:府中町|都市計画・都市づくり
計画決定とは、様々な都市計画が正式に決定されたということです。
売却したい土地が公園等の計画決定の区域内であるかは、管轄の自治体に確認しましょう。
一定の土地区画整理事業、住宅街区整備事業の施行区域内にある土地
新たな市街地の造成を目的として、土地区画整理事業や住宅街区整備事業となっている区域にある土地は、売却前に自治体に申出・届出する必要があります。
土地区画整理事業とは、土地の区画を整え、宅地の利用の増進を図る事業です。
土地の形を綺麗に整えて宅地として利用しやすい土地を増やすのが目的です。
また、住宅街区整備事業とは、土地区画整理事業の内容に加え、マンションの整備等も同時に行います。
参照元:国土交通省「住宅街区整備事業」
2つの事業の施行区域に指定されている土地は、売却前に自治体に申請する必要があります。施行区域であるかは、管轄の自治体に各自確認してください。
生産緑地地区内にある土地
生産緑地地区とは、一言で言うと市街化区域内の農地です。その中でも、公害や災害の防止、農林漁業と調和した都市環境の確保に有用で、公共施設等の敷地と呼ぶに相応しい農地を指します。
農地なので、一般住宅用の土地を売却するのであればこの条件は関係ありません。
農地を売却する場合は、売却する土地が生産緑地であるかを確認しましょう。
管轄の自治体に直接問い合わせて確認することもできますし、毎年税務署から送られてくる固定資産税通知書の「農地区分」の欄で確認することもできます。
参照元:川崎市|生産緑地買取り申出について
市に土地を売った場合の金額
公拡法の先買い制度に基づき、実際に市に土地を売った場合の価格相場はおよそいくらになるのでしょうか。
土地の買取金額を決定するポイントとなるのは、公示価格です。
地価公示法に基づいて国土交通省が毎年公示する、土地の標準値となる価格。正確には地価公示価格という。
実際に公拡法第7条では、以下のとおり定められています。
公有地の拡大の推進に関する法律 第7条
地方公共団体等は、届出等に係る土地を買い取る場合には、地価公示法(昭和四十四年法律第四十九号)第六条の規定による公示価格を規準として算定した価格(当該土地が同法第二条第一項の公示区域以外の区域内に所在するときは、近傍類地の取引価格等を考慮して算定した当該土地の相当な価格)をもつてその価格としなければならない。
公示価格が定められている区域(公示区域)の土地の買取金額は、公示価格を基準として算定します。
売却したい土地の公示価格は「国土交通省:不動産ライブラリ」にて確認できる地域もあります。
一方、公示区域外の土地は公示価格が公示されないので、近隣の似通った土地の取引価格や、土地の位置、地積、周辺環境などを考慮して買取金額が算定されます。
SUUMOやat home等で、周辺の土地がいくらで売り出されているかを確認すると買取金額が大まかに予想できるでしょう。
公示区域であろうと公示区域外であろうと、いずれも売主の希望通りの金額で買い取ってもらえるとは限りません。
市に土地を売るための手続きの流れ
市に土地を売るための手続きの流れを解説します。
なお、先買い制度で買い取ってもらえる条件に当てはまらない土地は「市に買取を断られた土地を手放す4つの方法」で手放してしまいましょう。
市役所に必要書類を提出する
土地を譲渡する場合の「届出」をするのであれば「土地有償譲渡届出書」を、土地の買取を希望する場合の「申出」をするのであれば「土地買取希望申出書」を、自治体の長あてに提出して申請します。
提出場所は各自治体の役所です。
「土地有償譲渡届出書」と「土地買取希望申出書」は各自治体の都市計画課等で入手することもできますし、インターネット上でダウンロードできる自治体も多くあります。
「○○県(管轄の自治体や都道府県名) 土地有償譲渡届出書(土地買取希望申出書)」と検索してダウンロードしましょう。
また、この2つ以外の必要書類は、自治体によって異なります。
例えば茨城県であれば、必要書類は以下の通りです。
- 位置図(土地の位置を明らかにした図面)
- 平面図(公図の写し等当該土地の形状を明示した図面)
- 登記簿謄本(写し可)
- 住民票(登記簿謄本の所有者と申請者の住所が異なる場合)
- 地積測量図(登記簿謄本の地積と申出の地積が異なる場合)
何の書類が必要であるか管轄の自治体に確認して用意しましょう。
地方自治体が買取するか否かを協議する
「届出(もしくは申出)」が受理されると、自治体が各公共団体にヒアリングを行い、買取を希望する団体を探します。
ちなみに、ヒアリングされる公共団体とその順番は以下の通りです。
ヒアリングされる公共団体
- 地方公共団体や土地開発公社
- 港務局
- 地方住宅共有公社
- 地方道路公社および都市再生機構
買取を希望する公共団体がいれば3週間以内に土地の所有者に通知されます。
一方、買取を希望する公共団体がいない場合、いないと分かった時点で直ちに土地の所有者に通知され、所有者は第三者への譲渡が可能になります。
地方公共団体と所有者で協議が行われる
買取を希望する公共団体がいた場合、買取の主体と所有者が買取協議を行います。
協議の結果お互いが合意すれば、売買契約成立に至ります。
ただ、平成30年の届出・申出件数は約7,000件あるものの、実際に所有者との買取り協議が行われたのが約1,700件、契約成立に至ったのが約1,400件です。
参照元:国土交通省「土地の先買い制度関係事務手引き」P.85
届出(申出)をしても、実際に買い取ってもらえる確率はおよそ25%という点は覚えておきましょう。確実に買い取ってもらえるわけではありません。
確定申告を行う
公共団体に土地を売却した場合も、売却利益が出たら譲渡所得税が課税されます。土地を売却した翌年には確定申告が必要なことを注意点として押さえておきましょう。
ただし、先買い制度によって土地を売却した場合、売主は譲渡所得税の特別控除を受けることができます。
特別控除の要件は、管轄の自治体に確認しましょう。
参照元:国土交通省|土地の先買い制度関係事務手引き
市に買取を断られた土地を手放す4つの方法
次に、自治体に買取を断られた土地や、そもそも先買い制度の適用外である土地を売却する方法をご紹介します。
4つの方法をご紹介しますが、どんな土地もスムーズに買い取ってもらうなら「不動産買取業者に直接買い取ってもらう」のがおすすめです。
では、1つずつ簡単に解説していきます。
なお、不要な土地を手放す方法は以下の記事でも詳しく解説しているので、併せて参考にしてください。
国に引き取ってもらう
売却したい土地が相続した土地であれば「相続土地国庫帰属制度」に基づいて、国に土地を引き取ってもらうこともできます。
参照元:法務局|相続土地国庫帰属制度について
相続または遺贈によって取得した土地の所有権を、一定の条件のもと国に帰属させることができる制度
ただ、相続土地国庫帰属制度で国に引き取ってもらえる土地にはいくつもの条件が定められています。
例えば、建物が建っていたり隣地との境界線が曖昧だったりする土地は引き取ってもらえません。
もし引き取ってもらいたいのであれば、所有者が高額な費用を負担して建物を解体したり、隣地との境界線を測量したりして、条件を満たす必要があります。
また、土地を国に引き取ってもらうためには、土地の管理費用としておよそ20万円を国に納めなければなりません。
土地の条件によっては20万円以上の高額な管理費用が必要になることもあります。
このように、国に引き取ってもらえる土地の条件は限られていますし、もし引き取ってもらえるとしても高額な管理費用を納めなくてはなりません。
相続土地国庫帰属制度を活用して土地を手放そうとするのは、賢明とは言えないでしょう。
ちなみに、相続土地国庫帰属制度の詳細は以下の記事で詳しく解説しているので、気になる方は参考にしてください。
相続放棄をする
相続を知った日から3カ月以内であれば、相続放棄をして土地を手放すこともできます。
参照元:裁判所|相続の放棄の申述
被相続人(亡くなった人)の財産を相続する権利を一切放棄すること
ただし、相続放棄は相続の権利を一切放棄することなので、土地のみを手放すことはできません。
土地以外のプラスの財産(預金や形見など)も一切放棄することになります。
また、相続放棄したからと言って、土地の管理責任からすぐに解放されるわけではありません。
あなたが土地を放棄したら、あなたに代わって土地を相続する者が土地の管理を始められる状態になるまで、あなたは責任を持って土地を管理する必要があります。
実際に、民法940条では以下のように定められています。
(相続の放棄をした者による管理)民法940条
相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。
引用元:民法940条
もし次の相続人が管理を始める前に、第三者に粗大ごみの不法投棄などをされてしまったら、相続放棄したあなたが責任を持ってごみを撤去する必要があります。
このような理由から、相続放棄によって土地を手放すのはあまりおすすめできる手段ではありません。
相続放棄については以下の記事で詳しく解説しているので、気になる方は参考にしてください。
個人に売却する
土地を手放す手段として最もメジャーなのが「不動産仲介業者を通して一般の個人に売却する」ではないでしょうか。
一般の個人に向けて不動産情報を公開して買主を探し、売買契約成立に向けて売主と買主の間を取り持つ。売主や買主から仲介手数料をもらって利益をあげている。
ただし「都市計画区域内の一定規模以上の土地」を個人に売却する場合は、買手に重要事項説明を行わなければなりません。
重要事項説明とは、買主の購入意思に影響するであろう事項を契約前に説明することです。
「都市計画区域内の一定規模以上の土地」は売却の前に自治体への届出が必要である等、一般の土地と異なる点があるため買手にもその旨を伝えなければなりません。
重要事項説明によって買手の購入意欲を削いでしまい、なかなか売却できないおそれがあります。
また、そもそも土地の立地が良くなければ買手がつかず売れ残ってしまうでしょう。
個人の買主は自身のマイホームを建てるための土地を探しているので、駅や市街地に近い等、生活しやすい土地でなければ購入に至らないからです。
以上の理由から、個人の買主を探すのであれば土地が売れ残るおそれも十分にあるので注意が必要です。
なお、仲介と買取の違いは以下の記事で詳しく解説しています。
不動産買取業者に直接買い取ってもらう
土地を確実に手放したいのであれば、不動産買取業者への売却を検討しましょう。
買取業者であれば、自治体や国、個人の買主に買取を断られてしまった土地も、スムーズに買い取って現金化できます。
買い取れる秘訣を一言で言うと、買取業者は問題を抱えた土地や建物の適切な活用方法を見極め、買取後に不動産事業として運用できるからです。
国や自治体、個人の買主では活用できず「負動産」となってしまう土地にも、不動産買取業者は適切な処置を施し、活用できます。
以下では、買取業者に直接売却する売主の大きなメリットを簡潔にご説明します。
難しい手続きは一切不要
前述した方法(相続土地国庫帰属制度を活用する、相続放棄をする、個人に売却する)は、どれも売主自ら手続きの方法を調べ、自発的に手続きを行う必要があります。
しかし、買取業者に直接売却するのであれば、売主自ら難しい手続きを行う必要は一切ありません。
買取業者は不動産売買の経験を豊富に持ち合わせるプロなので、必要書類や書類の記入等は全て担当者の指示を仰ぎましょう。
土地をそのままの状態で売却できる
土地を「国に引き取ってもらう」のであれば、売主自ら費用をかけて建物を解体したり測量したりする必要があると前述しました。
また、個人に土地を売るのであれば、売主が費用を負担して土地の整備を行い、見栄えを良くしなければ買手がつかないでしょう。
しかし、買取業者はどんな土地もそのままの状態で買い取れます。
土地に築古戸建てが建っていても、雑草が生い茂っていても、埋設物や土壌汚染があったとしても問題ありません。
もちろん、弊社AlbaLink(アルバリンク)も、どんな土地でも適正価格で買取可能です。
土地の活用方法は買取後に我々が見極めますので、売主様はそのままの状態でご相談ください。
>>【どんな土地もそのまま買取】土地の無料査定&無料相談はこちら
売主の責任が一切免除される
買取業者に直接売却すれば、売主の契約不適合責任が一切免除されます。
売却後の不動産に、売買契約書にない不具合が見つかった場合、売主が負わなければならない責任
仮に、売却後の土地に土壌汚染や埋設物が見つかったとしましょう。
買主が一般の個人であれば、売主は買主から契約不適合責任を問われ、損害賠償や売買契約の解除を請求されてしまいます。
個人の買主は購入した土地にマイホームを建てる前提なので、土地に土壌汚染等の問題があればマイホームを建てられないからです。
しかし、買主が不動産買取業者であれば、売主は契約不適合責任を負う必要はありません。
土地が土壌汚染などの特別な問題を抱えているか否かにかかわらず、買取業者は土地に手を加え、活用する前提で買い取るからです。
土地がどのような問題を抱えているかは、不動産活用のノウハウに長けていて買取実績が豊富な買取業者にとっては問題ではないのです。
弊社AlbaLink(アルバリンク)も、売主の契約不適合責任を一切免除した上で土地を買い取ります。
「土地の埋設物や土壌汚染、地盤の緩みを調べるのに費用や手間をかけたくない」
「そのままの状態で土地を買い取ってほしい」
このような方はぜひ我々にご相談ください。
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なお、買取のメリットは以下の記事でも詳しく解説しています。
まとめ
市や公共団体に買い取ってもらえる土地の条件や、買い取ってもらう方法を解説しました。
ただ、たとえ買い取ってもらえる土地の条件を満たしていたとしても、必ずしも土地を買い取ってもらえるわけではありません。
買取を断られてしまった土地や、そもそも条件を満たしていない土地は、不動産買取業者に直接売却するのがベストです。
不動産買取業者は、どんな土地もスムーズに買取可能だからです。
弊社AlbaLink(アルバリンク)も、日本全国どんな土地でも買取できます。
複雑な手続きや、売主様自身が費用をかけて土地の整備を行ったりする必要は一切ありませんので、そのままの状態でご相談ください。
我々が売主様にお力添えできれば幸いです。