亡くなった共有者の共有持分は誰に相続されるか
共有者のうちの1人が亡くなった場合、被相続人(財産を遺して亡くなった人)の共有持分が相続の対象となります。
ただ、このとき間違いやすいのが、「被相続人の持分が、自動的に生きている他の共有者のものになるわけでは無い」という点です。
親子で資金を出し合う(住宅ローンを含む)などして購入した「共有名義の不動産」であっても、共有持分は他の遺産と同様に民法上のルールに則って相続されるからです。
共有持分を含めた遺産の相続先は、下記の優先順位で決まります。
下記で1つずつ解説していきます。
法定相続人
第一に、共有持分を含めた被相続人の遺産を相続する権利は、法定相続人にあります。
法定相続人とは、民法で定められた相続人のことであり、被相続人の「配偶者」や被相続人と「血縁関係にある親族」が該当します。
なお、法定相続人の中でも、「遺産を受け継ぐ優先順位」と、「遺産の取り分(法定相続分という)」が定められています。以下のとおりです。
前提として、被相続人の配偶者が生きている場合は、必ず法定相続人になる。
第一順位:被相続人の子供(子供がすでに死亡している場合は孫)
第二順位:被相続人の父母(父母が死亡している場合は祖父母)
第三順位;被相続人の兄弟姉妹(兄弟姉妹が死亡している場合はその子供)
法定相続人 | 法定相続分(相続人に認められる遺産の取り分) |
---|---|
配偶者と子供(孫) | 配偶者「1/2」 |
子供(孫)「1/2」※2人以上いる場合は更に分ける | |
配偶者と父母(祖父母) | 配偶者「2/3」 |
父母(祖父母)「1/3」※2人以上いる場合は更に分ける | |
配偶者と兄弟姉妹(その子供) | 配偶者「3/4」 |
兄弟姉妹(その子供)「1/4」※2人以上いる場合は更に分ける |
参照元:民法第900条
なお、法定相続分と異なる割合(共有者である子供が1人で持分を相続するなど)で遺産を相続する場合は、「遺産分割協議」を行う必要があります。
法定相続人全員で遺産の分け方を話し合うこと
遺産分割協議で遺産の配分を決める場合、法定相続人全員の合意がなければ、亡くなった親の共有持分を、共有者である子供が相続することはできません。
この記事の「親子共有名義で親が亡くなった際の相続例」で具体例に当てはめてわかりやすく解説していますので、ご確認ください。
法定相続分の割合や順位については、以下の記事で詳しく解説しています。
特別縁故者
被相続人に法定相続人が誰もいなければ、「特別縁故者(とくべつえんこしゃ)」が遺産を受け継ぐことができます。
特別縁故者とは、「被相続人と生前に特別な関係にあった人」のことです。
なお、特別縁故者として遺産を受け継ぐ場合は、家庭裁判所へ「相続財産清算人の申立」を行う必要があります。
相続財産清算人の申立については参照元の裁判所HPをご確認下さい。
参照元:裁判所「相続財産清算人の選任」
他の共有者
配偶者や親族同士で共有名義になっていることが大半であるため、共有者は法定相続人になることが殆どです。
親子共有名義の場合も、当然、共有者である子供は亡くなった親の法定相続人になります。
ただ、被相続人と血縁関係にない第三者が共有者であったとしても、被相続人に法定相続人も特別縁故者もいない場合は、共有持分を受け継ぐことが可能です。
参照元:民法第255条
なお、被相続人と血縁関係にない共有者が、共有持分を受け継ぐ場合は、特別縁故者と同様に家庭裁判所へ「相続財産清算人の申立」を行う必要があります。
親子共有名義で親が亡くなった際の相続例
共有持分がどのように相続されるか分かったかと思いますが、まだイメージは付きづらいのでは無いでしょうか。
そこで、ここからは具体例を交えながら共有持分の相続を解説していきます。
「遺産分割協議」により共有持分を相続した場合
ここでは、親の共有持分を「遺産分割協議」によって、共有者である子供が1人で相続する例を見ていきましょう。
親子共有名義の具体例
- 父親と子供Aの2人が不動産を「2分の1」ずつで共有。
- 父親が死亡し、「父の持分」が相続の対象物。
- 法定相続人には、「A」「Aの母親」「Aの弟」がいる。
この場合、Aは母や弟と遺産分割協議を行って、父の持分を共有者であるAが1人で相続することができれば、不動産はAの単独名義になります。
「法定相続分」通りで共有持分を相続した場合
では、上記例で法定相続分通りに相続するとどうなるでしょうか。
親子共有名義の具体例
- 父親と子供Aの2人が不動産を「2分の1」ずつで共有。
- 父親が死亡し、「父の持分」が相続の対象物。
- 法定相続人には、「A」「Aの母親」「Aの弟」がいる。
この場合、法定相続分通りに父の持分を相続すると、持分割合は以下の通りになります。
- A持分「8分の5」
- 母持分「4分の1」
- 弟持分「8分の1」
このように、共有持分を法定相続分通りに相続してしまうと、共有者の人数が増えてしまいます。
ですから、法定相続分通りに共有持分を相続することはおすすめしません。
たとえ、どんなに仲の良い家族であっても、不動産の共有者となることでいずれ取り返しのつかないトラブルになるおそれがあるからです。
具体的な、トラブルはこの記事の「共有持分の相続時は共有名義を解消するべき」で詳しく解説していきます。
共有者の片方が死亡した際の相続手続きの手順
では、共有者の片方がなくなった際、どのように手続きをすればよいのか見ていきましょう。
共有者が亡くなった際の手続きは以下の通りです。
以下で順に解説していきます。
遺言書の有無を確認
被相続人がのこした遺言書があれば、基本的には記載内容に従って遺産を分けることになります。
被相続人の死亡を知ったら、まずは遺言書の有無を確認しましょう。
遺言書とは、被相続人が「自身の財産を誰にどれだけ残すか」を記した書類です。
大きく分けると、自身で財産目録以外を全文手書きで書く「自筆証書遺言」、公証人に作成してもらう「公正証書遺言」の2つがあります。
【自筆証書遺言の見本】
具体的には、被相続人の自宅を探す・親族に聞くなどで、自筆証書遺言が存在するかを確認します。
もし見当たらなければ、公証役場に公正証書遺言として保管されている可能性がありますので、問い合わせてみましょう。
公証役場
遺言や任意後見契約などの公正証書の作成、保管などを行う役場
お住いの近くの公証役場は、日本公証人連合会のサイトで確認できます。
もし遺産分割協議後に遺言書が発見されると協議がやり直しになってしまうので、しっかり確認しましょう。
相続人と相続財産の調査・確定
遺産分割協議に入る前に、相続財産調査を行い「遺産の種類や価値」と「相続人の人数」を確定しておきましょう。
協議の成立後に被相続人の新たな財産が出てきたり、他の相続人の存在が発覚したりした場合も、遺言書と同様に協議が振り出しに戻ってしまうからです。
相続財産調査を行う前には、弁護士や司法書士などの専門家に依頼して指示を仰ぎましょう。
- 弁護士に相続財産調査を依頼したほうが良い場合
- 相続人の数が多かったり、関係性が悪かったりなど、協議をまとめるのが容易でない場合
- 司法書士に相続財産調査を依頼したほうが良い場合
- 相続人同士ですぐ協議をまとめられて、協議書(後述)の作成と相続登記のみの対応で済む場合
住宅ローン残債の有無を確認
相続の対象物となる共有不動産に住宅ローンが残っていないか確認しましょう。
相続人は、被相続人が遺したプラスの財産とともにマイナスの負債も全て受け継ぐことになるからです。
通常、住宅ローンには「団体信用生命保険(団信)」があり、ローン契約者が亡くなった際は、残債務を全て弁済してもらえるため、過度に心配する必要は無いでしょう。
住宅ローン返済中に病気やケガ、死亡などにより、契約者が返済を続けることができなくなった際に、住宅ローン残高がゼロになる保険。
ただ、親子共同名義で住宅ローンを契約している場合は話が異なります。
親子共同名義の住宅ローン(リレーローンやペアローン)の場合は、団信は基本的に子供のみの加入になり、債務者の親が死亡しても債務が残るからです。
親が団信に加入可能な契約もありますが、高齢であるなどの理由から、保険加入審査に引っかかっているケースが大半です。
そのため、親子共有名義でない場合は保険金の受け取りのために、親子共有名義の場合は、ローン支払いの引き継ぎのために、必ず金融機関に連絡しましょう。
遺産分割協議
相続人と遺産が確定したら、相続人全員で遺産分割協議を行い、共有持分を含めた遺産の分け方を決めましょう。
遺産分割の方法は以下の3つです(詳しくは「共有名義を回避して親の共有持分を相続する方法」で後述します)。
- 現物分割
- 価値が公平になるように複数の遺産を分ける
- 代償分割
- 公平にならない分を代償金で清算する
- 換価分割
- 不動産を売却して現金を分ける
なお、遺産分割協議を行わずに、法定相続分通りに相続登記することも可能ですが、将来的に共有者間で取り返しのつかないトラブルに発展する恐れがあるため、おすすめできません。
具体的なトラブルに付いては後ほど解説します。
遺産分割協議書のひな形
遺産分割協議書のひな形をご紹介します。
下記は、弊社Albalinkで使用している遺産分割協議書です。
上記を見てもらえばわかるように、遺産分割協議書には被相続人・相続人の氏名や、対象の不動産の所在地、遺産分割配分などを記載します。
なお、共有不動産の遺産分割協議書の作成方法については下記の記事もご確認ください。
相続登記による名義変更
遺産分割協議がまとまったら、相続登記(不動産の所有権を移す手続き)を行い、不動産の名義変更をしましょう。
相続登記する際には、前項でご紹介した遺産分割協議書を添付の上、登記申請書を法務局へ提出します。
相続登記は個人で行うことも可能ですが、専門知識を持たない個人が登記申請を行い、登記内容を間違えてしまえば、再申請を求められたり、最悪本来払う必要なのない相続税を課されたりするおそれがあります。
よって、相続登記は専門知識を有する司法書士に依頼することをお勧めします。
なお、令和6年4月1日より相続登記は義務化されています。
参照元:法務局|相続登記が義務化されます(令和6年4月1日制度開始)
令和6年4月1日より以前に行われた相続(下図参照)に関しても、未登記の場合は10万円以下の罰金などペナルティが課せられてしまうので、必ず相続登記を行いましょう。
相続税の申告・納付
相続登記が完了したら、相続税の申告と納付を忘れずに行いましょう。
ただ、相続税には「3,000万円+600万円×相続人の数」の基礎控除があり、相続した財産の価格が控除額を下回る場合は申告が不要です(税額の計算例は次項で解説)。
相続税は「被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内」に管轄の税務署へ申告と納付を済ませなければなりません。
仮に、被相続人の死亡を知った日が「2月1日」とすると、同年の12月1日が相続税の納付・申請の期限となります。
なお、共有持分やその他の遺産が絡む相続の場合は、相続税の計算が複雑になるため、税理士などの専門家に相談すると良いでしょう。
親子共有名義の相続にかかる3つの税金と費用
共有持分の相続時には、以下の3つの費用がかかります。
以下で、順に解説していきます。
相続税
共有持分を含め遺産を相続した場合、受け継いだ遺産の価格に対して相続税がかかります。
相続した土地、建物の固定資産評価額×0.4%-(3,000万円+600万円×相続人の数)
ただ、上述した通り、「3,000万円+600万円×相続人の数」の基礎控除があるため、相続税はかからないことのほうが多いでしょう。
具体例をもとに解説していきます。
固定資産税評価額が5,000万円の共有不動産。
父と兄が「2分の1」ずつで共有している。
父が亡くなり、共有持分のみが相続の対象物。
この場合、相続財産の評価額は2,500万円となり、基礎控除額の「4,800万円(3,000+600×3)」を上回らないため、相続税は1円もかかりません。
なお、生前に親子で物件上に同居していた場合は、「小規模宅地等の特例」を適用できる可能性があります。
この特例を適用すれば、不動産の評価額を最大で80%オフで計算でき、更に相続税が掛かる可能性は下がります。
ただ、安易に申告を怠れば、「追徴課税・延滞税」などのペナルティを課されるおそれがあるので、税理士などの専門家に相談して正確に計算することをおすすめします。
なお、小規模宅地の特例の要件など、詳しい情報については、こちらの記事をご確認ください。
また、相続税対策を行いたい方はこちらの記事に詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。
初めての相続や保険関係で何から行えばいいか分からないという方は、下記も参考にしてください。
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登録免許税
相続登記を行う際は、登録免許税がかかります。
税額の計算方法は以下の通りです。
不動産の固定資産税評価額×4/1000
例えば、評価額が3,000万円の不動産であれば、登録免許税の額は、「3,000万円×4/1000=12万円」となります。
登録免許税は、相続登記の申請を行う際に税務署に支払う必要がありますが、登記手続きを司法書士に依頼している場合は、担当の司法書士へ手渡しで支払うことが可能です。
なお、遺産相続ではなく、贈与や売買の場合には登録免許税の額は、「不動産の評価額の20/1000」となります。
なお、以下の記事では、登録免許税の軽減措置などについて解説していますので、あわせてご確認ください。
司法書士への報酬
相続登記の手続きを司法書士に依頼する場合、司法書士へ報酬金を支払う必要があります。
相続登記のみを依頼した場合の司法書士に対する報酬額の相場は「6~8万円程度」です。
ただし、財産調査や遺産分割協議書の作成を併せて依頼した場合は、増額する可能性があります。
司法書士への報酬金は、相続登記が完了した後に支払います。
共有持分の相続時は共有名義を解消するべき
この記事の「親子共有名義で親が亡くなった際の相続例」で解説した通り、共有持分を法定相続分通りに相続してしまうと、共有者の人数は更に増えます。
そのため、共有持分の相続時は、不動産の共有名義を解消するべきです。
将来的に、共有者同士で以下のようなトラブルに発展するおそれがあるからです。
なお、自分の共有不動産によって、配偶者や子供へ迷惑をかけないための生前対策については、この記事の「共有持分の相続前にできる生前対策」で解説していますので、参考にして下さい。
相続後に不動産の活用や処分を巡って争いが起きる
共有持分の相続によって新たな共有者が増えてしまうと、いずれ共有者間で不動産の売却や活用を巡って争いが起きるおそれがあります。
共有名義の不動産は、民法上、売るにしろ、貸すにしろ、リフォームするにしろ、逐一共有者の同意を得なければならないからです。
例えば、親と自分が不動産を共有しており、自分が物件に住んでいるとしましょう。
もし、親が亡くなり、持分を法定相続分通りにもう片方の親や兄弟と相続してしまうと、不動産を売却したいと思ったときに、親や兄弟全員の意見を一致させなければならなくなります。
固定資産税や不動産の維持管理費を連帯して支払わなければならない
共有不動産にかかる固定資産税や管理・維持にかかる費用は、原則共有者全員が持分割合に応じて負担しなければなりません。
にも関わらず、他の共有者が「費用を負担しない」「話し合いにすら応じない」といった場合は、不満が溜まり共有者間でトラブルになりかねません。
自分の子供や孫の代には手遅れになる
不動産を共有名義のままで放置していると、将来自分の子供や孫までもがトラブルに巻き込まれて、取り返しがつかなくなるおそれがあります。
共有者のうちの誰がが死亡する度に、持分の相続が繰り返され、共有者が際限なく増えて合意形成が困難になるからです。
現に、度重なる相続で共有者が大人数になりすぎて、もはや他の共有者の顔も名前も知らないといったケースもあります。
そうなれば、共有者のうちの誰か(例えばあなたの子供など)が「不動産を売却したい」と思っても、まずは共有者を探すところから始めなければならず、合意形成は困難を極めます。
つまり、相続不動産の共有名義を放置していることで、結果的に将来、配偶者や子供に多大なトラブルの原因を残すことになるわけです。
なお、弊社Albalinkにご依頼いただけば、共有者が増えすぎて、売却の合意が取れなくなった不動産であっても、あなたの共有持分のみ買い取ることが可能です。
共有関係から抜け出したい方は、ぜひ一度弊社の無料買取査定をご利用ください(査定依頼をしたからといって、無理な営業などは行いませんのでご安心ください)。
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共有名義を回避して親の共有持分を相続する方法
前項で解説した通り、共有持分を相続する際は、不動産の共有名義を解消するべきです。
共有持分の相続時に共有名義を回避する相続方法は以下の3つです。
- 遺産分割して親の共有持分を1人で相続する
- 遺産分割に基づいて相続不動産全体を売却し現金を分ける(換価分割)
- 法定相続分通りに登記して自身の共有持分のみを売却する
下記で順に解説していきます。
遺産分割して親の共有持分を1人で相続する
亡くなった親の共有持分を、遺産分割によって共有者の子供が1人で相続すれば、単独名義の不動産にすることが可能です。
ですが、相続人のうちの1人が持分を相続するためには、遺産分割協議を行って、他の共有者と公平を期す必要があります。
「亡くなった共有者の共有持分は誰に相続されるか」で解説した通り、被相続人の配偶者(もう片方の親)や、子供(他の兄弟)がいれば、その人達にも法定相続分が認められているからです。
ということでここからは、共有持分を共有者の子供が1人で相続する遺産分割方法を2つ解説します。
他の相続人に別の遺産を分ける(現物分割)
被相続人の共有持分を、不動産の共有者が1人で相続することで、新たな共有者を増やさずに済みますが、他の相続人とも公平を期さなければなりません。
この場合、不動産の共有持分以外にも、預貯金や自動車などの遺産があれば、他の相続人に譲りましょう。
このように、別の遺産で遺産の取り分に帳尻をあわせる遺産分割方法を、現物分割といいます。
具体例をもとに解説します。
現物分割の具体例
- 市場価格5,000万円の共有不動産。
- 父と子Aが「2分の1」ずつで不動産を共有。
- 相続対象の遺産は、「父の持分(2,500万円)」「父が残した預貯金2,500万円」。
- 法定相続人は、「A」と「Aの弟」の2人。
この場合、Aが父親の共有持分を1人で受け継ぎ、預貯金は弟に相続させることで、相続人同士公平を保ちつつ、不動産をAの単独名義にすることが可能です。
なお、現物分割によって遺産相続する場合、協議で相続人同士が合意していれば、必ずしも上記のように遺産の価格を均等に分ける必要はありません。
現物分割による共有持分の相続は、「不動産の持分以外に預貯金等の遺産があり、相続人同士で帳尻を合わせやすい人」におすすめです。
他の相続人に対して手元の現金で精算する(代償分割)
遺産の種類が少なかったり、価値が大きく違ったりすれば、上記のように、相続人同士で公平に遺産分割することができません。
遺産の価値を公平に分けられない場合は、遺産を多く受け取った相続人が手持ち金で不足分(代償金)を清算する方法が有効です。
このように、現金で帳尻をあわせる遺産分割方法を「代償分割」といいます。
現物分割の具体例
- 市場価格5,000万円の共有不動産。
- 父と子Aが「2分の1」ずつで不動産を共有。
- 相続対象の遺産は「父の持分(2,500万円)」のみ。
- 法定相続人は、「A」と「Aの弟」の2人。
市場価格2,500万円の持分をAが受け継ぎ、不動産以外に遺産が無いのであれば、弟に「1,250万円」を支払うことで公平を期すことができます。
ただ、持分を相続する人には代償金の支払い能力が必要になるため、手元にまとまった現金がなければ代償分割は難しいでしょう。ただし、協議で相続人全員の合意を得られれば、代償金の金額は調整可能です。)
よって、代償分割による共有持分の相続は、「代償金の支払い能力が十分にある人」にオススメです。
遺産分割に基づいて相続不動産全体を売却し現金を分ける(換価分割)
相続不動産を全体として売却してしまえば、共有名義を完全に解消して、まとまった現金で相続することが可能です。
このように、遺産を現金に換えて分け合う遺産分割方法を換価分割といいます。
現物分割の具体例
- 市場価格5,000万円の共有不動産。
- 父と子Aが「2分の1」ずつで不動産を共有。
- 相続対象の遺産は「父の持分(2,500万円)」のみ。
- 法定相続人は、「A」と「Aの弟」の2人。
この場合、不動産全体を売却し「5,000万円」を得たのであれば、「A3,750万円(自身の持分+父親の持分の半分)」、「弟1,250万円(父親の持分の半分)」で分け合います。
もちろん、換価分割によって遺産相続する場合も、相続人全員の遺産分割協議で同意を得る必要があります。
換価分割による共有持分の相続は、「不動産を手放してもいいと思える人」にオススメです。
共有物の分割方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
法定相続分通りに登記して自身の共有持分のみを売却する
上記した3つの遺産分割方法は、いずれも遺産分割協議で相続人全員の合意を得なければ行えません。
もし、「協議が面倒くさい」「どうしても協議をまとめられない」というのであれば、一度親の共有持分を法定相続分で登記してしまいましょう。
法定相続分で登記したあと、あなたの共有持分だけで売却してしまえば良いわけです。
なお、法定相続分通りの割合であれば、相続人のうちの1人が単独で相続登記の申請を行うことができます。
不動産の全体を売却するには、新たに加わった共有者全員から合意を得る必要がありますが、あなたの持分はあなたの所有物であり、自由に売却することができます。
共有持分のみの売却であれば、「共有持分専門の買取業者」に依頼するのが現実的です。
共有持分買取業者は、持分の買い取り後に共有名義のこじれた権利関係を修復するプロであり、再活用するノウハウを持っているため、共有持分のみの買い取りでも応じてもらえます。
ただ一点、共有持分の買取業者を利用するデメリットとしては、共有持分の買取価格が市場価格より安価になってしまうということです。
買取業者が他の共有者から心を開いてもらい、権利関係を整理するまでには、税金や維持管理費、人件費など、様々なコストがかかります。そうした費用が差し引かれるためです。
しかし、他の相続人と協議をまとめる必要もなく、なおかつスピーディーに共有状態から抜け出すことができるのは大きなメリットといえるでしょう。
共有持分買取業者を利用して自身の持分を売却する方法は以下のような人におすすめです。
- 遺産分割協議がまとまらない
- 他の相続人と協議することが面倒
- 共有持分を現金化して相続争いや共有トラブルから開放されたい
弊社Albalinkの共有持分の買取事例
前項で、共有持分は専門の買取業者に売却するのが最適であるとお伝えしました。
そこでこの章では、弊社Albalinkを例にとり、実際の共有持分の買取事例を紹介します。
弊社Albalinkは訳アリ物件専門の買取業者として、他社では断られるような複雑に利権が絡まる共有持分を多数買い取ってきました。
実際、弊社は下記のように全国各地の共有持分を買い取っており、中には1000万円以上で買い取ったこともあります。
ただ、上記のような買取事例だけを見せられてもピンとこない方もいるでしょう。
そこで、弊社が共有持分を買い取ったお客様からいただいた、直筆のメッセージも紹介します。
引用元:お客様の声(Albalink)
このお客様は共有者である親族と折り合いが悪く、話し合いができる関係ではありませんでした。
そのため、弊社が共有持分を買い取ったことで「(共有者と)やり取りをしなくて済むようになり、気持ちが楽になった」というメッセージをお寄せくださいました。
上記のお客様以外にも、弊社に物件の買取依頼をしていただいたお客様からは「肩の荷が下りた」「もっと早く依頼すれば良かった」といった感謝の言葉を多数いただいております(下記Google口コミ参照)
また、弊社はお客様からの評価が高いだけでなく、不動産買取業者としては数少ない上場企業でもあり、社会的信用も得ています。
信頼できる買取業者に安心して共有持分を売却し、共有関係から解放されたい方はぜひ一度弊社の無料買取査定をご利用ください(売却前提の問い合わせでなくても構いません)
相続放棄は何のメリットもない
「遺産分割協議をまとめられないなら、相続放棄してしまえば楽なのでは?」
このように考える人もいるかも知れませんが、親子共有名義で共有者の親が亡くなった場合、相続放棄は単に逆効果です。
被相続人のプラス財産もマイナスの負債も全てを相続しない(放棄する)こと。
確かに、相続放棄をすれば、「遺産分割協議」や「その後の相続登記」の手間から開放されるでしょう。
ですが、あなたが相続放棄をすれば、親の共有持分は他の法定相続人(兄弟など)が受け継ぐことになり、結果的に、あなたと他の法定相続人で不動産を共有することになってしまいます。
強いて言えば、親に多額の借金(住宅ローンなど)があり、この負債を相続したくないというのであれば、相続放棄にもメリットがあるかも知れません。
ただ、親子共同名義でローン契約している場合、親が死亡すると相続放棄などは関係なく、子供に返済義務が生じるためやはり、面倒でも遺産分割をするほうが賢明です。
なお、不動産に住宅ローンが残っている状態では、基本的には上述した共有持分買取業者でも持分の買取が困難です。
ただ、ローン残債が残りわずかの場合は、買取可能な場合もあります。
そのため、対象の不動産に住宅ローンが残っている場合は、弁護士に相談して「遺産分割調停」に進むことをおすすめします。
相続争いなどの紛争解決に向けて、家庭裁判所の調停員を相続人同士の間に入れて、話し合いを行うこと
共有名義の不動産の相続時に、相続放棄したほうが良い場合と、しないほうが良い場合については以下の記事で詳細に解説しておりますので、参考にして下さい。
共有持分の相続前にできる生前対策
この記事の「共有持分の相続時は共有名義を解消するべき」で解説した通り、共有名義の不動産を放置していると将来、自分の配偶者や子供、ひいては孫にまで争いの火種をのこしてしまうことになりかねません。
将来の相続争いや、その後の共有トラブルを回避するためには、推定被相続人(死後に財産を遺す予定の人)が生きているうちに生前対策を行うのがベストです。
この章では、親(推定被相続人)と子供1人が共有名義で所有している不動産の生前対策についてお伝えします。
不動産を共有名義にしないためにできる生前対策は以下の6つです。
- 遺言書を作成しておく
- 親子共有名義の持分を生前贈与する
- 精算課税制度を利用して共有持分を贈与する
- 相続発生前に不動産全体を売却してしまう
- 他の共有者に推定被相続人の共有持分を買い取ってもらう
- 自身の共有持分を第三者に売却する
以下で詳しく解説していきます。
遺言書を作成しておく
生前に推定被相続人の持分を誰に相続させるか、遺言書を作成しておくことで、共有者が増えてしまうことによるトラブルを防げます。
具体的には遺言書で、「現在、共有で不動産を所有している子供」に単独で相続させることを明記しておけば、将来、共有者が増えてトラブルが起こることはありません。
ただ、遺言書の作成時は、「遺留分」に配慮する必要があります。
遺留分とは相続人に認められている最低限の遺産の取り分であり、「兄に遺産を全て受け継がせる」などと遺言書の内容があまりに不公平になると、将来相続人同士で争いが起こりかねません。
そのため、遺言書の作成時には遺留分に配慮し、「共有持分の代わりに預貯金は弟に受け継がせる」等、相続人間でなるべく公平を期す必要があります。
なお、遺言書が効力を持つには、定められたフォーマットに従って作成する必要があります。
フォーマットにのっとっていないと、せっかく遺言書を作成しても、無効になってしまう恐れがあります。
下記の記事では、共有持分の遺言書の書き方について解説していますので、あわせてご確認ください。
親子共有名義の持分を生前贈与する
生前贈与の一つである「暦年贈与」を活用することで、贈与税を抑えつつ持分を子供へ贈与し、生きているうちに不動産を子供の単独名義にできます。
暦年贈与とは、贈与税の基礎控除が適用される110万円の範囲で、毎年贈与を繰り返し行う方法です。
例えば、親子2人で不動産を共有しているとすると、親の持分を所有権移転登記によって、毎年110万円を超えないように少しづつ子供へ渡すことになります。
ただこの方法では、毎年登記費用が掛かるため、普通に贈与税を払うよりも損失が大きくなるおそれがあり、そうなれば本末転倒です。
そのため、基本的には共有持分の暦年贈与による生前対策はおすすめしません。
精算課税制度を利用して共有持分を贈与する
暦年贈与ではなく、精算課税制度を利用して、共有持分を子供へ贈与することで、毎年登記費用をかけずに生前対策可能です。
精算課税制度を活用すれば、「2,500万円」の特別控除の限度額に達するまで、何回でも贈与税を控除できます。
そのため、共有持分の市場価格が2,500万円以下であれば、非課税で子供に持分を贈与することが可能になります。
適用要件は、60歳以上の父母(祖父母)から18歳以上の子供(孫)に対する贈与であることです。
ただ、精算課税制度を利用すると二度と、暦年贈与(年毎110万円の基礎控除)は利用できなくなるので注意しましょう。
相続発生前に不動産全体を売却してしまう
推定被相続人(親)が所有している不動産を売却してしまうことで生前対策できます。
不動産を現金化してしまえば、相続人は残った現金を公平に分け合うだけで良くなり、将来争いになる可能性が大幅に減るからです。
もちろん、推定被相続人が余生を謳歌するための、資金として充当しても良いでしょう。
ただ、共有者である子供から合意が得られなければ、当然、共有不動産を全体として売却することはできません。
他の共有者に推定被相続人の共有持分を買い取ってもらう
推定被相続人(親)の共有持分を、他の共有者に買い取ってもらうことで生前対策になります。
この場合も、売却する相手は「現在、共有で不動産を所有している共有者(子供など)」がよいでしょう。そうすれば、不動産を単独名義にできるためです。
推定被相続人である親は生前に不動産を単独名義にすることができ、安心できるでしょう。
また、買主となる共有者も、不動産を自由に活用できるようになるメリットがあります。た
ただし、共有持分の取引価格は共有者間で決めなければならないので、費用感のズレからトラブルになるおそれがあります。
また、そもそも他の共有者に買い取るだけの資力がなければ話になりません。
もし、共有持分の正確な価格が知りたい場合は、弊社のAlbalinkの無料買取査定をご利用ください(買取査定フォームですが、査定価格を確認するためだけにご利用いただいても構いません)。
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自身の共有持分を第三者に売却する
推定被相続人と共有者の中が悪いなど、生前対策のための話し合いができない場合もあるでしょう。
そのような場合は、自身の共有持分のみを第三者に売却することで、共有状態から抜け出してしまうのがべすとです。
売却先としては、「共有持分専門の買取業者」が良いでしょう。
専門の買取業者であれば、共有不動産を再販・活用するノウハウがあるため、権利関係がこじれていても、売却できるためです。
ただし、共有者が推定被相続人である親と実家に同居している状態で、実家の共有持分を買取業者に売却してしまうと、実家が「親と買取業者の共有名義」になってしまいます。
親にとっては、共有者が身内である子供から、知らない業者になるのは不安があるでしょう。
ですから、共有持分の売却は自由とはいえ、親と実家に同居している場合は、売却前に親と相談しましょう。
実際には、親と協力して不動産(実家)全体を買取業者に売却するのが現実的でしょう。
その場合は親、子供、ともに新しい住居を探す必要があります。
なお、弊社AlbaLinkでも共有名義の不動産屋、共有持分を積極的に買い取っておりますので、ぜひ一度、弊社の無料買取査定をご利用ください。
下記査定フォームには備考欄があります。そこへ上記の売却後の住まいのことなど、不安なことなどを記入いただけば、そうしたことについても相談に乗らせていただきます。
また、査定依頼をしたからといって、無理な営業などは行いませんのでご安心ください。
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まとめ
この記事では、共有者である親が亡くなった際の相続手続きについて解説してきました。
繰り返しにはなりますが、亡くなった親の共有持分を相続する際は、くれぐれも安易に法定相続分通りで相続登記はせずに、遺産分割協議を行ってなるべく相続人を1人に決めましょう。
法定相続分で相続を行うと、共有者が増えて、将来的に様々なトラブルを引き起こす恐れがあるためです。
ただ、他の相続人との関係が悪く、遺産分割協議ができそうにないなら、あなたの共有持分のみを専門の買取業者に売却することをお勧めします。
専門の買取業者に共有持分を売却してしまえば、あなたは共有関係から抜け出せ、共有者間でのトラブルとも無縁でいられます。
弊社Albalinkのでも、共有持分のみの買取を積極的に行っておりますので、一刻も早く、なるべく高値で共有持分を売却したいという方は、ぜひ一度、弊社の無料買取査定をご利用ください(査定依頼をしたからといって、無理な営業などは行いませんのでご安心ください)。