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2024.09.24

管理不全空き家制度の実態と課題に迫る!松山大学 倉澤生雄教授へインタビュー!

倉澤教授 インタビュー

「空き家を放置してしまっているんだけど、このままだとどうなるの?」
「空き家を放置していたら管理不全空き家に指定されてしまった。どうしたらいいの?」

空き家所有者や、空き家を相続した方の中にはこうした悩みを抱いている方も多いことでしょう。
これまで、放置された空き家の行政処分として、特定空き家への指定がありました。
しかし、2023年に法改正がなされ、特定空き家に指定されなくとも、管理不全空き家として助言・指導、勧告を受ける可能性が出てきました。

管理不全空き家や特定空き家について、言葉は聞いたことはあっても、詳しく知らない方もいるでしょう。
弊社AlbaLink(アルバリンク)は、訳あり物件専門の不動産買取業者として、日々、放置空き家の買取を行うことで、微力ながら、空き家問題に貢献をしております。

そこで今回、Albalinkでは、空き家問題を解決するにはどうしたらいいのか、管理不全空き家や特定空き家の制度にも詳しい、松山大学の 倉澤生雄教授にお話を伺いました。
空き家問題に取り組む自治体で今何が起きているのか、貴重な生の声が聞けるインタビューとなっております。
最後までお読みいただけば、自身の空き家を管理不全空き家に指定されないための道筋がはっきり見えてくるはずです。

お話を伺った方

松山大学 法学部教授

倉澤 生雄

専門は行政法。
愛媛県内の複数の市や町の空き家対策協議会に参加し、提言を行っている。

インタビュアー

株式会社Alba Link(アルバリンク)
マーケティング部 ディレクター

田中 祐人

株式会社Albalink の自社メディア「訳あり物件買取プロ」「訳あり物件買取ナビ」で、空き家など訳あり物件についての情報発信を行っている。

「管理不全空き家制度」とは空き家の老朽化を防ぐ“転ばぬ先の杖”

管理不全空き家制度について、聞いたことはあっても、詳しく知らない方もいると思います。
そこで、倉澤教授に制度の成り立ちや意義について改めてわかりやすく説明してもらいました。

田中
まず初めに、管理不全空き家とはどういう制度なのか改めて説明していただいてもよろしいでしょうか?。

倉澤教授
管理不全空き家制度の説明をするには、まず特定空き家について説明しなくてはならないと思います。
もともと空き家問題に対して国は「空家等対策の推進に関する特別措置法」(以下特措法)という法律を設け、それに基づいて対応してきました。

放置空き家の中で、特に状態の酷い空き家については「特定空き家」に指定し、自治体から指導や勧告を行っていくことになっています。
特措法の第2条に特定空き家の定義も定められています。

田中
管理不全空き家制度ができる前から、空き家特措法があり、特定空き家への指定という対応が取られていたわけですね。

倉澤教授
そうです。
特定空き家は本当にボロボロで放置された空き家が対象になるのですが、そこまでボロボロになる前になんとかしようという考えで導入されたのが管理不全空き家制度です。
そもそも特定空き家に指定されるような空き家というのは、所有者も何とかできるならとっくに何とかしていると思うんですよね。
でも価値がないと思うから放置しているわけです。

そうした空き家を相続した場合、相続人も当事者意識がないから放置し続けるし、自分に何か責任があるとは思わない。
正直、こういった状態になってしまった空き家を改善するのは非常に困難です。
だからこそ、そこに至る前の状況の空き家も、「管理不全空き家」として適切に指導していくことにしたわけです。

田中
管理不全空き家制度は、特定空き家に指定されるような状態になる前に手を打つという、いわば「転ばぬ先の杖」のような機能があるわけですね。

管理不全空き家の基準は曖昧だが国のガイドラインが目安になる

管理不全空き家制度がどのようなものかわかったところで、ではどのような状態だと管理不全空き家に指定されるのかが気になる方は多いと思います。
そこで倉澤教授に、管理不全空き家に指定される基準について、国のガイドラインの内容をもとに説明してもらいました。

田中
管理不全空き家に指定される基準があれば教えてください。

倉澤教授
それはわかりにくいんですよね。
特定空き家の基準については国土交通省の方でガイドラインがあり、それに基づいて判断しているんです。

参照元:管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関するガイドライン |国土交通省

ガイドラインでは「特定空き家の状態」「管理不全空き家の状態」「あるべき管理」というものが定められています(下図参照)。

さらに先ほど述べた特措法第2条の定義を具体的に示したのが以下の基準となります。

  1. 保安上規定に関して参考になる基準
  2. 衛生上有害に関して参考になる基準
  3. 景観扱いに関して参考になる基準
  4. 周辺生活環境の保全影響に関して参考になる基準

参照元:管理指針、管理不全空き家の参考基準|国土交通省

田中
なるほど。
これが特定空き家への指定の基準なんですね。

倉澤教授
そうです。
なので、上記の状態には至らないんだけれど、「色んなガタが出てますよ」っていうのが管理不全空き家になります。
そう言われても曖昧ですよね。

そもそも、ガイドラインの文言が抽象的なので、管理不全空き家について基準を明言するのが難しいんです。
ただ、「自分が持っている空き家がどの状況にあたるんだろう?」と思った時に、今あげた基準が一つの目安にはなると思います。

田中
気になる方は、まずはガイドラインの管理不全空き家に該当する箇所を見ていただいて、所有する空き家の状況と照らし合わせれば、だいたいの予想はつくということですね。

倉澤教授
そういうことですね。

管理不全空き家指定のアウトとセーフを分けるのは「保安性」と「衛生面」

田中
各自治体も国のガイドラインをもとに管理不全空き家に指定するかどうかの判断をしているのでしょうか?

倉澤教授
そうです。
特に重視されるのは、先にあげた4つのうちの1つめと2つめ、「保安上の規定」と「衛生上の規定」です。
私が関わったケースでも、上記のどちらか1つだけなら指定されるケースはまれですが、2つとも該当していると指定する、というケースが多かったように思います。

田中
2つですか?

倉澤教授
そうですね。
特定空き家の場合はやはり、保安上の危険というのが一番重要だと思うんです。
倒壊したりして、近隣住民に被害を与える恐れがありますから。

また、放置されていて、雑草が生い茂っていて害虫が湧いているといった衛生上問題がある家も、周囲への悪影響が大きいので問題視されます。
とはいえ、管理不全空き家は特定空き家ほど状況が深刻でないため、実際指定するとなると各自治体の担当者には躊躇もあるようです。

田中
やはり管理不全空き家については明確な基準がなく、自治体でも判断に迷っている感じなのですね。

倉澤教授
管理不全空き家自体、2023年12月13日に施行された、まだ新しい制度なので事例の積み上げがないのも判断に迷う要因だと思います。
国は制度を作ってガイドラインも作りましたけど、それだけで現場がスムーズに動くわけではないですから。

管理不全空き家の調査をはばむ自治体の人員不足

田中
実際、自治体ではどういった手順で管理不全空き家の指定を進めていくのでしょうか?

倉澤教授
まず、自治体としては空き家の調査を行います。
特定空き家の制度は以前からありましたので、特定空き家に該当する空き家や、そこまでいかないけれど、要注意な物件はリストアップしている自治体は多いはずです。
なので、そのリストの中から所有者がわかっている物件に対し、電話をかけるなどのアプローチをしていきます。

ただ、根本的な問題として、そもそもこの空き家対策を行っている自治体の担当者が圧倒的に少ないということがあります。
市によっては数人で対応せざるをえないところもあります。

田中
自治体で空き家対策に必要な人材や費用が回っていないのですね。

倉澤教授
はい、人が足りていないので、空き家を調べようにも調べきれないという問題があります。
住民から通報があって、空き家所有者もわかっているケースはまだいいんです。
そういうケースは現地に行って建物の状態とかもチェックしています。
そうやって特定空き家レベルの空き家についてはチェックできていたんですけれど、管理不全空き家となると数が多過ぎて、対応は難しい気がします。

田中
先ほど、管理不全空き家は空き家の老朽化が深刻化する前になんとかしようという制度だというお話がありました。
しかし、人員不足でうまく機能していないということでしょうか?

倉澤教授
国からは通報などがある前に動くように言われていますが、実際、動ける自治体は少ないんじゃないでしょうか。

相続放棄で振り出しに戻り続ける自治体の調査

田中
空き家の中には放置されて所有者不明の物件もあるかと思います。
自治体は、所有者などはどのように調べているのでしょうか?

倉澤教授
たしかに相続された空き家の場合、相続人が複数いたり、登記がされていなかったりで、所有者がわからないケースはあります。
ただ、自治体は誰がその家の固定資産税を払っているかはわかります。
なので、まずはその人に対し「このままでは管理不全空き家や特定空き家になりますよ。なので、空き家特措法22条に基づいてこういった手続きを始めますよ」ということを伝えます。

田中
固定資産税の納税者を管理者とみなしているわけですね。

倉澤教授
そうですね。
ただ、「指導」や「勧告」をして、最終的に「命令」を行う段階になって、その相続人が相続放棄をしてることがわかることも結構あります。

相続放棄は相続を知った日から3ヶ月以内に行うことになっています。
でも、相続をして時間が経ってから、空き家の管理責任を負ってることに気づいて、「こんなボロボロの家をなんで私が片付けなきゃいけないんだ」ってことで慌てて相続放棄をする人もいるんです。

そうなると自治体としては、次の相続順位の相続人に同じ手続きを初めからやり直さなくてはならなくなります。

田中
相続放棄されていることで、手続きが前に進まずループしてしまうんですね。

倉澤教授
はい、だから1件の空き家を片付けるにも年単位の時間がかかるんです。
それを数人の自治体職員で行うのは無理があります。

田中
確かにそれだと全然解決しないですよね。

管理不全空き家に指定しても対策が進まない意外な理由

自治体はどのように管理不全空き家を指定し、どのような対応を行っているのか、現場で起きているリアルな実態について、倉澤教授に語って頂きました。

管理不全空き家への指定は1091件だが勧告はゼロ(2023年度)

田中
実際に管理不全空き家へ指定されている空き家は何軒くらいあるのでしょうか?

倉澤教授
国土交通省が2024年3月に出した資料によると、2023年に全国で管理不全空き家に指定されたのは1091件になります。
管理不全空き家への指定は、所有者に電話で伝えることもあれば、書面で通知する場合もあります。

田中
まず通知して、そこから行政指導を行っていくわけですか?

倉澤教授
そうですね。
法に基づいて(空き家特措法13条)「指導」や「助言」までは行うのですが、「勧告」まではなかなか進まないのが現状です。
実際、先に挙げた1091件のうち、勧告まで進んだケースはゼロです。

「勧告」による‟増税措置”で所有者とのトラブルを恐れる自治体

田中
管理不全空き家への指定はそれなりにあるのに、勧告がされないのはどうしてなのでしょう?

倉澤教授
空き家を含め、人が住む建物には固定資産税の軽減措置が取られています
しかし、行政指導が勧告まで進むとその軽減措置が外されてしまいます(記事内の「管理不全空き家への指定の大きなデメリットは2つ」参照)。

そうなると空き家所有者にとっては税負担が増えることになりますから、所有者と自治体の間で感情的な衝突が起こる可能性があります。
それを恐れてなかなか勧告までに踏み込めないというのはあると思います。

田中
感情的に躊躇してしまうわけですね。

倉澤教授
自治体としても、法の定めに従って粛々と進めるべきだし、進めて問題ないということはわかっていると思います。
けれど、実際担当者レベルで、所有者とも顔が見える関係の中で、トラブルになりそうな措置を取るのは勇気がいることだと思います。

田中
同じようなことは、特定空き家の指定でも起きているのでしょうか?

倉澤教授
特定空き家となると深刻度や緊急度が高いケースばかりなので、自治体も腹を決めて行政指導を進めますね。
一方、管理不全空き家は制度が始まって間もないため、数が少ないのは仕方ない部分もあるのですが、それでも、勧告の数が飛躍的に増えるということは当分ない気がします。

田中
現場の実態をお聞きできて助かります。
のちほど、そうした管理不全空き家の制度の課題などについてもお聞きできればと思います。

管理不全空き家への指定のデメリットは「増税」と「解体費用の請求」

管理不全空き家に指定されると、先ほどお話があった固定資産税の増税の他に、行政代執行による解体費用の請求といったデメリットがあるようです。

田中
管理不全空き家に指定されるとどんなデメリットがあるのでしょうか?

倉澤教授
まずは先ほどお伝えした勧告による固定資産税の軽減措置が外れ、税負担が増えることでしょうね。
状況が改善されず、特定空き家に指定された場合は、最終的に行政代執行(行政が対象者に代わり、行政上の義務を果たすこと)により、対象の空き家が解体され、その費用が所有者に請求されます。そういうデメリットもあります。

田中
放置すると特定空き家に指定され、最悪の場合、行政代執行までいってしまうということですね。

倉澤教授
所有者によっては自分でどうしていいか分からないから、解体されるのを待っているケースもあります。
それでも自治体としては、行政代執行は最後の手段だし、費用の問題もあるので、所有者と何度も話して改善してくれるよう働きかけます。

田中
解体費用については、所有者からスムーズに回収できているのでしょうか?

倉澤教授
いや、後から自治体から請求がきても、「ないものは払えない」というケースもあるようです。
開き直りというほど悪質ではないかもしれませんが、ない袖は振れないということでしょう。

田中
そういう実態もやはりあるのですね。

所有者が空き家管理を行う時に立ちはだかる2つのハードル

管理不全空き家に指定されると税負担の増加や、解体費用の負担といったデメリットがあることがわかりました。
では、どうしたら管理不全空き家に指定されないのか、その対策と実態について倉澤教授にお聞きしました。

管理不全空き家にならないためのガイドラインが知られていない

田中
管理不全空き家に指定されないために所有者に求められることは何でしょうか?

倉澤教授
やはり先ほどお伝えした国のガイドラインで基準を確認し、そこに該当しないように管理していくのが基本になると思います。
ただ問題は、多くの人がそのガイドラインの存在を知らず、見てもいないということです。

田中
そうですよね。
また、見ても内容が専門的でわからない人も多いのではないでしょうか?

倉澤教授
ガイドラインだけでなく、内容を一般の人向けに噛み砕いたパンフレット(下記画像参照)も国は出しているので、それを見て注意してくれたらなと思います。

管理責任の所在がはっきりせず結果的に放置される

田中
空き家所有者が管理を怠ってしまうのは、やはり「管理が億劫」という理由が大きいのでしょうか?

倉澤教授
管理が億劫という理由もあると思います。
ただ、私が目にしてきた事例だと、そもそも当事者に管理者としての認識がないケースが多かったです。
特に元から放置されていた空き家を相続した場合、「自分が管理しなくてはいけない」という意識にはなりにくいでしょう。
また、放置していることが管理不全空き家とか、そんな大きな問題になることも知らないのだと思います。

田中
離れた場所に住んでいたら、空き家の現状がどうなっているかもわからないでしょうね。

倉澤教授
そうですね。
孫の代くらいまで相続が進むと相続人が増えて、親族間でも誰が管理すべきなのかわからなくなってしまうのではないでしょうか。
結果、放置されてしまうことも多いように思います。

それで自治体から通知がきて、初めて現状を知って「どうしよう」となるわけです。
指導に従って状況を改善しようにも、連絡がつかない親族や相続人が出てくると、話がなかなか進みません。
所有者や相続人を確認しようにも、登記簿(不動産の管理者などが記載された公的な書類)が当てにならないという問題があります。

田中
そうなんですか?

倉澤教授
相続登記については、最近義務化されましたけど、それまで義務ではなかったので、相続が起きても登記簿を変えていないケースが多いんですよ。
実体と登記簿が合っていないわけです。

田中
相続人同士の意思疎通がうまくいかず、登記簿もあてにならない、空き家が放置される背景には単に「管理が億劫」という理由以外にそうした原因があるわけですね。

管理不全空き家の指定解除と国の狙いとは?

実際に空き家を放置し、管理不全空き家に指定されてしまったら、どのようにすれば指定を解除できるのでしょう?
その方法は具体的には決まっていないようですが、国の狙いを理解すると、その方向性が見えてきます。

管理不全空き家と特定空き家で指定解除の方向性は異なる

田中
実際、管理不全空き家に指定されたらどうすれば指定を解除できるのでしょうか?

倉澤教授
管理不全空き家は制度が始まって間もないので、具体的にこうすれば解除されるというのは決まっていません。
一方、特定空き家に関しては老朽化が進んでいることがほとんどなため、所有者が解体することで解除されることはあります。

田中
特定空き家に指定されると解体する人が多いのでしょうか?

倉澤教授
特定空き家に関してはそうですね。
ただ、管理不全空き家の場合は解体せず修繕して改善するという方向もあると思います。
国も所有者が空き家を修繕し、再利用してもらうことを期待して管理不全空き家の制度を作っています
から。

田中
国は使えるなら空き家を使って欲しいという考えなのですね。

倉澤教授
そうですね。
今回、法改正されて管理不全空き家制度が制定されたのも、老朽化する前に空き家に手を入れてもらい、流通させるという狙いがあると思います。

所有者に空き家修繕を促すには空家等管理活用支援法人の周知が必要

田中
国の狙いが空き家の再利用だとしても、所有者が修繕するのはハードルが高いように思います。

倉澤教授
その通りです。
ですから、新たな制度として空家等管理活用支援法人というものを作り、所有者が空き家を修繕するのを支援しています(下図参照)。


田中
空家等管理活用支援法人というのはどのようなものなのでしょうか?

倉澤教授
自治体だけでは空き家所有者の対応が充分にできないために作られたものです。
民間事業者などが入り、管理不全空き家の対象となるような空き家所有者の相談を受け付け、アドバイスを行っています。
やはり空き家を解体するとなると、費用の問題が生じますので、同じお金をかけるのであれば使えるようにして、有効活用しようということだと思います。

田中
では空き家の所有者はこの支援制度を知っていれば使うことができるわけですね?

倉澤教授
そうなのですが、これもまだ制度が始まったばかりで支援法人の数がそんなに多くないんですよ。
それこそ今後、不動産会社とかが積極的に参加していってもいいような制度だと思います。

田中
確かにそうですね。
管理不全空き家へ指定されてしまったら、まずは支援法人に相談するのが良さそうですね。
ただ、そのためには支援法人の数を増やし、もっと周知させなくてはいけないという課題があることもわかりました。

倉澤教授の考える管理不全空き家の課題と対策

倉澤教授に管理不全空き家制度の課題と対策をお聞きしました。

田中
倉澤教授が考える管理不全空き家の課題があれば教えてほしいです。

倉澤教授
大きな課題としては2つあると思います。
1つは先ほどお伝えしたように、対応する自治体職員の人数不足、対応する体制が整っていないことです。
もう1つはこれも先ほどお伝えしましたが、やはり管理不全空き家に指定しても、勧告までなかなか進まないことでしょう。

田中
勧告になると空き家所有者の税負担が増えることになるため、躊躇してしまう職員も多いという問題ですね。

倉澤教授
指導の段階で自発的に所有者が改善に向けて動いてくれたらいいのですが、指導に強制力はないので、「わかりました」と言って、実際は何も動いてくれないというケースもあります。
そのためにも、所有者が空き家をどうしたらいいのか、相談できる支援法人がもっと増えるといいなと思います。

田中
支援制度をいかに活用してもらえるかが、現状の課題改善のポイントになってきそうですね。

倉澤教授が考える「空き家問題」の解決策とは?

最後に倉澤教授が考える空き家問題の解決策をお聞きしました。
すると、空き家問題は「空き家」だけを対象に考えていても解決しないことがわかってきました。

空き家問題は地域の開発も含め包括的に考える必要がある

田中
最後に、倉澤教授が考える、空き家問題の解決方法があれば教えて下さい。

倉澤教授
これは難しいですね。
というのも、この空き家問題というのは、空き家だけをどうこうしようとしても解決しなくて、その地域全体の開発なども絡んでいる問題だからです。

今、日本は人口減少によっていらない家や土地が増えていて、特に地方は東京圏に人が流出しており、使われていない地方の家が多くあります。
たとえば、地方の集落にあるような土地や家は、立地条件が悪かったり、建物の規模が小さかったりします。
そうすると、その建物だけ撤去したところで再利用できないという問題もあるんです。

田中
なるほど

倉澤教授
では都市部にある空き家はどうかといえば、老朽化して危険だからと取り壊していくと、空き家があったところだけ点在的に建物がなくなり、町全体が「虫食い状態」になってしまいます。

ですから、空き家だけでなくその地域の開発なども一体で考えていかなくてはいけない問題なわけです。

田中
空き家一つ一つに手を入れていくだけでは足りず、地域単位で考えないと根本的には解決しないということですね。

倉澤教授
そうですね。
本当に、今の自治体の空き家対策というのは緊急避難的なものなんです。
地域で生活していく中で、家の前のボロボロの空き家が崩れてきて被害を受けるとか、そういうことが起きるのはまずいから防ごうというレベルのものなんです。
後追いといえば後追いですよね。

だからもう少し、地域の開発段階からそうしたことを考慮した環境を作っていければと思います。
こうしたことはこれからの課題ですね。

田中
どうしても今は場当たり的な対応になってしまっているということですね。

倉澤教授
一応、国交省は空き家が多い地域については、建築基準法や都市計画法の規制を緩めるようなことは検討しているようです。

田中
そうなんですか?

倉澤教授
はい、ただ地域によって状況は違うので、1つ成功事例ができたとしても、他の地域で同じように進めることができず、蓄積ができていかないという問題はあります。

空き家問題解決のためには私有財産制度の再考も必要

倉澤教授
空き家問題を解決するためには、私有財産制度(個人が所有する財産を保証する制度)の在り方も今のままでいいのか考える必要がある気がします。

田中
私有財産制度ですか?

倉澤教授
はい、というのも、日本では私有財産制度によって土地や建物を所有者のものとして保障しています。
しかしながら所有者の責任で維持・管理するのが難しくなり、空き家の問題などが発生しているのです。
これらを放置しておくことは望ましくないので、自治体が関与しようとすると、私有財産の壁にぶつかってしまい手を付けることは大変なんです。
大きな話になるのですが、土地利用のあり方について、私有財産制度を貫徹させておいてよいのか考えてしまうところです。

田中
所有権が個人にあるため、自治体が動きたくても動きづらい現状があるということですね。

倉澤教授
所有権絡みの問題をもう一つ挙げると、現状の日本の法律ではその家の住人が亡くなった後も相続人が権利を引き継ぐ仕組みになっています。
しかし、先ほどお伝えしたように相続登記がされていないなど、その仕組みが機能しなくなっている現実があります。
こういうことはなかなか表に出てこないんですけど、でもそこが一番根本的な問題だろうなと思います。

田中
なるほど。
空き家の問題を掘り下げていくと、地域の開発や私有財産の問題にも行き当たるということですね。

倉澤教授
そうですね。
今、お話した問題について、ちょうど良い具体例として私の知人の話があります。
日本は島にも空き家がたくさんあり、結構景色も綺麗なところが多いんです。
なので知人は島の空き家を1軒買って、リノベーションしてビジネスをしようとしているんです。

でも、周囲にも老朽化した空き家がたくさんあり、綺麗な景色が台無しになっているようなんです。
しかも、先ほど話したようにそれらの空き家は所有者がわからないため、手が出せないという。

田中
開発やビジネスをしたくても、所有権の問題が足かせになって前に進まないわけですね。
それって、とてももったいない話ですよね。

弊社アルバリンクも空き家など、訳あり物件を買い取って活用する事業をしているのですが、所有権が不明な物件の買取を依頼されることもあります
そうした際は、提携している専門家などと協力しながら買取を進めています。

弊社のような空き家を買い取って活用する会社が増えていくことも、空き家問題解決の一助になるでしょうか?

倉澤教授
都市部の空き家であれば再利用できることも多いので、買取業者に依頼するのも一つの方法だと思います。
所有者としてもただ所有し続けて、税金を払い続けるよりは売ってしまった方がいいのではないでしょうか。

田中
そうですよね、ありがとうございます。
インタビューは以上となります。
本日は貴重なお話をお聞かせくださり、ありがとうございます。

倉澤教授
こちらこそありがとうございました。

まとめ

今回は、松山大学の倉澤生雄教授に管理不全空き家制度の実態や課題についてお聞きしました。

お話を聞く中で、対応する自治体の職員が足りず、空き家所有者に対し、税負担増加というペナルティーが生じる勧告以上の対応が取れていない実態がわかってきました。
さらに相続時、適切に登記がなされておらず、所有者を特定するのが難しい現実があることもお話していただきました。
一方、空き家所有者の側にも、空き家管理者としての意識が低いことや、誰が管理するかわからないまま放置してしまっている実態があることがわかりました。

管理不全空き家制度は空き家の老朽化が進み、特定空き家に指定される前に手を打つために制定された制度です。
しかし、実際は自治体、空き家所有者、双方に上記のような問題があり対策は必ずしもスムーズに進んでいないようです。

倉澤教授からは上記の状態を解消するために、勧告までいく前に、空き家所有者自らが国のガイドラインに沿って空き家を管理することが大切とのお話がありました。
そのうえで、所有者の空き家管理をサポートするために、支援法人の拡充と周知も必要とのことでした。

空き家管理は所有者の義務です。
現状ではスムーズに進んでいない管理不全空き家の制度も、今後は国や自治体によって制度を強化してくる可能性もゼロではありません
「自分には関係ない」「そのうちに」と思って放置していると、ある日突然、自治体から管理不全空き家への指定の通知がきて慌てることになります。
そうなる前に、定期的に管理を行うか、管理者が定まっていない場合は親族で話し合うことが必要です。

そしてもし、自身で管理を行うのが難しい場合や、誰が管理するか決まらない場合は、売却することも検討してください。
弊社Albalinkは空き家をはじめ、訳あり物件を専門に買い取っている不動産業者です。
ご依頼いただけば、放置された空き家でも買取可能です。

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