家はひび割れの状態によって売却価格が変わる
同じひび割れのある家でも、ひび割れの状態によって売却価格は変わります。
コンクリートや外壁材は、乾燥などによって軽微なひびが入るのが普通のことで、住宅のひび割れすべてが売却価格に影響するわけではありません。
問題となるのは「建物の構造そのものを劣化させ、強度を下げる恐れがある」ひび割れであり、この場合はかなり売却価格を下げないと家が売れない可能性があります。
ひび割れの危険度を判断する基準としては、建物状況調査(インスペクション)の指摘事項が目安となります。
建物状況調査とは、国土交通省の定める講習を修めた有資格者「既往住宅状況調査技術者」による、建物の劣化や不具合状況の調査です。
もし家の売買時に不具合(瑕疵)を見逃していると、後々買主から「契約不適合責任」を問われる恐れがあります。
そのため国土交通省「既存住宅状況調査方法基準の解説 」(2023年版)の基準にもとづき、売却前にひび割れの状態をチェックしておくのが一般的です。
ただし難解で一般の方が読んでも分かりにくいため、このあとひび割れの箇所と程度ごとに、売却価格に及ぼす影響を解説します。
- 基礎部分に幅0.5mm以上のひび割れがある
- 不同沈下によって内壁のひび割れがある
- 下地材に達した外壁のひび割れがある
基礎部分に幅0.5mm以上のひび割れがある
基礎に幅0.5mmのひび割れがある場合は、売却価格に大きく影響し、価格が市場相場の70~80%前後となるのが一般的です。
「既存住宅状況調査」では幅0.5mm以上の基礎のひび割れが指摘事項に該当し、家の構造にダメージを与える可能性が大きいためです。
ひびの幅以外にも既存住宅状況調査の指摘事項として、売却価格が下がる状態には以下のものがあります。
- ひび割れの深さが20mm以上
- さび汁の出ているひび割れ
基礎に上記のひび割れがある場合は、売買契約時の「重要事項説明書」にも記載し、買主に告知しなければなりません。
上記に及ばない軽微なひび割れであれば、構造の劣化とは無関係のため、売却価格にあまり影響を及ぼしません。
ひび割れの測定には「クラックスケール」という専門の道具を用いますが、セルフチェックの場合は0.5mmのシャープペンシルの芯や、深さを測るにはピアノ線を使うこともできます。
クラックスケールはホームセンターなどで500円前後から購入できるので、ひび割れのセルフチェック用に持っておくことをおすすめします。
不同沈下によって内壁のひび割れがある
家の内壁に「不同沈下※」によるひび割れが出ている場合は、売却価格への影響が大きくなり、市場相場より500万円ほど下がるケースもあります。
※不同沈下とは
建物の重みで建物が不ぞろいに沈下する現象のことで、以下の原因で起こりやすい。
- 地盤調査や地盤改良工事が不十分で造成されている
- 盛土の締固めが不足している
売却価格に影響を及ぼす理由は、不同沈下では住宅が傾くおそれがあり、家の強度に深刻なダメージを与えることが多いためです。
不同沈下では地盤の強度が均一ではないため、地盤の弱いところだけが深く沈み、年数が進むほど家の傾きが酷くなる傾向があります。
傾きに早く気付くためにも、ひび割れを見つけた時点で一度不同沈下を疑ってチェックするほうがよいです。
同じ内壁のひび割れでも、下地のボードのズレなど軽微な傷みだけであれば、構造の劣化とは無関係のため、売却価格に影響を及ぼしません。
屋内のひび割れが不同沈下によるものかどうか、以下の項目でチェックできます。
- ドアや窓の建てつけが悪くなった
- 床の物が一方向へ転がる
- 玄関ポーチと基礎の間に隙間ができている
不同沈下の兆候が見られたら、なるべく早く専門業者に修繕を依頼することをおすすめします。
下地材に達した外壁のひび割れがある
外壁のひび割れが下地材まで達していた場合、家の売却価格に影響を及ぼします。
単なる外壁塗装のひび割れだけであれば、建物の構造に直接関わるわけではないため、売却価格にほとんど影響しません。
しかしひび割れが内部の合板やラス金網、防水紙などの下地材に達していた場合、雨水が侵入して構造材の劣化を招くため、売却価格を下げる要因となり、市場相場の80~90%程度になるのが一般的です。
また外壁塗装には雨水の浸水を防ぐ役割があるので、今は軽微なひび割れでも、いずれ浸水する可能性があります。
売却後に契約不適合責任を問われないためには、一見軽微な外壁のひび割れでも、買主に状況報告を行うことが重要です。
ひび割れのある家を売却する2つの方法
家のひび割れ状況を的確に買主に告知する前提で、ひび割れのある家を売却する方法は以下の2つです。
- 「仲介会社」に売却を依頼する
- 「専門の買取業者」に売却を依頼する
同じ不動産売却でも、仲介と買取ではそれぞれ向いている物件などの違いがあります。
自分の家の場合はどちらが適しているのか、このあとの解説をもとにチェックしてみましょう。
なお「仲介」と「買取」のどちらが良いかを知りたい方は、ぜひ以下の記事も参考にしてください。
「仲介業者」に売却を依頼する
ひび割れの家を売却する方法の1つ目は、「仲介業者」に家の売却を依頼することです。
仲介業者は不動産を売却したい人に代わって売却活動を行い、購入希望者との間で売買契約を成立させる役割を果たします。
仲介業者には売買契約にともなう登記をはじめ、以下の手続きも依頼できます。
- 契約条件の調整
- 契約書類の作成
- 重要事項説明
- 各種事務手続き
仲介業者は市場相場を把握したうえで、購入希望者の中から高く買ってくれる買主を探してくれるため、他の売却方法よりも高く売却できることがメリットです。
仲介の流れ
不動産仲介での家の売却は以下の流れで進みます。
相談したい不動産会社を見つけたら、仲介を依頼する媒介契約を結んで売却活動を開始します。
売買契約の締結までには買主との価格交渉や告知事項の確認・開示、内覧の立ち会いなど、多くのプロセスを踏んで、ようやく物件の引き渡しと売却代金の受け取りが完了します。
仲介では相談から引き渡し完了まで3~6ヵ月ほどかかるのが一般的です。
ただしひび割れのある家は購入希望者が現れにくいので、売却活動が数年単位の長期に及ぶ可能性もある点にご注意ください。
ひび割れのある家は仲介業者に断られやすい
仲介業者は高く売却できる点がメリットですが、仲介で売れる家には一般に以下の共通点があります。
- 立地条件が良い
- 家の築年数が新しい
- 家が人気のエリアにある
- 敷地の面積が広すぎず狭すぎない
- 道路づけが良い
仲介業者は成功報酬である仲介手数料を収益源としているため、売れる見込みの薄い物件の売却には力を入れてくれないばかりか、仲介を断られやすい傾向です。
高く売却するために仲介で売りに出したはいいが、半年過ぎても売れないとなったら、家に売れ残り感が出てますます売れなくなってしまいます。
仲介業者に相談してもあまり売却に前向きでなさそうだったら、早めに別の売却方法を検討するほうがよいでしょう。
「専門の買取業者」に売却を依頼する
ひび割れした家の売却方法2つ目は、専門の買取業者に売却を依頼することです。
専門の買取業者は、家を売り主から直接買い取る点が仲介とは異なります。
リフォームして再販する目的で物件を仕入れるため、家の状態によらず買い取ってもらえることも買取業者の特徴です。
買取の流れ
専門の買取業者に家を買い取ってもらう場合の流れは以下のとおりです。
仲介での売却の流れと比べてみましょう。
専門の買取業者なら問い合わせ後、すぐに条件確認と査定を行い、提示した査定額(買取価格)に納得できればそのまま売買契約へと進みます。
物件の引き渡しまでが最短数日と、スピーディーに売却できる点が買い取りの特徴です。
専門の買取業者の場合は買主を探す必要がないため、内覧などの売却活動の手間がかかりません。
買取の唯一のデメリットは、一般に買取価格が市場相場の70%~80%になる点ですが、その代わりに買取業者が直接買い取るため仲介手数料がかからず、修繕・リフォーム費用も不要です。
ひび割れのある家は専門の買取業者に相談すべき
ひび割れなどの瑕疵がある家の売却では、仲介よりも買取が適しています。
仲介ではひび割れのある家は断られる可能性が高いですが、専門の買取業者ならば家をそのままの状態で買い取ってもらえることがほとんどです。
専門の買取業者は独自の再生ノウハウと多くの販路を持っているため、どんな条件の悪い家でも買い取れるのです。
また買取業者は家の瑕疵を知ったうえで購入後、リフォームして再販するため、告知義務違反によるトラブルの心配もありません。
仲介で家を売却する場合は売主が「契約不適合責任※」を負いますが、買取なら契約不適合責任が免除されます。
※契約不適合責任とは
売買契約で、引き渡した目的物の種類や品質、数量が契約内容と異なる場合に、売主が負う責任のこと。
売主は買主から以下の請求を受ける可能性がある。
- 家の補修などの追完
- 代金の減額
- 契約解除
- 損害賠償請求
弊社AlbaLink(アルバリンク)は瑕疵物件などの訳あり物件専門の買取業者です。
これまでにも基礎や外壁が大きくひび割れた家を多数、高値で買い取ってきた実績があります。
他社で断られた物件でも買取が可能ですので、家のひび割れで売却できないとお悩みの方は、ぜひご相談ください。
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ひび割れのある家でも高く売却できる6つのコツ
ひび割れのある家が売れにくいのは事実ですが、以下の6つのコツを押さえれば高く売却することも可能です。
- ひび割れを補修した履歴を残す
- 売却前に既存住宅売買瑕疵保険に加入する
- ホームインスペクションを受ける
- 住宅瑕疵担保履行法を活用する
- 火災保険を利用する
- 価格交渉を前提に売却価格を設定する
さすがにひび割れしたままで高額売却は難しいので、どのように補修するのがベストなのか、ケース別に探っていきましょう。
ひび割れを補修した履歴を残す
一度ひび割れした家を高く売るコツの1つ目は、ひび割れの補修履歴を残すことです。
ひび割れがあった事実と補修内容を明記しておけば、買主の信頼獲得につながります。
できれば修繕履歴として過去の工事の経緯や写真などをまとめて記録し、データ化しておくと、家の品質証明としてより効果的です。
ひび割れを補修する方法
家の構造に響かない軽微なひび割れなら、DIYで補修しても問題ありませんが、基礎や外壁の幅広いひび割れや深いひび割れは専門家に依頼するべきです。
すでに家の強度に問題が生じている場合、素人施工では構造面の根本的な解決を遅らせてしまい、かえって家の危機度が増してしまうことがあります。
ひび割れの補修方法は大きく分けて以下の4種類です。
補修方法 | 費用相場 | 工期 | |
---|---|---|---|
シール工法 | ひび割れの表面にシール材を充填 | 数百円~/1m | 1~2日 |
Uカット(Vカット) シール材充填工法 |
傷んだコンクリート部分をU・V字型に除去し補修材を注入 | 4,000円~6,000円/1m | 1~2日 |
ビックス工法(低圧注入工法) | ひび割れの奥まで補修材を充填 | 10,000円~20,000円/1m | 2日程度 |
アラミド繊維シート +エポキシ樹脂 |
基礎全体にアラミド繊維シートをエポキシ樹脂で接着 | 20,000円~/1m | 1~3日 |
なおひび割れの補修後には、上から塗装を行うのが一般的です。
ひび割れ補修の相談先は、以下のいずれかになります。
- 塗装業者
- 施工会社
- 建築士
ひび割れの原因が施工時の不具合(施工不良)かどうかを知りたい場合は、施工会社に相談するのがおすすめです。
もし施工のミスや不具合が原因のひび割れであれば、次に解説する「既存住宅売買瑕疵保険」で対応できる可能性があります。
売却前に既存住宅売買瑕疵保険に加入する
ひび割れした家を高く売るコツの2つ目は、売却前に「既存住宅売買瑕疵保険」に加入することです。
既存住宅売買瑕疵保険とは、専門の検査事業者による検査で家に問題がなかった場合に加入できる保険のことで、家の瑕疵(不具合)により起きた買主の損害を補償する制度です。
この保険は、住宅の購入者が後から判った瑕疵で受けた不利益に対し、売主に補填の資力がない場合の解決策として2007年に制定された「住宅瑕疵担保履行法」の仕組みの1つです。
参照元:e-Gov法令検索「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」
住宅の検査と保証がセットになっていることがポイントで、売主側がこの保険に加入していることで以下のメリットがあります。
- 売却後に住宅に瑕疵が見つかっても、修理費用を保険金で賄える
- 専門家の検査に合格しないと加入できないため、住宅の品質保証になる
- 加入者の住宅事業者が倒産しても、保険会社に瑕疵担保保険の保険金を請求できる
家の瑕疵に対する補償が上記3つの状況でも受けられるため、買主は安心です。
ただし既存住宅売買瑕疵保険は「登録検査事業者」「仲介する不動産業者」のどちらかに依頼して加入してもらう形になり、売主が自分で加入するのではない点にご注意ください。
分かりにくいと思いますので保険の関係者を以下にまとめます。
保険加入者(保険料支払義務者):
- 登録検査事業者
- 仲介する不動産業者
保険証券の交付先:売主
保険付保証明書:買主
なお既存住宅売買瑕疵保険は一般の火災保険会社では取り扱いがなく、住宅専門の保険会社として国土交通大臣に指定された保険法人のみで受け付けています。
保険加入者になる「登録事業者」は住宅瑕疵担保責任保険協会「かし保険を利用する登録事業者等の検索」で検索して探せます。
国が指定した「住宅瑕疵担保責任保険法人」も、国土交通省サイト「既存住宅売買瑕疵保険について
」に掲載されているので、気になる方は検索してみてください。
ホームインスペクションを受ける
ひび割れの家を高く売るコツの3つ目は、ひび割れの補修後に「ホームインスペクション(既存住宅状況調査)」を実施することです。
ホームインスペクションとは、雨漏りやひび割れなど、一般の人には分からない住宅の不具合や劣化を専門家(ホームインスペクター・既存住宅状況調査技術者)が調査することです。
ホームインスペクションで修繕証明を取っておけば、買主の信頼獲得につながります。
家の構造体まで検査を受け、以下のような「診断報告書」を出してもらえば、現在ひび割れがない証明となるので、高値での売却も可能です。
ホームインスペクションの検査項目と範囲には、目視による一次検査と、壁の中や天井の中などの内部構造を確認する二次検査とがあります。
費用は30坪程度の戸建て住宅で、一次検査が5万~7万円、二次検査が6万~12万円ほどが相場です。
ひび割れの原因を徹底的に追及するなら、10万円前後は見ておきたいところです。
住宅瑕疵担保履行法を活用する
ひび割れの家を高く売るコツの4つ目は、「住宅瑕疵担保履行法」を活用する方法です。
住宅瑕疵担保履行法とは、新築から10年以内の家であれば、買主が住宅事業者(建設業者または宅建業者)に対し、家の瑕疵による損害の補償を受けられる制度です。
2009年(平成21年)10月1日以降引き渡しの新築住宅には「住宅瑕疵担保履行法」が適用され、買主が住宅品質確保法で定める10年間の瑕疵担保責任の履行を求められるようになりました。
この制度で住宅事業者は、瑕疵担保責任を果たす資力確保のために「補償金の供託」または「保険加入」のいずれかが義務付けられています。
住宅事業者に義務付けられる資力確保の方法
- 保険加入:瑕疵担保責任保険へ加入する
- 補償金の供託:過去10年間の建築戸数に応じた供託金を法務局などに預ける
参照元:住宅瑕疵担保責任保険協会「住宅瑕疵担保履行法とは」
瑕疵担保責任保険と同様に、売主側の住宅事業者が倒産していた場合にも、買主が供託金から補償を得られる仕組みです。
なお住宅瑕疵担保履行法で補償される「瑕疵」とは、以下の部分の欠陥のことです。
- 構造耐力上主要な部分
- 雨水の侵入を防ぐ部分
具体的には、以下の部分を指します。
屋根や外壁、基礎のひび割れなどは「構造耐力上主要な部分」「雨水の侵入を防ぐ部分」に該当するため、住宅瑕疵担保履行法による補償を受けられます。
買主の信頼も得られるので、ひび割れのある家が築10年以内なら、住宅瑕疵担保履行法の活用を検討するとよいでしょう。
火災保険を利用する
ひび割れの家を高く売るコツの4つ目は、家のひび割れが地震などの災害によるものの場合に、火災保険で補修費用を補填することです。
火災保険では以下のような自然災害や偶発的な事故による損害が補償されます。
- 火災、落雷、破裂・爆発
- 風災・雹(ひょう)災・雪災
- 建物の外部からの物体の落下、飛来、衝突もしくは倒壊
- 群衆の暴動や労働争議にともなう暴力行為もしくは破壊行為
- 盗難によって生じた損傷
- 不測かつ突発的な事故による破損
参照元:日本損害保険協会「損害保険Q&A-すまいの保険‐問51火災保険」
火災保険の給付申請は、ひび割れの修理をする前でも後でも可能です。
ただし以下は火災保険の補償対象外となるため注意しましょう。
- 経年劣化による被害
- 故意な損害や過失
- 破損箇所の現状復帰以外のリフォーム
故意は問題外ですが、やっかいなのは経年劣化と自然災害による被害の区別がつきにくいことです。
保険給付金を受け取るためには、保険会社から委託された鑑定人による現地調査で「地震によりひび割れができた」ことを的確に証明できなければなりません。
被災時にひび割れ箇所の写真を撮っておくことをおすすめします。
保険調査の損害状況確認で物的証拠になり、損害状況を詳しく説明できます。
なるべく被害状況を建築の専門家に見てもらうと、より正確な被害額の見積もりが可能です。
地震による被害であることが証明できれば、火災保険では損害額に見合った保険金が下りるので、家を高く売るための補修に充てられます。
ただし「地震・噴火またはこれによる津波」によるひび割れの場合は一般的な火災保険だけでは補償されず、地震特約や地震保険に加入していることが給付の条件です。
今一度契約内容をチェックしてみてください。
給付要件を満たしていた場合に、火災保険給付を申請する際の流れは以下のとおりです。
- 損害状況の確認
- 保険会社へ連絡
- 保険会社から必要書類が送付
- 書類を保険会社へ提出
- 鑑定人による被害状況確認
- 保険金の算出と確認
- 保険金の振り込み
火災保険申請サポート業者の無料調査を受ければ、手続きはスムーズですが、近年は保険申請に関する詐欺業者が多いため、会社の実態や実績を調査したうえで依頼しましょう。
価格交渉を前提に売却価格を設定する
ひび割れの家を高く売るコツの5つ目は、買主との価格交渉を前提に売却価格を設定することです。
家の売り出し価格は売主が自由に決められますが、仲介による通常の不動産売買では買主との価格交渉があり、売り出し価格よりも成約価格が下がるのが一般的です。
参考までに、売り出し価格と売却価格の差をデータで見てみましょう。
東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2023年)」によると、2023年の首都圏の中古戸建て物件の平均売り出し価格は4,294万円、実際の売却価格は平均3,848万円でした。
引用元:東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2023年)」
平均的な売り出し価格と売却価格には500万円近い開きがあり、それだけ価格交渉で下がることがお分かりいただけるでしょう。
ましてやひび割れのある家ならば値引きは確実です。
それならば値引き交渉を考慮し、想定価格よりやや高めに売り出し価格を設定しましょう。
そして「提示価格よりも安ければ検討する」という人が現れたら、価格交渉には柔軟に応じるほうが売却がスムーズです。
価格を多少下げてでも早く売却するほうが、固定資産税などの維持管理費が減り、最終的に得になる場合が多いです。
買主も値引きしたことで「良い買い物ができた」と満足してくれるでしょう。
ただし価格設定が露骨に高すぎると売れ残る原因にもなるので注意が必要です。
売り出し価格の設定は相場の1割増し程度、一般的な売り出し価格と売却価格の差額の範囲に留めましょう。
家にひび割れが発生する2つの原因
家にひび割れが発生する原因は、経年劣化以外だと主に以下の2つです。
- 地震
- 施工不良
天災と人災、いずれも家屋の構造に重大なダメージを与え、原因ごとに危険度と取るべき対応は異なりますので、それぞれ解説します。
地震
地震による揺れが原因で、外壁や基礎にひび割れが生じることはよくあります。
日本は地震大国なので、最近建築された家であればよほど大きな地震でもない限り、深刻なひび割れの可能性は少ないはずです。
しかし古い家屋の場合は、基礎に暦年のダメージが積み重なっているため、地震が引き鉄で基礎に致命的なひび割れが生じるケースも少なくありません。
特に以下に該当する家に地震のひび割れができると、今後家が傾いたり倒壊したりするリスクが高いです。
- 軟弱地盤の上に立っている
- もともと経年劣化で老朽化していた
- シロアリなどの被害がある
- 家屋の形状で揺れの力が一点に集中しやすい
もともと構造体や基礎が傷んでいる家は、地震に追い打ちをかけられ、深刻なダメージを負ってしまいます。
地震によって外壁がひび割れた場合は、表層の外壁塗装だけでなく、外壁材や内部の構造体までひび割れが及んで強度が落ちている可能性があるので、点検が必要です。
地震の後に今まで無かったひび割れができていたら、基礎や構造体も入念に点検しましょう。
なお地震で倒壊する家に見られる特徴は、以下の記事で解説していますので参考にしてください。
施工不良
家の施工時の手違いや怠慢などの施工不良も、家のひび割れの主要な原因の1つです。
鉄筋コンクリート造の施工不良の中には、設計どおりに鉄骨が設置されていなかったために、鉄骨不足でコンクリートに余計な負荷がかかってひび割れが生じるケースがあります。
また鉄筋を覆うコンクリートが薄過ぎる「被り厚さ不足」の場合は、鉄筋が錆びて膨張し、コンクリートがひび割れたり剥がれてしまったりするケースもあります。
10cm・15cm・20cmごとに一定間隔でひび割れが見られる場合には、鉄筋の被り厚さ不足である可能性が高いです。
基礎を固めるコンクリートの品質が劣悪、もしくは作業に手抜きがある場合も、ひび割れの原因となります。
基礎のコンクリートには通常、国土交通省の指定するJIS規格の製品が使われますが、規格に満たない品質の製品が使用されるケースがあります。
またコンクリートの施行時には砕石を均一に混ぜる必要がありますが、施工の時間や手間を省くために、水を足したり砕石が偏ったまま施工したりするケースもあるようです。
施工不良の鉄筋コンクリートは、設計どおりの強度を持たず、住宅倒壊を招く大きな原因となります。
もし基礎のひび割れの原因が施工不良だった場合、住宅瑕疵担保履行法などを活用して早急な対処が必要です。
家のひび割れを放置する5つのリスク
ここまで、家のひび割れの原因や、ひび割れのある家を補修して高く売却する方法を解説してきました。
ただ、今現在ひび割れがそこまで深刻でないと判断し、家をそのまま放置するのは、以下のリスクがあるためNGです。
- 家が傾く
- 家が倒壊する
- 柱が腐食する
- 断熱効果が低減する
- シロアリ被害に遭う
ひび割れが発生している時点で、家の強度は確実に落ちています。
少しでも早く、紹介したいずれかの方法でひび割れに対処しましょう。
家が傾く
家のひび割れを放置するリスクの1つは、家が傾くことです。
特にひび割れの原因が不同沈下だった場合は、家の傾きが今後急激に進行します。
不同沈下が起こっているということは、地盤の強度が均一ではないため、地盤の弱いところだけが深く沈み、放置するほど家の傾きが酷くなるので注意が必要です。
なお家の傾きを放置すると、家そのものの倒壊リスクだけでなく、住んでいる人にも下記のような害が及びます。
傾斜角 | 健康障害 |
---|---|
0.46° | 傾斜を強く意識 |
0.6° | めまいや頭痛 |
~1° | 頭重感、浮動感(人により) |
1.3° | 牽引感、ふらふら感、浮動感などの自覚症状 |
1.7° | 半数の人に牽引感 |
2°~3° | めまい、頭痛、吐き気、食欲不振など |
4°~6° | 強い牽引感、疲労感、睡眠障害、正常な環境でも傾いて見える |
家が傾いたら、単なるひび割れ補修では済まず、地盤の状態に合わせた工法で修繕を図らなければなりません。
基礎から再構築する大がかりな工事や、家屋の下からのジャッキアップなどが必要です。
家の傾きの修正工事の費用相場は手法によっても異なりますが、おおむね200万円~400万円、狭い範囲だけでも100万円前後かかります。
ひび割れを発見してすぐに対処すれば、ここまで大規模な施工をしなくても家を売却できるはずです。
なお傾いた家を売却する方法については以下の記事で解説しています。
傾いた家の売却を検討している方は参考にしてください。
家が倒壊する
家のひび割れを放置するリスクの2つ目は、家の倒壊を招くことです。
基礎のひび割れには原因がいくつか考えられますが、もし施工不良が原因だった場合、家が倒壊する可能性もあるため、ひび割れの段階で早急に対処が必要です。
よくある基礎工事の施工不良は次のパターンです。
- 鉄筋の本数不足
- 鉄筋の位置の不具合(被り厚さ不足)
- コンクリートの品質不良
- コンクリートの施工不良
前述したように、鉄筋とコンクリートの施工不良は家の構造そのものの不良とほぼイコールです。
外壁のひび割れが悪化すればするほど、雨水の浸水や地面の揺れに構造体が耐えられなくなり、建物自体の耐久性が低下します。
放置すれば家の倒壊まで時間の問題となるでしょう。
基礎のひび割れ補修が必要になれば、1ヵ所につき約1万~2万円に費用がかかり、住宅全体の基礎ひび割れ補修になると最低でも10万円前後が必要です。
家の倒壊を防ぐには、施工不良による基礎のひび割れの早期発見・早期対処が鍵になります。
柱が腐食する
家のひび割れを放置するリスクの3つ目は、柱の腐食です。
ひび割れが外壁だけに留まらず、下地材まで進行している場合は、雨水が建物の構造部分に入り込んで要る場合が多く、柱の腐食を招きやすいといえます。
さらに雨水で柱が湿気を帯びることで、カビやシロアリが増殖する環境になります。
湿度の高い環境では「木材腐朽菌」も発生しやすくなり、菌によって木材の養分が吸収された結果、柱に穴や亀裂が生じるのです。
木材腐朽菌は以下が豊富にある環境で増殖します。
- 水分:湿度85%以上・木材の含水率25%以上
- 温度:20~30℃
- 栄養:木材の主成分(リグニン、セルロース、ヘミセルロース)
- 空気:適度な酸素
カビが生える場所では木材腐朽菌がさらに育ちやすく、気がついたときには腐朽菌とシロアリのダブルパンチで柱がボロボロ、なんてことも珍しくありません。
柱の腐食は家の倒壊を早めるので、少しでも異変に気がついたらすぐに専門業者に補修を依頼する必要があります。
柱が腐食した場合は、部分的な補修なら1万~5万円程度ですが、被害が広範囲に及んでいたら100万円以上のリフォームになるケースも多く、交換する柱の本数によっては大がかりな改修工事が必要です。
ウッドショック以降は木材価格が高騰しているため、実際には相場以上の費用が必要かもしれません。
外壁のひび割れを見つけた段階で何らかの手を打ち、不要なリスクと出費を抑えましょう。
断熱効果が低減する
家のひび割れを放置するリスクの4つ目は、断熱効果の低減です。
ひび割れを通して雨水が下地材まで浸水すると、断熱材の劣化を招く恐れがあります。
一般的な断熱材であるグラスウールは、浸水すると空気を含んだ層が無くなり、断熱効果が失われてしまうのです。
最近のグラスウールは表面の「防湿フィルム」や「不織布」で、断熱材が濡れないよう保護されていますが、古い家屋の断熱材にはフィルムや不織布がないため、床下の湿気をしっかり吸ってしまいます。
ひび割れがあると空気中のホコリも断熱材の隙間に入り込むため、ますます劣化が進んでしまうのです。
ようやく近年壁の内側に「防湿シート」を施工する必要性が認識されてきましたが、それでも施工が甘いと防水シートが適切に機能せず、壁の中が結露してしまうケースが見られます。
断熱効果が下がった家は屋内のエネルギー効率が悪化するため、住人は高い光熱費を払い続けることになってしまいます。
国を挙げて省エネ住宅化が押し進められている現代、エネルギー効率の悪い家は所有者の肩身が年々狭くなるので、購入したい人は見つかりにくいでしょう。
断熱材を交換するリフォームを行うとしたら、天井を解体しない工事で約7万~20万円、壁を解体してのリフォームだと100万円以上が必要です。
床も壁も剥して断熱リフォームを行なえば1,000万~1,500万円の大工事になってしまいます。
ひび割れを早急に補修し、断熱材の劣化を最小限に留めましょう。
シロアリ被害に遭う
家のひび割れを放置するリスクの5つ目は、シロアリ被害に遭うことです。
シロアリは日が当たらない場所や、風通しの悪い床下など、人目につかない場所の湿った木材を好みます。
ひび割れからの浸水により構造内部の湿気が高い状態が続くと、木材腐朽菌と同様にシロアリも繁殖しやすい環境になるため、注意が必要です。
シロアリ被害のある家は構造部の木材が傷んで倒壊の危険があり、売却価格が安くなってしまうため、高値で売却するには建物の修繕や解体が必須です。
シロアリが発生すると、通常は「駆除」と「リフォーム」をセットで行わなければなりません。
シロアリ駆除にかかる費用は、1坪あたり約11,000円(1㎡あたり約3,300円)が相場です。
シロアリ被害の修理は小規模でも10万円~、被害が大きければ300万円に及ぶケースも少なくありません。
ここに自分でできる診断方法として家にシロアリがいるサインを紹介しますので、チェックしてみましょう。
- 床下や水回りに「蟻道(ぎどう)」があるか
- 壁や床を叩いて空洞音がしないか
- 羽アリがいるか
壁や床の複数箇所を押したり叩いたりしてみて、不自然な歪み方をしたり他と違う音がしたら、シロアリに食われている可能性があります。
また蟻道があって羽アリがいたり、シロアリを捕食するクロアリがいたりした場合も、家にシロアリがいる可能性が高いです。
家のひび割れによる浸水がシロアリの呼び水とならないよう、早い段階でひび割れの補修と浸水有無の点検を行いましょう。
まとめ
今回はひび割れした家の売却方法、高く売却するコツについて解説しました。
一口に家のひび割れと言っても、原因と状況によって補修方法や売却方法が異なります。
内壁のズレのような構造上の強度に関係ないひびならば、売却価格にも影響を及ぼさず、売却もそれほど難しくありません。
しかし基礎の施工不良や不同沈下、広く深いひび割れの場合は、構造体の強度に悪影響を与える恐れがあるため買主に敬遠され、売却は困難です。
保険などを使って根本的な修繕を行っても、売却価格は大きく下がってしまいます。
仮に家のひび割れを補修せず放置したとすると、シロアリ被害や柱の腐食によって傾きや倒壊のリスクが増す一方です。
もしひび割れの家の補修や売却が難しいのであれば、専門の買取業者に買い取ってもらうのがおすすめです。
専門の買取業者であれば、どんな悪条件の家でもそのままの状態で買い取ってくれます。
なぜなら専門の買取業者は事業用や投資用の物件として中古の家を買い取り、独自のノウハウやルートで再生・収益化できるからです。
しかも買取業者が相手の売却なら、売主が契約不適合責任を負う必要もありません。
弊社AlbaLink(アルバリンク)は、一般の人にはなかなか売れない「訳あり物件」を専門に買い取っている買取業者です。
これまで築古住宅や再建築不可物件、不整形地、事故物件など、売れない家や訳あり物件を買い取って再生・再販してきた豊富な実績があります。
どんな家でも買取って収益化できる独自のノウハウがあるので、ひび割れの酷い家でも高値で買取が可能なのです。
弊社の豊富な買取実績は、フジテレビ「イット」をはじめ数々のメディアでも紹介されています。
「売り出したけどなかなか売れない」「仲介を断られた」など、ひび割れした家の売却にお悩みの方は、ぜひ一度弊社へご相談ください。