位置指定道路とは「特定行政庁が住宅建築を認可した私道」のこと
一口に道路といっても、国や自治体などが所有している「公道」と、個人や法人などが所有している「私道」とに大別されます。
土地に建物を建てる際には建築基準法上で指定されている幅4m以上の道路に土地が2m以上接している必要がありますが、私道の場合はあくまでも「私有地」であるため、道路とは認められていません。
ただし私道のなかでも、不動産業者などが建物を建てるために特定行政庁から位置の指定を受けた場合には法律上の道路として扱われます。
これを「位置指定道路」といいます。
ここでは、公道と私道の違いや建築基準法上で指定されている道路の種類、位置指定道路の基準と調べ方について解説します。
公道と私道の違い
公道とは国や自治体などが所有している道路のことで、道路交通法・道路法・道路運送法では以下のように規定されています。
道路 道路法(昭和二十七年法律第百八十号)第二条第一項に規定する道路、道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)第二条第八項に規定する自動車道及び一般交通の用に供するその他の場所をいう
引用元:e-Gov法令検索「道路交通法 第二条第一項」
道路の種類は、左に掲げるものとする。
一 高速自動車国道
二 一般国道
三 都道府県道
四 市町村道引用元:e-Gov法令検索「道路法 第三条」
この法律で「自動車道」とは、専ら自動車の交通の用に供することを目的として設けられた道で道路法による道路以外のものをいい、「一般自動車道」とは、専用自動車道以外の自動車道をいい、「専用自動車道」とは、自動車運送事業者(自動車運送事業を経営する者をいう。以下同じ。)が専らその事業用自動車(自動車運送事業者がその自動車運送事業の用に供する自動車をいう。以下同じ。)の交通の用に供することを目的として設けた道をいう
引用元:e-Gov法令検索「道路運送法 第二条第八項」
公道はその名のとおり「公の道路」であるため、不特定多数の方や車が自由に通行することが可能な点に特徴があります。
道路の管理・整備をおこなうのも国や自治体です。
それに対して私道は個人や法人などが所有する土地を便宜上道路として使用しているにしか過ぎず、原則として土地所有者か、土地所有者から許可をもらった方でなければ通行できません。
道路の整備や管理の責任を負うのは私道の所有者であり、費用も負担する必要があります。
また、私道は私有地であることから、私道の所有者は固定資産税も納めなければなりません。
接する道が建築基準法上の道路であれば建築可能
土地に接している道路が公道と私道のどちらの場合であっても、「建築基準法上の道路」として認められている場合には建築が可能です。
建築基準法上で指定されている道路には以下の7種類があり、そのなかのひとつが位置指定道路です。
建築基準法上の道路の種類 | 概要 |
42条1項1号道路 | 幅4m以上の道路法による道路(高速自動車道を除く)。国道や府道、市道など |
42条1項2号道路 | 都市計画法や土地区画整理法、旧住宅地造成事業に関する法律等の法令によって認可を受けてつくられた幅4m以上の道路。都市計画道路や区画整理による道路、開発道路など |
42条1項3号道路 | 建築基準法の施行時にすでに存在し、一般に通行の用に供されていた幅4m以上の道路 |
42条1項4号道路 | 道路法や都市改革法、土地区画整理法などの法令に基づいて新設・変更される事業計画があり、2年以内に築造される予定として特定行政庁が指定した道路 |
42条1項5号道路(通称:位置指定道路) | 土地に建物を建てるため、土地の所有者が特定行政庁から位置の指定を受けて築造する幅4m以上の道路 |
42条2項道路(通称:2項道路) | 建築基準法施行時、または都市計画区域への編入時にすでに道路として使用されており、道路に沿って建物が建ち並んでいる幅4m未満の道路で特定行政庁が指定したもの |
43条但し書き道路 | 接道義務を満たしていないものの、周辺に広い空地があるなど特定行政庁が建築審査会の同意を得て許可した道路 |
位置指定道路の基準
前述のように土地に接している道路が私道の場合であっても、「位置指定道路」として認可されていれば建築が可能です。
私道が位置指定道路に認められる要件は以下のとおりです。
- 道路の両端がほかの道路に接続していること
- ほかの道路と交差する部分や曲がる部分の角の土地をななめに切り取って見とおしをよくすること
- 砂利を敷く、舗装を施すなどをして道がぬかるみ状態にならないこと
- 道路の延長方向の勾配(縦断勾配)が12%以下であり、かつ階段状ではないこと
- 道路や敷地内に排水に必要な側溝などの設備を設けること
参照元:e-Gov法令検索「建築基準法施行令第百四十四条の四」
また、道路の先が行き止まりとなっていて通り抜けができない場合であっても、以下の条件を満たせば位置指定道路として認められることがあります。
- 道路の全長が35m以下
- 道路の幅が4m以上(自治体によっては6m以上)
- 道路の突き当たりが公園や広場などとなっており、自動車の転回が可能
- 道路の全長が35mを超える場合は突き当たり部分と35m以内ごとに自動車用の転回スペースを設置
位置指定道路は、不動産業者が造成した土地を区画割りして分譲したり、建売住宅を販売したりする際につくられるケースが多い傾向にあります。
位置指定道路の調べ方
所有している敷地に接している道路が位置指定道路か私道なのかを確認するためには、不動産の所在地を管轄する自治体の建築関連の窓口へ赴くのが確実です。
自治体によっては、窓口に設置されている閲覧システムを使って「道路位置指定図(建築基準法第42条第1項第5号)」を閲覧できます。
道路位置指定図の写し(指定道路調書証明書)の交付を希望する場合には住宅地図や公図の写しなど現地の場所を特定できる資料が必要となることがあるので、事前に自治体の窓口に問い合わせて確認しておくとよいでしょう。
その際、200円ほどの手数料が必要となることもあります。
位置指定道路(私道)に接する土地が再建築不可かどうかの調べ方
土地に接している私道が位置指定道路として認められていたとしても、接道義務を満たしていない場合は再建築ができません。
位置指定道路に接している家の建て替えを検討しているのであれば、事前に再建築不可かどうかを調べておきましょう。
ここでは、位置指定道路に接する土地が再建築不可かどうかを調べる方法について解説します。
私道に接する土地が再建築不可か確認する方法については、以下の記事でも紹介しているので併せてお読みください。
幅員が4m以下だと「不完全な位置指定道路」
まずは、道路位置指定図や地積測量図などを確認したうえで位置指定道路の現在の幅を調べましょう。
原則として、家を建てる際には建築基準法上の幅4m以上の道路に土地が2m以上接している必要があります。
そのため、そもそも道路の幅が4m以上(自治体によっては6m以上)ない場合には位置指定道路として認可されません。
しかし、ケースによっては幅員が4mに満たない「不完全な位置指定道路」も存在しているのが現状です。
不完全な位置指定道路とは、指定された当初の幅は4m以上だったものの、年月が経るなかで位置指定道路とされている箇所の一部に塀が建っているなど何らかの事情によって幅が狭くなってしまった道のことです。
このような不完全な位置指定道路に接している土地上の建物を建て替えるには、本来の道幅に復元(セットバック)しなければなりません。
具体的な復元方法については、後述の「再建築不可の位置指定道路の対処法3選」で解説します。
位置指定道路に間口2m以上接しているか
位置指定道路の幅が4m以上あったとしても、土地に2m以上接していなければ接道義務を満たしていないことになるので、建物は建てられません。
とくに注意が必要なのは、間口が狭い旗竿地のケースです。
道路と接している細長い路地の奥に宅地が広がっている土地のこと
旗竿地の場合、道路に接している間口が2mあったとしても、その途中が2mに満たないことも少なくありません。
そのようなケースでは、隣地の方から敷地の一部を購入して間口を2mに広げるなどの対策を講じなければ建て替えができない点に注意が必要です。
ただし現実問題として、隣地の方から敷地の一部を購入するのは難しいといわざるを得ません。
また、自然災害などによって家が倒壊してしまうと二度と建物は建てられないことから、測量をした結果、位置指定道路に接している土地の間口が2mに満たない場合は早々に手放したほうが無難です。
しかし建て替えができない再建築不可物件を購入したいと考える方はほぼいないので、一般の買手を見つけるのは困難でしょう。
そのため、接道義務を満たしていない再建築不可物件は専門の買取業者に売却することをおすすめします。
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当時と現在の使用状況が異なる
建築基準法上の道路と見なされる位置指定道路の幅は、道路位置指定申請時の図面に基づきます。
しかし位置指定道路に指定された年月日が古い場合には、当時と現在とで道路の使用状況が異なることが少なくありません。
図面上の道路の位置が現況と異なるケースでは位置指定道路としては認められないため、再建築不可物件となってしまう恐れがあります。
再建築不可の位置指定道路の対処法3選
ここまで解説してきたように、接道義務を満たしていない、あるいは当時と現在の使用状況が異なるケースでは、土地が位置指定道路に接していたとしても再建築ができません。
ただしそのような場合であっても、以下の対策を講じれば再建築や売却が可能となります。
ここからは、それぞれの対処法について詳しく解説します。
セットバックで建て替え可能にする
土地に接している位置指定道路の幅が4m(あるいは6m)に満たない場合は、道路の境界線から2m(あるいは3m)の位置にまで自身の敷地を後退させることで再建築が可能となります。
これを「セットバック」といいます。
たとえば位置指定道路の両側に家が建ち並んでいて幅が3m60cmしかない場合は、4mの幅を確保するためにそれぞれの家の所有者が敷地を20cmずつ道路として提供する必要があります。
ただし、道路として提供した土地には家や塀などは建てられません。
また、その分の面積は敷地面積から除かれるため、建築できる建物の延べ床面積が狭くなってしまう点にも注意が必要です。
セットバックの概要については、以下の記事で詳しく解説しています。
不完全位置指定道路の復元協議
前述のように位置指定道路はあくまでも「私有地」であり、公道ではありません。
そのため、位置指定道路に接している土地のセットバックをする際には、土地に接する所有者と道路の所有者と「不完全位置指定道路の復元協議」をおこなわなければならず、また全員から承諾を得る必要があります。
上図の例でいうと、所有地に隣接しているA・B・C・D・E、及び道路の所有者であるF・G・H氏と復元協議をおこなわなければならないということです。
復元協議によって道路の中心線や境界線、セットバックをする範囲を決めたら、それに基づいて図面を作成します。
その後、関係者全員の印を押した同意書とともに自治体に提出し、認可が下りれば晴れて建て替えが可能となります。
2項道路の認可を受け建て替え可能にする
前述のように私道は建築基準法上の道路とは認められていないため、私道に接している家の再建築はできません。
しかしそのような場合であっても、「42条2項道路」の認可を受ければ建て替えが可能です。
42条2項道路とは建築基準法第42条2項に定められている道路のことで、「みなし道路」とも呼ばれます。
建築基準法が施行される1950年以前に建てられた家のなかには、接している道路の幅が4mに満たないケースが少なくありません。
このような家は現行の法律に照らし合わせると再建築ができないことになってしまいます。
そこで救済措置として、建築基準法が施行される以前に建物が建ち並んでいる幅1.8m~4m未満の道路で特定行政庁が指定したものについては建築基準法上の道路として見なされるようになったのです。
ただし、42条2項道路に接している土地に建物を新築、あるいは建て替えの際には道路の中心線から2mの位置にまで敷地をセットバックさせ、道路の幅が4m以上となるようにしなければなりません。
申請にあたっては、前述の位置指定道路のケースと同様、関係権利者の承諾が必要です。関
係権利者からの承諾を得られたら自治体にみなし道路の申請をおこない、自治体による現地調査や審査などを経て問題がなければ認可が下りる流れです。
再建築不可物件となる3つ接道条件については、以下の記事で詳しく解説しています。
再建築不可専門不動産買取業者に売却する
土地に接する位置指定道路が再建築の要件を満たさない場合でも上述の方法を取れば建て替えが可能となりますが、すべての関係者に同意を得るのはなかなか至難の業です。
金銭を要求されるなどのトラブルへと発展してしまう可能性も否めません。
再建築不可物件にそのまま住み続けたい、建て替えて賃貸物件として活用したいといった目的がないのであれば、売却して住み替えなどを検討したほうが堅実です。
前述のように再建築不可物件を購入したいと考える一般の方はほぼいませんが、再建築不可物件を専門に扱っている買取業者に依頼すれば平均1ヶ月程度で売却が可能です。
ただし、一口に買取業者といっても得意としている物件種別は大きく異なります。
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弊社Albalinkの再建築不可物件の買取事例
ここまで再建築不可の位置指定道路の対処法は、専門の買取業者への売却が最適であるとお伝えしてきました。
そこでこの章では、弊社Albalinkを例にとり、実際の再建築不可物件の買取事例を紹介します。
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再建築する前に気をつけること
土地に接しているのは不完全な位置指定道路であっても、要件を満たしたうえで家を建て替えて住み続けたいと考えている方もいるでしょう。
その際に気をつけなければならないポイントは以下の2つです。
それぞれのポイントについて、詳しく見ていきましょう。
私道の所有者から合意を得る
位置指定道路は私道であり、基本的には道路に接している土地の所有者が所有権を共有している状態です。
そのため、家を建て替える際には水道管やガス管などの引き込み工事をおこなうための「道路掘削承諾書」、工事車両などが通行するための「通行承諾書」を共有者全員から取得しなければなりません。
日頃から良好な関係を保っていれば承諾を取りつけやすいかもしれませんが、近隣の方とまったく付き合いがないケースでは承諾を得るのは難しいでしょう。
また、多額の承諾料を支払わなければならないこともあります。
一方、私道の共有者が複数いる場合には、調査をおこなっても一部の方の所在が不明で分からないといったケースも珍しくありません。
建て替えをおこなうには私道の共有者全員から合意を得なければならないので、一部の共有者が不明の場合には当然許可はもらえず、工事もおこなえない点に注意が必要です。
認可済みの位置指定道路か確認する
そもそも位置指定道路として認可されていない私道は建築基準法上の道路ではないため、再建築ができません。
そのため、建て替えにあたっては私道が位置指定道路として認可されているかどうかを確認することも重要です。
前述の「位置指定道路(私道)に接する土地が再建築不可かどうかの調べ方」で解説したように、不動産の所在地を管轄する自治体の建築関連の窓口で確認してから建て替えに着手しましょう。
認可を得る流れ
もし敷地に接している私道が位置指定道路ではなかった場合は、以下の流れで申請をおこない、位置指定道路の認可を得ましょう。
- 自治体の窓口で私道が位置指定の基準に該当しているかを確認してもらう
- 自治体に道路位置指定事前協議申請書を提出し、審査を受ける
- 審査にとおったら本申請をおこなう
- 本申請が受理されたら申請図に基づいて道路をつくる
- 道路の築造工事が終わったら築造工事完了届を提出し、完了検査を受ける
- 自治体から道路位置指定通知書を受け取る
なお、位置指定道路の申請に関わる手続きは自治体によって異なるため、事前に自治体の建築関連の窓口で相談をしてから着手するとよいでしょう。
まとめ
土地に建物を建てる際には、建築基準法上の幅4m以上の道路に2m以上接している必要があります。
個人や法人などが所有している私道は建築基準法上の道路とは認められていませんが、私道であっても特定行政庁の認可を得た位置指定道路であれば再建築が可能です。
ただし位置指定道路でも、接道義務を満たしていない場合には再建築ができない点に注意しましょう。
接道義務を満たしていない位置指定道路に接している土地上の家を建て替えるには、私道の権利者すべてに承諾を得たうえで幅が4m以上になるようにセットバックをしなければなりません。
しかし関係権利者全員から承諾を得るのは難しいといわざるを得ず、承諾料を支払う必要もあります。
そのため、接道義務を満たしておらず、再建築ができない位置指定道路に接している家を今後活用する予定がないのであれば専門の不動産買取業者に売却し、そのお金をもとに住み替えなどを検討したほうがよいでしょう。
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