連棟式建物とは?
連棟式建物は、複数の住戸が一体になっている建物のことです。
屋根や壁が隣の家とつながっており、柱や梁などの構造部も一体で建築されています。
土地の広さや形状が制約となり、独立した戸建てを複数建てるのが難しい際に、連棟式建物が建てられるケースがあります。
タウンハウスとテラスハウスの違い
連棟式建物には、タウンハウスとテラスハウスの2つがあります。
構造はほとんど同じですが、大きく異なる点として、「敷地が住人ごとに分けられているかどうか」が挙げられます。
タウンハウスの場合、敷地は共有です。
庭や駐車場は共有で住人全員が利用できる形態で、維持費として別途使用料がかかります。
アパートやマンションに近いイメージといえるでしょう。
一方、テラスハウスの場合、敷地は住人ごとに独立しています。
各住人は専用の庭や駐車場が与えられています。
自分の庭や駐車場がある戸建てと同じ感覚で生活することが可能です。
連棟式建物のメリット
連棟式建物は、戸建てと比べて安い価格で購入可能です。
連棟式建物は隣家同士がつながっている状態で建築されます。
戸建てと違い、隣家と柱や壁を共有する設計で建築するため、材料費や工事費を抑えられます。
また、戸建てのように生活できる点もメリットの1つです。
連棟式建物は、マンション・アパートと違い、上下階に住人がいません。
そのため、足音や椅子を引きずる音を過剰に気にする必要はありません。
なお、テラスハウスの場合、各住人に敷地が割り当てられるので、家の前に自分の庭や駐車場を所有できます。
荷物の積み降ろしや自宅前の庭で家庭菜園やガーデニングを楽しむことも可能です。
戸建てと同じような生活ができるうえ、安く購入できるのが連棟式建物の強みといえます。
連棟式建物のデメリット
連棟式建物のデメリットとして、以下の5点が挙げられます。
- 建て替え・解体が難しい
- 住宅ローンが組みにくい
- 売却価格が安くなる
- 日当たり・風通しが悪い
- 隣の部屋からの音が気になる
建て替え・解体が難しい
連棟式建物は、法律上建て替え・解体が自由にできません。
マンション・アパートと同様に連棟式建物には、区分所有法が適用されます。
区分所有法によると、建て替え・解体をする場合、全戸の4/5以上の同意が必要です。
第六十二条
集会においては、区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、建物を取り壊し、かつ、当該建物の敷地若しくはその一部の土地又は当該建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地に新たに建物を建築する旨の決議(以下「建替え決議」という。)をすることができる。引用元:★区分所有法|e-Gov法令検索
戸建てと違い、連棟式建物には住人から同意を得ないと、建て替え・解体できないという制限があります。
また、建て替えによる切り離し工事をする場合、切り離し後の連棟式建物の構造に問題がないか、配慮しなければなりません。
もし、切り離し工事により、雨漏りや壁の亀裂、耐震性の低下など建物に損害を与えた場合、他の住人から損害賠償を請求されるおそれがあります。
過去にテラスハウスの建て替え・切り離しをした事例で、切り離し・建て替えをした物件所有者に対して561万円もの賠償金の請求を認めています。
参照元:判例紹介 11-連棟式建物|一般財団法人 不動産適正取引推進機構
連棟式建物を建て替えたい場合、他の住人の同意のほかに、損害賠償請求へのリスクにも備えなければなりません。
切り離しするときは接道義務を満たすことが必須
切り離し工事する際は、接道義務を満たす必要があります。
建築基準法で定められた幅員4m以上の道路に、敷地が2m以上接していなければならないこと
もし、満たせなくなる場合、工事後に建物の建て替えはできません。
たとえば、以下の連棟式建物の右端にある住戸を切り離す場合、切り離し後の間口(道路に面する敷地の長さ)が2m未満になり、建て替え不可の物件となります。
接道義務を考慮せずに切り離し工事を行うと、建物の老朽化が進んだ際、建て替えができなくなります。
ただし、接道していない場合でも、条件を満たせば建て替えできるケースがあります。
建て替え可能にする方法について知りたい人は、以下の記事も参考にしてください。
連担建築物設計制度を活用して建て替えする
接道義務を満たさない場合は、連担建築物設計制度を活用して、建て替えすることもできます。
連担建築物設計制度とは、自分の土地と隣接した土地を1つの土地としてみなし、接道義務をはじめ建築規制を緩和する制度です。
参照元:連担建築物設計制度|国土交通省 国土技術政策総合研究所
自分の土地が接道義務を満たしていなくても、この制度を適用すれば、隣接した土地もまとめた際に接道義務を満たしていれば、建て替えできます。
ただし、隣接した土地の所有者を全員の同意が必要です。
上記のとおり緩和する制度はあるが、自分の土地が接道義務を満たしていない場合、建て替えのハードルは高いといえます。
住宅ローンが組みにくい
連棟式建物を購入する際、住宅ローンが組みにくいデメリットがあります。
連棟式建物は不動産としての価値が低いからです。
前述したとおり、連棟式建物は建て替え・解体が自由にできません。
自由に扱うことができない物件であることは、市場価値が低くなることにつながります。
なお、銀行をはじめとした金融機関は、借主の返済が滞った際、借主が所有する不動産を売って、貸し出した金額を回収します。
借主が所有する不動産の市場価値が高いほど、借入できるローンの金額は高くなります。
連棟式建物は不動産としての価値が低いため、多額の住宅ローンを金融機関から借り入れるのは難しいでしょう。
最悪の場合、住宅ローンの借り入れができない可能性もあります。
もし、連棟式建物の購入を検討する場合は、自己資金で賄う割合が多くなるかもしれません。
売却価格が安くなる
連棟式建物の売却相場は、一般的な家と比べて、20~30%低くなる傾向にあります。
連棟式建物は、建て替えや解体が自由にできません。
建て替えや解体ができない物件は、市場価値が下がるため、売却価格も低くなる傾向にあります。
前述したとおり、扱いが難しい物件のため、戸建ての相場より低い価格での売買取引になるでしょう。
日当たり・風通しが悪い
連棟式建物は、日当たり・風通しが悪くなりがちです。
連棟式建物は戸建てと違い、複数の住戸が連なっているため、窓を設置できる数が少なくなります。
たとえば、角に位置する住戸の場合は3方向、両側に住戸がある場合は2方向しか窓がつけられません。
窓を設置できる数が少なくなる分、窓から日が差してこないため、家の中が暗くなります。
また、窓がない分、換気の効率が悪くなり、湿気がこもりやすくなります。
窓がないことにより室内の日当たり・風通しが悪くなることで、室内の快適性も悪くなってしまうでしょう。
もし、連棟式建物の購入を希望するなら、室内環境が他の住戸より良い角部屋がおすすめです。
隣の部屋からの音が気になる
隣の部屋からの音が気になってしまうことも、連棟式建物のデメリットの1つです。
戸建てと違い、連棟式建物では左右の部屋から生活音が伝わってくる可能性があります。
隣に人が住んでいるなら、洗濯機をまわす音、ドアの開閉音などが聞こえてくるかもしれません。
隣人の生活音がうるさい場合、ストレスがたまることをはじめ自身の生活の質が下がってしまうでしょう。
また、自分の生活音が隣人に不快感を与えてしまう可能性もあり、隣人との騒音トラブルに発展する可能性もあります。
連棟式建物に住むことを考える場合は、壁は薄くないかどうか確認しましょう。
同時に、夜間に洗濯機を回さない、ドアの開閉を静かにするなどの配慮も必要です。
連棟式建物の5つの売却方法
連棟式建物の売却方法には以下の5つの方法が挙げられます。
- 他の部屋を買い取ってから売却する
- 隣の住人に買い取ってもらう
- 切り離ししてから売却する
- リフォームして売却
- 連棟式建物に精通した不動産会社に売却を依頼する
他の部屋を買い取ってから売却する
連棟式建物の売却方法として、隣家を買い取ってから売却する方法があります。
隣家をすべて買い取れれば、建物全体の所有者は1人のみになります。
所有者が自分1人になれば、他の人の同意なしで建て替えや解体、売却が可能です。
また、隣家を買い取ることで、一戸の大きな物件として資産価値を高めることが可能です。
賃貸としてほかの人に貸し出し、収益を得ることもできます。
ただし、他の人から買い取るために多額の資金を準備しなければなりません。
隣家を買い取れる資金を準備できるなら、検討してもいい手段といえます。
隣の住人に買い取ってもらう
自分が住んでいる連棟式建物を隣の住人に買い取ってもらえるか交渉することも手段の1つです。
前述したとおり、隣家をすべて買い取れれば、建物全体の所有者は1人のみになります。
建て替えや解体もできるうえ、売却も同意なしにできることを隣家の所有者も考えている可能性があります。
ただし、多額の資金が必要なため、相手が資金を用意できない場合は買い取ってくれる可能性は低いでしょう。
他の住人から「今住んでいる家を売ってくれないか」と持ちかけられたら、検討してみましょう。
切り離ししてから売却する
連棟式建物の切り離し工事をしてから売却する方法もあります。
切り離せば、一戸の建物として扱えるため、不動産としての市場価値が高くなります。
そのため、連棟式建物の相場以上の価格での売却が可能になるでしょう。
加えて、住宅ローンの借り入れがしやすくなり、買い手が見つかる可能性も高まります。
ただし、前述したとおり、切り離しするには全戸の4/5以上の同意が必要です。
また、切り離し工事は、およそ100万円~200万円の費用がかかります。
接道義務も満たしている必要があり、切り離しにより接道義務が満たせなくなった場合は、建て替え不可の物件となり、売却価格が下がる原因となります。
所有者の同意、工事費用を出せる、接道義務の3点を満たしていなければ、売却方法の選択肢としてはふさわしくないでしょう。
リフォームして売却
築古で外装、内装の見た目が良くない、老朽化が進んでいて修繕が必要な場合は、売却前にリフォームする方法もあります。
築年数が古いことは変わりませんが、リフォームで劣化している場所を修繕することで買い手の不安感の解消が可能です。
築浅同様に外装・内装がきれいになり、買い手の購入意欲が増すでしょう。
ただし、リフォームには多額の資金が必要になります。
なお、部位別のリフォームの費用相場は以下のとおりです。
畳の交換 | 6~12万円 |
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畳からフローリングに交換 | 15~60万円 |
壁クロスの貼り替え | 6~30万円 |
トイレ全体の改装 | 20~100万円 |
洗面所の改装 | 20~100万円 |
システムバスの交換 | 60~150万円 |
キッチン全体のリフォーム | 80~400万円 |
リビングの改修 | 200~400万円 |
たとえば、キッチン・リビング全体をリフォームをした場合、上記の費用から考えると、300~800万円以上になります。
リフォームすべき箇所を見極めないと、売却価格がリフォーム代金を下回ってしまう可能性があります。
物件のリフォームに関する知識・経験のない人にとっては、リフォームによる建物の売却は難易度が高いといえるでしょう。
なお、実際にリフォームする場合は、管理組合のルールに則ったうえで実施しましょう。
連棟式建物に精通した不動産会社に売却を依頼する
前述した方法をとれない場合は、連棟式建物に精通した不動産会社に売却を依頼しましょう。
連棟式建物に精通した会社は、活用方法について熟知しているため、取引に応じてくれる可能性が高くなります。
連棟式建物に精通しているかどうかは、取り扱い実績があるかどうかで判断しましょう。
切り離しや他の人から買い取ることが難しい場合におすすめの方法です。
なお、不動産会社には、仲介と買取の2種類あります。
上記の違いについて、くわしく知りたい人は以下の記事も参考にしてください。
仲介業者に売却を依頼する
できる限り高値で物件を売却したい場合は、仲介業者がおすすめです。
仲介業者に売却を依頼した場合、需要がある物件なら相場以上の金額で売れる可能性があります。
需要がある物件の特徴の1つとして、築浅の物件が挙げられます。
弊社が実施したアンケートによると、物件は築年数10年以内が好ましいと回答した割合が63.0%にのぼりました。
連棟式建物も同様に、築年数が経過していない物件は高値で売れる可能性があります。
築浅以外の需要がある物件の特徴は以下のとおりです。
- 人気のある駅に近い
- 閑静な住宅街
- スーパーをはじめとした商業施設が近くにある
上記の需要がある物件に当てはまる場合、高く売れる可能性がある仲介がおすすめです。
買取業者に売却する
できる限り早く物件を手放したい場合は、買取業者への売却がおすすめです。
仲介業者の場合、物件の購入希望者を探すところから始まります。
購入希望者が見つからない場合、売却までに数か月以上かかってしまうこともあります。
一方、買取業者の場合は、売買取引成立までの期間はおおよそ1週間から1か月程度です。
売却先は買取業者のため、査定額に納得すれば、すぐに売買契約と引き渡しの手続きに進めます。
売却に手間をかけずに物件を手放したい場合は、買取業者がおすすめです。
なお、弊社アルバリンクも買取業者の1つです。
成約までの日数が仲介より短いことに加え、築年数が経っている連棟式建物の買取もしております。
以下は、実際に弊社が買い取った連棟式建物の詳細です。
所在地 | 東京都世田谷区 |
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築年数 | 55年 |
構造 | 木造 |
築年数が経過していましたが、上記の物件は700万円で買取いたしました。
このほかにも、再建築不可物件をはじめさまざまな需要のない物件を買い取ってきました。
需要がないため、他社の不動産会社から断られた場合は、一度アルバリンクにお問合せください。
まとめ
この記事では、連棟式建物の特徴と売却方法について解説しました。
連棟式建物は、戸建てと同じ感覚で生活できるうえ、購入価格は戸建てより安いのがメリットです。
一方、建て替え・解体をするには他の住人の同意が必要なうえ、住宅ローンが借りづらいといった点も挙げられます。
また、日当たり・風通しなどの生活環境が悪い可能性もあります。
なお、連棟式建物を売却する場合は、以下の方法が挙げられます。
-
- 他の部屋を買い取ってから売却する
- 隣の住人に買い取ってもらう
- 切り離ししてから売却する
- リフォームして売却
- 連棟式建物に精通した不動産会社に売却を依頼する
上記の中で最も手間がかからない方法は、「不動産会社に依頼する」ことといえます。
ただし、仲介業者に依頼する場合は、築浅をはじめ需要が大きい物件でない限り、早期の売却は難しいでしょう。
築古をはじめ需要が小さい物件だが、できる限り早く売りたい人は、買取業者への売却がおすすめです。
もし、築古をはじめ需要がない連棟式建物の売却を検討しているなら、弊社アルバリンクにご相談ください。
連棟式建物の買取実績があるほか、築古物件をはじめ需要がない物件でも問題なく買い取っております。
連投式建物の処分にお困りの人は、ぜひアルバリンクにご連絡ください。