空き家問題が深刻化!国や自治体による対策が進行中
現在の日本では、増え続ける空き家が社会問題視されています。
総務省統計局の「平成30年住宅・土地統計調査」によると、2018年時点における空き家の数は848万9,000戸にのぼっています。2018年10月1日時点における日本の総住宅数は6,240万7,000戸なので、全体のじつに13.6%が空き家となっているのが現状です。
このまま空き家の有効活用が進まなければ、2033年には空き家数が約2,150万戸、空き家率は30.2%にまで上昇するともいわれています。
参照元:国土交通省都市局|都市のスポンジ化について
とくに問題視されているのが、所有者による適切な管理がなされていない空き家です。
誰も住まなくなった空き家は換気がなされないために湿気が溜まりやすく、瞬く間にカビが繁殖して構造材の劣化を早めます。
それに加え、湿気を好むシロアリが発生して家を支える構造材を食べてしまうと、耐久性・耐震性が大きく損なわれて台風や地震などの自然災害発生時に家が倒壊する危険性もあります。
また、ゴミの不法投棄やネズミをはじめとする害獣の侵入、雑草の繁茂などにより、衛生面や景観などにも悪影響を及ぼしかねません。
そのため、現在国や自治体は、このような保安上・衛生上問題のある空き家を減らすべく、さまざまな対策に取り組んでいます。
具体的には、空き家バンクを通じて空き家の利用者を見つけて自治体への移住・定住を促進したり、管理の行き届いていない空き家の所有者に対して法令に基づく助言や指導を行ったりなどの対策です。
参照元:e-Gov法令検索|空家等対策の推進に関する特別措置法
自治体が運用する空き家を売りたい方と利用したい方を結びつけるサイト。無料で利用できる
参照元:香川県空き家ポータルサイト
後述の「空き家の対策をせずに放置する3つのリスク」で解説するように、あなたが所有している空き家が原因で通行人や近隣の方に被害を与えた場合、所有者責任を問われて損害賠償を請求される恐れがあります。
深刻な事態となってしまうのを防ぐためにも、できる限り早く空き家対策を講じることをおすすめします。
なお、空き家バンクについては以下の記事で詳しく解説しているので、併せて参考にしてください。
空き家対策の成功例5選【最新情報を掲載】
各自治体では、増え続ける空き家への対策としてさまざまな取り組みを行っています。ここでは、自治体が行っている空き家対策の成功例として以下5つのケースをご紹介します。
- 【成功例1】地域資源として空き家を有効活用
- 【成功例2】古い店舗を地域住民のコミュニティースペースとして活用
- 【成功例3】古民家を観光資源として有効活用
- 【成功例4】空き家バンクの活用で空き家数が激減
- 【成功例5】空き家を再利用して空き店舗ゼロを達成
【成功例1】地域資源として空き家を有効活用
兵庫県宍粟市で空き家を地域資源として有効活用している事例です。
宍粟市が行った調査によると、市内に存在する空き家は1,389戸にのぼります。少子高齢化、若年層の他県への流出などにより今度も空き家の数が増加することが予測されるなか、宍粟市では空き家の増加抑制へ向けた対策を実行しました。
そのひとつが、空き家を活かす取り組みです。
たとえば、市が空き家を借りてシェアハウスへと改修し、兵庫県立森林大学校の学生の住居として提供しているケースが挙げられます。
また、宍粟市へ移住して事業を始めたいという方へ向けて店舗の改装費用や設備の購入費用などの助成を実施。この制度を有効活用し、市の中心市街地である山崎町で築古の町家をリノベーションして飲食店や宿泊施設などを始める人も少なくありません。
【山崎町で古民家を活用して作られた「古民家カフェ宮雅~みやび~」】
市が積極的に空き家の活用をバックアップしている対策が功を奏し、近年は20~30代世代の移住が増えています。
参照元:宍粟市|宍粟市空き家等対策計画
参照元:宍粟市|はじめて起業を志す人を応援
参照元:神戸新聞NEXT2022.7.14
【成功例2】古い店舗を地域住民のコミュニティースペースとして活用
岡山県瀬戸内市において築約80年の古家を活用した事例です。
もともとは所有者の両親が古家で食堂を開いていましたが、両親が亡くなって以来、空き家の状態が続きました。
古家が店舗併設型であり、かつ台風などによる被害を受けていたことから、所有者の方はうまく活用できないのではないかと考えていたそうです。
しかし古家の仲介を行う方が現況を確認したところ、十分に活用できると判断。そこで所有者の方と賃貸借契約を交わし、医療生活協同組合の集会所や子どもを対象とした書道教室の会場として使うことに。築約80年の古家が、年間約1,000人が利用するスペースへと生まれ変わりました。
築古の空き家でも、活用方法次第では地域の活性化に寄与することを証明した成功事例です。
参照元:瀬戸内市移住交流促進協議会|空き家活用事例集
【成功例3】古民家を観光資源として有効活用
長崎県小値賀町において、古民家を観光資源として再生した事例です。
五島列島の北端部に位置する小値賀町の人口は1950年の1万968人をピークとして年々減少傾向にあり、2020年には2,291人となりました。
参照元:小値賀町|統計情報
人口の減少とともに問題視されたのが、住む人のいなくなった空き家です。そこで小値賀町では、江戸末期や明治期に建てられた木造の古民家を活用した宿泊事業や飲食事業を計画。2010年9月、4軒の宿泊施設と1軒のレストランをオープンしました。
参照元:ながさき経済2012.6
参照元:長崎新聞2021.2.15
【小値賀町にある古民家をリノベーションして作られた「古民家ステイ鮑集」】
引用元:国土交通省|民泊の優良事例③(古民家を利用した農家体験型)
すると、30~40代の女性を中心に人気を集めて観光客数が増加。Iターン者も2007年度には2人だったのに対し、年間15人~20人台で推移するようになったということです。
主に都市部で生まれ育った人が出身地以外の場所で働くこと
古民家の活用が、まちづくりに大きく寄与した事例だといえるでしょう。
【成功例4】空き家バンクの活用で空き家数が減少
栃木市が空き家バンクを有効活用して空き家率を劇的に改善した事例です。
前述のように、空き家バンクは空き家を売りたい・貸したい人と買いたい・借りたい人とを結びつける制度で、自治体が運営しています。
栃木市では、2015年4月に「栃木市空き家等の適正管理及び有効活用に関する条例」を施行して空き家対策を開始。市が運営する空き家バンクを通じて、空き家の解消に取り組みはじめました。
それと同時に、移住先として栃木市が選ばれるように補助金制度を拡充。市内に住居を構えた方に対して「IJU(移住)補助金」や「市内住み替え補助金」、市内から都内近郊へ通勤する方を対象に「通勤者特急券購入費補助金」などを支給しました。
するとこの取り組みが多くの方の心を引きつけ、2015年~2021年までに683件の登録があった空き家のうち、じつに476件が成約にいたったのです。
栃木市によると、空き家対策が功を奏して2015年から2020年の5年間で空き家数が267戸減少したということです。
参照元:栃木県栃木市|栃木市の空き家対策について
空き家バンクの活用が、空き家数の増加を食い止める働きを担っていることが分かります。
【成功例5】空き家を再利用して空き店舗ゼロを達成
長野県下諏訪町にある御田町商店街が空き家を再生して賑わいを取り戻した事例です。
御田町商店街は1911年に誕生。1913年には通り沿いに御田劇場が開設され、日々多くの人で賑わいを見せていました。
しかし、製糸業の衰退に伴って近隣にある製糸工場の廃止・移転・縮小などにより、通りを行き交う人の数は現状の一途をたどります。2003年には、商店街にある店舗のうち、約3分の1が空き家となる事態にまで追い込まれてしまったのです。
そうした状況下、地域住民による商店街活性化活動が開始。空き店舗のリノベーションを行い、創業を志す若者を積極的に誘致した結果、2011年に空き店舗ゼロを達成しました。
空き店舗が木工房や弦楽器工房、洋裁店などへと生まれ変わり、再び商店街に活気がよみがえりました。
参照元:御田町商店街
空き家の対策をせずに放置する3つのリスク
空き家を適切な対策をせずに放置すると、所有者であるあなたに以下のリスクが降りかかる恐れがあります。
- 倒壊して近隣から損害賠償を請求される
- 固定資産税を支払い続ける
- 特定空き家に指定されて行政代執行となる
空き家の放置は国や自治体単位だけでなく、個人単位でもリスクが大きいといわざるを得ません。リスクから解放されたいなら、早めの対策が不可欠です。
それぞれのリスクについて、具体的に見ていきましょう。
倒壊して近隣から損害賠償を請求される
空き家が倒壊して近隣の方に被害を与えた場合、損害賠償を請求される恐れがあります。
民法第717条により、空き家が原因で他人に損害を与えた場合には被害者に対して損害賠償する責任を負うと定められているためです。
参照元:e-Gov法令検索|民法第717条
前述のように放置された空き家は劣化するのが早く、台風や地震などの自然災害時に倒壊してしまいかねません。
もしあなたが所有している空き家が倒壊して他人に被害を与えると、最悪のケースでは億単位の損害賠償をしなければならない可能性がある点に注意が必要です。
実際、公益財団法人日本住宅総合センターの調査によると、倒壊した空き家が原因で近隣の方が亡くなった場合の損害賠償額は2億円以上にのぼるという試算が出ています。
参照元:公益財団法人日本住宅総合センター|空き家発生による外部不経済の実態と損害額の試算に係る調査
多額の損害賠償を請求されたくないなら空き家を適切に管理する必要がありますが、所有する限り、維持費や管理費などのランニングコストがかかり続ける点には注意が必要です。
以下の記事では、倒壊しそうな空き家を放置するリスクや対処法について詳しく解説しています。併せてご参照ください。
固定資産税を支払い続ける
固定資産税を支払い続けなければならない点も、空き家を放置するリスクのひとつです。
固定資産税は土地や建物などの固定資産の所有者に対して課される税金で、以下の計算式で算出します。
固定資産税=固定資産税評価額×1.4%
参照元:総務省|固定資産税の概要
また、建物が建っている土地には「住宅用地の特例」と呼ばれる特例措置が適用され、以下のように税金が軽減されます。
区分 | 固定資産税の求め方 |
---|---|
小規模住宅用地(200㎡までの部分) | 固定資産税評価額×1/6×1.4% |
一般住宅用地(200㎡超えの部分) | 固定資産税評価額×1/3×1.4% |
参照元:東京都主税局|固定資産税・都市計画税(土地・家屋)
固定資産税評価額は毎年自治体から送られてくる固定資産税納税通知書に記入されているので、確認してみるとよいでしょう。
【固定資産税納税通知書の見本】
たとえば、あなたが所有している空き家のうち、建物の固定資産税評価額が1,000万円、土地の固定資産税評価額が1,500万円、土地の面積が150㎡のときに発生する固定資産税額は以下の通りです。
「固定資産税評価額×1.4%」の計算式より、
建物の固定資産税=1,000万円×1.4%=14万円【土地の固定資産税】
「固定資産税評価額×1/6×1.4%」の計算式より、
土地の固定資産税=1,500万円×1/6×1.4%=3万5,000円【空き家にかかる固定資産税】
14万円+3万5,000円=17万5,000円
つまり上記のケースでは、空き家を所有する限り毎年17万5,000円を支払い続けなければならないということです。
税金の負担が重荷に感じるなら、空き家を活用して収益化を図るか、売却して現金化することをおすすめします。
具体的な空き家の活用方法は、次章の「空き家対策における12のアイデア」で詳しく解説します。
なお、固定資産税の概要や滞納した場合のリスクについて知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
特定空き家に指定されて行政代執行となる
空き家を放置すると、自治体から特定空き家に指定される恐れがある点もリスクのひとつとして押さえておきたいところです。
空き家対策特別措置法では、以下の条件に当てはまる空き家を「特定空き家」と定義づけています。
- 倒壊など著しく保安上危険となる恐れのある状態
- 著しく衛生上有害となる恐れのある状態
- 適切な管理が行われていないことで著しく景観を損なっている状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切な状態
参照元:e-Gov法令検索|空家等対策の推進に関する特別措置法第2条第2項
自治体から特定空き家に指定されたにもかかわらず放置を続けると、住宅用地の特例の適用対象から外されてしまい、固定資産税が最大で6倍に増えてしまう点に注意が必要です。
空き家の固定資産税がいつから6倍になるのかは、以下の記事で詳しく解説しています。
また自治体からの改善要求を無視し続けると、行政代執行へと移行します。行政代執行とは、空き家の所有者に代わって自治体が強制的な措置を行うことです。
参照元:湧別町|特定空家などの行政代執行・略式代執行
自治体から特定空き家に指定されたあとも修繕などの対応をせずに放置すると、空き家を強制的に解体されてしまいます。
その際にかかった空き家の解体費用は、所有者であるあなたが負担しなければなりません。
たとえば実際に福岡県飯塚市が行政代執行により空き家を解体した事例では、建物の所有者に解体費用として約200万円を請求しています。
参照元:国土交通省|地方公共団体の空き家対策の取組事例1
築年数の古い空き家の放置にはリスクしかありません。余計な費用を負担したくないなら、すぐに空き家対策を講じたほうがよいでしょう。
なお、行政代執行によって空き家が取り壊されるリスクと回避するためにすべきことについては、以下の記事で詳しくまとめています。併せて参考にしてください。
次の章からは、個人でできる空き家対策の方法をご紹介します。
空き家対策における12のアイデア
あなたができる空き家対策には、以下の12種類があります。
- 賃貸に出す
- 駐車場として貸し出す
- 民泊として活用する
- シェアハウスにする
- シェアキッチンにする
- サテライトオフィスにする
- コワーキングスペースにする
- 飲食店にする
- 貸し倉庫を設置する
- ガレージとして貸し出す
- セーフティネット住宅にする
- 専門の買取業者に買い取ってもらう
前述の空き家を放置するリスクから解放されたいなら、上記のいずれかの対策を検討するとよいでしょう。
空き家でできる12の対策について、詳しく解説していきます。
賃貸に出す
空き家を賃貸物件として貸し出したり、更地にしてから土地を貸したりする方法があります。
賃貸経営のメリットは、毎月安定した家賃収入を得られることです。また借主が代わりに家の維持・管理を行ってくれるため、空き家の劣化を防ぐことができ、自治体から特定空き家に指定されるのを回避できます。
ただし、空き家の状態が悪い場合には賃貸経営にあたってリフォームや建て替えが必要であり、数百万円~数千万円ほどのコストがかかる点がデメリットです。
しかも多額の初期費用を投じても、入居者が確実に見つかるわけではない点にも注意が必要です。
賃貸経営を成功に導くには、周辺の賃貸需要を見極めることが欠かせません。もしあなたが所有している空き家が駅から近いなど立地がよい場合には借主を見つけられる可能性が高いので、賃貸経営を検討してもよいでしょう。
一方で、駅から遠いなど賃貸需要が見込めない場合には借主を見つけにくく、家賃収入で初期費用を回収できない可能性が高いため、売却を視野に入れることをおすすめします。
駐車場として貸し出す
空き家を解体して更地とし、駐車場として貸し出すのもひとつの方法です。
駐車場経営のメリットは、初期費用がほぼかからない点にあります。土地上にそのまま駐車する形式の青空駐車場なら、ロープなどで駐車スペースを区切るだけなので、コインメーターなどの設備を導入する必要はありません。
初期費用を抑えながら安定した収入を得られる点が、駐車場経営の最大のメリットです。空き家を解体してしまえば、倒壊を心配する必要もありません。
しかし、空き家を解体して更地にする際に数百万円ほどの費用がかかります。また駐車場経営は賃貸経営よりも収益性が低いため、解体費用を回収するまでに時間がかかる点もデメリットです。
さらに空き家を解体すると住宅用地の特例が適用されなくなるので、土地にかかる固定資産税が最大で6倍になるところもデメリットといえます。
あなたが所有している空き家の敷地面積が広く駐車可能台数が多い、周辺に住宅街やオフィス街などが形成されていて駐車場の需要が高いといった場合には、駐車場経営を視野に入れてもよいでしょう。
ただし利用者が少ないと赤字となる可能性が高いため、空き家を解体する前にニーズをしっかりと調査する必要があります。
民泊として活用する
2018年6月に住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行されたことに伴い、一般の住宅を宿泊施設として提供できるようになりました。
参照元:国土交通省|民宅制度ポータルサイト
もしあなたが所有している空き家が観光地に位置しているなら、旅行客の需要が見込めるので民泊として活用するのも選択肢のひとつです。空き家を旅行者に宿泊場所として貸し出すことで、収益化を図れる点は大きなメリットといえます。
ただし、当然のことながら宿泊ニーズがない場所で民泊を始めても、収益を上げることはできません。
また、ビジネスとして民泊を行う際には1年のうち180日しか営業できないと法律で定められています。
参照元:e-Gov法令検索|住宅宿泊事業法第2条第3項
それほど収益性は高くなく、民泊を始めるために必要なリフォーム費用や備品の購入費用などを回収できない恐れがある点には注意が必要です。
あなたが所有している空き家が観光地から遠い、周辺にリーズナブルな宿泊施設が多い場合には宿泊客を獲得することが難しいため、民泊経営ではなく他の対策を検討したほうがよいでしょう。
シェアハウスにする
シェアハウス経営は、空き家に複数の個室と共用のリビング・水回り設備を設けて複数の人に貸し出す賃貸経営手法のひとつです。
一度に複数人に貸し出す仕組みのため、空き家を1世帯に貸すよりも高い収益が見込めます。また、一般的な賃貸経営と比べると空室リスクが低い点もメリットです。たとえ一人が退去しても、残りの入居者から家賃収入を得られるためです。
しかし個室以外のスペースは共用であり、入居者間のトラブルが起こりやすい点がデメリットとして挙げられます。
シェアハウスを自分で管理する場合には、清掃や日用品の補充などの業務も行わなければなりません。管理を管理会社に委託する方法もありますが、一般的な賃貸物件よりも手間がかかる分、高額な管理費を請求されかねない点にも注意が必要です。
賃貸経営と同様、シェアハウス経営を成功させるには賃貸需要の見極めが重要です。
もし空き家が人口の多い都市圏や大学の周辺に立地している場合は賃貸需要が見込めるため、シェアハウス経営に最適です。
しかし空き家の所在地の人口が少ない場合には賃貸需要が期待できないため、シェアハウス経営ではなく他の活用方法を検討することをおすすめします。
シェアキッチンにする
空き家をシェアキッチンに改修して活用する方法もあります。
シェアキッチンとは、ひとつのキッチンを複数のオーナーで共有する店舗形態です。朝7時~昼15時、夕方16時~夜24時までなど、時間単位で貸し出す形が基本です。
飲食店を開業したいオーナーにとっては、シェアキッチンを利用することで初期費用を抑えられるメリットがあります。
そのため、周辺にオフィスや商業施設が建ち並んでいるなど人通りの多い場所にある空き家をシェアキッチンに改装すれば、飲食店を開きたい方からの需要が見込めるでしょう。
しかし空き家をシェアキッチンとして貸し出すには、店舗内の設備を保健所の基準に合わせるようにリフォームしなければなりません。たとえば、キッチンと客席スペースは壁などで物理的に区切る、キッチンに食品を洗う流しと食器を洗う流しを別に用意するなどです。
参照元:食品衛生に関する手続き【盛岡市】
空き家をシェアキッチンとして活用するには、数千万円ものリフォーム費用が必要になることもあります。初期費用をなるべく抑えたい方には、あまり向いていない活用方法といわざるを得ません。
サテライトオフィスにする
空き家をサテライトオフィスとして企業へ貸し出す方法もあります。
サテライトオフィスとは、企業の本社と別の場所に設置されたオフィスのことです。
コロナ禍においてリモートワークが浸透する中、家賃の高い都市部ではなく、賃料の安い地方の空き家をサテライトオフィスとして活用したいと考える企業は少なくありません。
そのため近年は、空き家を活用したサテライトオフィス誘致事業を展開している自治体も増えています。
たとえば福井県鯖江市では、空き家の所有者と空き家を活用したいと考えている企業とを結びつける取り組みを行っています。
企業がサテライトオフィスとして空き家を活用したいと申し出た場合には改修工事費を補助する仕組みとなっているので、あなたが費用を負担する必要はありません。
参照元:福井県鯖江市|サテライトオフィス誘致の取組について
もしあなたの空き家の所在地を管轄する自治体が企業のサテライトオフィスの誘致に積極的なら、コストを抑えながら空き家を有効活用できるようになる可能性があります。
しかし、交通の利便性が悪く従業員が通いにくい立地にある空き家をサテライトオフィスとして活用するのは難しいといわざるを得ません。
コワーキングスペースにする
空き家をコワーキングスペースとして活用するのも選択肢のひとつです。
コワーキングスペースとは、さまざまな年齢・性別・職種の人が設備を共有しながら仕事を行う場所のことです。主にフリーランスの方や個人事業主、起業家、リモートワークをしている会社員などが使用しています。
一般社団法人大都市政策研究機構の「日本のコワーキングスペースの拡大」によると、コワーキングスペースを提供している全国の施設数は2019年6月に799だったのに対し、2022年12月には2,129にまで増えています。
前述のようにリモートワークという新しい勤務形態が浸透していく中、地方にあるコワーキングスペースの需要も高まっています。そのため、空き家をコワーキングスペースに改修して貸し出すことで、安定した収益を得られるようになるでしょう。
しかし、コワーキングスペース経営を成功させるのは簡単ではありません。
まず空き家をコワーキングスペースとして活用するにあたり、内装工事が必要となるケースがほとんどです。コワーキングスペースの利用者の多くは、集中して仕事に取り組める環境を求めているためです。
それに加え、机や椅子、コピー機、自動販売機、高速インターネット回線などの設備の導入が不可欠であり、300万円から1,000万円ほどの初期費用がかかります。
常に利用者がいる状態なら利益が出る可能性がありますが、利用者が少ないと初期費用を回収できずに赤字に陥りかねません。
空き家が駅の近くやオフィス街にあるなど利用しやすい立地にあれば利用者の需要が見込めるので、コワーキングスペース経営に成功する可能性は高いでしょう。
一方で駅から遠いなどアクセスがしにくい、周辺の人口が少ないなどのケースでは利用者を集めるのが難しく、コワーキングスペース経営には向いていません。
飲食店にする
空き家を活用してカフェやレストランなどの飲食店経営を行うのもひとつの方法です。
空き家を飲食店に改装するにあたり、内装工事や設備の導入費用などで1,500万円ほどの費用がかかる点はデメリットといえます。
しかし、自治体によっては空き家の改修工事に際して補助金を支給しているところがあります。たとえば、福井県あわら市では商業エリアにある空き家を活用して店舗を開業しようと考えている方に対して、店舗改修費・備品費として最大500万円の補助金を支給しています。
参照元:あわら市|商業エリア空き店舗・空き家改修事業補助金
自治体の補助金制度をうまく活用して空き家を飲食店へと改装したら、初期費用を抑えることが可能です。空き家が観光地にあるなど飲食店として成功しやすい立地にあるなら、初期費用を回収したうえで十分な利益を得ることも不可能ではありません。
実際、空き家を飲食店に活用して成功している方の事例は数多くあります。
たとえば、徳島県海部郡美波町には空き家を改装して誕生したラーメン店・藍庵があります。四国第23番霊場・薬王寺の門前町に位置していることもあり、地元の人はもちろん、お遍路帰りの人も多く立ち寄る人気のラーメン店です。
参照元:「とくしま回帰」住宅対策総合支援センター|空き家の利活用事例
また、鎌倉にある人気のヴィーガンカフェ・COTONOHAも古民家を改装してつくられました。
参照元:PRTIMES STORY|コロナ禍で潰れかかった鎌倉のカフェが、行列のできる人気店になったわけ。古民家を再生したヴィーガン(完全菜食)カフェ「COTONOHA(コトノハ)」の成功ストーリー
ただし、エリア内の人口が少ない、そもそも人通りがないなど店舗経営に向いていない立地に空き家があるケースでは、飲食店を開業しても成功は収められません。その場合は他の活用方法を検討したほうがよいでしょう。
貸し倉庫を設置する
空き家を丸ごと収納スペースとして貸し出す、あるいは土地の一角にトランクルームを設置して貸し出す方法があります。
築年数が古く建物の状態も悪い空き家を人に貸し出すのは難しいといわざるを得ませんが、貸し倉庫としてなら外壁をリフォームするだけで十分活用できます。初期費用を抑えたうえで収益化を図れる点は、大きなメリットといえるでしょう。
土地上にトランクルームを設置する場合でも数百万円ほどの初期費用で始められるので、賃貸経営など他の活用方法よりも初期費用を抑えられます。
ただし、貸し倉庫経営の収益は賃貸経営よりも少ないので、そこまで多くの利益は期待できません。
また地方のように家1軒あたりの面積が広いエリアなど、収納場所に困っている方がいない地域で貸し倉庫経営を始めても、集客が難しい点に注意が必要です。
ガレージとして貸し出す
空き家をガレージと居住空間が一体となったガレージハウスへ改装して人に貸し出す方法があります。
ガレージがついた賃貸物件は、それほど一般的ではありません。そのため、車やバイクなどを安全に保管できる場所がほしい方からの需要が期待できます。空き家が駅から離れていても、ガレージがあるなら借りたいと考える方は少なくありません。
ガレージハウス経営のメリットは、ガレージという付加価値がついている分、通常の賃貸物件よりも高い家賃を設定できる点にあります。空き家の一部をガレージにするだけなら、100万円から300万円ほどの費用で実現可能な点もメリットです。
しかし、借り手がいなければ当然収益を得ることはできません。ガレージハウス経営は車やバイクの愛好家などターゲット層が絞られるので、成功に導くには賃貸需要をしっかりと調査することが重要といえます。
また、土地が傾斜している、周辺の道路が舗装されていないなど、車やバイクが走りにくい場合には借り手から敬遠されかねず、ガレージハウス経営に向いていません。
セーフティネット住宅にする
空き家を人に貸して収益を得たいなら、セーフティネット住宅にするのもひとつの方法です。
セーフティネット住宅とは、高齢者や障がい者、低所得者、外国人など住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸物件のことです。
空き家をセーフティネット住宅にするには、まず「住宅セーフティネットの情報提供システム」に登録する必要があります。
ただしすべての空き家が登録できるわけではなく、1戸の床面積が25㎡以上、建物が新耐震基準で建てられている、キッチンやトイレ・浴室など一定の設備があるなどの条件を満たす必要があります。
登録にあたり、空き家を住宅確保要配慮者のみが入居できる「専用住宅」か、それ以外の方も入居可能な「登録住宅」にするかを選択します。
このとき、空き家を専用住宅として登録すると、耐震改修工事やバリアフリー改修工事などを行う際に自治体から補助金を受け取れる点がメリットです。
自治体によっては低所得者の入居を受け入れたときに家賃の一部を給付してくれるところがあるため、家賃滞納リスクを軽減できるメリットもあります。
参照元:杉並区|空き家・空き室をセーフティネット住宅に活用してくださる方へ(賃貸人向け)
しかし補助金を利用して空き家の改修工事を行うと、10年間は専用住宅として運用しなければなりません。その間は売却をはじめ他の活用ができない点に注意が必要です。
今後も空き家を所有し続けたい、空き家を活用して収益を得たい方に向いている活用方法ですが、空き家を手放したいと考えている方にはあまりおすすめできません。
専門の買取業者に買い取ってもらう
ここまで空き家の活用方法を11種類ご紹介してきました。
ただし、空き家をリフォームして賃貸物件や民泊などとして活用するには多額のコストが必要であり、必ずしも収益化を達成できるとは限りません。場合によっては、赤字となりかねない点に注意が必要です。
もしコストをかけずに空き家対策を成功させたいなら、専門の買取業者に売却することをおすすめします。
空き家の買取を専門としている買取業者には、買い取った空き家を商品化できる独自のノウハウがあるので、高確率で買い取ってくれます。
空き家にリフォームを施し賃貸物件として運用するなど、最適な方法で活用してくれる点もポイントです。
前述のように、空き家を放置すると劣化に伴う景観の悪化など周辺環境に悪影響を及ぼしかねません。
しかし空き家を専門の買取業者に有効活用してもらうことで、そのエリアに住む人が増えて地域のコミュニティーが活性化されます。つまり、空き家の売却が社会貢献につながるのです。
また、専門の買取業者に空き家を買い取ってもらえば、コストをかけることなく、かつ現金を受け取ったうえでさまざまなリスクから解放される点もメリットです。
前述の空き家を所有することで生じるリスクを回避したいなら、専門の買取業者に相談するとよいでしょう。その際、以下の点を意識して専門の買取業者を選ぶと、あなたの空き家をより高値で買い取ってくれる確率が高まります。
- 空き家の買取に特化しているか
- 空き家の買取実績は豊富か
- 口コミは良いか
- 信頼できる営業担当者か
なお、弊社AlbaLink(アルバリンク)は、全国にある空き家を積極的に買い取っている専門の買取業者です。2011年の創業以来、数多くの空き家を買い取ってまいりました。
弊社には買い取った空き家を再生して活用するノウハウがあるので、たとえ建物の状態が悪かったり、室内に家具やゴミなどが溢れていたりする空き家でも問題なく買い取ることが可能です。
過去にはフジテレビの「newsイット!」にも、空き家を買い取る専門業者として紹介された実績もあります。
弊社なら、買取を通じてあなたの空き家に関するお悩みを解決に導けます。空き家の処分にお困りの方は、ぜひ弊社までお気軽にお問い合わせください。
なお、空き家売却時の注意点や不動産業者の選び方については、以下の記事で詳しく解説しています。併せて参考にしてください。
まとめ
誰も住まなくなった空き家は、劣化が進む一方です。
あなたが所有する空き家が倒壊して近隣の方に被害を与えたら、損害賠償を請求されかねません。たとえ何の用途に使っていなかったとしても、空き家を所有する限り固定資産税を支払い続けなければならない点もデメリットです。
今後も空き家を所有するなら、賃貸物件や民泊などとして活用して収益を上げる対策も選択肢のひとつです。
しかし空き家を何らかの方法で活用しても、必ず収益を上げられるとは限りません。ケースによっては赤字を背負いかねない点に注意が必要です。
立地的に空き家を活用するのが難しい、空き家を所有するリスクから解放されたいなら、専門の買取業者に売却することをおすすめします。
専門の買取業者には空き家を再生して活用できるノウハウがあるので、スピーディーに買い取ってもらえる点がメリットです。
なお、当サイトを運営している弊社AlbaLink(アルバリンク)は、2011年の創業以来、全国の空き家を積極的に買い取ってまいりました。
空き家を活用できる独自のノウハウも豊富に持ち合わせているため、あなたの空き家をスムーズに、かつ適正価格で買い取ることが可能です。
空き家を少しでも早く手放したいと考えている方は、ぜひ弊社までお気軽にご相談ください。弊社が、あなたの空き家に関するお悩みを解決いたします。