共有不動産全体の売却には共有者全員の合意が必要
共有名義とは、不動産を所有する登記名義人が複数いる状態をいいます。
共有名義の物件は「共有持分」という割合的な権利が設定されていて、自分の権利となる割合が持分です。
共有者が共有持分物件を使用できる行為には制限があります。
物件全体を売却する行為は「処分(変更)行為」として全員の合意が必要だと民法第251条に定められてます。
参照元:民法第251条
ちなみに、制限されているのは売却だけではありません。賃貸物件として貸し出すにも、共有者の合意が必要です。
共有者が海外に住んでいる場合は、合意を得ることが難しいケースもあり、通常通りに売却できないことが考えられます。
共有者が海外に住んでいる共有不動産の売却方法3選
共有持分の不動産を売却するには、共有者全員の合意が必要ですが、共有者が海外に住んでいる場合の売却は以下のような方法があります。
共有者本人が帰国して売買契約に立ち会う
海外に居住している共有者が、契約時に日本に帰国して立ち会う方法です。
共有持分の不動産売却では、売買契約の際には名義人全員が立ち会う必要があります。
居住地が海外でも、本人が立ち会えるのであれば通常の売却と同じなので、特別に問題視する必要はありません。
ただし、共有者が海外在住の場合、通常の不動産売却と異なる書類が必要です。
不動産売却では住民票や印鑑証明が必要ですが、海外在住だと日本の住民票は取得できません。
印鑑証明の発行には住民票が必要なので、印鑑証明も準備できないことになります。
海外在住者はどのような書類が必要なのかは、後の「【共有者が海外にいる!】売却の際の必要書類」の項目で詳しく解説します。
海外にいる共有者の代理人を立てる
海外に居住している共有者の代理人を立てて、その代理人が売却する方法もあります。
委任状の作成が必要なので、郵送するなど準備して代理人を立てます。
不動産売却には売買契約を結ぶだけでなく、買い手を決めたり、他の共有者と意見を取り持ったり、さまざまな手順があります。
代理人は委任状に記載されたことしかできないので、不備があれば売却を中断しなければなりません。
売却をスムーズに進められるよう、委任状作成の際はしっかりと委譲権限を決めておくことが重要です。
自身の共有持分だけで売却する
物件全体の売却ができない場合でも、自分の持分だけであれば売却できます。
共有者が海外に居住している場合、どこにいるのかわからずに連絡をとる手段がないケースがあります。
また、連絡しても「帰国する時間がない」「代理人を立てるのが面倒」などと対応してもらえないことも考えられます。
売却すること自体には合意している場合でも、帰国や代理人を立てるなどの対応がなければ売却ができません。
不動産全体を売却できない場合は、自分の持分を単独で売却すれば、現金を得られて不動産の共有状態を解消できます。
自分の持分を売却する場合、買い手は共有持分の権利の一部しか購入できません。購入しても共有持分物件を自由に使えないので、一般的には買い手が見つかりません。
しかし、持分に特化した専門の不動産買取業者であれば、持分のみでも積極的に買い取ってくれます。
弊社Albalink(アルバリンク)も、持分のみの買取実績が豊富にございます。
売主様(持分の所有者様)が、他の共有者と事前に連絡を取ったり面倒な手続きを行う必要はありませんので、気負わずにお気軽にご連絡ください。
もし他の共有者と仲違いしているのであれば、売却の旨が外部に漏れないよう内密にお手続きさせていただきます。
なお、以下の記事では共有持分を売却する流れや高く売るコツ、売却時の注意点について解説しているので、併せて参考にしてください。
【共有者が海外にいる!】売却の際の必要書類
共有持分の不動産の売却では、契約の際に海外在住の共有者は、出席できるかどうかによって必要な書類が異なります。
共有持分の不動産を売却する際には、共有者全員の立会いが必要です。
共有者に海外在住者がいる場合には、帰国して契約に出席できるのかどうかを確認してください。
ここでは、海外在住の共有者が契約に出席できる場合と、できない場合それぞれに必要な書類を解説します。
本人が出席する場合
海外在住の共有者本人が契約の場に出席できるなら、海外在住だからといって特別なことはなく、通常通りの流れに沿って売却が進められます。
ただし、海外在住だと必要な書類が異なるので、注意が必要です。以下の書類を準備してください。
- 権利証
- 印鑑証明書・実印
- 在留証明書
- サイン証明書
それぞれの書類について、詳しく見ていきましょう。
権利証
登記済証とは権利証の正式名称で、紙製の証書です。
【登記権利証(登記識別情報通知書)の見本】
権利証は、不動産の所在地や所有者、売買や相続などの不動産取得理由のほか、12ケタの英数字による登録識別番号が記載されています。
不動産売買や相続などによって、新たに所有権や持分を取得した際に発行されます。
現在、権利証には次の2種類のものがあります。
- 登記済証(権利証)
- 登録識別情報
登録識別情報とは、登記済証と同じものですが、紙ではなく法務局がオンラインで管理しています。
平成17年3月6日の不動産登記法改正によって、権利証のオンライン化が始まりました。
参照元:法務省|不動産登記の電子申請(オンライン申請)について
不動産登記法が改正される以前に取得した不動産は、すべて紙製の登録済証が発行され、改正以降はオンラインの登録識別情報となっています。
紙の権利証だと、きちんと保管できていないケースも多く、紛失してしまった人もいるでしょう。
見当たらない場合は費用がかかりますが、代用できる書類を司法書士に作成してもらえるので、不動産会社に相談しましょう。
印鑑証明と実印
不動産を売却すると所有権が移転するため、印鑑証明書と実印が必要です。
登記の際に、本人が所有権の移転を承認している証拠として実印を押印します。
印鑑証明書は、押印された実印が本物であることを証明するためのものです。
参照元:浜松市|印鑑登録証明書
印鑑証明書の発行には住民票が必要ですが、海外に居住している場合には住民票がありません。
住民票がなければ印鑑証明書を発行してもらえないので、印鑑証明書と実印の代わりに必要となるものが在留証明書とサイン証明書です。
在留証明書
在留証明書は外国人がその国に居住していることを証明するもので、日本の住民票と同じような意味をもつ書類です。
参照元:外務省|在外公館における証明
発行できるのは在外公館のみなので、日本国内ではできません。
海外に居住する共有者が帰国する際には、必ず在留証明書を準備し、忘れないように持ち帰るよう伝えてください。
万が一、在留証明書を忘れてしまった場合には、契約をする不動産会社に相談しましょう。
現地の運転免許証など、在留証明書の代用が認められることがあります。
サイン証明書
サイン証明書は、日本の印鑑証明書のようなものです。領事の目前で署名と拇印を押しましょう。
参照元:法務省|外国に居住しているため印鑑証明書を取得することができない場合の取扱いについて
代理人を立てる場合
忙しくて帰国できない場合や、共有持分売却のためだけに費用をかけて帰国できないなど、契約に出席できないケースは多いでしょう。
共有者本人が契約に出席できなくても、代理人を立てれば契約ができます。
代理人を立てる場合に準備する書類は、本人が出席する場合の権利証や在留証明書、サイン証明書に加えて委任状が必要です。
委任状は「本人に代わる権利を代理人が持つ」ことを証明する書類です。
代理人は、共有者本人の意思を伝えるだけの役割ではなく、与えられた権限の範囲内であれば、自由に意見を述べられます。
不当な価格や望まない条件での売却を防ぐためにも、代理人の権限を明確に記載しておく必要があります。
委任状の作成方法について解説するので、作成する際には参考にしてください。
委任状の作成方法
不動産売却において、委任状はとても重要です。
委任状の作成方法を知らないと、思わぬ価格や条件で売却されてしまうトラブルに繋がりかねません。
委任状には決まった書式がなく、以下の必要事項が記載されていれば正式な委任状として成立します。
委任状に記載する必須事項
- 本人と代理人の氏名・住所
- 委任する内容
- 押印
ただし、最低限の内容で委任状を作成した場合、不利な条件で売却されるなどトラブルの原因となるので注意が必要です。
委任状を作成する際には、以下の内容もきちんと記載してトラブルを防ぎましょう。
委任状に記載するべき内容
- 不動産の表示項目
- 売却条件・金額
- 手付金の金額
- 引き渡し日
- 残代金支払い日・支払い口座
- 売買契約の解除期限・解約金
- 固定資産税の負担割合
- 所有権移転登記の日付
- 委任日
- 委任状の有効期限
また、委任状を作成する際は以下の3点にも注意しましょう。
委任状を作成する際の注意点
- 曖昧な表現を避ける
- 捨印を押印しない
- 最後に「以上」を記載する
委任状に曖昧な表現を使用するのは危険なので、「すべて」「一切」ではなく具体的な記載が必要です。曖昧さは代理人の権限を広げ、代理人の判断でさまざまなことを決定できてしまいます。
また、委任状の余白部分に押印する捨印も、代理人に委任の権限を変更される可能性があります。捨印は不要です。
そして、委任状の最後に「以上」と記載がなければ、捨印と同じように内容を追加で記入ができます。代理人など第三者による追記を防ぐためにも、「以上」が必要です。
なお、以下の記事では共有名義不動産の売却で委任状を作成する際の注意点を解説しているので、併せて参考にしてください。
海外在住の共有者が居る不動産の売却時にかかる税金
不動産売却では、譲渡所得税などの税金がかかります。
海外在住の場合、税金がどうなるのか気になるところであると思いますが、日本国内で所得を得た国内源泉所得については、所得税の課税対象です。
確定申告が必要なので、税金についてしっかりとチェックしておきましょう。
譲渡所得税を計算する
譲渡所得税の計算式は、以下の通りです。
{売却金額-(不動産取得費+売却費用+特別控除)}×税率
譲渡所得税は、不動産を売却した利益に対して課税される税金です。
不動産を売却した金額から、その物件を購入したときの金額や売却にかかった費用、特別控除を差し引きます。差し引いた金額よりも売却金額が多いと、利益を得ているので課税対象です。
譲渡所得税の税率は、不動産を所有していた期間によって異なります。
売却した年の1月1日を基準に計算し、所有期間が5年未満だと短期譲渡所得で30%の税率、5年以上だと長期譲渡所得で15%の税率です。
参照元:No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)|国税庁HP
相続した共有持分物件の場合、相続後すぐに売却すると短期譲渡所得になってしまうと思われそうですが、亡くなった方が取得した時期が適用されます。
亡くなった方が5年以上所有していた不動産であれば、長期譲渡所得となります。
譲渡所得税には住民税も含まれますが、海外在住者の場合は課税されません。
ただし、その年の1月1日時点では日本に住所があった場合には、住民税の課税対象となるので気をつけてください。
なお、不動産売却時にかかる税金や税金を軽減できる特例については以下の記事に詳しくまとめてあります。併せてご参照ください。
納税管理人を選任して確定申告を行う
海外居住者が確定申告をするためには、日本に住所を持つ納税管理人を選出しなければなりません。
参照元:国税庁|No.1923 海外勤務と納税管理人の選任
納税管理人は、海外居住者の代わりに確定申告や納税をする役割を担います。
納税管理人は個人でも法人でもどちらでも良いので、親族を選任するのが一般的です。
親族との関係が良好でないなど、親族を選任できない場合には税理士事務所や会計事務所に依頼しましょう。
納税管理人を選任しないで出国する場合、出国までに確定申告と納税を終えなければなりません。
出国後に課税対象となる所得が発生した場合には、納税管理人を選任して翌年の確定申告期間(2月16日〜3月15日)に確定申告をする必要があります。
買主の購入代金から源泉徴収される場合もある
海外在住者の不動産売却では、日本国内で得た所得を確定申告しないで海外に持ち出すことを防止するため、買主が購入代金から源泉徴収して納税するケースがあります。
ですが、以下の3つの条件を満たした場合は源泉徴収されません。
- 買主が個人
- 買主本人、または買主親族の居住用
- 共有者の持分に応じた売却価格が1億円以下
共有持分の売却で多いのが、買主が個人ではなく不動産買取業者というケースです。また、買主が個人の場合には、居住用ではなく不動産投資用であることが多いです。
不動産買取業者による買取や、不動産投資に使われる場合には上記の条件に当てはまらないため、源泉徴収されます。源泉徴収や納税は買主がするので、手続きは何も必要ありません。
源泉徴収されると海外居住者が受け取る金額は、自分の持分に該当する譲渡価格よりも少なくなるので驚かれるかもしれません。
しかし、確定申告をすると還付されることがあります。譲渡所得税を自分で計算し、源泉徴収額のほうが多い場合は還付を受けられます。
源泉徴収される場合は、譲渡所得税の有無にかかわらず、納税管理人を選任して確定申告をしましょう。
参照元:国税庁|No.2020 確定申告
まとめ
共有持分の不動産を売却するとき、契約の際には共有者全員の出席が必要です。しかし、共有者の中に海外居住者がいることがあります。
海外居住者が帰国できない場合には、代理人を立てれば契約が可能ですが、共有持分の売却は共有者全員が国内にいる場合でも話し合いがなかなかまとまらず、簡単には進まないケースが多いです。
「今後も海外に住み続けるため、日本にある面倒な不動産には関わりたくない」「そもそも共有者が海外のどこにいるのか不明」などの理由で、売却の合意が得られないことも考えられます。
共有者との関係が良好でないなど、売却が難しい場合には、自分の持分だけを売却しましょう。
弊社Albalink(アルバリンク)では、共有持分など、売却しにくい不動産も積極的に買い取っています。
売主様(持分の所有者様)が面倒な手続きを行ったり、共有者と顔を合わせて話し合ったりする必要は一切ありませんので、お気軽にお問い合わせください。