「建ぺい率がオーバーしている物件」ってどんなもの?
一言で「建ぺい率がオーバーしている物件」と言っても、実際には下記の2種類に区分されます。
- 既存不適格物件
- 違反建築物
では、まずは「建ぺい率がオーバーしている物件」がどのようなものなのか、解説してまいります。
そもそも建ぺい率とは

建ぺい率とは敷地面積に対する建築面積の割合のことで、敷地に対してどのくらいの規模の家が建てられるのかを定めたものです。
建ぺい率がオーバーしているかどうかは、自治体の都市計画課に問い合わせて確認できます。
建物を真上から見たときの面積のこと。1階よりも2階のほうが広い建物の場合は2階部分の面積で計算
建築面積は、以下の計算式で求められます。
たとえば敷地面積が100㎡、建ぺい率が60%の場合に建てられる建物の建築面積は以下のとおりです。
屋根や柱が付いた駐車場、上階から1m以上突き出している庇やバルコニーのうち先端から1mまでの部分も建築面積に含まれる点に注意が必要です。
なお、建ぺい率は都市計画法に基づいて定められている用途地域によって30~80%と異なります。
該当地域に建築可能な建物の種類や用途の制限を定めた制度。第一種低層住居専用地域や第一種中高層住居専用地域など計13種類あり、大きく「住居系」「商業系」「工業系」に分類される。
所有する物件の所在地が用途地域に該当するのかは、国土交通省が公開している用途地域データから確認できます。
法改正により現行の基準を満たしていないなら「既存不適格物件」
「既存不適格物件」とは、家を建築した当時は適法であったものの、法改正によって現行の基準を満たさなくなった建物のことです。

たとえば、建築後の法改正によって建ぺい率の制限が厳しくなった、用途地域が変更されたなどの場合に建物が既存不適格物件となることがあります。
既存不適格物件は違法ではないので、そのまま住み続けても問題はありません。
既存不適格物件は罰則なし・緩和措置あり
既存不適格物件は違法ではないので、そのまま住み続けても問題はありません。
ただし、建築確認申請が必要なリフォーム等をおこなう際には、現行法で定められている建ぺい率の制限に合わせる必要があります。
ここのように、建築当初にさかのぼって規制を適用させることを「遡及適用」といいます。

建ぺい率がオーバーしている物件の場合、リフォームのために建物の面積を減らしたりカーポートを撤去したりするなど、規定の要件に合わせなくてはなりません。
しかし、「政令で定める範囲において増改築・大規模修繕をおこなう場合は適用しない」という緩和措置もあります。
緩和措置の対象は、以下の内容です。
建築時点で基準を満たしていないなら「違反建築物」
既存不適格物件とは異なり、法律に違反して建てられた建物を「違反建築物」といいます。

「建築当時から建ぺい率などの制限を遵守していない」「車庫の増設など増改築工事を行った結果、建ぺい率をオーバーした」などのケースが該当します。
建ぺい率がオーバーしていることで自治体の是正勧告に従わなかった場合には、所有者に対して行政処分が下され、懲役刑や罰金刑が科されるおそれもあります。
相続や売買によって所有者が変われば、新しい所有者に責任が問われることになります。
違法建築と既存不適格の違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。

建ぺい率がオーバーしている物件の売却は難しい
建ぺい率がオーバーしている物件の売却が難しいのは、以下のように買い手にとってのデメリットが2つ存在するためです。
- 住宅ローン審査に通りにくい
- 再建築するなら同じ規模の建物にできない
ただし、方法次第ではスムーズな売却が可能です。
詳細は後述の「建ぺい率がオーバーしている物件を売却する4つの手段」で解説するので、合わせて参考にしてください。
住宅ローン審査に通りにくい
住宅ローンを組んで購入する家には、金融機関による抵当権が設定されます。
抵当権はいわば「担保」のことで、住宅ローンを借りた方が返済困難な状態に陥った際、金融機関は抵当権を設定している住宅を競売で強制的に売却して返済に充てることが可能です。

しかし建ぺい率がオーバーしている物件は競売にかけても売れにくく、通常の不動産よりも担保としての評価が低くなりがちです。
そのため、買い手が住宅ローンを利用して既存不適格物件を購入しようと考えても、審査を通過できなければ結局売買契約に至らなくなってしまいます。
再建築するなら同じ規模の建物にできない
建ぺい率がオーバーしている物件を建て替える場合は、現行の建ぺい率の制限に合わせなければなりません。
そのため、建物を建て替えたくても、既存の建物より規模を縮小せざるを得ません。
たとえば建築当時の建ぺい率が70%だったと仮定すると、100㎡の土地には最大で70㎡の建築面積の家を建てられます。
しかし、その後の法改正で建ぺい率が60%に制限された場合は60㎡の建築面積の家しか建てられません。
10㎡は畳に換算すると約6畳なので、およそ1部屋分、家が狭くなることになります。
既存不適格物件であればそのままの状態で住み続けられますが、建て替えを検討する際に大きな制限を受けてしまう点も建ぺい率がオーバーしている物件が売れにくい理由のひとつです。
建ぺい率オーバー物件の資産価値はどれくらい下がるのか?
建ぺい率オーバー物件は再建築や増改築に制限が生じるため、金融機関の融資が受けにくくなるケースがあります。こうした事情から市場での流通性は低下し、資産価値が通常の物件よりも大きく下落するリスクが考えられます。
ここでは、建ぺい率オーバー物件の資産価値はどれくらい下がるのかについて解説しましょう。
整形地に比べて2〜3割安くなる可能性も
建ぺい率オーバー物件は、一般的な基準を満たした物件に比べて、資産価値が低く評価される傾向があります。
特に金融機関が担保価値を低めに見積もるため住宅ローンの審査が通りにくく、買主が限られてしまうことが価格下落の大きな要因です。
また、再建築時には建ぺい率を守らなければならないため、現在より小さい建物しか建てられず、将来的な活用価値が制限される点も敬遠されやすます。こうした要因が重なることで、売却価格は相場より2〜3割程度、安くなるケースも珍しくありません。
ただし、駅近や人気エリアなど需要が高い地域では影響が小さく、下落幅が少なくなることも考えられます。建ぺい率オーバー物件の価値は、立地条件や市場需要によって左右される可能性があります。
融資の通りにくさや再建築制限が価格を押し下げる要因
建ぺい率オーバー物件が金融機関の住宅ローン審査に通りにくい理由は、銀行が担保評価を厳しく行うからです。
基準を満たさない物件は担保価値が低く見積もられるため、買主が融資を受けられないケースが多くなります。銀行はリスクを回避するため、法令違反の物件を融資対象として高く評価しません。
結果として現金購入者に限られることもあり、購入希望者が減少するため売却価格が下落する点もデメリットです。
さらに、将来的に建て替えを行う際には現行法を守らねばならず、現在より小さい建物しか建築できない制約があります。再建築制限により長期的な利用価値が低下し、買主にとって魅力が薄れてしまうため、売却価格が高くなる見込みはほぼありません。
こうした要因が複合的に働き、建ぺい率オーバー物件の資産価値を押し下げています。
建ぺい率オーバー物件の売却活動では告知義務がある
不動産売却において、建ぺい率オーバー物件は注意が必要です。
法規制を遵守しない建物は違法建築や既存不適格に該当する場合があり、購入後の利用に制限が生じます。そのため、売主には買主へ正しく告知する義務があり、隠すと契約トラブルや損害賠償に発展するリスクがあります。
ここでは、建ぺい率オーバー物件の売却活動における告知義務について解説しましょう。
建ぺい率超過は「重要事項」に該当する
建ぺい率がオーバーしている物件を売却する際、売主や仲介業者には買主への告知義務があります。
建ぺい率は都市計画法や建築基準法で定められた法令上の制限であり、物件の利用価値や将来の建て替えに直接影響するため、重要事項説明の対象となるからです。
重要事項説明書には、建ぺい率の数値や超過している事実、既存不適格物件か違反建築物かといった区分を明確に記載する必要があります。
これを怠ると契約不適合責任を問われ、契約解除や損害賠償に発展する可能性があります。買主が安心して購入判断できるよう、透明性のある説明を徹底することが、売却活動を円滑に進める第一歩です。
既存不適格と違反建築物で告知内容が異なる
建ぺい率オーバー物件の告知では、既存不適格と違反建築物を正しく区別して説明することが重要です。
既存不適格とは、建築当時は適法に建てられたものの、その後の法改正や都市計画変更により現行基準を満たさなくなった物件であり、違法であるのは所有者の責任ではありません。
この場合は「既存不適格」である旨を説明すればよく、買主も安心しやすい傾向があります。
一方、違反建築物は建築当初から基準を守らずに建てられたもので、建築確認を受けていない増築や違法な改築が該当します。
この場合は融資や保険の利用が難しく、将来の建て替え制限も厳しいため、告知義務を怠ると大きなトラブルにつながります。売主・仲介業者は必ず区分を明確に示し、買主に十分な情報を提供することが必要です。
建ぺい率がオーバーしている物件を売却する4つの手段
ここまで解説してきたように、建ぺい率がオーバーしている物件を売却しようとしても買い手が見つかりにくいのが現状です。
しかし、建ぺい率がオーバーしている物件であっても、正しい方法を選択すれば売却は可能です。
というわけで、ここからは、建ぺい率がオーバーしている物件を売却するため4つの売却方法を解説します。
- 隣接地を買い取ってから売り出す
- 減築してから売り出す
- 古家付き土地で売り出す
- 専門の不動産買取業者に直接買い取ってもらう
手間や費用をかけることなく売却したい方は、専門の不動産買取業者に買い取ってもらう方法をおすすめします。
専門の買取業者であれば、建ぺい率がオーバーしている物件でもそのまま買い取れるからです。
弊社AlbaLinkも、建ぺい率オーバーの物件を現況買取している専門の買取業者です。
費用・手間をかけずスピード売却をしたい方は、下記無料査定フォームよりお問い合わせください。
なお、違反建築物の売買が合法である理由については、以下の記事で詳しく解説しています。

隣接地を買い取ってから売り出す
隣地を買い取って敷地を広げることで、家の建ぺい率を現行法の制限内とすることが可能です。
たとえば、敷地面積が100㎡、現行の建ぺい率が50%、現在建っている家の建築面積が60㎡の例で見ていきましょう。

この場合、現行の建ぺい率で建てられる家の建築面積は以下のとおりです。
建築面積=100㎡×50%=50㎡
つまり法律上、10㎡分オーバーしていることになります。
しかし隣地の方から20㎡分の土地を買い取って敷地面積を広げれば、以下のように建ぺい率の基準を満たすことが可能です。
建築面積=(100㎡+20㎡)×50%=60㎡
現行の建ぺい率を満たせば通常の物件と同じように売り出せるので、立地条件によっては早期売却も期待できるでしょう。
ただし、隣地の方から敷地を買い取るには相応の資金が必要です。また、必ずしも了承してくれるとは限りません。
そのため、建ぺい率のオーバーしている物件を売りだす方法として、有効であるとは言えません。
減築してから売り出す
建物の一部を撤去するなど、家を狭くするリフォームをおこなえば、現行の建ぺい率を満たした状態で売り出せます。
通常の物件同様に売り出せるので、買い手が見つかる可能性は高くなるでしょう。
しかし、数百万円以上ものリフォーム費用がかかります。
また、需要の低いエリアに建つ場合などでは、リフォームをしたからといって必ずしも売却できるとは限りません。
実際に、弊社がおこなった「家の購入で優先したこと」に関するアンケート調査でも、家選びで立地が重要視されていることがわかります。
そのため、都心部であれば、駅から徒歩5分圏内・主要ターミナルまで乗り換えなしなど、利便性の高いエリアにある物件でない場合、売却前に減築するのはおすすめしません。
古家付き土地で売り出す
古家付き土地とは、古い家を残したまま「土地」として売却する方法です。
建ぺい率がオーバーしている物件であっても、「古家付き土地」という扱いにすることで、建物を減築したり、解体したりせずに売却できます。
家の解体費用を負担するのは買主なので、余計な費用をかけずに済む点はメリットといえるでしょう。
ただし、買い手は家の解体を前提に購入するので、解体費用分の値下げを交渉される可能性があります。
少しでも手残り金額を増やすためにも、あらかじめ解体費用分を上乗せした売り出し価格を設定するとよいでしょう。
建ぺい率がオーバーしている物件を古家付き土地として売り出してもなかなか買い手が見つからない、できるだけ早く売却したい方は専門の不動産買取業者に直接買い取ってもらうことをおすすめします。
弊社AlbaLinkでも、建ぺい率がオーバーしているなど売却の難しい物件も積極的に買い取っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
専門の不動産買取業者に直接買い取ってもらう
建ぺい率がオーバーしていて買い手が見つかりにくい物件であっても、専門の不動産買取業者であればそのままの状態で買い取れます。

不動産買取業者は物件の立地や建物の状態などからベストな運用方法を見出したうえで、買い取った物件にリフォームなどを施して賃貸物件として貸し出したり、不動産投資家に販売したりするノウハウに長けています。
そのため、一般の買い手が見つからない物件であっても、適正な価格であれば積極的に買い取れるのです。解体費用、リフォーム費用といった経費を売主が負担する必要もありません。

また、買取業者が直接買主となるので、業者から提示された買取価格に納得できれば、平均1ヶ月ほどで物件を手放せます。
物件の売却後、契約書に記載されていなかった不具合や欠陥が見つかった場合に売主が買主に対して負うべき契約不適合責任が免責されるメリットもあります。

たとえば、物件を売却したあとで構造部がシロアリ被害に遭っていることが発覚した場合、買主が一般の方の場合は修繕費などを負担しなければなりません。
しかし買主が不動産買取業者であれば売主の責任が免除されるので、築年数の古い物件であっても安心して売却できるでしょう。
建ぺい率がオーバーしている物件をいくらで買い取ってもらえるのかが知りたい方は、弊社AlbaLinkの無料査定をぜひご利用ください。
契約不適合責任については、以下の記事で詳しく解説しています。

まとめ
建ぺい率がオーバーしている物件は、買い手にとって「住宅ローン審査に通りにくい」「建て替え時に建物の規模を縮小しなければならない」といったデメリットがあるため、売却は難しいといわざるを得ません。
隣地の方から敷地を購入する、減築リフォームを施して建物の規模を縮小するなど現行の建ぺい率を満たす工夫をすれば通常の不動産同様の売却が可能ですが、一定の費用が発生する点はデメリットといえるでしょう。
また、必ずしも売却できるわけではない点にも注意が必要です。
建ぺい率がオーバーしている物件を手間や費用をかけることなく短期間で売却したい場合は、専門の不動産買取業者へ買い取ってもらうことをおすすめします。
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