売却前に借地権の知識を整理
一口に借地権といっても、「地上権」と「土地賃借権」の2種類に分かれます。
また、旧借地法か現借地借家法のどちらが適用されているかによって売却金額は大きく異なるため、借地権を売却する前に基本的な知識を改めて確認しておきましょう。
ここでは、地上権と土地賃借権の特徴、旧借地法と現借地借家法の違いについて解説します。
なお、地上権と賃借権の違いについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
借地権について
そもそも借地権とは、建物を建てるために地主の土地を借りて利用する権利のことです。
地主から土地を借りる方を「借地人」、地主から借りる土地を「借地」と呼びます。
土地の所有権は地主が所有しているので、借地人が保有するのはあくまでも借地上に建てた建物の所有権のみです。また、借地人は土地を借りる代わりに毎月定められた「地代(賃料)」や契約更新時の更新料、建て替え時の承諾料などを支払う必要があります。
地代や更新料、承諾料などの相場については、後述の「借地権の売却は通常所有権の売却に比べて難しい」の項目で解説しているので、合わせて参考にしてください。
なお、借地は借地人側目線で見たときの呼び方であり、地主側から見ると「底地」と表現されます。底地も借地もどちらも同じ土地を指しますが、どの立場から見るかによって呼び方が変わる点も押さえておくとよいでしょう。
借地権の種類は2つ
借地権の種類は「地上権」と「土地賃借権」の2つに分かれます。
地上権と土地賃借権では借地人が行使できる内容が大きく異なるため、それぞれの違いを把握するとともに、自分がどちらの権利を有しているのかを確認しておきましょう。
地上権と土地賃借権の違いについて、詳しく解説します。
地上権について
地上権は「物権」の一種であり、他人の土地を直接支配して利用する権利のことです。民法では次のように規定されています。
(地上権の内容)
第二百六十五条 地上権者は、他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する。
借地に地上権を設定する場合、地主は必ず登記しなければなりません。地上権を登記すると借地人は第三者に対して権利を主張でき、地主の許可がなくても借地権の売却や転貸できるようになります。地上権に抵当権を設定することも可能です。
ただし、地上権は地主にとってのデメリットが大きすぎるため、借地契約において地上権が設定されるケースはほぼありません。
土地賃借権について
土地賃借権も地上権と同じく「他人の土地を借りて利用できる権利」のことですが、賃貸借契約を交わした当事者間でのみ権利を主張できる「債権」である点に大きな違いがあります。
民法では以下のように規定されています。
(賃貸借)
第六百一条 賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる
借地人が主張できるのは借地に建物を建てて居住することを地主へ請求する権利であり、地主の承諾がない限り、借地権の売却や転貸はできません。
土地を直接支配する権利である地上権とは異なり、土地賃借権は借地人に与えられる権利が弱いため、借地契約を交わす際には土地賃借権が設定されるケースが一般的です。
また土地賃借権には登記義務がなく、抵当権を設定できない点も地上権との違いのひとつです。ただし、借地上に建てる建物には地主の承諾を得たうえで抵当権を設定することが可能です。
なお、不動産を購入する方の多くは金融機関の住宅ローンを利用します。その際、該当の不動産に抵当権を設定できない場合は住宅ローンを利用できません。つまり、地主の承諾がない限り買主は住宅ローンを使えないため、借地権を購入できる方がかなり限定されてしまう点はデメリットといえるでしょう。
借地権の売却時に一般の買手が見つかりにくい理由については、後述の「借地権の売却は通常所有権の売却に比べて難しい」で詳しく解説します。
借地権は旧借地法と現借地借家法のどちらかが適用される
現在、借地契約を締結する際に適用される法律は、1992年に施行された「借地借家法」です。しかし、それ以前に交わされた借地契約には「旧借地法」が適用される点に注意が必要です。
現借地借家法と旧借地法には、借地権の契約期間と定期借地権の有無に大きな違いがあります。借地権の売却時に借地期間がどのくらい残っているのかは売却金額に影響を与えるため、自身の借地権にはどちらの法律が適用されているのかをしっかりと認識しておきましょう。
ここからは、旧借地法と現借地借家法の違いについて解説します。
なお、旧借地法は地主側のデメリットが大きく、地主と借地人の間でトラブルが起こるケースも多くあります。
そうした旧借地法に関するトラブルなどに関しては、以下の記事をご確認ください。
旧借地法
「旧借地法」における借地権の契約期間は、建物の構造によって以下のように異なります。
建物の構造 | 期間の定めがある | 期間の定めがない | 契約更新後の存続期間 |
---|---|---|---|
鉄筋コンクリート造など堅固建物 | 30年以上 | 60年 | 30年 |
木造など非堅固建物 | 20年以上 | 30年 | 20年 |
借地契約を交わす際に堅固建物で30年以上、もしくは非堅固建物で20年以上の契約期間を定めた場合にはそれが優先されます。
また、堅固建物で30年未満、非堅固建物で20年未満の契約期間を定めたとしても無効となり、「期間の定めがない借地契約」と見なされて堅固建物で60年、非堅固建物で30年の契約期間となる点が特徴です。
現借地借家法(普通借地権)
旧借地法に対し、「現借地借家法(普通借地権)」では建物の構造に関係なく、契約期間は以下の表のように一律で定められています。
期間の定めがある | 期間の定めがない | 契約更新後の存続期間 |
---|---|---|
30年以上 | 30年 | 1回目の更新後は20年、その後は10年 |
参照元:借地借家法(借地権の存続期間)
旧借地法と比較すると借地権の契約期間は短く、地主に有利な条件へ変更されたといえます。
なお、借地契約で30年よりも短い契約期間を定めた場合は無効となり、期間の定めのない契約と見なされて30年の契約を交わすことになります。
現借地借家法(一般定期借地権)
旧借地法では、借地人から契約の更新などを求められた際、地主側に「土地の使用を必要とする事情がある」「生計を維持するために土地を売却する必要がある」などの正当な理由がない限り拒否できませんでした。
しかし、これでは一度貸した土地が二度と返ってこない可能性が高く、地主側にとってのメリットがありません。そこで現借地借家法で新たに設けられたのが、一般定期借地権と呼ばれる制度です。
一般定期借地権の契約期間は「50年以上」であり、普通借地権で借地を貸した場合と比較すると長めに設定されていますが、契約期間の満了をもって借地権は消滅します。借地人は契約の満了時に建物を解体して更地にしたうえで、地主へ返還しなければなりません。
また、普通借地権とは異なり契約期間の更新もできませんが、新たに一般定期借地権を締結し直すことは可能です。
借地の存続期間 | 契約期間の更新 |
---|---|
50年以上 | なし |
参照元:借地借家法(定期借地権)
借地権の売却は通常所有権の売却に比べて難しい
借地人は、地主から土地を借りる対価として以下の費用を支払う必要があります。
-
- 保証金(敷金)
- 権利金
- 毎月の地代
- 更新料
- 承諾料
一般的な通常所有権の土地を購入する際には発生しない費用を負担しなければならないのは、買手にとって大きなデメリットです。
また、
- 借地権の購入時に買手が住宅ローンを組めない恐れがある
- 一般定期借地権の場合は契約期間の満了時に更地にして返還しなければならない
というデメリットもあるため、一般的な通常所有権の土地の売却と比較すると借地権の売却は難しいといわざるを得ません。
ただし、借地権を確実に売却する方法は存在します。具体的な売却方法は後述の「あなたに最適な借地の売却方法」で解説するので、ぜひ参考にしてください。
ここでは、借地人が地主に支払わなければならない各種費用の概要や相場、借地権が一般の買手に売れにくい理由について見ていきましょう。
保証金(敷金)
「保証金」とは、借地を借りる際に担保として地主に預けておくお金のことです。
もし借地人が地代を滞納した場合には、保証金から充填されるしくみです。賃貸物件を借りる際の敷金をイメージするとわかりやすいでしょう。
あくまでも「預り金」であり、とくに問題がなければ借地契約の満了時に全額返還されます。
保証金の相場に関する定めがあるわけではありませんが、地代の6か月分とするケースが多い傾向にあります。たとえば毎月の地代が5万円の場合は、借地契約を交わす際に30万円ほどの保証金を支払う必要があるということです。
権利金
「権利金」は、借地権を設定するための対価として支払う費用です。
保証金とは異なり、借地契約が満了しても返還されません。賃貸物件を借りる際の「礼金」と同じしくみです。
権利金の金額は、借地権価格をもとに決められる形が一般的です。借地権価格は以下の計算式で求めます。
更地価格は土地の実勢価格、借地権割合は土地の評価額に対する借地権価額の割合のことで、「30~90%」の範囲で定められています。借地権割合の求め方は後述の「借地権の売却相場」で詳しく解説するので、合わせて参考にしてください。
たとえば、更地価格が2,000万円、借地権割合が60%の場合の借地権価格は以下のとおりです。
借地権価格=2,000万円×60%=1,200万円
つまり、このケースでは借地契約を交わすにあたって1,200万円ほどの権利金を地主へ支払わなければならないということです。
地主の立場からすると、普通借地権で土地を貸した場合は半永久的に取り戻せない可能性があります。
また、借地契約の終了時に建物を買い取らなければならない恐れもあるなど、地主の経済的負担は大きいといわざるを得ません。そのため、地主が被る経済的損失を補塡すべく、多額の権利金のやりとりがなされることが慣例となっているのです。
税務上は「譲渡益」として処理されるため、権利金を受け取った地主は譲渡所得税を納めなければならない点も特徴のひとつです。
なお、借地契約に権利金の授受に関する定めがない場合、権利金の支払いは不要です。また、定期借地権で借地契約を交わす際にも基本的には権利金は発生しません。
毎月の地代負担
地主から土地を借りて建物を建てた借地人は、地主に対して「地代」を支払う必要があります。
年間の地代は「土地価格の2~3%」、もしくは「固定資産税・都市計画税の3~5倍」に設定されるケースが一般的です。
たとえば、土地価格が2,000万円の土地にかかる地代は以下のとおりです。
「土地価格×2~3%」の計算式より、
年間の地代=2,000万円×2~3%=40~60万円
毎月の地代=40~60万円÷12か月=約3万3,000円~5万円
借地契約を交わす際に支払う権利金が高額な分、地代は比較的安く設定される点が特徴です。
ただし、地価が上昇して固定資産税が上がったなどの場合には地代の値上げを請求される可能性がある点は押さえておく必要があります。
地主から地代の値上げを請求された際の対処法について知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
更新料の負担
「更新料」とは、借地契約を更新する際に支払う費用です。
法律で相場が定められているわけではありませんが、借地権価格の「5%」ほどに設定されるケースが一般的です。
たとえば、借地権価格が1,200万円であった場合の更新料は以下のとおりです。
「借地権価格×5%」の計算式より、
更新料=1,200万円×5%=60万円
借地契約は数十年以上におよぶ契約となるため頻繁に更新料を支払う必要はありませんが、それでも大きな出費であることには違いありません。
なお、借地権更新料が払えない時の対処法について詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
承諾料の負担
借地人が借地上の建物を「建て替え」「増改築」「構造・用途の変更」「売却」する際には地主の承諾が不可欠であり、認めてもらう対価として「承諾料」を支払わなければなりません。
主な承諾料には以下のようなものがあります。
- 増改築承諾料
- 建て替え承諾料
- 借地条件変更承諾料
- 名義書換料(譲渡承諾料)
それぞれの承諾料の特徴や相場について解説します。
増改築承諾料
借地上の建物をリフォームやリノベーションをする際に支払う費用が「増改築承諾料」です。
増改築承諾料の相場はリフォーム・リノベーションの規模などによって異なりますが、一般的には更地価格の「1~5%」ほどに設定されます。
たとえば、更地価格が2,000万円の借地で建物の増改築をおこなう際には以下の承諾料が必要です。
「更地価格×1~5%」の計算式より、
増改築承諾料=2,000万円×1~5%=20~100万円
築年数が経過して外装や内装、設備などに不具合が生じている借地権付き建物に長く、快適に住むためにはリフォームが欠かせません。売却を検討している借地権付き建物の築年数が古い場合は、買手が増改築承諾料を負担する必要性が高いことを頭に入れておく必要があるでしょう。
建て替え承諾料
「建て替え承諾料」は、借地上の建物を建て替える際に地主へ支払う承諾料です。
増改築承諾料と同様に、築年数が経過した借地権付き建物を購入する買手にとって大きな負担となりかねない費用です。
建て替え承諾料の相場は、更地価格の「3~5%」です。たとえば更地価格が2,000万円の借地上の建物を建て替える際には、以下の承諾料が発生します。
「更地価格×3~5%」の計算式より、
建て替え承諾料=2,000万円×3~5%=60~100万円
借地条件変更承諾料
建物の構造を木造から鉄骨造へ、借地契約期間を30年から40年へなどといったように、契約締結時の借地条件を変更する場合には、借地条件変更承諾料が発生します。
借地条件変更承諾料の相場は、更地価格の10%です。たとえば、更地価格が2,000万円の借地上の建物を木造から鉄骨造へ変更する場合は、以下の承諾料を地主へ支払わなければなりません。
「更地価格×10%」の計算式より、
借地条件変更承諾料=2,000万円×10%=200万円
借地権を購入する買手が借地上にどのような建物を建築できるかは売買契約に大きく関わってくるため、売却前に借地契約を見返して条件を確認しておきましょう。
名義書換料(譲渡承諾料)
売却や贈与などで借地権の名義を借地人からほかの方へ変更する際に発生する費用が「名義書換料」です。「譲渡承諾料」とも呼ばれます。
名義書換料の相場は、借地権価格の「5~15%」です。たとえば借地権価格が1,200万円の借地を売却する際には、以下の費用を地主は支払う必要があります。
「借地権価格×5~15%」の計算式より、
名義書換料=1,200万円×5~15%=60~180万円
名義書換料を負担するのは、借地人であることが一般的です。借地人である親が子へ借地権を贈与する際にも名義書換料が発生します。ただし、相続に伴う名義変更の場合には名義書換料は不要です。
売却時に買手の住宅ローンが通りにくい
通常所有権の不動産とは異なり、借地権の購入時は住宅ローン審査が厳しくなる傾向にあります。
住宅ローンを組んで不動産を購入する際は、土地と建物の両方に金融機関の抵当権が設定されます。抵当権はいわば担保であり、住宅ローンを組んだ方が返済不能に陥った場合、金融機関は抵当権を設定している不動産の売却資金を融資額の補塡に充てられます。
しかし、借地権の場合は土地の所有者が異なるため、土地に抵当権を設定できません。借地権自体に抵当権を設定することは可能ですが、土地価格の6割ほどでしか評価されないため、通常所有権の不動産と比べると担保価値が低く、住宅ローンの審査が厳しくなりがちです。
また、借地上の建物の築年数が古い場合も担保価値が低いため、買手が借地権の購入時に希望する価格の住宅ローンを組めない可能性があります。
借地権の購入を検討している買手が住宅ローンの審査に落ちてしまった場合は、当然売却できません。買手が金融機関の住宅ローン審査に通りにくい点は、借地権の売却が難しい理由のひとつとして挙げられます。
建物を解体し更地で返還する必要がある
借地権の契約期間が満了して契約を更新しない場合、借地人は原則として建物を解体し、更地にしたうえで地主へ返す必要があります。
その際に発生する解体費用は基本的に借地人が負担しなければなりません。
解体費用は建物の構造によって異なりますが、木造の場合は「1坪3~5万円」、鉄骨造の場合は「5~7万円」ほどです。たとえば、40坪の木造2階建ての家を解体する際には「120~200万円」の費用が発生します。
借地権を購入する買手にとって、数百万円にものぼる解体費用が発生する点は大きなデメリットといえるでしょう。
借地権の売却相場
借地権を売却する際にもっとも気になるのは、やはりいくらで売れるかではないでしょうか。
しかし、借地権の売却相場については一概にはいえません。
借地権は一般的な不動産とは異なり、1軒1軒契約内容が異なるためです。たとえ同じエリアで同じ敷地面積だったとしても、地代や保証金、更新料、各種承諾料などが異なる場合は売却価格にも大きな違いが生じます。
また、一口に借地権といっても、借地の所在地が都心部なのか、地方なのかによって需要は異なります。たとえば借地が都心部にある場合は、多少のデメリットがあったとしても利便性などを考慮したうえで借地権を購入したいと考える方は多い傾向にあります。
一方、地方の場合はそもそもの地価が安いため、わざわざデメリットの多い借地権を購入しようと考える方はあまりいません。
このように借地権は一般の不動産よりも複雑なため、借地権の売却価格を知りたい場合は不動産のプロである不動産会社に査定を依頼することをおすすめします。
ただし、借地権は特殊な不動産であることから、借地権の取り扱いをしていない不動産会社も存在します。借地権をスムーズに売却したいのであれば、借地権の取り扱い実績が豊富な不動産会社を選ぶことが重要です。
仮で借地権売却相場を計算する方法はある
前述のように借地権の売却相場を算出するのは困難ですが、借地権割合からある程度の目安を割り出すことは可能です。
ここからは、借地権割合を使った借地権の売却相場の算出方法をご紹介します。
借地権割合とは
借地権割合とは、土地の評価額に対する借地権価額の割合のことで、相続税や贈与税を算出するために国税庁が定めているものです。
地域に応じて「30~90%(10%刻み)」の間で設定されており、基本的に都心部ほど借地権割合が高く、地方ほど低い傾向にあります。
借地権割合の算出方法
借地権割合は、国税庁のホームページ「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で調べることが可能です。
路線価図で、借地権付き建物の住所地を選択すると、以下のような地図が表示されます。
引用元:国税庁|路線価図・評価倍率表
道路上に「310C」など数字とアルファベットが記載されています。数字は道路に面した土地の1㎡あたりの価格(路線価。単位は1,000円)のこと、一方、アルファベットが借地権割合です。
借地権割合は「A:90%」「B:80%」「C:70%」「D:60%」「E:50%」「F:40%」「G:30%」と7段階に分けられています。上記の例では、1㎡あたりの路線価は31万円、借地権割合は70%ということです。
借地権の売却価格想定事例
それでは、以下のケースにおける借地権の売却価格の目安を算出してみましょう。
- 土地面積:60㎡
- 路線価:50万円/㎡
- 借地権割合:70%
まずは土地の価格を算出します。
「土地面積×路線価」の計算式より、
土地の価格=60㎡×50万円=3,000万円
次に、土地の価格に占める借地権の価格を求めます。
「土地の価格×借地権割合」の計算式より、
借地権の価格=3,000万円×70%=2,100万円
ただし、この数字はあくまでも借地権の価格であり、建物部分の価格は含まれていない点に注意が必要です。
建物価格は築年数や間取り、立地条件、建物の状態などによって大きく異なるため、やはり一概にはいえません。借地権付き建物のおおよその売却価格を知りたい場合は、借地権の取り扱い実績が豊富な不動産会社に査定を依頼したほうが確実です。
借地権の売却方法
借地権をいったいどのように売却したらよいのかがわからない方もいるのではないでしょうか。借地権の売却方法は、主に以下の3つです。
- 地主へ売却する
- 第三者に売却する
- 地主と協力して売却する
ただし、いずれも地主の承諾が必要な点に注意が必要です。
ここでは、借地権の3つの売却方法について解説します。地主の承諾がもらえない場合の対処法もご紹介するので、合わせて参考にしてください。
地主へ売却する
地代や承諾料などを支払わなければならない、契約期間が満了したら更地にして返す必要があるなど、借地権にはさまざまなデメリットが存在するため、売りに出しても一般の買手は見つかりにくい傾向にあります。
そこでおすすめなのが、「地主へ売却する方法」です。
地主は土地を借地人に貸すことで地代などを得られますが、一方で土地の活用はできません。借地を活用できるのは借地人のみのためです。
しかし、地主が借地権を購入すれば完全所有権の土地を取得することになるので、自宅を建てる、アパートを建てて経営するなど自由な土地活用が可能となります。
地主にとって借地権を購入するメリットは大きく、第三者へ売却するよりも高値で買い取ってもらえる可能性はあるでしょう。売却相手が地主であれば、譲渡承諾料も不要です。
ただし、地主側に買取の意思がなければ当然売却はできません。また、個人間売買は金銭を巡るトラブルが起こりやすい傾向にあるため、借地の売買に精通した不動産会社を間に挟み、売買契約書をきちんと取り交わすことが大切です。
なお、地主に借地権を売却する方法については、以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
第三者に売却する
地主の承諾が得られれば、不動産会社の仲介を通じて、借地権を「一般の第三者」へ売却できます。
しかし借地には多くのデメリットがあり、住宅ローンも組みにくいことから都心部など需要の見込めるエリアでない限りは個人への売却は難しいでしょう。
より確実に売却したいのであれば、専門の不動産買取業者に買い取ってもらう方法がおすすめです。専門の不動産買取業者へ買取を依頼するメリットは、「あなたにあった借地の売却方法」の項目で詳しく解説します。
地主と協力して売却する
地主も底地(借地)を手放したいと考えている場合は、底地と借地権を同時に売却する方法が有効です。
底地と借地権をセットにすれば完全所有権の土地として売り出せるため、借地が持つデメリットをすべて解消できます。買手も自由に土地活用できるようになるので、相場に近い価格での売却が期待できるでしょう。
この場合、売主となるのは借地人と地主の2人です。売却益の取り分についてもめるケースは少なくないため、事前に取り決めておくことが大切です。
一方、そもそも売主となる借地人と地主の合意がなければ成立しないため、現実的に実現する可能性はそこまで高くないといえます。
底地と借地権を同時に売却する方法は、以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
売却の承諾をもらえないなら借地非訟
ここまでご紹介してきた3つの売却方法は、いずれも地主の承諾がなければ成立しません。
しかし、地主の承諾がもらえない場合でも、裁判所に「借地非訟」を申し立てて認められれば売却できるようになります。
ただし、借地訴訟には「半年~1年」ほどの期間がかかるほか、申し立て費用として「1万2,000円~12万8,000円」ほど、弁護士費用として数十万円を負担しなければなりません。
参照元:裁判所「第3 費用」
また、訴訟期間が長引くほど地主との関係性も悪化し、精神的につらい立場に追い込まれてしまうでしょう。
借地権を売却したいものの地主からの承諾を得られない場合は、借地を専門に取り扱う不動産買取業者へ依頼することをおすすめします。
地主との交渉から借地非訟まで、あなたがやるべきはずだった手続きをすべて買取業者に一任できるので、精神的な負担を抱える必要はありません。
なお、弊社は借地権のような特殊物件を専門な扱う買取業者です。
借地権を手間なく売却したいとお考えなら、一度弊社へご相談ください。
※「物件住所」「氏名」「メールアドレス」を伝えるだけで相談を依頼できます。(※個人情報保護は万全です)
※無料相談はサービスの一環であり、買取を前提とするものではありませんので、お気軽にご利用ください。
あなたにあった借地の売却方法
ここからは、借地権を売却したいと考えている方へ向けてもっとも最適な売却方法をご紹介します。
そもそも不動産の売却方法には、仲介と買取の2種類があります。借地権を売却する前に、2つの売却方法の違いを押さえておきましょう。
仲介と買取の違い
まずは、不動産売却方法における「仲介」と「買取」の違いについて詳しく解説していきます。
なお、「仲介」と「買取」の違いの詳細については、以下の記事で詳しく解説していますので、併せて参考にしてください。
仲介
仲介とは、不動産会社が売主と買主を仲立ちして売買契約を成立させる売却方法です。
売主から不動産売却の仲介の依頼を受けた不動産会社は、売主との話し合いのうえで売り出し価格を決定して売却活動を開始します。売却活動には、Webサイトへの物件情報の掲載、物件周辺の住宅へのチラシのポスティング、現地見学会などがあります。
仲介の場合は多くの媒体を通じて買手を探すことから、相場に近い価格で売却できる確率が高い点がメリットです。
ただし、物件によってはいつまでも売れ残ってしまうリスクがあります。とくに需要の低い借地の場合は、半永久的に売れない可能性は高いでしょう。
また、売買契約が成立した際には不動産会社へ仲介手数料を支払う必要があります。
仲介手数料の上限額は、宅地建物取引業法によって以下のように定められています。
不動産売買価格 | 仲介手数料の上限金額(税込) |
---|---|
200万円以下の部分 | 売買価格×5.5% |
200万円超~400万円以下の部分 | 売買価格×4.4% |
400万円超の部分 | 売買価格×3.3% |
参照元:宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額
なお、仲介手数料を求める際は、以下の速算式を使えば簡単に算出できます。
たとえば、不動産を2,000万円で売却した場合に発生する仲介手数料は以下のとおりです。
仲介手数料=(2,000万円×3%+6万円)×10%=72万6,000円
売却金額によっては仲介手数料が高額にのぼることがある点に注意しましょう。
買取
「買取」とは、その名のとおり不動産会社に直接物件を購入してもらうことです。
仲介では一般の方が買主となりますが、買取の場合は不動産会社が買主となる点に大きな違いがあります。
また、仲介とは違い買主を見つける必要がないため、「1週間~1か月」ほどで現金化できる点がメリットです。仲介手数料もかかりません。
ただし、買取業者は購入した不動産にリフォームなどを施してから再販するため、リフォーム費用などを差し引いた金額が買取価格となります。仲介で売却するよりも「30%」ほど売却価格が安くなってしまう点はデメリットといえるでしょう。
借地権の売却は「立地」によって仲介と買取のどちらかが決まる
借地権を売却する際に仲介と買取のどちらが適しているのかは、「立地条件」によって以下のように異なります。
- 都市部などのニーズが高い借地権付き建物なら仲介で売却
- 地方などのニーズが低い借地権付き建物なら買取業者へ売却
ここからは、それぞれの売却方法について詳しく見ていきましょう。自身の所有している借地権に該当する項目を読み進めていってください。
都市部などのニーズが高い借地権付き建物なら仲介で売却
立地条件がよく、需要が見込める都市部にある借地権であれば、仲介でも買手が見つかる可能性があります。借地権を少しでも高く売却したいと考えている場合はチャレンジする価値はあるでしょう。
ただし、不動産会社によっては借地自体の取り扱いを断られてしまうケースも少なくありません。
また、借地に詳しくない営業担当者の場合には売却に際して地主との関係性がこじれてしまい、承諾を得られずに売却できないという事態に陥ってしまう恐れもあるため、注意が必要です。
地方などのニーズが低い借地権付き建物なら買取業者へ売却
借地権自体に大きなデメリットが存在するにもかかわらず、さらに地方など需要の見込めないエリアの場合には仲介で売りに出しても買手は見つかりません。
たとえ買手が現れたとしても、築年数が古い建物の場合は住宅ローンの審査にとおらない可能性が高いでしょう。現金一括で購入できる方はそこまで多くはないため、いつまでも売れ残ってしまいかねません。
買手のニーズが見込めない借地権付き建物の場合は、現金買取を基本としている買取業者に買い取ってもらったほうが確実です。
借地を高く売却するテクニック
デメリットの多い借地権を確実に、かつ早期に売却したい場合は専門の買取業者へ買い取ってもらうことをおすすめします。
ただし買取業者といっても千差万別であり、借地権の取り扱い実績があまりない業者の場合は活用方法を見いだせないために買い取ってもらえないか、安く買いたたかれる羽目になりかねません。
借地券を少しでも高く売却したいのであれば、ここでご紹介する4つのテクニックを押さえておきましょう。それぞれのテクニックについて、詳しく解説します。
専門の買取業者に依頼する
前述のように、借地権を売却するには地主の承諾が不可欠です。地主との交渉が失敗に終わってしまったら、裁判をしない限り売却できないので注意が必要です。
地主の意向を無視して強引に話を進める業者ではトラブルへと発展し、売却を承諾してもらえない可能性があります。そのため、買取業者へ借地権の買取を依頼する際は、借地に関する知識と経験が豊富かどうかを必ず確認しましょう。
借地権の買取実績が豊富な買取業者であれば地主との交渉の進め方を把握しているので、スムーズな売却を実現できます。
なお、弊社は借地権のような特殊な物件に強い専門の買取業者です。
年間600件以上の買取実績(※2023年1月~10月の実績)とノウハウを元に、借地権をできる限り高く買い取っており、「フジテレビ」を始めとする各メディアにも取り上げられています。
弊社は「全国対応」、査定や相談は「無料」ですので、少しでも買取を検討していましたら、まずは弊社へ一度ご相談ください。
※「物件住所」「氏名」「メールアドレス」を伝えるだけで相談を依頼できます。(※個人情報保護は万全です)
※無料相談はサービスの一環であり、買取を前提とするものではありませんので、お気軽にご利用ください。
査定は必ず複数の買取業者に依頼する
不動産買取の特徴は、査定価格が売却価格に直結する点にあります。
しかし買取業者によって査定の基準や販売戦略は大きく異なるため、どうしても査定価格には差が生じてしまいがちです。また、買い取った借地権を再販するノウハウがある買取業者であれば高値で買い取ってくれますが、借地権の活用ノウハウがない買取業者の場合は買取価格が安くなってしまう点に注意が必要です。
1社のみに査定を依頼すると、提示された査定価格が適正なのかどうかの判断がつきません。そのため、借地権を売却する際には複数の買取業者へ査定を依頼して査定価格を比較することをおすすめします。
金額だけでなく担当者の人間性も見極める
査定価格だけでなく、営業担当者の人間性の見極めも重要です。
中には高い査定金額を提示し、契約直前で買取金額を下げる悪徳な営業担当者もいるため注意が必要です。
借地権の売却に関する知識は豊富か、売却に際して親身に対応してくれるか、疑問に対する返答が早いか、その場では答えられない質問であっても言葉を濁さずきちんと調べたうえですぐに対応してくれるかなど、営業担当者のレスポンスも比較したうえで買取業者を選びましょう。
金額差があるなら交渉する
複数の買取業者へ借地権の査定を依頼した際に、人間性でもっとも信頼できると感じた営業担当者が提示した査定価格がほかの業者よりも低いケースもあるでしょう。その場合は、一度金額交渉をしてみることをおすすめします。
ただし、買取業者も最低限の利益ラインを見定めたうえで査定価格を算出しているため、担当者が納得するような理由がなければ金額を上げてもらうことは難しいといわざるを得ません。
たとえば「今は交通の利便性が悪いが、数年後に新駅ができることが決まっている」「借地の近くに大規模な商業施設が建設される」など、今後借地権の価値の上昇につながる根拠があれば、査定価格を上げてもらえる可能性が高いでしょう。
まとめ
借地権であっても売却は可能です。
ただし、
- 地代や契約更新時の更新料
- 建て替え時の承諾料などを地主へ支払う必要がある
- 担保評価が低く買手が住宅ローンを組めない可能性が高い
などのデメリットがあるため、仲介で売りに出したとしても買手は見つかりにくいでしょう。
そのような多くのデメリットを抱える借地権でも、専門の買取業者であれば「1週間~1か月」ほどで買い取ってくれます。地主との交渉を一任できる点も大きなメリットといえるでしょう。
しかし、借地権の取り扱いに慣れていない買取業者に依頼すると、地主の意向を無視して強引に買取の話を進めてしまい、トラブルへと発展しかねない点に注意しましょう。
借地権をスムーズに売却するには、借地権の買取実績が豊富な買取業者を選ぶことが大切です。
なお、弊社は借地権のような特殊な物件に強い専門の買取業者です。
年間相談件数5000件、年間買取件数600件の買取実績(※)があり、他の業者が断るような物件でも、数多く買い取りしてきました。
※2023年1月1日~2023年10月25日現在の実績:相談/5,555件:買取/600件
「借地権をできる限り高く売却し、物件を抱えるリスクから一刻も早く解放されたい」とお考えの場合は、一度弊社へご相談ください。
※「物件住所」「氏名」「メールアドレス」を伝えるだけで相談を依頼できます。(※個人情報保護は万全です)
※無料相談はサービスの一環であり、買取を前提とするものではありませんので、お気軽にご利用ください。