借地権の更新料の計算方法と相場
借地権の更新料は当事者同士の話し合いで決める必要がありますが、慣習として借地権価格の約5%をかけた金額が相場といわれています。
具体的には、借地権の更新料は、以下の式で計算します。
借地権割合とは、その土地の価格のうち借地権価格が占める割合のことです。
更新料の計算に用いる「土地の価格」の計算方法は、借地がある地域によって異なり、以下のいずれかの方法を用います。
- 路線価方式
- 倍率方式
以下で、借地権の更新料の計算方法を具体例を用いて、解説します。
「路線価方式」での計算方法
市街地にある宅地は、「路線価方式」が用いられます。
まず、土地の価格を以下の式で算出します。
路線価は土地1㎡あたりの土地の評価額のことです。
路線価や借地権割合は、国税庁のサイトにて確認可能です。
参照元:財産評価基準書|国税庁
補正率は、いびつな形状や奥行が長すぎる・短すぎるなど使いにくい土地を評価するために使います。
土地の価格を求めたら、前述した以下の式を用いて借地権の更新料を計算します。
例として、以下の土地の場合の更新料を計算してみましょう。
引用元:財産評価基準書|国税庁
敷地に接している道路に表示されている「300C」は、路線価が30万円であることを意味します。
アルファベットの「C」は借地権割合です。
なお、アルファベットごとに以下の借地権割合が設定されています。
アルファベット | 借地権割合 |
---|---|
A | 90% |
B | 80% |
C | 70% |
D | 60% |
E | 50% |
F | 40% |
G | 30% |
参照元:財産評価基準書|国税庁
今回の例の場合、借地権割合は70%です。
また、奥行があるため、補正率0.95を用います。
参照元:奥行価格補正率表|国税庁
以上を踏まえて計算すると、借地権の更新料は以下のとおりです。
土地の価格:30万円×0.97×700㎡=20,370万円
更新料:20,370万円×70%×5%=712.95万円
ただし、借地がいびつな形状をはじめとした利用がしにくい土地の場合、土地の価格の求め方が上記と異なります。
いびつな形状の土地の評価方法は以下の記事を参考にしてください。
「倍率方式」での計算方法
郊外や農村部のように路線価が設定されていない地域では、「倍率方式」で借地権の更新料を計算します。
「倍率方式」の場合、土地の価格の計算方法は以下のとおりです。
固定資産税評価額は、固定資産税の税額を決める際に使う価格のことです。
土地の場合は、都税事務所または市町村の役所・役場で確認できます。
土地の価格を求めたら、以下の式を用いて借地権の更新料を計算します。
具体的な数値を用いた計算方法は以下のとおりです。
- 固定資産税評価額:2000万円
- 倍率:1.2
- 土地の価格:2000万円×1.2=2400万円
上記の土地の借地権割合が50%の場合、借地権の更新料は、2400万円×50%×5%=60万円となります。
なお、倍率と借地権割合は、路線価と同じく国税庁のサイトにて確認可能です。
参照元:財産評価基準書|国税庁
更新料の相場、計算方法、支払い方法などについては以下の記事で詳しく解説しています。
借地権の更新料の支払い方法
借地権の更新料の金額が大きくない場合は、更新月の前月あるいは更新月に地代と一緒に一括で支払います。
更新料が高額で一括払いが難しいときは、貸主と相談して分割払いを採用することも可能です。
借地権の更新をする際、更新料の支払いをもって契約更新とみなされます。
そのため、現在の契約が切れる前に更新料の支払わなければなりません。
なお、契約書に支払い期限について明記されていれば、その期限までに支払います。
借地権の更新料を支払った後の契約は何年?
更新後の契約期間は、借地権が設定された時期によって異なります。
借地権が1992年8月1日より前に設定された場合は、旧借地法が適用されます。
旧借地法で借地権を更新したとき、契約期間は以下のとおりです。
【旧借地法】
堅固建物(鉄筋コンクリート造等) | 非堅固建物(木造) | |
---|---|---|
契約期間 | 30年以上 | 20年以上 |
定めがない場合の契約期間 | 30年 | 20年 |
更新時、契約期間を定めなかった場合、堅固建物では30年、非堅固建物では20年が契約期間となります。
一方、借地権が1992年8月1日以降に設定された場合、現行の法律である借地借家法が適用されます。
借地借家法で借地権を更新したとき、契約期間は以下のとおりです。
【借地借家法】
1回目の更新 | 2回目以降の更新 | |
---|---|---|
契約期間 | 20年以上 | 10年以上 |
定めがない場合の契約期間 | 20年 | 10年 |
参照元:借地借家法|e-Gov法令検索
借地借家法においては、堅固建物・非堅固建物の区別がなくなりました。
また、契約期間を定めなかった場合、1回目の更新では20年、2回目以降の更新では10年が契約期間となります。
なお、上記の契約期間より短い期間(5年、8年など)での契約は無効です。
法定の期間を下回る契約をした場合、「期間の定めがない」契約とみなされます。
旧借地法と借地借家法の違い
前述した特徴以外の旧借地法と借地借家法の違いは、建物が滅失した際の解約の可否です。
建物の滅失とは、解体あるいは、火災や水害などの災害で建物がなくなることをいいます。
旧借地法の場合、建物が滅失しても解約はできません。
一方、借地借家法では、借地権者の申し入れによって解約が可能です。
旧借地権と新借地権の違いについては以下の記事で詳しく解説しています。
借地権の更新料が払えない時の対処法
法的には、更新料の支払いは義務ではありません。
しかし、更新料の支払い義務が生じるかどうかは、以下で紹介するケースごとに異なります。
-
- 契約書に明記されている場合
- 契約書に明記されていない場合
契約書に明記されている場合
更新料支払いについて、借地権の契約書に明記されている場合は、支払いが必要です。
過去に、金額を定めたうえで更新料を支払うことを合意したが、更新料を支払わなかった借主が契約解除されている判例があります。
参照元: 最高裁昭和59年4月20日判決
更新料の支払いについて、貸主と合意していた場合は、必ず支払うようにしましょう。
ただし、契約書に「相場相当の更新料を支払う」と記載があった場合、双方で更新料の金額の認識が異なるので、合意が無効になる可能性があります。
契約書に明記されていない場合
借地権の契約で更新料を支払うことを決めていなかったら、支払い義務はありません。
また、過去の更新で更新料の支払いをしたとしても、次の更新時も更新料を支払う約束をしたことにはなりません。
貸主に言われたとおりに支払う前に、契約書を確認して更新料支払いについて記載があるか確認しましょう。
借地権の更新料が高すぎる時の対処法
前述したとおり、更新料は両者の合意によって決まり、支払い義務が生じます。
高額な更新料を請求されたとしても、合意しない限りは、支払い義務は生じません。
提示された金額に不服があるなら、値下げ交渉することも可能です。
ただし、一方的に「支払いに応じない」「値下げを要求した」場合、貸主との関係が悪化する可能性があります。
また、丁寧かつ誠実に値下げ交渉をしても、借地の相場や法律の知識がない場合、交渉がうまくいかないかもしれません。
更新料に納得いかないときは、一方的に支払いを拒否するのではなく、貸主と交渉することが大事です。
場合によっては、弁護士をはじめとした専門家に交渉を委任するといいでしょう。
なお、以下の記事では借地権更新料が払えない場合の対処法を解説しています。
併せて参考にしてください。
借地権を更新しない場合は売却する
「更新料が高すぎる」「提示された更新料に納得できない」場合は、更新せず売却する方法もあります。
しかし、売却には地主の承諾が必要です。
売却する際は、地主が考える土地利用方法と新借地人の土地の利用目的を考慮して、交渉しなければなりません。
交渉がうまくいかず、トラブルに発展した場合、売却ができなくなる可能性もあります。
一方、買取業者に買取依頼すれば、貸主との面倒な交渉を買取業者が引き受けてくれます。
直接、売却の条件交渉をする手間が省けるため、借主側はストレスを感じず売却手続きを進めることが可能です。
底地・借地の買取を行う業者は以下にもまとめています。
弊社アルバリンクは、借地権の買取を行っている不動産買取業者です。
弁護士をはじめとした専門家と提携しているため、法律知識が必要になる交渉も任せられます。
したがって、貸主とのトラブルを回避できるうえ、適正な条件での売却が可能です。
相場より高い借地権の更新料を請求され、支払いに困っている場合は、弊社に一度ご相談ください。
まとめ
この記事では、借地権の更新料の計算方法と相場について解説しました。
一般的には、借地権価格の約5%をかけた金額が更新料の相場となっています。
ただし、法律上での定めではないので、実際は貸主との合意によって更新料は決定します。
貸主によっては、高額な更新料を要求してくるケースもあるでしょう。
提示された更新料に納得できない場合は、値引き交渉以外に借地権を売却することも可能です。
しかし、売却には貸主の承諾をもらう必要があります。
貸主が借地権の売却に協力的ではないとき、交渉は難しくなるでしょう。
上記の事態に陥った場合、買取業者に買取を依頼することをおすすめします。
買取依頼をした場合、貸主との交渉を引き受けてくれるため、面倒事から解放されます。
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