空き家はなぜ増える?原因と対策を専門家が解説|管理状態・立地・社会構造の視点から読み解く

空き家はなぜ増える?原因と対策を専門家が解説|管理状態・立地・社会構造の視点から読み解く 不動産特集記事

日本では空き家の増加が深刻な社会問題となっています。
しかし、その原因は単なる「住宅の余り」ではなく、人口減少や高齢化、住宅政策、さらには立地条件や管理状況など、複数の要因が複雑に絡み合っています。

本記事では、空き家の分布や発生要因をデータ分析から研究している馬塲准教授へのインタビューをもとに、
・空き家はなぜ増えるのか
・今後どの地域で増加するのか
・実務や対策にどう活かせるのか

といったポイントをわかりやすく解説します。

空き家問題の本質と、これからの不動産・地域のあり方を考えるうえでのヒントをお届けします。

客観的な指標で測定する空き家の「管理不全」の実態

── 先生のご研究では、どのようなデータを用いて空き家の実態に迫っているのでしょうか。

馬塲准教授:私はこれまで、GIS(地理情報システム)を活用した「空間分析」を核に、住宅や不動産市場の動向を統計的に解析してきました。単に空き家の数を追うだけでなく、データサイエンスの手法を用いて、社会構造そのものを解き明かすことが私の研究のテーマです。

GIS(地理情報システム)
コンピュータ上の地図に、様々な情報を重ね合わせて表示・分析するシステム。空き家の分布や利便性と価格の相関関係などを視覚的に解析する。

── 本日は、そのような高度な分析から見えてきた「空き家の本当の姿」を伺えればと思います。具体的にはどのようなデータを用いているのでしょうか。

馬塲准教授:大きく分けて3つの柱がありますが、1つ目は自治体との共同研究です。例えば群馬県前橋市では、電力のスマートメーターデータを活用して空き家を特定するなど、自治体のデータを活用しつつ立地傾向や発生プロセスの分析を行いました。

── 見た目だけでは分からない、客観的なデータによる分析なのですね。

馬塲准教授:はい。また、埼玉県川口市のデータを用いた分析では、雑草の繁茂や建物の破損といった現地の客観的な指標から「管理不全」の状態を調べています。その結果、住居専用地域では庭が広いほど、除草などの管理負担が重くなって放置されやすいといった実態も見えてきました。

── 敷地が広いことが、かえって仇となってしまうのですね。

馬塲准教授:そうなんです。行政が指定する「特定空家」になってしまうと、行政指導の対象となり、最悪の場合、建物撤去を行政によって代執行される可能性もあります。そのため、その一歩手前の段階である「管理不全」の状態をデータで捉え、周囲に悪影響を及ぼす「外部不経済性」が発生する前に対処することが、社会的に非常に重要なのです。

特定空家
空家等対策特別措置法に基づき、そのまま放置すれば倒壊の恐れがあるなど、著しく保安上・衛生上の問題があると自治体が認定した物件。助言や指導、勧告、命令などの対象となる。
外部不経済性
ある経済主体の活動が、市場を通さずに他の主体に悪影響を及ぼすこと。空き家問題においては、管理不全の物件が近隣の景観悪化や防犯リスクの増大を招くことを指す。

空き家増加の背景と将来予測

── 今後、空き家はさらに増えていくのでしょうか。

馬塲准教授:多くの地域では、顕著に増加すると考えます。そして、建物はなくならないので、人口減少のスピード以上に空き家が増えてしまう恐れがあります。特に1970年代に一斉に分譲された住宅地などは、今後10年ほどで一気に空き家化が進むのではないかと懸念しています。

── インフラの維持なども課題になりそうですね。

馬塲准教授:確かに空き家の増加により一定の人口密度を維持できないと、戸当たりのインフラ供給コストが高くなり過ぎて、将来的に都市インフラを維持できないと危惧しています。埼玉県熊谷市では、下水道の管路施設点検・調査結果を解析し、老朽化した下水道管渠の更新優先度を機械学習によって予測しています。ここでは、点と線の関係性で構築された「グラフデータ」というものを用いて、自治体の効率的な維持管理に役立てようとしています。

都市部における空き家の特徴

── 都心などの都市部の状況はいかがでしょうか。

馬塲准教授:都市部にも空き家は一定数存在しますが、地方とは少し性質が異なります。空き家と直接関連する訳ではありませんが、都心では、大規模な再開発などによって物価や家賃が上がり、元々の住民が住めなくなることで社会階層が分断される「セグリゲーション」という現象も起きています。近年の小岩などの事例が分かりやすいかもしれません。

セグリゲーション(Segregation)
居住地域などにおいて、人種、民族、所得水準などによって社会階層が空間的に分断されること。都市開発に伴う地価高騰が、低所得層を排除してしまう現象を指すこともある。

── あえて空き家にしておくような動きもあるのでしょうか。

馬塲准教授:はい。利便性が高いエリアでは、将来的な売却や価格上昇を見越して、オーナーが投機目的で意図的な空き家にしているケースが見受けられます。

── 売りたくても売れない地方とは、全く別の背景があるのですね。

馬塲准教授:その通りです。表面上の数字だけでなく、所有者の意図を見極める必要があります。

空き家対策と海外の取り組み

── 海外ではどのような対策が取られているのでしょうか。

馬塲准教授:アメリカのデトロイトやフリントなどでは、「ランドバンク」という組織が戦略的に土地を取得・管理し、地域の退廃を防いだり、まちづくりを率先して行っています。

── 日本でもそのような仕組みは可能でしょうか。

馬塲准教授:山形県の「鶴岡ランドバンク」などの事例が出てきています。個人での解決が難しい以上、こうした組織が低価格帯の物件を戦略的に集約し、住みよい形に誘導していくことが重要だと考えています。

ランドバンク(Land Bank)
空き家などを都市再生などの目的で公的な立場で一括して取得、管理し、再び民間に提供する仕組みのこと。

研究データと不動産現場とのリンク

── 先生の研究成果は、実際の不動産の実態とどのようにリンクしているのでしょうか。

馬塲准教授:岩手県で行った研究では、便宜的に100万円未満で売買されている物件を低額売買物件と定義し、その傾向を分析しました。その結果、低額売買物件において、「近隣での売買」が約半数(同一地区内でも約2割)を占める実態が分かりました。具体的な土地利用まではわかりませんが、恐らく隣地の拡張や駐車場として「とりあえず買っておこう」という層が一定数存在するのだろうと思います。

出典元:馬塲・清水 (2022) 図2
馬塲弘樹, & 清水千弘. (2022). 売り手と買い手の属性に着目した低額売買物件の土地・立地傾向 岩手県全域を対象として. 都市計画論文集, 57(3), 792-799.

── 現場の感覚とデータが食い違った例はありますか。

馬塲准教授:山口県萩市で行った研究が当てはまると思います。ここでは、地方都市の不動産売買において、歴史的資産が重要な価格決定要因になっているのではないかと思い、分析を始めました。しかしながら、分析を進めていくうちに、当初仮定していたものと異なる結果が得られたのです。通常、歴史的資産は不動産価格を押し上げる要因になると思っていたのですが、分析では不動産価格を押し下げることがわかりました。

── 価値があるはずのものが、価格を下げてしまうのですね。

馬塲准教授:はい。特に人口減少が著しいエリアでは、そうした歴史的資産などが維持や活用の面で足かせになってしまう逆転現象が起きているのです。このように、データを詳細に分析することで、これまでの定説を覆すような新しい都市課題が見えてきました。

自治体や専門組織との「組織的な連携」が解決の鍵

── 最後に、これからの空き家問題解決の鍵を教えてください。

馬塲准教授:今後は「活用できるもの」と「難しいもの」の差がより明確になります。将来、投資対象になりそうな状態の良い空き家も多く出てくるかと思いますが、それを見極めるにはより質の良いデータが必要になると考えます。これまで、空き家予測の研究を行ってきましたが、家屋の状態にまで踏み込めなかったのは、そのようなデータが無いからです。今後、家屋の内部写真などを民間企業から提供いただき、それを利用して空き家の状態予測まで行えれば、結果的に空き家問題解決の糸口になると思います。
また、仮に流通可能な空き家が判別できたとしても、多くの場合低額で売買されるだろうと思います。低額売買物件になると、不動産仲介では利益を出せないので、結局流通せずに空き家のまま放置される可能性があります。そんな時、自治体や司法書士、宅建業者などが手を組んで空き家を流通させる仕組みができないかと考えています。そうすれば、広告、営業、登記などのコストを少しでも下げられるのではないでしょうか。人口減少局面では、どうしても資本主義的な解決ができないので、まだ解ききれない難しい問題ですね(笑)。

── 社会構造が複雑化する中で、組織的な解決が不可欠なのですね。

馬塲准教授:その通りです。実務者、自治体、そして研究者が知見を共有し、組織的に連携していくことが、日本の空き家問題を解き明かす鍵になると信じています。

── 本日は貴重なお話をありがとうございました。

監修者
中央大学/馬塲 弘樹 准教授

馬塲 弘樹 准教授

プロフィールページへ

中央大学  理工学術院・ 准教授。

2015年University of Washington College of Built Environment Department of Landscape Architecture 修士 修了、東京大学 工学系研究科 都市工学専攻 博士後期 修了。
日本都市計画学会2025年年間優秀論文賞受賞。

都市解析や不動産分析などを主な対象として研究しています。扱うデータは小標本(100程度)で豊かな特徴量を持つものから大標本(100万~1億程度)でスパースな構造を持つものまで様々です。基本的には、定量的分析を通して都市・地域の見通しを良くするとともに、社会実装や政策的応用に向けた研究を行っています。

 
関連サイト
不動産特集記事
訳あり物件買取ナビ by AlbaLink