未登記建物とは登記簿の内容と実態が異なる家屋のこと
未登記建物とは、建物の状態や権利が登記簿上の情報と異なる家屋を指します。
登記簿は「表題部」(下図赤枠)と「権利部」(下図青枠)に分かれており、表題部には建物の物理的な情報、権利部には建物の権利に関する情報が記載されています。
- 表題部
-
- 不動産の所在
- 番地
- 地目
- 地積
- 登記の原因及び日付
- 権利部
-
- (甲区)所有権に関する事項(所有者などの情報)
- (乙区)所有権以外の権利に関する事項(抵当権や地上権などの情報)
引用元:法務省:不動産登記のABC
このような登記簿の特徴から「未登記建物」と一口に言っても、色々なケースがあります。
未登記建物の売買について解説する前に、未登記の種類を簡単にご紹介します。
登記簿謄本の見方については、以下の記事で詳しく解説しています。
ケース①表題登記がされていない
新築時に表題部の登記(表題登記)が行われていないケースがあります(先ほどの登記簿画像の赤枠部)。そもそも登記簿が存在していない状態です。
新築した建物を取得した者は、新たに建物が生じた日から1ヶ月以内に建物の表題登記をすることが義務付けられています。
もし期日以内に登記しないと、不動産登記法47条1項違反に該当し、10万円以下の罰金の対象となります。
(建物の表題登記の申請)
不動産登記法 第四十七条 新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない。引用元:不動産登記法47条1項
ケース②増改築時に表題変更登記がされていない
新築時の表題登記はされているものの、その後増改築を行った際に「表題変更登記」がされていないケースも未登記建物に該当します(「一部未登記建物」と呼ばれます)。
登記簿上の所有者は、建物に変更があった日から1カ月以内に表題変更登記を行わなければなりません。
表題変更登記を行わなかった場合、不動産登記法第51条違反に該当し、表題の未登記の場合と同様、所有者は10万円以下の罰金の対象となります。
(建物の表題部の変更の登記)
不動産登記法 第五十一条 ~登記事項について変更があったときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、当該変更があった日から一月以内に、当該登記事項に関する変更の登記を申請しなければならない。引用元:不動産登記法51条
一部未登記建物になってしまう主な経緯としては、増改築を行ったのがリフォーム専門の業者ではなく、住宅設備メーカーだったケース等が挙げられます。
リフォームを専門としていない住宅設備メーカーの担当者も、所有者自身も表題変更登記を失念、もしくは表題変更登記が必要である旨を把握しておらず、一部未登記建物になってしまうことがあります。
過去に建物の増改築を行った方は、表題変更登記がなされているか確認しましょう。
もし未登記の場合は、費用や労力をかけて登記を行うより、専門の買取業者に売却してしまいましょう。
専門の買取業者であれば、買取後に業者が登記などの面倒な手続きを全て行ってくれます。
弊社Albalinkも登記の手続きを引き受けた上で、未登記建物を買い取ることができますので、お気軽に下記買取フォームからお問い合わせください(査定依頼をしたからといって、無理な営業などは行いませんのでご安心ください)。
ケース③相続時に相続登記がされていない
建物に相続が発生した際に相続登記を行っておらず、登記簿上の所有者が故人(被相続人)のまま放置されているケースも、未登記建物に該当します。
不動産登記法の改正により、2024年4月1日から「相続人は相続による不動産取得を知った日から3年以内に相続登記をすること」が義務化されています。すでに未登記で相続している不動産も対象です。
もし相続登記を行わないと10万円以下の罰金を科せられる恐れがあります。
なお、相続登記の義務化については下記の記事で詳しく解説しています。あわせてご確認ください。
未登記建物の売買には大きなリスクを伴う
未登記建物(一部未登記建物含む)であっても、法律上売買することは可能です。
しかし、未登記建物の売買では、主に買主が大きなリスクを背負うことになるので、現実的には不可能です。
未登記建物を売買する際のリスクは以下の3つです。
- 購入しても予定通り不動産を取得できる保証がない
- 買主が住宅ローンを組めない
- 第三者に名義を乗っ取られる可能性がある
それぞれ解説していきます。
未登記建物を売買するリスクについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
購入しても予定通り不動産を取得できる保証がない
「所有権保存登記」が済んでいない物件は、買主にとって大きなリスクがあります。
なぜなら、購入しようとしても、予定通り不動産を取得できる保証がないからです。
所有権保存登記
所有者の住所や氏名を登記簿の権利部甲区(下図参照)に記載するための登記。通常、建物を新築した際の「表題登記」の次に行われ、表題未登記のまま所有権保存登記を行うことはできない。
所有権移転登記ができるのは、はじめに建物を取得した人(売主など)のみです。
そのため、所有権保存登記が済んでいない物件を売却する際は、売買契約書に「物件引き渡しまでに所有権保存登記済ませて、購入後は買主が所有権移転登記できるようにしておきます」という旨を記載するのが一般的です。(下記赤枠)
ただ、このような記載があったとしても、以下のようなリスクがあるため、買主が契約書で定めたとおり、不動産を取得できる保証はありません。
- 売主が所有権保存登記をおこなうのに時間がかかり、契約が遅れてしまう
- 売主が約束通り所有権保存登記をおこなわず、不動産を取得できない
もし売主が所有権保存登記をしない場合、買主は訴訟を起こし、勝訴し、売主に登記をおこなわせる必要があります。
このように、不動産の所有権保存登記が済んでいない不動産の売買は、買主にとって不動産をスムーズに取得できるかわからないという、重大なリスクがあります。
買主が住宅ローンを組めない
表題部が未登記である(登記簿がない状態)物件の購入では、金融機関から住宅ローンの融資が受けられません。
そもそも、住宅ローンを組む際に設定される「抵当権」は、登記簿の権利部に設定されるのですが、登記簿そのものがなければ抵当権を設定できないからです。
住宅ローンが組めないのであれば、買主は一括で不動産を購入するしかありませんが、不動産を一括購入できるほどの経済力がある買手はそう多くありません。
未登記建物は、買主が住宅ローンを組めない故に、売却の機会を逃しやすいのです。
ただ、専門の買取業者であれば、住宅ローンが組めない未登記建物でも問題なく買い取れます。
専門の買取業者は買い取り資金を潤沢に持っているため、住宅ローンを利用する必要がないためです。
弊社Albalinkも訳アリ物件専門の不動産買取業者として未登記建物の買取を積極的に行っておりますので、ぜひ一度弊社の無料買取査定をご利用ください(査定依頼をしたからといって、無理な営業などは行いませんのでご安心)。
第三者に名義を乗っ取られる可能性がある
未登記建物は、たとえ事実上の所有者(物件に暮らしているなど)であっても、第三者に所有権を主張できません。
建物の所有権は、あくまで登記簿上の所有者にのみ認められるからです。
実際、民法第177条にも以下のように不動産の所有権について規定されています。
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成16年法律第123号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
つまり、未登記建物は、第三者に建物の所有権を乗っ取られる(横取りされる)恐れがあるということです。
たとえば、未登記建物を購入しても、買主が登記を行わなければ、その間に売主の親族などが登記をしてしまう恐れがあります。
そうなると、建物の所有権はその親族のものになってしまいます。
このように、未登記建物は購入して、暮らしていてもある日突然所有権を見知らぬ第三者に奪われるリスクがあります。
未登記建物を売却する方法
未登記建物の売買は、売主・買主ともに大きなリスクがあります。
リスクを避けて未登記建物を売買する方法は以下の4つです。
以下でそれぞれ解説します。
未登記のまま売却する
未登記のまま売却する方法もありますが、前章で述べたように、未登記建物を売却するのは現実的ではありません。
どうしても未登記のまま売却したいのであれば「物件引き渡しまでに売主負担で登記を済ませる」旨を、特約として契約書に記載するのが一般的です。
物件引き渡しまでに速やかに登記を済ませ、物件の引き渡し日が遅延しないように注意しましょう。
登記の方法は記事後半の「未登記建物を登記する方法」で解説します。
売主側で登記してから売却する
最もオーソドックスなのは、売主側で登記を済ませてから売却する方法です。
不動産の状態や立地も良く、登記を行えば通常の物件と同様に売却できる見込みがある場合にお勧めです。
契約前に登記を済ませれば買主に余計な不安を与えることもなく、契約書に特約を記載する必要もありません。
ただ、相続登記は手続きが煩雑なため、司法書士などに頼むことが一般的であり、委託費用として10万円程かかります。
登記の方法は、記事後半「未登記建物を登記する方法」を参考にしてください。
未登記のまま家屋を解体して土地を売却する
未登記のまま、家屋を解体して更地として売却する方法もあります。
建物の老朽化が酷く、売却が見込めない場合などに有効な方法です。
そもそも「表題登記」は建物の情報を登録するためのものです。
たとえ建物が未登記であっても、解体することが決まっているのであれば表題登記をする必要はありません。
代わりに解体後に「家屋滅失届」を建物の所在地にある税務課に提出します。
自治体に所有する家屋が消失したことを証明する書類
解体してしまえば、登記の必要がないため、前項で述べた登記のための費用がかかりません。
また、建物を売却するとなると、リフォーム費なども必要となりますが、そうした費用も必要ありません。
ただし、家屋の解体には数百万もの費用がかかります。しかも高額な費用をかけたからといって、売却できる保証もありません。
売却できなければ解体費用がまるまる赤字となってしまいます。
しかも、建物を解体しても売却できなければ、翌年の土地の固定資産税が6倍になってしまいます。
人が住むための土地には「住宅用地の特例」が適用されていて固定資産税が1/6されていますが、建物を解体してしまうと、特例の適用を解除されてしまうからです。
参照元:地方税第349条(土地又は家屋に対して課する固定資産税の課税標準)
このように、建物の解体はリスクが大きいため賢明な手段とは言えません。
売却したいのであれば、リスクをおかして解体するよりも、現状のままで専門の買取業者に依頼する方が、時間もかからず、確実です。
弊社Albalinkもスピーディーに買取りを行えますので、まずは一度、弊社の無料買取査定をご利用ください(査定依頼をしたからといって、無理な営業などは行いませんのでご安心)。
滅失登記の概要については、以下の記事で詳しく解説しています。
未登記のまま不動産買取業者に相談する
未登記建物を確実に売却したいのであれば、専門の不動産買取業者に売却することをお勧めします。
買取業者に未登記建物を直接売却するのであれば、売主が登記の手続きを行う必要はありません。
買取業者は、登記の手間や費用を全て引き受ける前提で物件を買い取ってくれます。
売主がするべきことは必要書類の準備くらいです。
必要書類の内容や取得方法も、不動産売買のプロから直接教えてもらえます。
そのため、売主は必要最低限の労力と時間で物件を売却できます。
また、専門の不動産買取業者は未登記建物の扱いに慣れており、再販・運用するノウハウを持っているため、スピーディーかつ可能な限り高値で買い取ってくれます。
弊社Albalinkも訳アリ物件専門の不動産買取業者ですので、未登記建物はもちろん、老朽化や悪立地などの物件も買い取れます。
実際、下記のように老朽化した空き家を買い取った実績もあります。
これまで買取をおこなわせていただいたお客様からも、多数、感謝のお言葉を頂いております(下記Google口コミ参照)。
未登記のまま放置している空き家を所有している方や、物件が未登記のまま老朽化してしまい、売れずにお困りの方は、ぜひ一度弊社の無料買取査定をご利用ください。
価値を見出し、適正価格で買い取らせていただきます。
なお、相続登記をしていない空き家の登記の仕方や費用について知りたい方はこちらの記事をご確認ください。
未登記建物を登記する方法
未登記建物を登記する方法を「表題登記」と「権利部の登記」の2つのケースに分けてご紹介します。
表題登記(登記簿を起こす)の方法
表題登記の手続きは、建物の所在地を管轄する法務局の登記所に必要書類を提出して行います。
管轄の法務局は「法務局:管轄のご案内」から確認してください。
なお、手続きに必要となる主な書類は以下の通りです。
表題登記の主な必要書類
- 登記申請書
- 建物図面、各階平面図
- 建築確認申請書
- 建築確認済証(下記画像※1)
- 工事完了引渡証明書
- 施工業者の印鑑証明書
- 所有者の印鑑証明書(下記画像※2)
- 所有者の住民票
- 現地の案内地図(Google Mapなどで可)
【建築確認済証(※1)】
【所有者の印鑑証明書(※2)】
必要書類を提出して無事登記が完了すると、およそ1週間~2週間で登記完了証などが届きます。
所有権を証明できる書類なので、大切に保管しましょう。
ちなみに表題登記には建物に関する専門的な知識が必要で、所有者自身が行うのは難しいため、土地家屋調査士に依頼しましょう。
土地家屋調査士への報酬は、およそ5万~10万円かかります。
権利部の登記(所有権保存登記や相続登記)の方法
権利部分の登記の手続きも、表題登記と同様、建物の所在地を管轄する法務局の登記所に必要書類を提出して行います。
必要となる主な書類は以下の通りです。
所有権保存登記に必要な書類
- 住民票
- 住宅用家屋証明書
- 登記申請書
- 司法書士への委任状
相続登記に必要な書類
- 相続人の戸籍謄本
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票
- 不動産取得者の住民票
- 相続する不動産の固定資産評価証明書(下記画像※1)
- 収入印紙
- 登記申請書
- 返信用封筒
- 遺産分割協議書(遺産分割協議に則して相続する場合)(下記画像※1)
- 相続人の印鑑証明書
【固定資産評価証明書(※1)】
【遺産分割協議書(※2)】
表記部同様、権利部の手続きも複雑なため、司法書士に依頼するのが一般的です。
司法書士への報酬は、およそ10万円前後です。
なお、相続登記の手続きの詳細は以下の記事で別途解説していますので、必要に応じて参考にしてください。
まとめ
この記事では未登記建物を売却する際のリスクや売却方法を解説しました。
未登記建物の売買は、住宅ローンが使えない、所有権を保存できない等、主に買主に大きなリスクがあります。
そのため、一般の個人に未登記のまま物件を売却するのは困難です。
未登記建物を売却するためには、事前に売主が表題登記と権利部の登記を行うのがベストです。
しかし、登記の手続きは一般の個人が行うには難易度が高く、司法書士などの専門家に頼むと委託費用が10万円程かかります。
そのため、登記の手間や時間、労力をかけたくないのであれば、専門の不動産買取業者に売却するのが賢明です。
専門の買取業者であれば、登記手続きをおこなったうえで、スピーディに買い取ってくれます。
弊社AlbaLink(アルバリンク)も訳アリ物件専門の買取業者として、未登記建物の買取実績が豊富にあります。
未登記建物を活用・再販する独自のノウハウや販路を持っていますので、できる限り高値で買い取らせていただくことができます。
また、未登記建物は築年数が古いケースもありますが、弊社は老朽化した物件でも問題なく買い取れます。
実際に、廃墟化した家屋の買取実績もあり、フジテレビの「イット」でも紹介された実績がございます。
「まずは話だけ聞きたい」「買取価格だけ知りたい」ということでも構いませんので、下記買取フォームからお気軽にお問い合わせください。
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- 【監修者コメント(加陽麻里布 司法書士)】
- 記事内でお伝えしたように、未登記の不動産には様々なリスクがあります。
- 中でも最も大きな問題となるのが、「第三者に名義を乗っ取られる可能性がある」で述べた民法177条の対抗要件に関する問題が発生した場合です。
- 売買時に所有権の登記名義人を自分名義に変更しないまま放置した場合、所有権を第三者に奪われてしまう恐れがあります。
- たとえば、売主が登記名義人が自分のままになっていると知って、勝手に第三者に売却し、売買が有効に成立した場合、登記をしなかった所有者が「自分の不動産だ!」と主張しても法的に認められない恐れがあります。
- 不動産登記の最も重要な役割は対抗要件の具備であり、「この土地は自分のものだ!」と誰が見てもわかるように公示することです。
- その他にも、不動産売買をスムーズに行うために、正しい情報が反映されている不動産登記はとても重要となります。
- 例えば、「結婚による氏名の変更」「引っ越しによる住所の変更」が登記簿に反映されていない場合、まずは新しい情報に変更してから移転手続きとなります。
- 売買の決済時に変更することもできますが、時間がない中で、別途書類を用意する必要が生じたり専門家報酬が発生しますので事前に必要な登記を行っておく方がよいでしょう。
- また、令和3年の不動産登記法の改正により、所有者に住所や氏名の変更があった場合、登記申請が義務化されます(令和8年4月までに施行予定)。
- 土地や建物、マンションなどの不動産を所有している方は、これを機に、誰が見ても自分の物であるとわかるように登記をすること、さらに、登記名義人の氏名・住所などの情報が最新のものであるかをしっかり確認することをお勧めします。