増築の定義とメリット・デメリット
まずは、増築の定義と似ている単語である、減築・新築・改築の違いを見ていきましょう。
増築とは、今建っている家に新しく建物を付け加えることで、家全体の床面積を増やすことです。
敷地内に別棟を建てたり、平屋を2階建てにしたりする工事を指します。反対に、床面積を減らす工事をすることを「減築」と言います。
減築は、子どもの自立などをきっかけに、家の掃除やメンテナンスの手間を省く目的で用いられやすい工事です。
新築とは、何もない土地に新しく建物を建てることです。古い家を解体した更地に新しく建物を建築することも含みます。
改築とは、今建っている家の床面積を変えないまま、間取りの変更などを行うことです。壁を撤去して部屋を広くしたり、1階のLDKを2階に移動したりするなど、主に構造のみ変える工事を指します。
このように、既存の建物・床面積の変化があるかどうかで、呼び方が変わります。
増築のメリット
この章では、増築のメリットについて紹介します。
居住スペースを増やせる
生活環境の変化に合わせて、居住スペースを増やせるのが増築のメリットの1つです。
例えば、両親が高齢になったのでバリアフリー設備を導入したい・子どもが産まれて子ども部屋を作りたいなど、ニーズに合わせて柔軟な工事ができます。
慣れ親しんだ土地のまま、今より広々暮らしたいといった場合に増築は適しています。
新築するよりも費用を抑えられる
増築は、基礎部分を元の建物のものを流用できるため、新築より費用が抑えられます。
戸建住宅の新築工事にかかる費用相場は約1,500万円〜2,500万円ですが、増築工事の費用相場は1坪あたり木造で70万円・鉄骨造で100万円です。
また、新築の場合は、解体・撤去に加えて工事完了までは別の仮住まいが必要になりますが、増築では一連のコストがかかりません。
ただし、今の家の売却価格がいくらなのかによって、住み替えのほうが安くなる可能性はあります。
増築のデメリット
次に、増築のデメリットについて見ていきましょう。
建物の耐用年数は変わらない
増築は、元々の建物の部分は引き継ぐため、 基盤が朽ちている可能性もあります。
築年数の古い家は、お金をかけてもいつ寿命を迎えるかわからないため、耐用年数を迎えそうであれば増築をやめたほうが良いでしょう。
商品の購入代金を分割して経費計上する手続きのことを「減価償却」と言い、「減価償却の期間 = 商品が使用できる年数」と法律で定めたものが法定耐用年数
例えば、「木造住宅は22年使えそうだから、購入代金 ÷ 22年で少しずつ経費計上していこう」といった具合です。
法定耐用年数を下記にまとめました。
建物の構造 | 耐用年数 |
---|---|
鉄筋鉄骨コンクリート造 | 47年 |
鉄筋コンクリート造 | 47年 |
れんが・石・ブロック造 | 38年 |
鉄骨造(4mm超) | 34年 |
鉄骨造(3〜4mm) | 27年 |
鉄骨造(3mm以下) | 19年 |
木造 | 22年 |
木造モルタル | 20年 |
上記のように、建物の構造別に耐用年数が定められています。
ただし、耐用年数 = 耐久年数ではありません。耐用年数はあくまで税務上の捉え方です。
表記の年数を迎えると必ずしも建物が朽ちるわけではなく、建物へのメンテナンスを定期的に行っていたかどうかで寿命は変わります。
耐用年数は、1つの目安として捉えると有効です。
増築部分だけが老朽化していないので目立つ
増築により、新しく付け加えた部分だけが老朽化していないので目立つことがあります。
築年数の古い家の場合は、 屋根や外壁の材料と同じものが用意できず、 見た目がちぐはぐになってしまう場合もあるのです。
また、 同じ素材のものが見つかったとしても、新品と老朽化によるダメージがある材料では仕上がりに違いが生じます。
見た目が悪くなってしまう可能性がある点はデメリットと言えます。
接合部分が地震などでひび割れしやすい
既存の建物と新しく付け加えた建物の接合部分が、地震などの衝撃でひび割れを起こしやすくなります。
別々の建物を接続しているため、重心・強度に差が生じてしまい、揺れなどの負荷がかかったときにズレが起こりやすくなってしまいます。
増築できない家の3つの要件
ここまで、増築の概要やメリット・デメリットについて解説しました。
増築は、生活環境の変化に細かく合わせられるのでより快適な住まいを手にいれるには有効です。
ただし、増築できない家もあります。該当する物件にはどのような要件があるのか、詳しく見ていきましょう。
増築により建ぺい率・容積率がオーバーしてしまう物件
増築により建ぺい率・容積率がオーバーしてしまう場合、増築できません。
建ぺい率とは、建築面積(建物を真上から見たときの面積)の敷地に対する割合で、どのくらいの規模の建物を建てても良いかを定めたものです。
都市計画法に基づいた制度である用途地域によって割合は異なり、30〜80%の間で設定されています。
容積率とは、敷地に対して、建築物の各階の床面積の合計(延床面積)の割合で、家の高さを制限するものです。
建ぺい率と同様に、用途地域によって割合が異なり、50〜1,300%の間で設定されています。
どちらも、火災が発生した際の被害を最小限にしたり、人口をコントロールしたりすることで、快適な住環境を守るための制度です。
10㎡を超える増築には、必ず建築確認申請が必要となります。建築確認申請とは、建物が建築基準法などの条例を守っているかどうかを判断する審査です。増築により建ぺい率・容積率をオーバーしてしまう物件はこれに通らないのです。
建ぺい率・容積率オーバーの詳細や適合となるケースについて、以下の記事で詳しく解説しています。
建ぺい率・容積率を確認する方法
自身の住んでいる市区町村のホームページもしくは役所の都市計画に関する窓口で確認できます。
現状の床面積がわからない場合は、法務局で登記簿謄本・登記事項証明書を取得してチェックしましょう。
法務局の窓口に持っていくものは手数料(1通600円)のみですが、備え付けの請求書に必要事項の記入が必要です。その際に不動産の家屋番号の記入欄もあるため、権利証や固定資産税の課税明細書などで事前に確認して向かいましょう。
また、不動産購入時の重要事項説明書にも建ぺい率・容積率は記載されています。
接道義務に適合していない再建築不可物件
昔の法律の基準で建てられていて現行法に適合せず、再建築ができない物件があります。再建築不可物件とは、建物を一度解体したら新たに建築ができない物件のことです。
再建築不可物件は、建築基準法第43条による「幅4m以上の道路に間口が2m以上接していなければならない」という規定に適合していません。そのため、現行の建物を再現するような再建築はできないのです。
再建築不可物件の詳細や調べ方については、下記の記事で解説しています。
建築基準法第43条の「幅4m以上の道路」「間口に2m以上接する」の条文について、詳細を見ていきましょう。
前面道路の幅員が4m未満
敷地に接している前面道路が、幅員4m未満(地域によっては6m未満)だと再建築不可物件となります。
建築基準法第42条には、以下のように明文されています。
(道路の定義)
第四十二条 この章の規定において「道路」とは、次の各号のいずれかに該当する幅員四メートル(特定行政庁がその地方の気候若しくは風土の特殊性又は土地の状況により必要と認めて都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域内においては、六メートル。次項及び第三項において同じ。)以上のもの(地下におけるものを除く。)をいう。
つまり、幅員4m未満だと法律上は道路としてみなされません。
建物の敷地と接している道路に幅を求められる背景には、災害時に救急車や消防車などの緊急車両がスムーズに侵入して、消防・救命活動を行えるようにする目的があります。
接道間口が2m未満
道路と敷地に接している間口が2m未満だと再建築不可物件となります。
建築基準法第43条では、下記のように明記されています。
(敷地等と道路との関係)
第四十三条 建築物の敷地は、道路(次に掲げるものを除く。第四十四条第一項を除き、以下同じ。)に二メートル以上接しなければならない。
前述した道路の定義と同様に、災害が起きたときの避難経路を十分に確保するために義務付けられています。
構造が鉄筋コンクリート造の建物
建物の構造が鉄筋コンクリート造だと増築が難しいです。
鉄筋コンクリートとは、組み合わせた鉄筋を芯にして周りをコンクリートで固めて一体にした構造の建築物のことです。
柱や梁が建物を支えている木造住宅と違い、壁が建物全体を支えるタイプの鉄筋コンクリート造は、一部を取り壊すと建物全体の強度が低下します。
建物の状況によっては可能ですが、依頼できるリフォーム会社は限定されてしまいます。
増築できない家は売却して住み替えを検討するのも手
ここまでは、増築できない家の要件について解説しました。
持ち家を増築したくても要件を満たしていない場合は、売却して新居購入費用に充てるのも1つの選択肢です。新居を購入するより費用を抑えられる増築ですが、破格にリフォーム費用が安いわけでもないからです。
参考までに、増築リフォームにかかる費用相場を面積別にまとめました。
増築する広さ | 木造住宅 | 鉄骨住宅 |
---|---|---|
2畳 | 70万円 | 100万円 |
4畳 | 140万円 | 200万円 |
6畳 | 210万円 | 300万円 |
8畳 | 280万円 | 400万円 |
上記は、1階の部屋を対象にした費用です。増築する場所が2階部分だと工事に手間がかかってしまうため、費用が1.2〜1.8倍ほど高額になります。
また、キッチン・浴室・トイレなど、水回りを増築する場合は配管工事等が含まれるため、高額になりやすい傾向にあります。
通常の不動産より売却が困難な恐れがある
増築できない理由によっては通常の不動産より売却が困難になる恐れがあります。
建ぺい率・容積率がギリギリであれば増築リフォームができません。再建築不可物件は、接道義務を果たしていないため、原則建て替えは不可能です。
どちらも普通の家に比べて、将来的な活用方法に制限がかかってしまいます。
増築できない理由によっては売却方法を適切に選ぶ必要があります。
一般の買い手に向けて売り出す
不動産仲介業者に依頼して、一般の買い手に向けて売り出す方法です。
仲介業者とは、売主の広告活動を手伝い、買主とのマッチング・売買契約締結までをサポートする業者です。仲介に依頼すれば、一般のマイホームの購入を検討している層に向けて、インターネットやチラシを用いて幅広く募ってもらえます。
築年数が20年以内で状態も良く、建ぺい率がギリギリで増築できないなどが理由であれば、問題なく買い手は見つかるでしょう。
ただし、マイホームとして適していない物件は購入希望者からの問い合わせが入らず、長期的に売れ残る可能性があります。
不動産買取業者に買い取ってもらう
築年数が20年を超えていたり、建築基準法に適合しない物件などであれば、不動産買取業者に買い取ってもらいましょう。
上記に該当する家は、一般の買い手への売却は難しいです。なぜなら、終の棲家を探しているのに、建物が老朽化したら建て替えも増改築も施せないからです。
できるのは、建物状態を現状維持する範囲にとどまる修繕のみです。これでは、せっかく高い費用を払って購入したのに、人生の中でもう一度家を購入しなければならない恐れがあります。
しかし、そのような家でもそのままの状態で買い取ってくれる業者を、不動産買取業者と言います。
買取業者は、売主から直接家を買い取る業者です。第三者への再販・自社での運用を目的にしており、物件を自社で再生する前提で買い取るので、そのままの状態で売却可能です。
リフォームの必要もなく、家財も残したまま、お互いが契約内容などに合意すればすぐに決済に進めます。
弊社AlbaLink(アルバリンク)も、築古物件や違法建築物件をはじめとした、日本全国の売れにくい家を専門的に取り扱っている買取業者です。
2011年の創業以降、数多くの訳あり物件を買い取ってまいりました。
弊社在籍の不動産のスペシャリストが、売主様の家を少しでも高く買い取れるよう全力でサポートするので、ぜひ一度ご相談ください。
まとめ
今回の記事では、増築できない家の要件や売却方法について解説しました。
本文でもお伝えした通り、増築できない家は売却して新居へ住み替える費用に充てるのも1つの方法です。
不動産業者に相見積もりを取って査定価格を聞いてみましょう。業者によっては、納得できる売却価格となるはずです。
弊社AlbaLink(アルバリンク)も、不動産をなるべく高く買い取り、売主様とWin-Winの関係になれるよう日々全力を尽くしております。
無料相談・無料査定は随時行っておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。