【基本編】不動産の共有名義を解消する方法
不動産の共有名義を解消する基本的な方法を、5つご紹介します。
不動産の共有名義を解消する方法
ただし、どの方法も他の共有者との話し合いや合意が必須です。
もう他の共有者とかかわりたくないのであれば、専門の不動産買取業者に直接売却するべきです。詳しくは「共有者とかかわらずに共有名義を抜け出す唯一の方法」でご説明します。
では、基本的な共有名義の解消方法をご紹介します。
不動産(土地)を物理的に分割して単独で所有する
共有している不動産を物理的に分割し、共有者がそれぞれ単独を所有する方法です。
たとえば、100㎡の土地を、兄と弟の2人でそれぞれ1/2ずつ所有しているなら、土地を50㎡と50㎡に分け、それぞれ単独の所有者として登記します。
ただ、この方法には、以下のような難点があります。
不動産を分割して所有する際の難点
- 共有者全員の合意がなければ実現できない
- 共有している不動産が主に「土地」でなければ実現できない
当然、この方法は、共有者全員の合意がなければ実現できません。共有者どうしの話し合いの際には、「誰がどの部分をもらうか」「どれくらいもらうか」が争点となり、トラブルに発展するおそれもあります。
また、共有している不動産が、主に「土地」でなければ、分割できないのも難点です。つまり、共有している不動産が一般的な戸建て住宅である場合は、この方法では共有名義を解消できません。
不動産を換金して分割する
共有している不動産を一括で売却して、共有関係を解消する方法です。売却代金は、不動産を共有していた者どうしで分割します。
たとえば、兄と弟が1/2ずつで共有していた不動産が5,000万で売却できたら、兄と弟がそれぞれ2,500万円ずつ受け取ります。
ただし、この方法には以下2つの難点があります。
不動産を現金化して分割する難点
- 物件の所有者の一人がそこに住んでいる場合に売却を拒否する可能性がある
- 将来的にその物件に住みたい共有者がいる場合も同様に交渉が決裂しやすい
全員の許可が無ければ一括売却は行えないため、共有者の誰か一人でも反対すると実行できない方法となります。
共有者に持分を売却する
共有者に持分を売却して、共有名義から抜ける方法です。
例えば、2,000万円の価値のある不動産を兄弟2人で所有しているとしましょう。長男が弟に自身の持分を1,000万で売ることで、共有していた不動産は弟の単独所有となり、共有関係が解消されます。
ただし、この方法は持分の売買なので、当然、共有者双方の合意がないと実現しません。持分を買い取る共有者には、相応の支払い能力も必要です。
もし、適正価格よりも著しく低い金額で取引を行うと、「低額譲渡」とみなされます。低額譲渡とみなされると受領者へ贈与税が課せられる点にご注意ください。
共有持分を放棄する
「もう面倒ごとに巻き込まれたくない」「お金はいらないから手放したい」という方は、持分放棄を検討することもできます。
(持分の放棄及び共有者の死亡)
民法第二百五十五条 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
民法によると、土地や不動産の共有持分を放棄した場合、放棄された持分は他の共有者に帰属する、つまり他の共有者の物になります。
複数の共有者がいる場合は、それぞれの持分割合に基づいて計算し分配されます。
たとえば3兄弟で以下のように不動産を共有しているとしましょう。
- 長男 50%(5/10)
- 次男 30%(3/10)
- 三男 20%(2/10)
兄が50%の持分を放棄する場合、これを次男と三男の持分比率(3:2)で分配しますので、兄が30%、弟が20%をそれぞれ受け取ることになります。
- 次男は元々所有していた30%と長男の30%=60%
- 三男は元々所有していた20%と長男の20%=40%
上記のように共有者の一人が持分を放棄すると、他の共有者へ分配されます。
ただし、不動産を共有している状態で自分の持分を放棄する場合は、持分放棄を登記理由として、所有権移転登記を申請しなければなりません。
所有権移転登記には共有者全員の印鑑が必要なので、共有者と仲が悪い、共有者が遠方にいる等の場合は、共有持分の放棄は困難でしょう。
相続後に遺産分割協議をする
相続後に遺産分割協議を行い、共有している不動産を単独所有にする方法です。
相続時に遺産分割協議が行われていないのなら、登記理由を遺産分割協議として、対象物件を単独所有に変更できます。
ただ、遺産分割協議には、当然ながら、共有者の協力が必要になります。
円満に遺産分割協議を進められなかったり、上手く話し合いがまとまらないのであれば、共有名義を解消するのは困難です。
共有者とかかわらずに共有名義を抜け出す唯一の方法
共有名義の解消方法を5つご紹介しましたが、どの方法も、共有者との話し合いや合意が必須です。
共有者とかかわらずに共有名義関係を解消する唯一の方法は、自身の持分のみを売却し、共有名義関係から脱却することです。
個人の買手は、他人の権利関係が複雑に絡み合った共有持分を購入したがりませんが、専門の不動産買取業者であれば、共有持分にも金額をつけて買い取れます。
「もう共有者と話し合いたくない」「話し合いの手間も時間も、労力ももったいない」と感じている方は、ぜひ我々にご相談ください。
弊社AlbaLink(アルバリンク)は、共有持分などの訳あり不動産に特化した買取業者です。ご相談のみのご依頼も、数多く承っております。
なお、不動産業界にありがちと思われる強引な営業等は行っておりませんので安心してお問い合わせください。
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【裁判編】共有名義解消の最終手段「共有持分割請求」
これまで紹介してきたような解決策では話がまとまらない場合、問題の長期化によってストレスも大きくなってしまうでしょう。
当事者同士では解決に至らない場合、共有物分割請求訴訟を起こして、裁判官に共有物の分割方法を決めてもらうという手段もあります。
共有物分割請求とは?
共有物分割請求とは、共有名義を解消するための手続きです。
共有持分の所有者は、他の共有者に対して共有物の分割(つまり共有状態をやめる)を求める権利を持っています。他の共有者と話し合いをしても売却や贈与に合意してもらえない場合に共有物分割請求を行います。
第256条 各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。(後略)
共有しているうちの誰かひとりでも共有物分割請求を行った場合、これを他の共有者は無視できません。共有者全員が分割に向けた協議を行う必要があります。
これにより、今まで協議を拒否していた共有者も動かざるを得ない状況になるため、強制的に共有状態の解消ができるのが利点です。
ただし必ずしも訴訟人の希望通りに話がまとまるとは限りません。請求を行った本人にとって不満足な結果となる可能性もあるため、前もって専門業者や弁護士へ相談しておくことをおすすめします。
共有物分割請求の流れ
共有物分割請求は、初めに共有不動産の所在地もしくは訴訟相手となる共有者の住所を管轄している家庭裁判所へ訴訟を申し立てるところからスタートします。
呼出状が届き裁判が開始され、裁判官による適切な分割方法の判決が下される、というのが大まかな共有物分割請求の流れとなります。
ただし裁判は1年~2年ほどかかるため、長期戦を覚悟する必要があります。判決結果に納得がいかない場合、物件は競売となってしまう場合が多いでしょう。
何年もかけて争ったあげくに安い競売になる可能性があり、「こんなことになるなら最初から専門業者に買取してもらえばよかった」と後悔する方も少なくありません。
共有物分割請求訴訟にかかる費用
共有物分割請求訴訟を行う際には印紙代と弁護士費用が掛かります。
印紙代は共有不動産の固定資産税評価額から算出される「訴額」により変動します。訴額が10万円以下だと印紙代が1,000円、90万~100万円未満であれば1万円というように状況によって差があります。
弁護士費用として初めに発生する着手金の相場は約30万円、さらに報酬として共有物分割で得られた資産の約5%を渡すのが一般的です。
【特殊ケース編】共有者が、認知症/死亡/行方不明/失踪
一般的な共有持分の解消方法を5つご紹介しましたが、場合によっては特殊なケースが発生し、一般的な方法では解決できないことも考えられます。
ここからは共有者が認知症を発症した場合や、亡くなってしまった・失踪してしまったといった特殊なケースで共有名義を解消する方法について解説していきます。
共有者が認知症を発症なら「成年後見制度」を利用
少子高齢化が進行する昨今、認知症の問題は身近な話題となりつつあります。
不動産の売却においても問題になることが多く、その理由は共有者が認知症になってしまうと不動産の売却ができなくなるためです。
もしも共有者のひとりが認知症になってしまった場合は、「成年後見制度」を利用することをおすすめします。
成年後見制度とは、認知症を含む判断能力が十分でない方を法律の観点から保護する制度です。
成年後見制度の利用を検討する場合の相談先として以下のような機関があります。
成年後見制度の利用相談先
- 公益社団法人「成年後見センター・リーガルサポート」
- 日本司法支援センター「法テラス」
- 地域の「社会福祉協議会」もしくは「地域包括支援センター」
成年後見制度には認知症などで判断能力が低下する前に後見人を選定しておく「任意後見制度」と、認知症が発症した後に親族が申請する「法定後見制度」の2種類があります。
任意後見制度とは
認知症などで判断・意思決定能力が低下する前に、「後見人」と「後見人に代行してもらいたい事務内容」をあらかじめ契約しておく制度を「任意後見制度」と言います。
簡単に言うと「今はまだ元気で判断できるけど、後々自分が認知症になったら家族を困らせてしまうだろう」と事前に後見人を選んでおく制度です。
手続きの流れは、信用できる親族や友人(後見人になってもらう人)を連れて、必要であれば弁護士や司法書士と一緒に公証人役場へ行き、任意後見契約を締結して登記されると完了となります。
「任意後見契約」を締結後、本人が認知症を発症して意思決定・判断能力が低下した場合は、家庭裁判所で「任意後見監督人専任の申し立て」を行い、家庭裁判所の監督の元で後見人が代理業務を行えるようになります。
任意後見制度を利用することで、権利所有者が認知症になったとしても家族や親戚、共有者を困らせる可能性がなくなる点は大きなメリットと言えるでしょう。
法定後見制度とは
認知症で本人の意思決定・判断能力が低下した後に、後見人を定めて代理業務を行うことを「法定後見制度」と呼び、後見人を選ぶのは家庭裁判所です。
本人の症状の度合いによって後見者の代理業務の範囲が異なり、軽い順から「補助」「補佐」「後見」の3つのレベルに分けられます。
先ほど解説した「任意後見制度」は本人があらかじめ後見人を準備しておく制度ですが、「法定後見制度」は本人のご家族や親戚の方が申請して利用する制度です。
共有者が死亡した場合の解消法
共有者が亡くなったら、原則として、共有者の法定相続人に持分が引き継がれると、民法255条で定められています。
ですが、共有者の法定相続人に持分が引き継がれれば、権利関係はさらに複雑になってしまいます。
というのも、共有者の相続人なんて、あなたにとっては他人同然の関係性かもしれませんし、共有者の相続人が複数人いたら、当然物件の所有者が複数人になるからです。
不動産を処分(売却)したり、使用したりするときには、他人同然である共有者の相続人たちに、逐一合意を得なくてはいけません。
このようなリスクを避けるために、共有者が亡くなったら、共有者の相続人に持分を譲ってもらえないか交渉してみましょう。
もしくは、あなたが共有持分を手放してもいいと思っているなら、共有者の相続人に、持分を譲ってしまう方法もあります。
共有者の死亡は、共有名義を解消するには最適なタイミングなので、いづれかの手段をとるようにしましょう。
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生死が分からない場合は「失踪宣告」を申し立てる
共有者の生死すらわからない状況が、最後に連絡が取れた日から7年以上続いている場合は、家庭裁判所で「失踪宣告」の申し立てができます。
申し立てが成立すると不在者は死亡したものとみなされ、相続(遺産分割)で共有名義を解消できます。
ちなみに、失踪した理由やきっかけが戦争・震災・船の沈没などに該当する場合は生死不明となって1年で失踪宣告の申し立てが可能です。
まとめ
共有名義(共有関係)の解消法についてご説明しました。
不動産の共有名義は、何かとトラブルに発展しやすいので、早急に解消するべきです。このまま放っておくと、共有者が死亡し、持分が相続人に引き継がれることで、共有関係はより一層複雑になります。
共有者と顔を合わせたり話し合ったりするストレスなく共有名義から脱却したいのであれば、専門の不動産買取業者に直接売却するのが賢明でしょう。
弊社は、共有持分もスピード買取を行っております。わずらわしい共有名義から脱却して、ぜひ肩の荷を下ろし、心配事のない人生を送ってください。
我々が少しでも皆さんのお力になれれば幸いです。