再建築不可物件とは
再建築不可物件とは、現在建物があっても、これを取り壊して新しい建物を建てることができないと定められている物件のことです。
建築基準法では、都市計画区域と準都市計画区域内における建物は「幅員4m以上の道路に2m以上接しなければならない」と定められています。この決まりを「接道義務」といいますが、この法律ができる以前に建てられた建物や、その地域が都市計画区域に指定される前に建てられた物件のなかには、この接道義務の条件を満たしていない建物・道路があるため、これらが再建築不可物件となってしまうのです。
つまり再建築不可物件とは、都市計画区域と準都市計画区域内で、以下の条件のいずれかに当てはまる物件を指します。
- 道路に接している幅が2m未満
- 接している道路の幅員が4m未満
接道義務は、災害などの緊急時を想定して設けられたルールです。建物が密集した都市計画区域では、道幅が狭いと救急車や消防車といった緊急車両が通行できなくなったり、災害時の避難経路が確保できなくなってしまいます。そこで、緊急時に車両や避難者が安全に通れるスペースを確保するため、一定以上の道幅に接していなければならない、という義務が課されるようになったのです。
また意外なことに、この再建築不可物件は現代でも数多く存在します。
たとえば、総務省による平成30年度の住宅・土地統計調査によると、都市計画区域に指定されている東京23区では、再建築不可物件と疑われる住宅数が約24万戸あると示されています。これは23区全体の住宅のうち約4.9%が再建築不可物件と疑われることになり、いかに再建築不可物件が多いかがおわかりいただけるはずです。
再建築不可物件は増築可能か
再建築不可物件ではその名の通り、一度更地にしてしまうと新たに物件を再建築することはできません。
では、増築や改築は可能かというと、これらも原則NG。厳密には、建築確認申請を必要とするような改築・増築はすべて行うことができません。
再建築不可物件はこうした不都合が生じるため、その土地を安く購入することができるというメリットもあります。しかし、意図せず再建築不可物件を購入してしまうと、再建築はおろか改築すらできないといった事態になってしまいますので、土地を購入する際はこうした記載をしっかりと確認するようにしましょう。
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再建築不可物件ではどこまでリフォーム可能か
先ほど、「再建築不可物件では建築確認申請が必要な増改築はできない」とお伝えしましたが、逆にいえば、建築確認申請が不要な工事であれば通常通り行うことができます。
建築確認申請がいらない工事とは、防火・準防火地域にあたらない地域で、10平方メートル以内の増改築や、1/2以内の修繕・模様替えをするケースに限られます。つまり、ごく小規模なリフォームであれば、申請をせずに行うことができるということです。
逆に、10平方メートルを超える増改築や1/2以上の修繕は、再建築不可物件では行うことができません。この場合、屋根や外壁の全面的な補修などもできないということになります。
なお、もし建築確認申請が必要にもかかわらず、申請をせずリフォームをおこなってしまった場合、最悪取り壊しなどのリスクなども考えられます。再建築不可物件で増築や改築をしたい場合には、ご自身だけで判断せず、かならず専門家にリフォームできるかどうかを査定してもらうようにしましょう。
再建築不可物件でリフォームができる例外とは
再建築不可物件であっても、例外的に大規模な修繕工事ができる場合もあります。
というのも、「4号建築物」と呼ばれる小さな建物はそもそも建築確認申請をする必要がないため、再建築不可物件であってもリフォームを行うことができるのです。
4号建築物の定義については、以下のように定められています。
- 木造なら、2階建て以下かつ床面積が500平方メートル以下のもの
- 木造以外の場合、平屋かつ床面積が200平方メートル以下のもの
接道義務を果たしていない物件はやはり建物自体が小さいことも多く、多くの再建築不可物件はこの「4号建築物」に該当します。こうした物件であれば、申請をしなくても外壁や屋根などの全面的な補修も可能です。
逆に、4号建築物に当てはまらない再建築不可物件については、1/2以内の修繕や10平方メートル以内の増築など、リフォームの幅がかなり限られることになります。
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再建築不可物件で増築したい場合には
ここまで、再建築不可物件では原則増築ができないとお伝えしてきましたが、これからご紹介する3つの手段をとれば、一般的な物件と同じように増築が可能になります。
いずれも、接道義務を果たすことで再建築可能な物件にする解決方法です。さっそく1つずつ見ていきましょう。
セットバックを利用する
まず、建物が道路には一定以上面しているものの、その道路が4m未満の物件では、「セットバック」とよばれる方法で増築ができるようになります。
これは、建物自体を本来の境界線よりも後ろに下げて建設することで、「みなし道路」のスペースを確保することを指します。
道路の向かいに住宅などの建物が建っている場合は、道路をはさんだ両方の建物にセットバックの義務があります。そのため、道路の幅員を2分割し、道路の中心線から2mのところまで建築物を後退させることで、接道義務を果たしているとみなされ、建て替えや増築が可能です。
また、道路をはさんだ向かい側が河川や崖などの場合、向かい側の道路のスペースを変動させることはできません。したがって、こうした場合は「みなし道路」を含めた道路の幅が全体で4mになるように、不足分だけセットバックをしなければなりません。
たとえば、道路の幅員が3mとすると、道幅は1m不足していることになります。この場合、向かい側が宅地なのであれば半分の0.5m、河川や川など向かい側の道幅を動かせない場合は1mのセットバックが必要です。
隣接している土地を購入する
今ある再建築不可物件が、道路に2m以上接していないために接道義務を果たせていないという場合には、隣接している土地を購入してしまうのも一つの手段です。
再建築不可物件の多くは敷地面積も小さいため、隣接している土地もあわせて購入することで結果的に建物の面積も広がり、物件としての価値を上昇させるというメリットにもつながります。
もちろん、このためには隣接する土地の所有者に土地の一部を売却、あるいは貸してもらう必要があります。近隣との交渉になりますので、土地を購入する際は、不動産会社などの専門業者を介して交渉したほうが安心です。
接道義務但し書きの適用を申請する
この記事の前半でも説明したとおり、接道義務は消防車や救急車などの緊急車両が通行できるように制定されたルールです。したがって、緊急車両が通行できるスペースがあれば、接道義務の条件を満たしていなくても再建築不可物件とみなされない場合があります。
以下に示した建築基準法の第43条のなかでは、専門機関で「交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がない」と認められたものについては、接道義務は課されないとされています。
建築物の敷地は、道路(略)に二メートル以上接しなければならない。
~中略~
前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する建築物については、適用しない。一 その敷地が幅員四メートル以上の道(道路に該当するものを除き、避難及び通行の安全上必要な国土交通省令で定める基準に適合するものに限る。)に二メートル以上接する建築物のうち、利用者が少数であるものとしてその用途及び規模に関し国土交通省令で定める基準に適合するもので、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めるもの
二 その敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他の国土交通省令で定める基準に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したもの
ここでいう「広い空地」は、公園や広場などが例に挙げられます。つまり、道路に面していなくても、公園や広場などの広い空間に隣接しており、一定の安全性を確保できると認められる建物については接道義務は適用されないのです。
こうした「接道義務但し書き」の適用を受けるためには、特定行政庁の認可を受ける必要があります。近くに広い空間があっても必ずしも申請が通るとは限りませんので、適用の可能性がある場合は、まず役所や専門家に申請の相談をしてみるとよいでしょう。
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再建築不可物件を増築する場合の注意点
4号建築物を増築する、または前述の方法で接道義務をクリアして増築工事を行う場合、いくつか注意すべき点があります。再建築不可物件を増築する際は、あらかじめこれらを把握した上で増築を検討しましょう。
耐震性の問題
再建築不可物件は、そのほとんどが建築基準法の制定前に建てられた古い建物ばかりです。したがって、現在の耐震基準を満たしていない建物も少なくなく、耐震工事を行いたいと考えている方も多いはずですが、そもそも再建築不可物件の増築そのものが耐震性を下げてしまう可能性があります。
もともと古い建物を増築する場合、既存の建物と増築した部分との間で、耐震性に差が生じてしまうことがあります。一つの建物の中で耐震性に差があると、バランスが崩れて倒壊のリスクが高まってしまうといわれているため、せっかく新しく増築をしても結果的に耐震性に問題が起きかねません。
さらに、既存の建物と増築部分の結合部は、地震が起きた際にひび割れなどが起きやすいため、こういったトラブルにも注意が必要です。
こうしたリスクを避けるため、古い建物を増築する際には、既存の建物の耐震性をあらかじめチェックするようにしましょう。
建築基準法に則った増築が必要
これは再建築不可物件に限ったことではありませんが、増築の際には「建ぺい率」や「容積率」など、建築基準法で定められた規定に注意が必要です。
建ぺい率とは、敷地面積に対する建物面積の割合を指します。防災や衛生面などの観点から、敷地面積いっぱいに建物を建ててはいけないと定められており、その上限は地域や用途によって異なります。
一方の容積率は、敷地面積に対する延べ床面積の割合を指します。同じ建物面積でも、2階建て・3階建て…と階数を積み上げると、どんどん延べ床面積は増えていきますが、これも地域や用途によって上限が設定されています。
つまり、増築といっても保有する敷地内ならいくらでも増築してよいわけではなく、建築基準法で増築できる面積は制限されているのです。
建ぺい率や容積率の基準や計算方法はとても細かく定められているため、自治体や専門業者に依頼して、イメージしている増築が建築基準法に則っているかを必ず確認しましょう。
固定資産税の増加
ここまでにご紹介してきたとおり、再建築不可物件は再建築どころか増改築なども制限がされているため、資産としての価値は低いとみなされ、固定資産税が通常よりも安く設定されています。
しかし、セットバックや隣接する土地の購入などによって、再建築不可物件ではなくなると、再建築や増改築もできるようになりますが、固定資産税も通常通り課されてしまう点に注意しましょう。
増築や再建築のために接道義務をクリアした際には、それらの工事費用に加えて、固定資産税もこれまで以上にかかることを念頭に入れて予算を組むのがおすすめです。
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再建築不可物件を売却するには
そもそも、再建築不可物件は建築基準法において、そのままでは問題のある物件とみなされているからこそ再建築ができないルールになっています。
いま現在、再建築不可物件を所有しているという方は、万が一の非常時に「自分が所有している建物のせいで緊急車両が通れない・避難経路が確保できない」といった、計り知れない大きなトラブルを引き起こしてしまうリスクがあります。
さらに、そうした災害がない日常においても、古く老朽化した物件は空き家になってしまうことが多いもの。いくら空き家になってしまったとしても、固定資産税などの維持費はかかりつづけるうえ、あまりに老朽化が進むと近隣とのトラブルの種にもなりかねません。
こうしたデメリットを踏まえると、再建築不可物件を増改築しながら持ち続けるのではなく、売却してしまうのも賢い手段です。
専門業者に依頼する
いざ「再建築不可物件を売りたい」と考えても、買い手側も先ほどご紹介したようなデメリットを恐れてしまうため、なかなか買い手が見つからないというケースも少なくありません。
そこでおすすめしたいのが、再建築不可物件を専門に取り扱っている業者への相談です。専門業者では同じような事案を多く経験しているため、売却を断られるなどのリスクが非常に低く、一般の不動産会社などに依頼するよりもスムーズに買い取ってもらえます。これまで「再建築不可物件は売れない」と考えていた方も、専門業者であれば売却ができるかもしれません。
物件は資産になる反面、固定資産税やその他の維持費などランニングコストがつきものです。増築などでなんとか所有しつづけるのもよいですが、思い切って売却して、コストだけでなく精神的にもスッキリしたいという方は、増築・改築する前に見積もりだけでも依頼してみてはいかがでしょうか?
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まとめ
再建築不可物件の多くは古い建物で、老朽化が進んでいるにもかかわらず大規模なリフォームができないというジレンマを抱えています。しかし、セットバックをはじめとした対処法によって接道義務をクリアすれば、再建築不可物件であっても増築・改築は十分可能です。
ただし、再建築不可物件の定義や増築時の制限などについては、地域や物件の状況などによって細かく変わってきますので、一人で判断せずにまずは専門業者や自治体に相談してみましょう。
また、増築や再建築の工事、そしてその後の物件の維持には多くのコストがかかります。現在再建築不可物件をお持ちの方は、売却を検討してみるのもおすすめです。
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