空き家に勝手に住む人に所有権を奪われるリスクがある
空き家に第三者が勝手に住みついた場合、所有権を奪われる可能性があります。
民法では、一定条件を満たした状態で、不動産をはじめとした他人の物を占有した際は、占有している物の所有権取得が可能です。
第百六十二条
二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。引用元:民法|e-Gov法令検索
「所有の意思」とは、所有者であるという意識をもって、占有していることを指します。
たとえば、他人の家を所有者以外の人から「買った」とき、売主が本来の所有者ではないことを知っていても、購入者は、「所有の意思」があると認められます。
「所有の意思」は、占有した原因、経緯から、客観的に判断されます。
「平穏に、かつ、公然」とは、他人の物を占有する際、暴行・脅迫などの違法行為を用いず、周囲に「自分の所有物である」ことを隠していない状態です。
上記2つの条件を20年間継続して占有すると、空き家の所有権は勝手に住みついている第三者に移ります。
長期間、空き家に第三者が住みついた状態を放置し続けると、所有権を奪われるおそれがあります。
空き家を放置する5つのリスク
前術したとおり、空き家に第三者が勝手に住みつかれた状態を放置すると、所有権を奪われる可能性があります。
それならば、そのまま放置して、所有権を手放そうと考える人もいるかもしれません。
しかし、空き家を放置すると、不法占拠以外に以下の5つのリスクを抱えることになります。
特定空き家に指定される
空き家を管理せず、放置し続けると、特定空き家に指定され、行政から罰則を受けてしまう可能性があります。
特定空き家とは、管理がされておらず、周囲に悪影響を及ぼすおそれのある空き家のことです。
特定空き家に指定される条件は以下のとおりで、いずれも放置された空き家に見られる特徴です。
- 倒壊など著しく保安上危険となるおそれのある状態
- 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
参照元:空き家の活用や適切な管理などに向けた対策が強化。トラブルになる前に対応を!|政府広報オンライン
特定空き家に指定され、改善が見られなかった場合は、50万円以下の罰金が科されます。
罰金に科された後も、改善されなければ、行政により空き家を強制的に解体されます。
ただし、解体費用はすべて空き家所有者が支払わなければなりません。
また、解体業者は行政側が指定するため、上記の相場以上の解体費用を請求される可能性があります。
なお、解体費用の相場は木造30坪の家の場合、90~120万円です。
行政により空き家が強制的に解体されてしまうと、これ以上の金額を請求されるかもしれません。
空き家の管理が面倒だからといって、放置してしまうと、多額の出費がかかるリスクを抱えることになります。
犯罪に利用される
放置された空き家は、犯罪に利用されるリスクが高くなります。
放置された空き家は庭の手入れがされていない、外壁や窓が補修されていないことがほとんどです。
人が住んでいないことに加え、ほとんどの人が空き家近くに寄り付かなくなるでしょう。
そのため、人目がないことを理由に、空き家で犯罪を犯す人が一定数います。
実際に、詐取金や違法薬物の受け取り場所として空き家が利用されたり、大麻の栽培場所にしたりするケースが生じています。
参照元:千葉・いすみ市の空き家で大麻数十株を栽培した疑い 岩手県警が男2人逮捕|産経新聞
上記のように所有している空き家が犯罪に利用された場合、買い手が心理的に抵抗を覚えて、物件が売れなく原因となるでしょう。
損害賠償を請求される
管理が適切にされていない空き家を放置すると、損害賠償請求をされるおそれがあります。
民法によると、建物の管理ができていなかった場合、建物の所有者が賠償する責任を負うとしています。
第七百十七条
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。引用元:民法|e-Gov法令検索
たとえば、空き家が倒壊して近隣の家に損害を与えたとき、空き家の所有者に対して、損害を与えられた家の所有者は、賠償請求が可能です。
公益財団法人日本住宅総合センターの「空き家の倒壊による隣家の全壊・死亡事故」の損害額の試算結果によると、空き家の倒壊により住宅と人身に損害を与えた場合、損害額は約2.1億円となりました。
参照元:空き家発生による外部不経済の損害額の試算結果(その2)|公益財団法人日本住宅総合センター
空き家を放置すると、自己資金では賄えないほどの多額の賠償金を請求される可能性があります。
維持費がかかる
空き家を所有していると、維持費の支払いも発生し続けます。
空き家を維持する場合にかかる維持費の項目は以下のとおりです。
- 固定資産税(数万円~数十万円/年)
- 都市計画税(数万円~数十万円/年)
- 火災保険料(数万円~数十万円/年)
- 光熱費(数千円~数万円/年)
使わない空き家を放置し続けると、少なくとも年間10万円以上を維持費として支払い続けなければなりません。
また、建物の老朽化による不具合が生じた場合は、業者への修繕を依頼したときに発生する費用負担もあります。
空き家を活用せずに所有し続けると、維持費の支払いのみが発生し、家計を圧迫することになるでしょう。
空き家の維持費について、くわしく知りたい人は以下の記事も参考にしてください。
子や孫に迷惑をかける
子どもをはじめ財産を相続する人がいる場合、空き家は負の遺産となる可能性があります。
相続人は、財産の1つとして空き家も引き継ぎます。
子どもが親の財産を相続する場合、空き家の手入れや維持管理費の負担も子どもが引き受けなければなりません。
前述したとおり、空き家の維持費として少なくとも年間10万円以上がかかるため、その負担が自分の子どもにのしかかります。
空き家を所有したままにすると、親の財産を相続した子どもは使わない不動産の維持管理にお金や労力をかけなければなりません。
空き家の不法占拠者を退去させる2つの方法
前術したとおり、空き家を放置すると、不法占拠以外にもリスクを抱えてしまいます。
また、空き家でも所有している家に勝手に誰かが住みついている状況を好ましく思わない人もいるでしょう。
もし、所有している空き家に誰かが住みついていた場合、以下の2つの方法で退去してもらうようにしましょう。
明け渡し請求をする
空き家に第三者が住みついていることが分かった場合、明け渡し請求をしましょう。
空き家の所有者は、不法占拠者に対して、占拠している空き家の返還を求める権利があります。
明け渡し請求する際は、まず内容証明郵便を送付して、期限を定めて明け渡しするように通知します。
明け渡しに応じなかった場合、強制的に立ち退かせるためには、訴訟が必要です。
勝手に住みついていることが分かった際、不法占拠者との交渉または訴訟による立ち退きを検討しましょう。
なお、明け渡し請求は訴訟をはじめ法律に関する知識が必要ため、法律の専門家である弁護士への相談をおすすめします。
警察に通報する
空き家に住みついている第三者を退去させる方法として、警察への通報が挙げられます。
空き家をはじめ不動産の不法占拠をする行為は、刑法上の不動産侵奪罪にあたる可能性があるためです。
第二百三十五条の二
他人の不動産を侵奪した者は、十年以下の懲役に処する。引用元:刑法|e-Gov法令検索
ただし、警察は不法占拠の状況が悪質な場合を除き、介入しないことがあります。
不法占拠の問題は、前述した民事上の手続きによるべきと考えられているためです。
なお、犯罪・事件にあたる分からないけど警察に相談したい人向けに、警察相談専用電話「#9110」番があります。
「#9110」番では、寄せられた相談に対して助言や相手方への警告、検挙など相談者の不安などを解消するために必要な措置をとってくれます。
参照元:警察に対する相談は警察相談専用電話 「#9110」番へ|政府広報オンライン
空き家に勝手に住んでいる人を退去させるうえで、警察に対応してもらいたい、アドバイスが欲しい場合は、「#9110」番に電話してみましょう。
空き家の不法占拠を防ぐ3つの対策
前述したとおり、空き家に勝手に住みついた人に退去してもらうには、警察に連絡か、明け渡し請求するかの方法をとる必要があります。
しかし、ほとんどの人は、空き家であっても、所有している家を不法占拠されたくないと思うでしょう。
空き家の不法占拠を防ぐには、以下の3つの対策をとることをおすすめします。
定期的に空き家の管理をする
空き家の不法占拠を防ぐためには、定期的な管理が必要です。
空き家に勝手に住みつこうとする人は、人が住んでいる気配がない家をターゲットとします。
そのため、同じ空き家でも手入れがされており、きれいな外観を保っている家はターゲットから外れやすいでしょう。
空き家の不法占拠のターゲットとなりやすい家の特徴は以下のとおりです。
- 雑草が伸び放題
- ポストにチラシがたくさん入っている
- 家の外壁や窓が壊れたままの状態
上記の状態になるのを防ぐには、定期的に空き家に通い、雑草狩りやポストの中身の確認、必要に応じた補修などの手入れをすることが大事です。
なお、空き家の不法占拠を防ぐには、定期的な管理以外の防犯対策も必要です。
空き家の防犯対策についてくわしく知りたい人は、以下の記事も参考にしてください。
空き家管理代行サービスを利用する
空き家を管理する際は、空き家管理代行サービスの利用も検討してみましょう。
自力で空き家を管理する場合、前述した管理をすべて1人でしなければなりません。
また、所有している空き家が遠方にある場合、空き家に通うために時間や労力も費やす必要があります。
代行サービスに空き家管理を委託すれば、あなた自身の時間を使わずとも、空き家を管理できます。
空き家管理代行サービスの管理作業内容は以下のとおりです。
- ポスト確認
- 玄関、庭周りの清掃
- 建物外観の確認
- 建物への侵入の形跡確認
- 室内の換気・清掃
- 通水
- 雨漏り・カビ確認
なお、上記の作業は月1回の頻度で、費用は月額11,000円(税込)です。
参照元:空き家管理サービス スタンダードプラン|日本空き家サポート
空き家が遠方にある人、雑草狩りや室内掃除など面倒な作業をしたくない人におすすめのサービスです。
空き家で賃貸経営をおこなう
不法占拠を防ぐために、空き家で賃貸経営をする方法もあります。
空き家を第三者に貸し出すことで、借主が日常的に管理してくれます。
室内の掃除や換気、ポストの中身確認、雑草狩りなどの管理を自分の時間やお金を費やす必要はありません。
また、安定した副収入も得られ、本業の足しにもなります。
ただし、借り手が見つからない場合、固定資産税や火災保険料などの維持管理費のみ支払い続けることになります。
築浅をはじめ需要が高い物件なら、賃貸経営も方法に入れてもいいかもしれません。
なお、賃貸以外にも空き家の活用方法について知りたい人は、以下の記事も参考にしてください。
空き家を売却する
今後、賃貸経営や自分が住む予定はない場合、空き家の売却を検討しましょう。
空き家を手放せば、定期的に管理する必要もなく、不法占拠されるリスクを考える必要もありません。
空き家の売却方法には、以下の2つの方法があります。
- 仲介業者に依頼する
- 買取業者に依頼する
どちらが適切な売却方法かどうかは、所有している空き家の状態によって変わってきます。
なお、仲介と買取の違いについては、以下の記事も参考にしてください。
仲介業者に依頼する
適切な管理がされている空き家の場合は、仲介業者に売却を依頼してみましょう。
仲介業者に依頼して空き家を売却すれば、物件によっては希望金額での売却も可能なためです。
なお、築浅の物件なら、買い手が見つかりやすく傾向にあります。
弊社が実施したアンケートによると、築年数10年以内の築浅物件を好む人が63%でした。
一方、築年数が経つにつれて、購入希望者が減っていき、31年以上では10%しかいませんでした。
適切に管理されており、かつ、築浅の物件なら、仲介での売却を検討しましょう。
一方、築年数が経っている物件の売却は、仲介では向いていないといえるでしょう。
買取業者に依頼する
築古の建物や老朽化が激しい建物など需要がない空き家の場合は、買取業者に買取の依頼を検討しましょう。
仲介で買い手がつかなかった、あるいは、取り扱いを断られた物件でも、買取業者なら買い取ってくれるケースがあるためです。
前述したアンケート結果から、築古や立地が良くない物件は一般の消費者から敬遠される可能性が高いといえます。
仲介業者に依頼した場合、買い手は一般の消費者のため、売却できないかもしれません。
一方、買取業者の場合、需要がない物件の再生と収益化を実現するノウハウがあります。
そのため、仲介では売却できなかった物件でも、買取業者に対してなら、売却できるケースが多くあります。
仲介で売りに出したが、まったく買い手が見つからなかった場合は、買取業者に売却を依頼してみましょう。
なお、弊社アルバリンクも空き家の買取をしている不動産買取業者です。
築古物件はもちろん、家財が放置されている状態の空き家でもそのままの状態で買取しております。
仲介で売却できなかった、売却のために家財を片付けるのは面倒くさいとお考えの人は、一度アルバリンクにご連絡ください。
【放置されている空き家でも高額売却!】無料で買取査定を依頼する
まとめ
この記事では、空き家に勝手に住む人に所有権を奪われるケースと空き家を放置してはいけない理由を解説しました。
空き家に不法占拠する人は、一定条件を満たし、かつ、一定期間が経てば、所有権を奪うことができます。
そのため、空き家所有者の中には、放置して所有権がなくなれば、いらない空き家を手放せると考える人もいるかもしれません。
しかし、空き家を放置した場合、犯罪に利用されたり、管理が適切ではなかった場合は損害賠償を請求される可能性があります。
もし、不法占拠された場合は、警察に通報、あるいは、明け渡し請求をする方法をとりましょう。
また、不法占拠されたくないなら、以下の方法をとることで防げます。
- 定期的に空き家の管理をする
- 空き家で賃貸経営をおこなう
- 空き家を売却する
所有している空き家に思い入れがなく、今後活用する予定もない場合は売却がおすすめです。
売却を考えるとき、所有している空き家が築古物件をはじめ買い手が見つからないような物件なら、買取業者への売却を検討しましょう。
弊社アルバリンクも買い手が見つからない物件を、積極的に買い取る不動産買取業者です。
放置により老朽化が進んだ空き家、家財が放置された空き家など一般の不動産会社が取り扱いを断るような物件でも問題ございません。
放置している空き家の扱いに困っている人は、お気軽に弊社アルバリンクへお問合せください。