借地権更新料とは?前提として借地権の概要を理解しよう
借地権とは、他人が所有する土地を借りて、その上に建物を建てる権利です。
借地権者(土地を借りる人)は、毎月・半年に1回・1年に1回など、当事者間で定めた周期で地主に地代を支払います。
地代と別途で支払うものに「借地権の更新料」があります。借地権の更新料とは、借地権の契約更新の際に地主へ支払うお金です。
現行法の「普通借地権」では、存続期間は30年・1回目の更新で20年・2回目以降の更新は10年といった周期で更新料が発生します。
借地権の更新料は法的な支払い義務はありませんが、支払う慣習のある地域が多い傾向にあります。
借地権の概要・種類については以下の記事で詳しく解説しています。
借地権更新料の支払いに法的な義務はない
借地権の更新料を支払うのは、法律上の義務ではありません。
借地権について取り決めがされている法律である「借地借家法」には、更新料についての規定がないからです。
しかし、地域の慣習で支払うのが通例になっていたり、地主との関係を良好に保つために支払っていたりするケースは多いです。
実際に、東京地裁の判例も、借地権の更新料の支払い請求を棄却した事例がありながらも「更新料が支払われるケースは実務上よく見られる」と公表しています。
参照元:不動産適正取引推進機構|東京地裁 平成25年10月30日
たとえば、地主との関係を保つ目的は、借地権付き建物のリフォームや建て替え、売却などをする際に許可をもらいやすくする狙いもあります。
法律上「建て替えに地主の許可が必要」といった明文はありませんが、一般的な借地契約には、「増改築禁止特約」が設けられています。
このように、地主との信頼関係構築のため、あえて「支払いたい」と考える借地人も多いのです。
借地権更新料の支払いが必要な3つのケース
前述したように、法律上は借地権の更新料に支払い義務はなく、借地人の意向によって支払うケースが多い傾向にあります。
しかし、借地人の意志を問わず、更新料の支払いが必要になるケースも存在します。
借地権更新料の支払いが必要な3つのケースは以下のとおりです。
- 賃貸借契約書に借地権更新料について明記されている
- 借地権更新料の支払いについて地主と合意している
- 過去に借地権更新料を支払っている経緯がある
どのような状況だと更新料の支払い義務が生じるのか、詳しく見ていきましょう。
賃貸借契約書に借地権更新料について明記されている
更新料の支払いは任意ですが、賃貸借契約書に借地権の更新料について明記されている場合は例外です。
賃貸借契約書に更新料の支払いについて記載があり、なおかつ地主・借地人の押印がある場合、両者の合意があるとみなされるからです。
通常、借地借家法では借地人が土地を利用する限り更新はできます。
借地借家法第5条には、借地契約の更新について以下のように明記されています。
第五条 借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者が契約の更新を請求したときは、建物がある場合に限り、前条の規定によるもののほか、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、借地権設定者が遅滞なく異議を述べたときは、この限りでない。
2 借地権の存続期間が満了した後、借地権者が土地の使用を継続するときも、建物がある場合に限り、前項と同様とする。
つまり、「建物が壊れてないなら、借地人が希望する限り住み続けてよい」という内容です。
しかし、賃貸借契約書に更新料について記載があるのに支払わない場合、民法第541条による債務不履行が成立し、借地契約が解約される恐れがあります。
契約によって約束を交わしていた義務を果たさないこと
借地契約が解除になると、家屋を解体して更地にした状態で土地を地主へ返却しなければなりません。
借地を継続的に利用したい場合、契約解除にならぬよう、賃貸借契約書に準じて更新料を支払う必要があります。
借地権更新料の支払いについて地主と合意している
賃貸借契約書に更新料について明記されていなくても、地主・借地人の双方の合意がなされていれば、支払い義務が発生します。
支払いの合意は、契約書で交わすよりも対抗力は弱くなるものの、口頭で行われた場合でも一定の力を持ちます。
更新料の支払いについて契約書に記載がなくても、双方の取り決めによって支払い義務が生じる可能性がある点は留意しましょう。
過去に借地権更新料を支払っている経緯がある
過去に借地権の更新料を支払っている経緯がある場合、支払い義務が生じる可能性があります。
これまで継続して支払っているのなら、将来の更新料についても、慣例として支払うべきと捉えられる可能性が高くなるからです。
たとえば、賃貸借契約書に記載がなくても、これまで何度も更新料を支払っていて、かつ領収書の写しまで残っている場合、支払い義務が発生する可能性があります。
更新料の支払いについて揉めないためにも、支払いをやめる旨を明確に伝えておかなければ、トラブルに発展しやすくなります。
借地権更新料が払えない時は契約解除される
借地権更新料が払えない場合、契約解除される可能性が高まります。
更新料の支払いについて、当事者間で取り決めがあるにもかかわらず払わないのは、債務不履行に抵触するためです。
実際に、借地権の更新の際に、更新料を支払う旨と金額について取り決めがあったのに払わず、借地契約が解除された事例があります。
参照元:裁判所| 更新料の支払義務の不履行を理由として土地賃貸借契約の解除が認められた事例
債務不履行によって借地契約が解除になると、借地人は建物を除去して土地を返却しなければなりません。
建物の解体費用は、木造住宅なら1坪あたり3万円〜4万円であるため、戸建て住宅だと90万円〜120万円程度かかります。
当然、建物の解体費用は地主へ借地人負担であるため、なんらかの形で資金調達して支払う必要があります。
借地権更新料が払えない時の4つの対処法
前述したように、更新料の支払いに法的な縛りはないものの、地主・借地人のこれまでの経緯などによって支払い義務は生じます。
債務不履行の成立によって借地契約が解除されないよう、更新料が支払えない時は早急な対処が必要です。
この章では、借地権の更新料が払えない時の以下4つの対処法について紹介します。
- 更新料が高すぎる場合は値下げ交渉を行う
- 更新料を分割して支払う
- 支払い期日を延ばしてもらう
- 借地権を売却する
更新料が高すぎる場合は値下げ交渉を行う
地主から提示されている更新料が高すぎる場合は値下げ交渉を行いましょう。
相場価格よりかけ離れた更新料を請求されている場合には支払い義務はなく、値下げ交渉も可能です。相場とかけ離れている根拠を地主へ丁寧に説明し、更新料の減額をお願いしましょう。
ただし、請求された更新料が妥当な金額である場合、値下げ交渉を行えない点は注意が必要です。
更新料の相場は借地権価格の3~5%が目安
借地権の更新料の相場は、借地権価格の3〜5%が一般的には目安とされています。
そのほか、以下のような要件で更新料の金額は変動します。
- 周辺の更地価格
- 都心部・地方部などの地域的な相場
- 契約締結に至った経緯
- 地代などを含む契約内容
- 過去数年間の地価上昇率
これらを加味して、借地権の更新における金額は、地主・借地人の合意で決定されます。
借地権更新料の計算方法
借地権の更新料の計算方法は、以下のとおりです。
なお、ここでは前述した借地権価格3〜5%のうち、5%を例に挙げて計算します。借地権の更新料を導き出すには、更地価格を算出する必要があります。
更地価格は国税庁が毎年公示する路線価にて確認可能です。
参照元:国税庁|路線価図・評価倍率表
ここでは、路線価30万円・土地の面積100㎡・借地権割合60%のケースで、計算例を見ていきましょう。
更地価格の求め方:路線価 × 土地の面積 × 1.25 より、
30万円 × 100㎡ × 1.25 = 3,750万円
更新料の求め方:更地価格 × 借地権割合 × 5% より、
3,750万円 × 60% × 5% = 112万5,000円
このように、借地権の更新料は112万5,000円と算出できました。
借地権の更新料は地主・借地人の同意の元、最終的に決定されるので、更新料の相場は参考値として捉えておきましょう。
借地権の更新料の相場と計算方法については、以下の記事でも詳しく解説しています。
更新料の金額で揉めてトラブルに発展しやすい
更新料の金額設定に折り合いがつかず、トラブルに発展するケースは珍しくありません。
契約書に更新料の支払いについて記載があっても、金額については「相当の更新料」と抽象的に表記されることが多く、認識にズレが生じるからです。
たとえば、「路線価を基準にした更新料」といった記載の場合、路線価を確認した日時や計算式によって算出する金額が異なります。
路線価を参考にするなら、「更新日である7月1日時点での路線価に、土地の面積を乗じた金額の5%の更新料」というように明確な記載がなければ、トラブルは生じやすいでしょう。
借地権の更新料のほか、地主・借地人で紛争に陥りやすいケースを以下で解説しているので、興味がある方はお読みください。
更新料を分割して支払う
更新料が払えない場合、分割して支払う対処法もあります。
借地権の更新料は更新日の前月、もしくは更新月に地代と一緒に支払うことが多いです。
ただし、借地権の更新料は100万円を超えるのも珍しくないため、分割払いを採用するケースもあります。
更新料を分割払いにする際は、分割払いの回数や金額などを地主と相談し、支払い計画を立てましょう。
支払い期日を延ばしてもらう
更新料の支払い期日を延ばしてもらうのも一つの手段です。
借地権の更新料の支払い期日にまとまったお金を用意するのが難しい場合、支払いの目処が立つ日にちを伝えましょう。
なお、支払い期日を延ばす交渉は「支払う意思はある」ということを十分に伝える必要があります。
借地権を売却する
更新料が払えない場合、借地権を売却するのも有効な手段です。
借地権付き建物を売却すれば、更新料を支払う必要がなくなります。かつ、借地権を売却すると住み替えが必要になりますが、売却益を費用の一部に充てることも可能です。
今後、定期的に訪れる更新料の支払いもなくなり、リフォームなどを行う度に地主に許可をもらう煩わしさからも解放されます。
現在住んでいる家ならば、すぐに決断するのは難しいかと思いますが、選択肢の一つとして念頭に置いておきましょう。
借地権の売却方法には、仲介・買取の2つがあり、それぞれの違いは以下のとおりです。
- 仲介業者
- 売主・買主の間に入って売買契約をサポートする業者。不動産サイトなどを駆使して幅広く購入希望者を募り、成約につながるよう手伝ってもらえる
- 買取業者
- 売主の物件を直接買い取る業者。業者自身が買主となり、売主の不動産を現況買取する
仲介業者は、一般の買主に向けて販促活動を行い、購入希望者が多ければ高値で売りやすい点がメリットです。
ただし、あくまで売却活動のサポートをする業者であるため、売主がリフォーム費用などを負担して不動産を商品化しておく必要があります。
一方で、買取業者は、リフォームなどの再生を施して投資家など第三者に再販する目的で、不動産を直接買い取ります。
商品化コストが差し引かれる分、仲介業者よりも売却額が安くなりますが、現況買取であるため、売主が手間や費用をかけずに売却できるのが特徴です。
仲介・買取の違いについては以下の記事で詳しく解説しています。
借地権付き建物の場合、どちらが適しているかというと専門の買取業者です。
その理由を、それぞれの特徴を解説しながらお伝えします。
仲介業者に依頼しても売れにくい
借地権付き建物は、仲介業者に売却を依頼しても売れにくいです。
なぜなら、借地権付き建物は土地の所有者が地主であるため、利用制限がある上にトラブルに発展しやすいからです。
たとえば、建て替えや増改築の際も地主の許可が必要になり、高額な更新料を請求される可能性があります。
安くない金額を払って購入したマイホームでも、地主による用途の制限があり、なおかつ地代や更新料といったランニングコストもかかるため、借地権付き建物は市場で人気がありません。
くわえて、第三者に売却する場合は、売却先が業者・個人を問わず、地主の承諾を得ることが前提になります。
借地権付き建物の売却は、譲渡承諾料や売却方法などを地主と交渉しなければならず、仲介役に専門知識・交渉力が求められます。
借地権を第三者に名義変更する際、地主に許可をもらう代わりに支払う金銭。名義書換料とも呼ばれる
借地権付き建物は、買い手からも人気がない上に、扱える業者も限定されるため、仲介業者に依頼しても売れにくいのです。
借地権のように、複雑な権利関係を持った不動産は、次に解説する専門の買取業者への売却がおすすめです。
専門の買取業者なら問題なく買い取ってくれる
借地権付き建物は、専門の買取業者なら問題なく買い取ってもらえます。
専門の買取業者であれば、借地権付き建物を売却するために、借地人が地主に相談・交渉をする必要がありません。
専門の買取業者は、借地権をはじめとした複雑な権利関係を抱える物件の活用ノウハウに長けているからです。前述したような譲渡承諾料の交渉も地主側の立場を理解しながら交渉できるので、問題なく売却できます。
今後、更新料や地代などの支払い義務からも解放されるので、長期的に家計にとってもプラスになるでしょう。
「更新料の支払いがつらい」「地主と交渉する自信がない」といった方は借地権付き建物を取り扱う専門の買取業者への売却がおすすめです。
なお、弊社AlbaLink(アルバリンク)は借地権付き建物に強い買取業者です。
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まとめ
借地権の更新料は法律上、支払い義務がないものの、地主・借地人の間の取り決めによっては、支払う必要があります。
更新料を支払う約束があったにもかかわらず、支払いをしなかった場合、契約解除となる可能性があるので、地主への慎重な対応が必要です。
今後も定期的に訪れる更新料の支払いや、土地の利用制限による煩わしさから解放されたい方は、専門の買取業者に売却しましょう。
なお、弊社AlbaLink(アルバリンク)は借地権付き建物の取り扱いに強い買取業者です。
借地権付き建物をはじめとした訳あり不動産を数多く扱う弊社なら、借地人が手間や費用を一切かけず、丸投げする形で借地権を売却できます。
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