空き家税とは
空き家税とは、京都市において2026年以降に要件を満たす空き家や別荘などに課される税金です。
なお、正式名称は「非居住住宅利活用促進税」です。
導入の背景には、京都市の人口減少があり、2015年から2040年の間で約13万人減少すると試算されています。
参照元:「セカンドハウス所有者等への適正な負担の在り方」に関する現状|京都市
人口減少の要因として住宅価格の高騰による若年層・子育て層の近隣都市への流出が挙げられます。
上記の状況を改善するため、空き家を市場に流通させ、若年層・子育て層の居住を促進することが空き家税導入の狙いの1つです。
京都市の空き家税が空き家の増加防止と活用促進の効果が見られた場合、他の自治体でも同様の税制度が創設される可能性があります。
空き家税の制度概要
ここからは、京都市の空き家税について、対象となる住宅と適用される税率について解説していきます。
対象となる住宅の要件
空き家税は、京都市内の市街化区域内に所在する生活の本拠地として使っていない住宅が対象です。
すでに街の整備が進められている市街地と10年以内に計画的に市街地にする区域
生活の本拠地として使われているかどうかは、住民票の有無ではなく、実際に住んでいるかどうかで判断されます。
具体的には、以下の物件が空き家税の課税対象となります。
- 空き家
- 別荘
- セカンドハウス(仕事や生活のもう一つの拠点となる家)
- 入居者のいない賃貸物件
対象外となる住宅の要件
前述した対象住宅の要件に当てはまる場合でも、以下を満たす場合は空き家税の課税対象外です。
- 住宅の固定資産税評価額が20万円(導入当初5年間は100万円)未満
- 賃貸または売却を予定している住宅(募集・販売開始から1年以内)
- 指定京町家をはじめ歴史的価値のある住宅
- 事業用に供している住宅(事業用賃貸物件等)
1の要件は、老朽化した空き家をはじめ家としての価値が低く、「売りたくても売れない」住宅に対しては課税されないことを意味します。
また、2の要件を定めることで、「空き家の買い手・借り手を探している」人に対して猶予を設け、空き家活用の妨げにならないように配慮しています。
なお、所有している家が課税対象かどうかは、京都市の担当部署に確認しましょう。
適用される税率
空き家税は、「家屋価値割」と「立地床面積割」それぞれの税額を計算して、足し合わせた金額が空き家税の納税額となります。
「家屋価値割」と「立地床面積割」の計算式はそれぞれ以下のとおりです。
家屋の固定資産税評価額×0.7%
土地1㎡あたりの固定資産税評価額×家屋の床面積×税率(0.15~0.6%)
なお、立地床面積割の税率は、家屋の固定資産税評価額に応じて変わります。
固定資産税評価額が700万円以上900万円未満:0.3%
固定資産税評価額が900万円以上:0.6%
空き家税の計算例
実際に空き家税がどのくらいの金額になるのか、確認していきましょう。
以下の家屋に対してかかる空き家税の金額を算出していきます。
固定資産税評価額:250万円
床面積:100㎡土地
固定資産税評価額:1,800万円
土地面積:100㎡
家屋の固定資産税評価額は250万円のため、「立地床面積割」の税率は0.15%が適用されます。
したがって、空き家税の税額(年間)は以下のとおりです。
立地床面積割:18万円×100㎡×0.15%=2.7万円
空き家税:1.75万円+2.7万円=4.45万円
空き家税以外にかかる税金
活用していない空き家を持ち続けると、空き家税以外に以下の税金もかかってきます。
- 固定資産税
- 都市計画税
固定資産税
固定資産税は毎年1月1日時点で、土地や家屋を持っている人に自治体から課される税金です。
固定資産税の税額の計算式は以下のとおりです。
なお、税率は原則1.4%ですが、自治体ごとに必要に応じて異なる税率を条例で定められます。
また、家屋が建っている土地に対しては、税額を軽減できる特例が適用可能です。
上記特例が適用されると固定資産税は以下のように減額されます。
区分 | 固定資産税 |
---|---|
200㎡以下の部分 | 価格×1/6 |
200㎡を超える部分 | 価格×1/3 |
多くの自治体では、納税通知書を毎年4~5月に発送します。
固定資産税は1年分の税額を4回に分けて納付可能で、納期は4月、7月、12月、2月です。
空き家を放置していると固定資産税が6倍に
空き家を放置し、特定空き家に指定されると、土地に対する固定資産税が6倍になるおそれがあります。
特定空き家は、以下のいずれかに当てはまる状態にある場合に指定されます。
- 倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
- 衛生上有害となるおそれのある状態
- 景観を損なっている状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
参照元:空家等対策の推進に関する特別措置法|e-Gov法令検索
具体的には、老朽化により倒壊しそうな空き家、ゴミが放置されて衛生環境が悪い状態の空き家などが対象です。
特定空き家に指定された後、改善が見られない場合、固定資産税が軽減される特例の対象外となります。
特例の対象外となった際は、最大で6倍もの税金が増えます。
たとえば、150㎡の土地に家が建っている場合、土地の固定資産税は以下のとおりです。
固定資産税:1,500万円×1/6×1.4%=3.5万円
特定空き家に指定され、固定資産税が軽減される特例の対象外となると、上記の場合は6倍の21万円まで増額されます。
管理せずに家の状態を悪化させると、固定資産税の負担が重くなってしまいます。
都市計画税
都市計画税は毎年1月1日時点で、市街化区域内に土地や家屋を持っている人に自治体から課される税金です。
固定資産税の税額の計算式は以下のとおりです。
税率は自治体ごとに異なりますが、上限0.3%で、これを超えることはありません。
また、家屋が建っている土地に対しては、税額を軽減できる特例が適用可能です。
上記特例が適用されると都市計画税は以下のように減額されます。
区分 | 固定資産税 |
---|---|
200㎡以下の部分 | 価格×1/3 |
200㎡を超える部分 | 価格×2/3 |
納税額は固定資産税の納税通知書と同じ紙面に記載されており、固定資産税とあわせて納付します。
空き家の放置リスクは空き家税以外にもある
空き家を活用しないまま放置していると、空き家税をはじめとした税負担のほかに以下のリスクがあります。
- 老朽化による倒壊リスク
- 不法侵入による犯罪リスク
- 放火による火災リスク
空き家の管理を怠ると、家の劣化や景観の悪化につながるため、上記リスクを抱えることになります。
その結果、近隣住民に迷惑をかけることになり、最悪の場合、損害賠償を請求されるかもしれません。
使わない家の放置は、税負担だけでなく、近隣住民へ被害を与えることになります。
空き家を放置した際のリスクについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
空き家に関する悩みは「空き家相談員」へ
空き家の売却・活用を考えている人のために、「空き家相談員制度」があります。
「空き家相談員制度」は、相続や家の解体、売却など空き家に関する相談を無料で受け付けてくれる制度です。
京都市では、区役所・支所を会場とした無料相談会をほぼ毎月開催しています。
なお必要に応じて、空き家の活用に対して助言してくれる専門家(建築士、相談員)を無料で派遣してくれます。
空き家相談員へ依頼した人からは高評価の声が多く、利用者の96.3%が「参考になった」と回答していました。
参照元:京都市空き家対策室
空き家の活用について、何をしていいのか分からない場合は利用をおすすめします。
空き家税への4つの対策法
空き家税や固定資産税の支払いを回避するためには、空き家をはじめ使っていない家を活用するか、処分する必要があります。
ここでは、空き家税への対策法を4つ紹介します。
- 不動産仲介で売却する
- 賃貸に出す
- 空き家マッチングサイトに登録する
- 不動産買取業者に売却する
不動産仲介で売却する
1つ目の対策法は、空き家を仲介で売却する方法です。
課税対象である家を売却すれば、税金を納める必要がなくなります。
京都市のように物件に対する需要があるが、供給数が少ない場合、高値で売れる可能性があります。
ただし、築年数が経過した物件は買い手が見つかりにくいかもしれません。
弊社が実施したアンケート結果によると、不動産を購入する際、「築10年以内がベスト」と回答した割合が63.0%でした。
なお、築30年を超えても良いと回答した割合は、わずか10.0%でした。
築年数が経っている場合、需要が高い場所でも買い手の数は少なくなるでしょう。
築年数があまり経過していない物件かつ利用していない空き家があるなら、仲介での売却がおすすめです。
更地にして売却する
築年数が経過し、劣化が進んでいる場合、更地にしたほうが買い手が付きやすい可能性があります。
更地にすれば、課税対象である家がなくなるため、空き家税を回避可能です。
また、更地の場合、建物があるときと比べて、買主の活用の幅が広がるため、買い手が見つかりやすくなる点もメリットの1つです。
ただし、固定資産税・都市計画税の軽減措置を適用できなくなります。
更地のまま売れずに所有していると、前述した特例が適用されず、固定資産税の負担が6倍になります。
更地が売れなかった場合、所有し続けるとかえって税金の負担が重くなることに注意が必要です。
賃貸に出す
空き家税対策として、賃貸に出すことも挙げられます。
賃貸に出すことによっても、空き家税の課税対象から外れます。
入居者がいれば、収入が発生するのもメリットの1つです。
ただし、賃貸に出すには、入居希望者が入居してくれるような内装に整えなければなりません。
物件の劣化が進んでいた場合、リフォームに多額の費用がかかる可能性があります。
もし、入居者が見つからなかった場合、リフォームをはじめとした初期投資を回収できずに赤字になってしまいます。
なお、1年以内に入居者が見つからなかった際は、賃貸住宅でも課税対象です。
知識がない人は安易に賃貸経営に手を出すのはやめるべきでしょう。
空き家マッチングサイトに登録する
空き家のマッチングサイトに登録し、譲り受けてくれる人を探すのも手段の1つです。
空き家マッチングサイトとは、空き家の購入希望者と売却したい人をつなげる目的で運営されているサービスです。
具体的には、各自治体が運営している空き家バンク、家いちばや空き家ゲートウェイなど民間企業が運営するサービスが挙げられます。
空き家マッチングサイトでは、一般の不動産会社が取り扱わない物件も登録可能です。
マッチングサイトを見る人は、物件状態が悪くても安く手に入れたい人が見るため、売れなかった物件でも手放せる可能性があります。
ただし、仲介業者が間に入ってサポートしてくれないケースがほとんどです。
契約書作成をはじめ契約締結や引き渡しまで、原則すべて自分で手続きを進めなければなりません。
なお、空き家バンクの場合、自治体と提携している不動産仲介会社を紹介してくれ、手続きをサポートしてくれます。
売れない物件を手放したい場合に、活用を検討しましょう。
無償で譲渡する
空き家マッチングサイトの中には、売り出し価格0円として登録できるサイトもあります。
購入希望者は物件を0円で譲ってもらえるため、リフォームに資金を回すことが可能です。
そのため、買い手が見つかりやすくなる可能性が高まります。
売り出し価格0円として登録できるサイトには、自治体運営の0円空き家バンクや「みんなの0円物件」が挙げられます。
参照元:0円空家バンク|奥多摩町
ただし、無償譲渡の場合は仲介手数料が発生しないので、仲介業者が間に入ったサポートを受けられません。
自分で不動産取引を進められる知識がある人なら、おすすめの手段です。
不動産買取業者に売却する
築年数が経過している、劣化が進んでいる家なら、買取業者へ売却するのも手段の1つです。
買取業者はリフォーム前提で家を買取、再販して利益を上げています。
そのため、物件の状態が悪くても、買い取ってくれる可能性があります。
また、査定価格に納得すれば、1週間~1か月程度で処分することも可能です。
ただし、売却代金は相場の7割程度と低くなる傾向にあります。
リフォームが必要な箇所が多い場合、さらに価格が下がることもあるでしょう。
高く売ることよりも、家をすぐに処分したいと考えている方におすすめの方法です。
なお、アルバリンクも劣化が進んだ空き家をはじめ買い手がつかない家を買い取っている不動産買取業者です。
築年数40年以上の家や雨漏り・シロアリ被害のある家などの買い手が見つからない空き家を買い取ってきました。
また、リフォームをはじめ再販にかかるコストを抑えるノウハウがあるため、高額買取も可能です。
他社から断られた空き家や売りに出しても買い手が見つからない家をお持ちの方は、一度アルバリンクにご相談ください。
まとめ
この記事では、京都市の空き家税の制度概要と空き家税への対策法を解説しました。
空き家税の課税対象は、空き家や別荘など生活の本拠地として使われていない家です。
なお、空き家税の創設目的は、空き家の活用促進による空き家の増加と人口減少の防止です。
空き家税の導入が空き家の増加防止に一定の効果があった際は、他の自治体も導入する可能性があります。
また、空き家税以外にも、空き家所有者には固定資産税・都市計画税も課されます。
税金の負担が重い場合は、空き家を手放すことも検討しましょう。
なお、空き家をできるだけ早く手放したいなら、アルバリンクに買取依頼するのがおすすめです。
査定価格に納得いただければ、買取の依頼から1週間~1か月程度での家の処分も可能です。
これまでに雨漏りやシロアリ被害のある家など老朽化が進んだ家を多数買い取ってきた実績があります。
空き家税創設をきっかけに空き家の処分を考え始めた際は、アルバリンクへお問合せください。