共有名義とは
共有名義とは、ひとつのものを複数の人が共同で所有している状態を指します。
共有持分とは
共有持分とは、不動産を共有している人それぞれが持っている、所有権の割合を指します。
3人が均等の割合で共有しているなら、共有持分はそれぞれ3分の1や1/3ずつというように、分数で表すのが一般的です。
共有持分の決め方は、不動産を共同で購入した場合には、その出資した金額の比率に応じた持分になります。
持分を金額の比率とは異なる割合にすることもできますが、出資金額よりも多い持分を持つ方は、その出資金額の割合を超える分については贈与されたものとして、贈与税の課税対象になりますので注意が必要です。
また、相続によって不動産を取得した際に、特に相続割合について取り決めがされていない段階では、一旦「法定相続分で共有」したものとみなします。
その後、すべての相続人による遺産分割協議を経て「任意の相続割合」に決まった場合には、その合意した持分での共有形態がスタートします。
共有不動産の実際の利用についてですが、共有持分が3分の1だからといって3分の1の面積しか使えないわけではありません。
持分割合に応じて所有権が共同になるだけで実際の利用に制限はなく、共有不動産では共有者おのおのがその全部を使うことができるのです。
土地を共有名義にするメリット・デメリット
ここからは、土地を共有名義にする4つのメリットと、6つのデメリットを具体例を挙げて解説します。
土地の共有はどのような場合に起こるのでしょうか。
例えば、夫婦のいずれもが住宅ローンを組んで、受けた融資金を出し合って購入する場合や、二世帯住宅の建築のために親と子のいずれもが出資して共同購入する場合などです。
この場合にも前述と同じく、出資した金額の割合に応じた持分での共同所有になります。
4つのメリット
不動産を共有するメリットとして以下の4つがあります。
土地の購入費用を抑えられる
購入者が増えるので一人あたりの購入金額が安く済みます。しかし当然ながら、土地全体の購入費用総額は変わりません。
融資枠を拡大できる
例えば、年収の7倍を融資額の上限目安だと仮定してみます。
年収600万円の方は融資可能金額が4,200万円となるので、5,000万円の物件を購入したいと思っても単独での借り入れはできません。
しかし、共働きの配偶者に400万円の年収があれば、その配偶者は別途で最大2,800万円の融資が受けられます。
つまりペアローンの合計で最大7,000万円と、単独での借入よりも高額の融資が受けられるというものです。
住宅ローン減税を増やせる
現行の住宅ローン控除制度は、年末の住宅ローン借入残高の0.7%を、新築住宅では最大13年で既存(中古)住宅は最大10年、所得税から控除を受けられる制度のことです。
これは住宅ローンを借りている方ごとに適用しますので、二人分の控除を合算すれば単独購入のときよりも大きな減税の効果が期待できます。
13年間のシミュレーションは以下の条件をもとに計算します。
ご主人さま | 奥さま | |
年収 | 600万円 | 400万円 |
所得税(年概算) | 21万円 | 9万円 |
住民税(年概算) | 32万円 | 18万円 |
年概算の合計税額 | 53万円 | 27万円 |
※配偶者控除や扶養親族などは考慮せず、年収は13年間変わらないとします。
※ペアローン借入額は、ご主人さま:2,500万円、奥さま:1,500万円とします。
ご主人さま(単独購入)の場合
年 | ローン残高 | 減税額 | 所得税+住民税 | 実際の減税月額 |
1 | 4,000 | 28.0 | 53 | 28.0 |
2 | 3,900 | 27.3 | 53 | 27.3 |
途中の数値の推移は省略します。 | ||||
12 | 2,900 | 20.3 | 53 | 20.3 |
13 | 2,800 | 19.6 | 53 | 19.6 |
計 | – | – | - | 309.4万円 |
※ 年末の住宅ローン残高は任意の数値を入れてあります。
ご主人さま(夫婦ペアローン)の場合
ローン残高 | 減税額 | 所得税+住民税 | 実際の減税額 | |
1 | 2,500 | 17.5 | 53 | 17.5 |
2 | 2,440 | 17.1 | 53 | 17.1 |
途中の数値の推移は省略します。 | ||||
12 | 1,840 | 12.9 | 53 | 12.9 |
13 | 1,780 | 12.5 | 53 | 12.5 |
計 | – | – | – | 194.7万円 |
※ 年末の住宅ローン残高は任意の数値を入れてあります。
奥さま(夫婦ペアローン)の場合
ローン残高 | 減税額 | 所得税+住民税 | 実際の減税額 | |
1 | 1,500 | 10.5 | 27 | 10.5 |
2 | 1,470 | 10.3 | 27 | 10.3 |
途中の数値の推移は省略します。 | ||||
12 | 1,170 | 8.2 | 27 | 8.2 |
13 | 1,140 | 8.0 | 27 | 8.0 |
計 | – | – | – | 120.1万円 |
※ 年末の住宅ローン残高は任意の数値を入れてあります。
シミュレーションの結果、住宅ローン減税の13年間の総額が計算できました。
ご主人さま(単独購入)の場合
住宅ローン減税額:309.4万円
ご主人さまと奥さま(夫婦ペアローン)の場合
住宅ローン減税額:314.9万円 (194.7万円 + 120.1万円)
このように、単独で購入するよりも夫婦ペアローンで購入し不動産を共有した方が、住宅ローン減税額が大きくなる場合があります。
ちなみに住宅ローン減税制度の対象者は、以下の条件に当てはまる方に限られます。
・注文住宅は令和3年9月30日まで、分譲住宅は令和3年11月30日までに取得契約済み
・令和7年に12月31日までに取得した住宅に入居する
売却する場合の特別控除を増やせる
マイホームの売却時に、利益が3,000万円までは不動産譲渡所得税が非課税になる制度がありますが、マイホームが2名の共有であればその特別控除額の上限は単純に2倍になります。
しかし、実際には不動産の売却後の利益が3,000万円を超えることは少なく、この特別控除の恩恵を受ける場面はあまりありません。
6つのデメリット
続きまして、不動産を共有するデメリットとして以下のケースごとに6つがあります。
・「共有者全員の同意が必要」となる3つのデメリット
・「共有持分の過半数の同意が必要」となる2つのデメリット
・「所有し続けるリスク」となる1つのデメリット
合わせて6つのデメリットを解説します。
土地の売却
共有不動産の全部の売却は処分行為といわれ、共有者全員の同意がなければできません。
しかし、全体の売却ではなく共有持分のみの売却でしたら単独の意思だけでできます。
その場合には、共有持分を取得した新たな共有者は、既存の共有者とともに不動産を共同所有します。
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長期的な貸地
借地借家法に基づいた賃貸借契約などのような、使用者の権利が保護された長期的な貸地の場合には、共有者全員がその利用や処分に長期間の制限を受けることが予想されますので、共有者全員の同意が必要とされます。
抵当権の設定
抵当権を設定するとは、不動産の共有持分を担保にしてお金を借りる手続きのことです。
もしも約束どおりに返済ができなくなれば差し押さえを受け強制競売される場合があり、他の共有者への影響が少なくないとして、共有者全員の同意を必要とします。
しかし、この差し押さえは共有不動産全体が対象ではなく、あくまで担保に入っている共有持分のみが対象です。
その場合に、共有持分を競売などで買い受けた新たな共有者と既存の共有者が、不動産を共同で所有します。
短期的な貸地
例えば、倉庫や資材置き場などの保管スペースやイベント会場のように、数日から3年程度の短期で貸す場合には共有者全員が受ける制限の程度が小さいので、共有持分の過半数の同意で意思決定ができるとされます。
賃貸契約の解除
賃貸契約の解除は土地利用の制限をなくす行為ですので、契約するときとは異なり、同意は共有持分の過半数で足ります。
相続で名義人が増え権利関係が複雑になる
共有者のひとりAに相続が起こり、その者の数人の相続人B、C、Dへと所有権が移る場合など、共有者が一気に増える可能性があります。
そして、そのままの状態が続いたのちに、Bからさらに次の世代のX、Y、Zへ相続が起こるなど、数世代の相続(数次相続)が起こり共有者が増えると、足並みを揃えて意思表示するのは次第に難しくなります。
手続きする際の書類集めも手続自体も煩雑で時間がかかり、大きなロスになります。
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共有名義の解消法①【あなたが全体を取得したいなら】
なにかと共有者への情報共有や意思疎通が大変なので、いっそのこと共有名義を解消したいと思った場合にはどうすればよいのでしょうか。
他の共有者の持分を買取る
他の共有者の共有持分をすべて買取れば単独所有になり、すべての意思決定は自分だけでできるようになります。
共有不動産とは異なり単有不動産は共同所有特有の制約がないために、共有状態の売却価格とは比べ物にならないほど高額になります。
もしも他の共有者へ渡せるだけの資金調達ができるなら最良の方法といえます。
ただし、他の共有者の好意によって安価で持分を譲渡する場合には注意が必要です。
相場より相当な安価で譲る場合には、その安価になった差額分は贈与したものとみなされ、共有持分を譲り受ける側に贈与税の課税義務がつく場合がありますのでご注意ください。
他の共有者の持分を贈与してもらう
売買によってではなく無償で取得、もしくは相場よりも相当な安価で取得する場合には、取得した側に贈与税の納税義務があります。
贈与税は贈与者間の関係性や年齢や評価額などによって算出した課税額に、10〜55%までの課税額に応じた税率をかけた額です。
例えば、贈与を受けた年の1月1日時点で18歳に達し成人している者が、両親もしくは祖父母などの直系尊属から現金1,000万円の贈与を受けたとします。
このように、直系尊属から成人へ贈与される財産を特例贈与財産、それ以外を一般贈与財産と分類します。
もれなく適用できる110万円の基礎控除を引いた残額は890万円(基礎控除後の課税価格)となり、以下の贈与税の速算表【特例贈与財産用】に照らしますと、
出典:贈与税の速算表【一般贈与財産用】【特例贈与財産用】|国税庁
贈与税額
= 890万円(基礎控除後の課税価格) ✕ 30%(税率) ー 90万円(控除額)
= 177万円 となります。
また、もしも贈与財産が不動産なら、国税庁が定めた路線価から算出した相続税評価額を流用して、贈与税を計算します。
そのほかの簡易的な方法としては、自治体が定める固定資産税評価額を使って目安金額を知ることもできます。
路線価は固定資産税評価額の1.2〜1.5倍を目安にできますので、贈与税のおおよその目安金額が知りたい場合は、固定資産税評価額を用いたこの計算方法でもよいでしょう。
他の共有者の持分を放棄してもらう
放棄とは自分の共有持分の権利義務一切を手放す行為で、単独の意思表示だけで有効です。
放棄された共有持分は他の共有者の持分比率に応じて自動的に分配され、それ以降の不動産管理行為も持分を引き継いだ者に移転します。
放棄も贈与も無償で渡す行為で混同しやすいため、以下にまとめました。
共有持分の贈与 | 共有持分の放棄 | |
法律行為 | 贈与契約(双方の合意)が要る | 単独の意思表示だけで有効 |
相手方 | 誰にでも譲渡できる | 自分以外の共有者へのみ譲渡 |
不動産登記 | 共有者の協力が要る | 共有者の協力が要る |
贈与税 | 課税対象 | 課税対象(税法上は贈与と同様に扱う) |
所有権移転の原因が贈与でも放棄でも不動産登記は共同で行わなければならず、また不動産登記がされていなければこの権利の変動を対外的に主張することはできません。
さらに、固定資産税の納税義務は登記上の所有者とされており、固定資産税の支払いを次の所有者へ適正に引き継ぐためにも、時間を空けずに不動産登記を完了させておく必要があります。
持分を受けたほかの共有者が不動産登記への協力に応じてくれない場合の訴えが、登記引取請求権です。
このように、放棄自体は単独の意思表示でも有効ですが、放棄には「管理義務の移転」や「登記の協力」、くわえて「固定資産税」や「贈与税」、さらには「不動産取得税」の負担など、多くのことが付随します。
それゆえに、後日の争いを避けるためにも他の共有者へ通知して同意をもらってから放棄することが大切なのです。
共有名義の解消法②【他の人が全体を取得したがっているなら】
先ほどとは逆に、他の共有者へ共有持分を集約する場合を考えてみましょう。
自分の持分を贈与
自分の共有持分を他の共有者へ無償で贈与する方法です。
ほとんどの場合が身内で構成された共有関係ですから共有持分を無償で贈与することが多いのです。
しかし後日の問題回避のためにはもちろんのこと、登記手続きでも使いますので、贈与契約書として合意内容を書面にして保管しておきます。
また、無償で貰い受けた相手方に贈与税がかかることを知らない可能性もありますので、念のために贈与する前に伝えておきましょう。
自分の持分を他共有者へ売却
贈与税を国へ納めるよりも売買代金として身内にお金を渡すほうが、双方の希望に沿っている場合もあります。
そのようなケースも考慮し、選択肢として売却も想定しておいて、双方にとってどちらがよいか比較検討しましょう。
とくに売却の場合には、相場の金額とあまりに乖離した安い価格で売却すると買主に贈与税がかかるおそれがあります。
売却価格はだれにも相談なく決めずに、まずは相場に詳しい不動産会社や贈与税に詳しい税理士などにご相談ください。
自分の持分を放棄
先述したとおり持分の放棄は単独の意思表示でも有効ですが、管理義務の移転と登記手続きの協力と、贈与税や固定資産税や不動産取得税の納税が関わります。
くれぐれも自分だけで勝手に進めないように、都度ほかの共有者と情報を共有しながら行うようにしてください。
なお、放棄による登記手続きには放棄する者の実印の押印と印鑑証明書の添付が必要です。
また、その共有不動産を以前に所得した際の権利証(登記識別情報)などの書類も要りますので、併せて確認しておきましょう。
共有名義の解消法③【共有者全員が現金化したいなら】
共有者の全員が意思統一しているなら、共有であっても実際には単有の場合と変わりなく売却が進められます。
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土地全体を売却
共有者全員が現金化したいなら、土地全体を売却し、持分割合に応じて代金を分配しましょう。
この際に大切なのは、どの価格で売却を決めるのかという金額の折り合いです。
意思統一して売却へ向かっているなら、その流れを止めることなく一気に成約させる方が望ましいです。
土地を分筆後に売却
共有地を分筆しておのおの単有の土地にすれば、共有の場合よりも売りやすく高値売却も期待できて、現金化にはとても有効です。
接道が私道の場合
建築物は、敷地が建築基準法上の道路に2m以上接していないと建替えができないという基本ルールがあり、その際の道路の種類や接道の判定は、私道を共有する当事者ではなく最終的に自治体が判断して許可を出します。
また、通路部分が共有状態の私道であれば、その通行利用や管理とライフライン維持のための掘削承諾についても共有者間で承認し合います。
土地を売却するのであれば、建築できる土地としてそれらを新しい所有者へ問題なく引き継がなくてはなりません。
そのため、分筆後でも敷地と道路の関係に問題がないかを事前に確認し、関係者や自治体との取り決めを書面にしながら慎重に分筆しましょう。
共有名義の解消法④【共有者が音信不通なら】
共有者へ確認をしたくても共有者が音信不通で、連絡先や居所が特定できないために手続きが進まないこともありますが、そんな場合にはどのような方法で解決するのでしょうか。
不在者財産管理人を選任
共有者が行方不明や音信不通の場合には、家庭裁判所が選んだ不在者財産管理人を相手に、共有名義の解消へ向けて話し合うことになります。
この選任は利害関係人から家庭裁判所に申し立てて行い、不在者財産管理人はほとんどの代理行為を裁判所の許可を得ながら不在共有者のために財産の管理や処分などを行います。
不在者財産管理人になれる方の範囲や費用について
不在者財産管理人は不在者の財産を適切に管理する義務がありますので、利害関係になることが多い親族よりも、第三者のほうが適任だとされています。
そのために、個人よりも弁護士や司法書士などの専門職から選ばれることが多いようです。
専任するための費用は800円分の収入印紙や郵便切手のみですが、不在者の財産から管理費用や管理者への報酬が捻出できなくなりそうなら、30〜100万円の予納金を家庭裁判所が求めてくることもあります。
共有名義の解消法⑤【共有者が認知症発症なら】
共有者が高齢や精神的な病気のために判断が充分にできない場合には、不動産の売却などの法律行為ができないことがあります。
成年後見制度を利用
共有者本人の意思表示が不確かな場合には、家庭裁判所が選んだ成年後見人が財産処分などの法律行為をサポートしてくれます。
しかしこの成年後見人制度は、選任までの手間がかかるうえに財産処分などは都度の家庭裁判所の許可がないと進められませんので、スピードが必要な売却などには不向きです。
共有名義の解消法⑥【親権者がいない未成年が共有者なら】
共有者に不動産の契約などの法律行為ができない未成年がいる場合はどうでしょうか。
未成年後見人制度を利用
通常は、その未成年者の親が法定代理人として介入するのですが、その親権者が亡くなったなどの理由で法定代理人のサポートができない場合には、家庭裁判所の許可を得て未成年後見人を選ぶことができます。
共有名義の解消法⑦【すでに交渉が決裂しているなら】
もしも共有者間で意見が分かれ協力が得られなくなった場合には、どのような解決方法があるのでしょうか。
共有物分割請求を提訴
共有状態を解消して単有にするか、分けやすい方法を選んで分割するなど、3つの方法があります。
共有物分割請求による共有解消方法
現物分割 | 物理的に分ける方法で、土地なら分筆をします。しかし不動産は物理的に分けられないことが多く、また小さく分けると利便性や価値が下がる場合もあり、この方法はあまり使われません。 |
代償分割 | 共有持分を他の共有者が買取って共有者の数を減らしていきます。双方が納得する買取価格を決めることが難しいのですが、現金化したい人と所有したい人の双方がいる場合にはよい方法です。 |
換価分割 | 共有不動産を売却してお金に変えて共有持分に応じて分配します。換価の方法は任意で売却するか競売するかです。競売は裁判所の命令なので、共有者の中に売りたくない人がいても強制的に売却されます。 |
この方法は法律に則った強制力のある措置ですから、共有状態を脱するには効果が高いといえますが、現実的には思ったようにいかないのです。
共有物分割請求が現実的に使えない主な4つの要因
・ 費用がかかる:弁護士や鑑定士へ依頼、多くの資料集めが必要になる
・ 売価が下がる:競売は通常の売却よりも売却価格がかなり下がる
・ 関係が崩れる:分割訴訟によって共有者(親族)間の関係が悪化する
ですから、このような裁判手続きは多くの方にとって現実的ではないでしょう。
自分の持分を第三者へ売却
自分の持分を売却するだけなら他の共有者の同意は不要なのですが、不動産を活用するために他の共有者の同意が必要など制限の多い共有持分を、一般の方が好んで買うことはあまりありません。
したがって、共有持分を共有者ではない第三者へ売却する場合には、相手方が買取業者などの専門業者になることが多いのです。
共有になる(なった)シチュエーションと持分割合の決め方
共有状態になる経緯として代表的なものに相続取得と共同購入がありますが、そのおのおのについての持分割合の決め方を見ていきましょう。
相続により共有名義になる
不動産を共有する原因として最も多いのが相続ではないでしょうか。
複数の相続人のなかで特定の者に単独で相続させるなどの具体策がない場合に、いったん共有になることが多いものです。
親族間で共有
親族間で相続財産を共有する際の多くが法定相続割合による共有でしょう。
親族間での共有は法律に則って法定相続割合にしたほうが平和的解決のようにも思えますが、そうするものだという思い込みや、他の最善策が見当たらないからという理由がほとんどです。
また、不動産を共有した先の将来にあるメリットやデメリットに関する知識不足も、法定相続割合で共有する理由のひとつでしょう。
遺言による特定人と共有
遺言によって遺産を受け取る者とその割合を指定する行為を遺贈といい、相続ではできない相続人以外の第三者へも財産を渡すことができます。
そのため、親族以外の者との共有関係になることもあります。
ただし、相手が他人なら意思疎通が取りづらいこともある反面で、身内相手なら言いづらいことでも他人だから言いやすい部分もあり、どちらがよいとは言い切れません。
相続人がいないために帰属者と共有
被相続人に相続人が誰もいなくて天涯孤独だった場合には、その財産は国庫に帰属(日本国の所有)します。
しかし、故人が生前に故人の面倒を見るなど特にお世話になった方は、親族でなくても家庭裁判所の判断により特別縁故者という立場で財産分与される場合もあります。
複数の特別縁故者のなかで共有関係になることがあるかもしれませんが、この特別縁故者の制度自体を知っていて自分から申し立てる方はそれほど多くありません。
もしも、相続人がおらず特別縁故者もない場合には、相続財産は他の共有者へと帰属し、共有割合に応じて分配されます。
相続により取得した持分割合の決め方
相続によって取得した際の共有持分の決め方には、主に以下の場合が考えられます。
法定相続分によって決める
これは法定の割合なので、割合自体に不満を感じたとしても表立った争いになりにくい決め方です。
相続が発生して遺産分割協議が整うまでの期間は、いったん自動的に相続人全員がこの割合で相続したものとみなされます。
遺産分割協議によって決める
相続人全員で話し合って、誰にどの不動産をどの割合で分配するかを決めます。
持分割合は法定相続分に関係なく大きくも小さくもできますし、不動産によって割合を変えたり、割合を0にすることもできます。
とくに、将来は売却することで一致している不動産なら法定相続分の共有であっても、協力して売却へ動けばよく、さほど問題にはなりません。
しかし、保有して活用するなら協調していけるかどうかは大変重要ですから、相続割合を考えながら振り分けるべきでしょう。
土地を共同で購入し共有名義になる
夫婦おのおのが銀行で住宅ローンを組んで融資を受ける夫婦ペアローンを使って購入する場合や、2世帯住宅や同一敷地内に母屋と離れの2棟を建てるために親子が共同で購入する場合など、複数人がお金を出し合って共同で土地を買った場合には、共同購入者間で共有することになります。
また、高額の融資を目的とする場合や相続税の節税対策のために、個人と法人がそれぞれ出資して土地を購入し、共有する場合もまれにあります。
土地購入した場合の持分割合の決め方
土地を共同購入した場合には次の2つが考えられます。
負担額に応じて割合を決める
土地の共有割合は、ほとんどが出した金額の割合と同じ割合で共有持分を決めます。
また、金額の割合と異なる共有持分を持つこともできますが、出資割合を超えて得た持分価額に対して贈与税が課税されることがありますので、割合を変える際には注意が必要です。
親などから資金援助がある場合の決め方
両親や祖父母から資金援助を受けて土地を購入する場合には、贈与税が非課税扱いになる制度や、将来の相続発生時まで納税を繰り延べられる制度を活用することがあります。
つまり、資金の贈与を受けてもその時点で贈与税の納税が不要なら、納税によって資金が流失することもありませんので、その援助で購入した土地は、援助を受けた者の持分にしても問題ありません。
【共有名義のトラブル解消法】早期解決が図れる依頼先
共有名義の不動産トラブルは、その内容によって適切な相談先を選ぶことで、解決へのハードルや期間や出費を小さくできます。
あなたが欲しいなら弁護士へ依頼
弁護士は法律に則った紛争解決のスペシャリストです。
紛争に関する問題をいろんな角度から俯瞰して判断できますので、弁護士ほど頼りになる存在はないでしょう。
しかし、知識経験が豊富な弁護士であっても専門的で深い知識まではカバーできませんので、税務なら税理士、登記なら司法書士、不動産なら不動産会社というふうに、分野によって相談先を決めるとよいでしょう。
話し合いができないなら持分買取の専門会社へ無料相談する
ひととおりの努力はしてみたものの話し合いでは解決する見込みがない、もしくははじめから話し合いにするつもりがない場合には、共有不動産の共有持分買取に特化した専門会社を使う方法があります。
売却前に共有者とトラブルにならない
持分の売却なら、事前にほかの共有者の承諾は要りませんので、トラブル回避の観点からも持分の売却をまず初めに検討すべきです。
早期売却で即現金化
共有持分の買取会社は専門のノウハウをもった会社ですので、まずは早急に買取ってもらって現金化ができ、ほかの共有者へも最も収まりよく動いてくれます。
紛争解決には弁護士が適していたように、共有持分の処分に関してはそこに特化した専門会社が適しています。
すべて丸投げ出来る
共有持分の処分や共有者との関係は親族間の人間関係が大きく関わってきます。
言いづらいことや言いたくないことも、そこに配慮できる会社が介入してくれることで、自分では何もしなくても不動産の共有関係や管理義務から開放されて、安全に現金化ができます。
まとめ
不動産を共有するとその不動産を活用するときには、ほかの共有者の承諾を得ないとできないなど、自由に動けないことがたくさんあります。
とはいえ、自分の生活圏から遠く行き来が大変で固定資産税の出費や管理の手間から開放されたい場合でも、他の共有者の意向や事情を考えると行動に移せないものです。
本来不動産は貴重で安定した財産であり、家や土地は人の生活に幸せをもたらしてくれます。しかしそれが足かせになってしまうこともあるのです。
そのまま我慢して保有するのではなく、もしも自分にとって都合の良い方法がとれるなら、その方法をひとつでも多く知って、可能であれば実行してみてください。
難しい課題はたくさんありますが、専門家のサポートがあれば失敗することはありませんので、専門性を高く求められ、自分でやりたくないようなことはプロに安心して任せるとよいでしょう。