相続された空き家の名義変更を済ませないのはNG
相続された家がたとえ空き家であっても、名義変更(相続登記)を済ませずに放置するのは禁物です。
では、なぜ名義変更(相続登記)を行わなくてはならないのでしょうか?
名義変更(相続登記)せずに放置する際のリスクという点から考えてみましょう。
相続登記を行わないリスク
名義変更(相続登記)を行わないとどのようなリスクがあるのでしょうか。
売却できない
もし、相続人が今後空き家となっている不動産を売却したいと考えていても、名義変更(相続登記)を行わない状態でダイレクトに売却することは不可能です。
なぜなら、相続人の希望で売買する場合は、買主と契約するのは被相続人(亡くなった人)ではなく相続人です。
権利移転の流れとしては「被相続人⇒相続人⇒買主」となりますので、登記簿上でも相続人が自分の名義にしてから買主名義に所有権を移転しなければならないのです。
また、買主が金融機関の住宅ローンを組む場合、金融機関は買主名義となった物件(購入した物件)に必ず「抵当権」を設定します。
金融機関としては「融資を実行した日に確実に売主から買主に所有権が移転し、その日のうちに抵当権設定の登記まで申請すること」がほとんどの場合の融資条件となります。
被相続人から相続人への相続登記が未了の状態であれば、「最終的に買主の名義にできるかどうかが不確定=抵当権を設定できるかどうかも不確定」という状態です。
相続登記未了の状態だと、融資承認の段階まではクリアすることもありますが、最終的な代金決済の日までに相続登記を完了させなければならないという条件をつけられることも多くなります。
要するに、売主側が相続登記を速やかに完了させることができるか否かは、買主や買主に住宅ローンをつける金融機関のスケジュールにまで影響してくる問題なのです。
何らかの事情で相続登記が遅れたら代金決済⇒物件引き渡しの日も遅れてしまうなど、買主に迷惑をかける可能性が高いため、スムーズに売買を行うためにも買い手がつく前に相続登記を済ませておくのがベストです。
将来の相続時、子どもや孫に迷惑がかかる
物件をすぐには売却しない場合であっても、相続登記をせず放置していると、将来的に次の相続が発生した時に子供など下の世代に迷惑をかけることになってしまいます。
例えば、自分が親から相続した時に自分が2人兄弟だったとします。
相続登記が未了であっても、潜在的に兄弟2人が共有している状態になっていますので、その2人がどちらも死亡してそれぞれに子供が2人ずついたとすると関係者は4人となります。
いざ相続登記したいと思った時にスムーズにお互い連絡が取れる状況ならよいのですが、関係が遠くなればなるほど連絡先がわからなくなったり、コミュニケーションを取りづらかったりするのは想像に難くありません。
また、取得すべき戸籍があまりに古すぎる場合は、保存期間経過のため役所側で破棄されていることもあります。
戸籍が役所でも取れないとなると、法務局への上申書など、準備すべき書類の数が増えてしまうこともあります。
本来の登記の添付書類を役所側の事情で取得不可能な場合などにおいて、相続登記申請の際に法務局に事情の説明をするための文書。
登記を依頼された司法書士や土地家屋調査士の側も、準備すべき書類や調査の手間が1回の相続に比べると多くなることから、報酬もやはり通常より高額にせざるを得ません。
上記のように登記までにさまざまな不便を感じ、費用も余分にかかるため、相続登記がされないまま2回以上の相続が起こらないよう、自分たちの代で承継者を決めて登記手続きを済ませるべきです。
所有権や借地権を主張できない
相続登記がされていないと、被相続人の所有する土地所有権や、他人の土地上に設定していた借地権を第三者に対して主張することが不可能となります。
登記簿に自分の名前を入れることにより誰に対してでも権利を主張可能にすることを「対抗要件を備える」といいます。
所有権の対抗要件は、登記簿の「甲区」に住所氏名を入れることですが、借地権の対抗要件は、土地登記簿の「乙区」に住所氏名を入れる方法以外に、「土地上の建物を借主名義に登記しておく」方法もあります。
上記のような方法で何らかの対抗要件を備えておかないと、地主から立ち退きを迫られた場合に相続人が権利を主張することが不可能になってしまいます。
もし、借地を返還する際には借主は原状に戻して返還しなければならない、つまり自分の費用負担で建物の取壊しを行うことが原則となります。
相続登記は義務化されている
令和6年4月1日より相続登記は義務化されており、怠ると罰則が課されます。
参照元:法務局|相続登記が義務化されます(令和6年4月1日制度開始)
決められた期限内に相続登記やその代わりとなる手続きしないを何もしないで放置した場合には、「10万円以下の過料」に課せられることがあります。
改正不動産登記法による大原則は以下の通りになります。
「相続や遺贈により不動産を取得した相続人に対し、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をすることを義務づける。」
参照元:不動産登記法
令和6年4月1日よりも前に発生した相続についても3年という期限が適用されますが、すでに発生していた相続については「改正法施行日である令和6年4月1日より3年」となります。
なお、所有者の住所や氏名の変更登記も令和5年時点ではまだ義務化されていませんが、令和8年4月までのいずれかの日に義務化が施行される予定です。
相続登記義務化についての詳細は下の「相続が発生した空き家の名義変更に期限はあるか?」で解説します。
相続された空き家の名義変更の流れ
相続が発生している空き家を名義変更(相続登記)したい場合の流れを解説します。
まず戸籍の取り寄せ等を行う前に、不動産に関する資料(登記簿や固定資産税評価証明書など)を持参した上で司法書士に相談しましょう。
登記簿・固定資産評価証明書は、法務局で取得可能です。
【登記簿の見本】
【固定資産評価証明書の見本】
なお、未登記、つまり最初から登記簿自体が存在しない場合には権利の登記を行う前に「表題部」とよばれる、建物の現況を示す登記を申請して登記簿を作成するところから始めなくてはなりません。
表題部の登記は司法書士ではなく「土地家屋調査士」の専門分野になるため、最初に土地家屋調査士事務所に相談しましょう。
戸籍の取り寄せを行って法定相続人を確定する
一番最初に行うべきなのは、戸籍を取り寄せて法定相続人(民法で定められた範囲の相続人)を確定することです。
被相続人の死亡から出生まで、転籍や婚姻などにより新たな戸籍が作られているものも含めて全て取得し、被相続人の子供など法定相続人全員を確定させる作業が必要です。
だいたい、平均寿命くらいまで生きた人で5通から6通程度出てくることが多いのですが、個人で取得しようとすると、慣れない人にとっては大変な作業となることもあります。
司法書士に依頼して職権で取得してもらう方が、手続き全体の進行が早くなります。
法定相続分の割合や順位については、以下の記事で詳しく解説しています。
相続人が複数いる場合は遺産分割協議を行う
名義変更(相続登記)を行うためには「誰が不動産を承継するのか」を決定しなくてはなりません。
不動産を相続人全員の共有にしておくと、その後の売却や管理について一つ一つ協議をしなければならず、非常に不便な状態になります。
共有名義にした場合に起こる悲劇については以下の記事を参照してください。
なお、相続登記が未了の状態では、法的には「相続人の共有」になっているとみなされます。
(共同相続の効力)
第898条 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。
引用元:民法 第八百九十八条
法定相続人全員で相続人を決めることを「遺産分割協議」といいますが、遺産分割協議を行って誰か1人に不動産承継者を決めることにより、決定した1人の名義に変更して共有状態を解消することが可能です。
なお、遺産分割協議に沿って行われた相続登記は、相続の時(死亡の時)に遡って効力を生じます。
遺産分割協議を行うことが面倒だからといって決して安易に法定相続分(民法で定められた相続分)で共有の登記をせず、早期にきちんと話し合って承継者の決定をすることをおすすめします。
遺産分割協議書の作成方法・注意点については以下の記事で詳しく解説しています。
必要書類を準備する
相続登記に必要な書類を準備します。
上記に解説した戸籍等も含め、遺産分割協議による相続登記の場合、一般的には以下のような書類が必要です。
- 戸籍類一式(被相続人の死亡から出生までの戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍謄本、相続人の戸籍謄本など)
- 被相続人の住民票除票
- 不動産を承継する相続人の住民票原本
- 遺産分割協議書
- 法定相続人全員の印鑑証明書
- 固定資産税評価証明書
- 司法書士への委任状
なお、遺産分割協議書と委任状は司法書士が準備してくれることが一般的です。
相続登記申請書を作成する
相続登記申請書を作成します。
司法書士に依頼するのであれば、準備した書類を預ければあとは全て登記完了まで任せることが可能です。
本人が申請する場合には法務局のサイトで紹介している相続登記申請書のフォーマットもありますが、あくまでも一番シンプルな例に過ぎません。
事案に応じてフォーマットを改変せずそのまま使用すると、「補正」といって申請内容の修正や添付書類の追加等を命じられ、申請人が法務局から複数回呼び出される場合がありますので注意が必要です。
もし登記簿が最初から存在しない場合には相続人からの「表題登記(最初に登記簿を起こすための登記)」「所有権保存登記」が必要です。
表題登記から起こすとなると、一般の人が自分で行うことは非常に困難なので、上記のとおり「土地家屋調査士」に相談するのがベストです。
法務局で登記手続きを行う
相続登記申請書と添付書類の準備ができたら法務局に登記の手続きを申請します。
だいたい1週間から1カ月の範囲内(管轄や時期による)で法務局の内部処理が完成し、登記簿の名義が書き換えられます。
ただし、本人申請は多くの場合に「補正」の手続きを命じられ、補正が完了して初めて相続登記完了となります。
空き家の名義変更に必要な費用
空き家の名義変更(相続登記)に必要な費用について解説します。
書類の取得にかかる実費
書類を取得する際に市役所等に支払う手数料ですが、自治体により若干設定が異なる場合がありますので役所の公式サイトや窓口で確認しましょう。
だいたいの手数料目安は以下の通りです。
戸籍謄本 | 1通450円 |
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除籍謄本、改正原戸籍謄本 | 1通750円 |
住民票、住民票の除票 | 1通200円~400円 |
印鑑証明書 | 1通200円~400円 |
固定資産評価証明書 | 1通200円~400円 |
登記簿謄本(全部事項証明書) | 1通480円~600円 |
司法書士報酬
司法書士報酬は現在、自由化されているため各事務所で異なる価格設定がされています。
おおよその相場は不動産一つにつき3万円~7万円くらいです。
ただ、父の死亡後に母が死亡したなど「二次相続」が発生している場合、不動産の数が多い場合、相続関係が複雑な場合など、案件の内容により報酬が加算されることもあります。
また、遺産分割協議書、相続関係説明図の作成、戸籍の代理取得など、登記申請の準備段階での手続きについても費用が加算されるのが一般的です。
とりあえず、依頼前に見積もりを取って確認することを忘れないようにしましょう。
登録免許税
登録免許税とは、登記を行う際に法務局に納める国税ですが、一部の非課税登記を除いて権利登記の申請の際には必ずかかってきます。
相続登記の登録免許税は「不動産の固定資産税評価額の1,000分の4」です。
例えば、固定資産税評価額が3,000万円の不動産を相続登記した場合には、3,000万円×4/1000=12万円 が登録免許税となります。
相続が発生した空き家の名義変更に期限はあるか?
相続が発生した空き家については、名義変更(相続登記)の期限を定めた不動産登記法の改正が令和6年4月1日より施行されているので、詳しく解説します。
上記の繰り返しになりますが、まず大原則として以下のルールが設けられます。
そして、上記ルールに基づく相続登記を「正当な理由なく怠った場合」には「10万円以下の過料」に処せられることがあります。
ちなみに、正当な理由はまだ具体的に明示されていませんが、相続人や相続財産が膨大で収集に時間がかかるなどが挙げられます。
また、遺産分割の協議が成立した場合にはその内容を踏まえた登記申請をすることが義務付けられます。
なお、上記の期限内に相続登記の申請が不可能な場合は「相続人申告登記」という手続きを行うことにより相続登記義務履行の代わりとなります。
相続人申告登記とは、通常の相続登記とは異なり、相続登記を行うまでの仮の手続きというイメージで捉えなくてはなりません。
- 相続人の一部から行うことが可能。通常は法定相続人全員を戸籍で証明しなければならないが、相続人申告登記の申出をするにあたっては、申出人が相続人の1人であることを証明する戸籍を添付すれば足りる
- 相続人は法務局に申出をし、登記官が職権で登記簿に申出相続人の住所氏名を記入する
- 終局的な相続登記ではない
- 持分は登記されない
といった特徴があります。
何らかの事情で3年以内に相続登記ができない場合、とりあえず相続人を代表して誰か1人から相続人申告登記を済ませておくようにしましょう。
ただ、上記のとおり相続人申告登記とはあくまでも仮の手続きにすぎないため、物件を売却などする場合には遺産分割協議を済ませた上で相続登記をしなければなりません。
相続した空き家の処分は専門の不動産買取業者に相談
相続した空き家の活用方法がなく困っている人は、不動産買取を専門とする業者に相談して処分方法を検討しておくことをおすすめします。
相続した空き家を今後まったく活用する予定がない場合、早期に売却してしまうことが一番手堅い方法です。
というのも、家屋は誰も住まない状態が続くと老朽化が早まりますし、固定資産税の負担も毎年かかってきます。
定期的に草取りなどの管理をすることも、相続人が遠方に住んでいたり高齢化してくると容易なことではありません。
築年数が古くすでに老朽化している建物であれば、特に一般の買い手をつけることは困難ですが、空き家を専門に取り扱う不動産買取業者に対してなら売却することが可能です。
また、既に空き家を共有してしまっている場合は、自身の持分のみを買い取ってもらい、共有関係から脱却する(空き家を手放す)こともできます。
弊社Albalink(アルバリンク)も、老朽化している建物や悪立地の物件はもちろん、権利関係が複雑な共有持分を積極的に買い取っています。
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弊社Albalinkの空き家の買取事例
前項では、相続登記をしていない空き家は専門の買取業者に売却するのが最適であるとお伝えしました。
そこでこの章では、弊社Albalinkを例にとり、実際の空き家の買取事例を紹介します。
弊社Albalinkは訳アリ物件専門の買取業者として、他社では断られるような空き家も数多く買い取ってきました。
たとえば下記のように「20年以上放置されて老朽化が進んだ空き家」や「不用品で室内があふれてしまっている空き家」を買い取った実績もあります。
【20年以上放置された空き家の買取事例】 【不用品で室内があふれてしまっている空き家の買取事例】
引用元:Albalinkの空き家買取事例
20年以上放置された空き家については780万円で買取らせていただき、所有者には「雨漏りもするような家だったが、思ったより高い金額で買い取ってもらえた」と、金額についても満足していただけました。
また、不用品で室内が溢れてしまっている空き家の所有者は、他の不動産業者から「不用品の回収だけで100万円近くかかる」と言われ、途方に暮れていたそうです。
それだけに「(弊社に)そのまま買い取ってもらえてとても助かりました」と言っていただけました。
上記の方々だけでなく、弊社に買取依頼をしていただいたお客様からは「肩の荷が下りた」「色々不安だったがスムーズに売却できた」といった感謝の言葉を多数いただいております(下記Google口コミ参照)
また、弊社はお客様からの評価が高いだけでなく、不動産買取業者としては数少ない上場企業でもあり、社会的信用も得ています。
信頼できる買取業者に安心して空き家を売却したい方はぜひ一度弊社の無料買取査定をご利用ください(査定依頼をしたからといって、無理な営業などは行いませんのでご安心ください)。
まとめ
相続した空き家の名義変更について解説しました。
原則として、相続登記を済ませてからでないと空き家を売却することはできません。
相続登記は令和6年4月より義務化されており、正当な理由なく3年の相続登記を怠ると、最大で10万円の過料に処せられることがあります。
なお、相続登記の際は、名義人を1人にして不動産を共有するのは避けましょう。
共有不動産は共有者1人の意思で売却も活用もできないため、共有者同士で意見が食い違い、トラブルに発展するリスクがあるからです。
もし既に空き家を共有で所有しているのであれば、自身の持分のみを専門の不動産買取業者に直接売却して共有関係を抜け出すのが賢明でしょう。
また、もし単独名義であっても、空き家が悪立地であったり建物が老朽化していたりすればなかなか売却しづらいので、専門の買取業者に直接買い取ってもらうべきと言えます。
弊社Albalink(アルバリンク)も、一般の買主には売却しづらい物件を専門的に買い取っています。
誰も住む予定がない空き家、空き家の共有持分も、そのままの状態でご相談ください。
過去にも廃墟化したような空き家を買い取った事例も多数あり、フジテレビの「イット」で紹介された実績もございます。
もちろん、売却の相談や査定のみのご依頼も大歓迎です。