共有者全員持分全部移転とは持分を1つにまとめて移転すること
共有者全員持分全部移転とは、共有者全員の持分を1つにまとめて移転する登記手続きのことです。
たとえば、1つの不動産を3人の共有持分として所有しているケースで共有者全員で協力して第三者に売却する際に、それぞれの持分全部をまとめて移転する場合に使用されます。
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なお、共有名義・共有持分については、以下の記事で詳しく解説しています。
所有権移転との違い
共有者全員持分全部移転と所有権移転との違いは、権利を譲渡する人が1人であるか、複数であるかという点です。
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しかし、権利を譲渡する人が複数であっても、別々に売却した場合などは共有者全員持分全部移転には該当せず、それぞれが所有権移転することになります。
持分一部移転とは
似た言葉として持分一部移転がありますが、所有権すべてを移転するわけではなく、持分の一部を移転することです。
たとえば、以下のように持分を分ける場合が該当します。
所有者 | 持分 |
---|---|
A | 2/3 |
B | 1/3 |
↓
所有者 | 持分 |
---|---|
A | 1/2 |
B | 1/6 |
C | 1/6 |
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上記の例では、Bの持分1/3の半分をCに移転しており、共有持分の一部を移転する際に使用されます。
また、所有権一部移転は、単独名義での所有者が持分の一部を移転する際に使用される用語です。
不動産ごとに持分が違う場合でも一括申請は可能
複数の不動産を共有で所有している場合で、それぞれの持分が異なる場合であっても共有者全員持分全部移転登記を一括申請することが可能です。
たとえば、不動産Xと不動産YをAとBで共有していた場合で考えてみましょう。
不動産Xの持分がA1/2、B1/2、不動産Yの持分がA2/3、B1/3であった場合で、2つの不動産を同時にCに売却するケースが該当します。
上記のように各不動産の共有者が同じで登記を行う原因と日付も同じ場合に認められます。
持分移転登記が必要な8つのケース
持分移転登記が必要になるのは、以下の8つのケースです。
それぞれ詳しく解説します。
持分を売買する場合
共有持分を売買する場合は所有者が変更になるため、持分移転登記が必要です。
たとえば、所有する共有持分を売却する場合は、新しい所有者を確定させるために登記手続きが必要になります。
なお、申請書には共有持分を売却する人を登記義務者、購入する人を登記権利者として記載します。
持分を相続する場合
被相続人の所有していた共有持分が相続財産にある場合は、持分移転登記が必要になります。
たとえば、夫婦共有で住宅を購入していた場合で夫が亡くなったケースで考えてみましょう。
持分 | 被相続人1/2、妻1/2 |
---|---|
相続人 | 妻、子2人 |
仮に民法に定める法定相続分に従って相続する場合は、妻1/2と子が1/4ずつ相続されるため、被相続人の持分に対して持分移転登記が必要です。
妻は「1/2+1/4=3/4」、子は「1/2×1/4=1/8」ずつ持分を所有することになります。
持分を放棄する場合
共有持分を放棄する場合も持分移転登記が必要です。
共有持分の放棄とは、共有名義不動産の持分を放棄して他の共有者に分配する手続きのことです。
たとえば、兄弟姉妹3人で不動産を所有している場合で、長男が50%、長女が30%、次男が20%の持分があるケースで考えてみましょう。
長男が自分の持分を放棄すると、50%の持分が持分割合の比率に合わせて分配されることになり、長女60%と次男40%の持分になります。
共有不動産の持分を放棄する場合は、持分放棄者と持分取得者が共同で申請する必要があります。
共有物の分割をする場合
1つの不動産を複数人で分割する場合も持分移転登記が必要になります。
たとえば、親の所有していた不動産を兄弟2人で相続する際は、それぞれの名義で登記手続きをします。
持分を贈与する場合
共有持分を贈与する場合も持分移転登記が必要です。
売買の際と同様に所有権者が変更になるため、登記手続きが必要になります。
離婚で持分を財産分与する場合
離婚する際に持分を財産分与する場合は、持分移転登記が必要になります。
婚姻中に購入した住宅は財産となるため、夫婦で分け合う必要がありますが、物理的には分けられません。
そのため、売却して分割するケースもありますが、夫婦のどちらかが住み続ける場合は、権利関係を解消するために持分を財産分与します。
ただし、登記手続きは、離婚後に協力して申請する必要があるため、離婚の原因によっては相手が協力してくれない可能性があるでしょう。
離婚の話し合いで持分を財産分与することの合意がされた場合は、離婚協議書を作成して置くことをおすすめします。
登記の内容が間違っていた場合
登記の内容が間違っていた場合も持分移転登記が必要です。
たとえば、兄弟2人で1/2ずつの持分で1つの不動産を相続した時で、間違って長男の単独名義で登記申請した場合が考えられます。
真正な登記名義の回復を行って、本来の正しい持分で登記することになります。
真正な登記名義の回復とは、不動産の名義人が間違って登記されている場合で、本来の権利者の名義にするための移転登記をする際に使用する登記原因のことです。
なお、正しい登記に修正する手段として、所有権更正登記を申請することも可能です。
所有権更正登記とは、所有権更正登記とは錯誤などによって登記記録に相違がある場合、解消するために行われる登記のことです。
共有者が死亡した場合
共有者が死亡した場合で相続人がいない時は、持分を放棄する場合と同様に持分移転登記が必要になります。
戸籍上の相続人がいない状況で共有者が亡くなった場合は、他の共有者の持分となるため、亡くなった共有者の持分を他の共有者に移転登記することになるのです。
しかし、特別縁故者が現れて財産分与の申立てを家庭裁判所に行って認められた場合は特別縁故者に持分移転登記することになります。
持分移転登記申請手続きを自分で行う流れ
持分移転登記申請手続きは司法書士などの専門家に依頼することが一般的ですが、自分で手続きすることも可能です。
持分移転登記申請手続きを自分で行う流れは、以下のとおりです。
順序通りに詳しく解説します。
必要書類を準備する
まず、持分移転登記申請手続きに必要な書類を準備します。
役所などで取得する有効期限がある書類も存在するので、具体的な必要書類については後述します。
管轄の法務局に申請する
不動産を管轄している法務局に申請しますが、方法は以下の3つです。
- 直接法務局の窓口で申請する
- オンラインで申請する
- 郵送で申請する
郵送で行った場合で不備や漏れがある時は申請を却下される可能性があるため、不明点がある場合は直接法務局の窓口で申請することをおすすめします。
なお、法務局のホームページには提出前のチェックリストをダウンロードできるため、活用しましょう。
登記識別情報が発行される
法務局に申請後、問題がなければ1~2週間で登記手続きが完了します。
新しい登記識別情報が発行されるため、原則本人が法務局に行って受け取ります。
郵送でも受取れますが、あらかじめ申請書に記載して返信用封筒の提出が必要です。
共有者全員持分全部移転にかかる費用
共有者全員持分全部移転登記にかかる費用は、以下の2つです。
それぞれいくらかかるか解説します。
登録免許税
登記手続きには登録免許税が必要で、以下の計算式で算出されます。
固定資産税評価額とは固定資産税を決定するための基準となる評価額のことで、各市区町村が算定します。
税率は、以下のように内容によって異なります。
内容 | 課税標準 | 税率 | 軽減税率 |
---|---|---|---|
売買 | 不動産の価額 | 1,000分の20 | 令和8年3月31日までの間に登記を受ける場合1,000分の15 |
相続、共有物の分割 | 不動産の価額 | 1,000分の4 | - |
贈与、競売など | 不動産の価額 | 1,000分の20 | - |
たとえば、固定資産税評価額が1,000万円の不動産を売買する場合は、1,000万円×2%=20万円となります。
司法書士報酬
共有者全員持分全部移転登記を司法書士に依頼する場合は、司法書士に支払う報酬が発生します。
依頼する司法書士や司法書士が所属する事務所によっても費用は異なりますが、3~5万円が相場です。
先述のとおり、共有者全員持分全部移転登記の申請は自分でもできますが、忙しい場合や書類の取得が面倒な人は司法書士に依頼することも選択肢の1つです。
不動産を売買する際の持分移転登記申請書の事例
不動産を売買する場合の持分移転登記申請書の事例を紹介します。
【事例】
XとYは、地番が「〇〇市〇〇町二丁目3番4」の土地を1/2ずつの持分として所有しており、令和1年5月1日にCと売買契約を締結した。
XとYは協力して契約し、令和1年6月15日に引渡しと決済が行われた。
上記の例において、決済と同日中に申請する際の登記申請書の記載例は、以下のとおりです。
【申請書の記載例】
登 記 申 請 書
登記の目的 共有者持分全部移転
原 因 令和1年5月1日売買
権 利 者 〇〇市〇〇町三丁目12番地 Z
義 務 者 〇〇市〇〇町二丁目3番4
X
〇〇市〇〇町二丁目3番4
Y
添付情報
登記識別情報
登記原因証明情報
印鑑証明書
住所証明情報
課税価格 土地 金〇,〇〇〇万円
建物 金〇〇〇万円
合計 金〇,〇〇〇万円
登録免許税 土地 金〇〇万〇,〇〇〇円
建物 金〇〇万円
合計 金〇〇万〇,〇〇〇円
添付書類
先述した事例における登記申請に必要な書類は、以下のとおりです。
それぞれ詳しく解説します。
登記原因証明情報
持分移転登記申請には、登記原因証明情報が必要になります。
登記原因証明情報とは、なぜ登記が必要かに対する事実や法律行為と所有権者が変更になることを証明した書類のことです。
売買の場合は、売買契約が行われたことがわかる不動産売買契約書と引渡し及び決済が行われたことがわかる領収書をもって、登記原因証明情報とすることが可能です。
不動産売買契約書と領収書は写しではなく原本を提出する必要がありますが、手続きが完了すれば返却されます。
【登記原因証明情報の記載例】
引用元:法務局|登記原因証明情報の例
印鑑証明書
登記義務者であるXとYは、それぞれの印鑑証明書が必要で、登記申請日から3ヶ月以内のものに限られます。
印鑑証明書は、登記申請書に押印した印鑑が実印であるか確認するために必要になるのです。
また、司法書士に登記手続きを依頼する場合は、委任状が必要となるため、委任状においても印鑑証明書で陰影の確認が行われます。
ただし、登記申請書に記載する住所と印鑑証明書の住所は一致する必要があるため、引越ししている場合は登記手続き前に印鑑証明書の住所変更をしておきましょう。
住所を証明する書類
登記手続きが完了するとZの住所が記載されるため、住所を証明する書類が必要になります。
住所を証明する書類は、住民票、戸籍の附票、印鑑証明書などが該当します。
登記識別情報
持分移転登記申請には、登記識別情報も必要です。
登記識別情報は、以前は権利証といわれていましたが、2004年に不動産登記法が改正され、2005年3月以降は登記識別情報に変更になりました。
売買の場合は、登記義務者全員の登記識別情報が必要になるため、XとYはそれぞれ登記識別情報も準備します。
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【買取した共有持分の概要】
物件の所在地 | 東京都世田谷区 |
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共有名義人 | 2人 |
持分割合 | 土地50% |
買取価格 | 1,700万円 |
【お客様の声】
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まとめ
今回は、共有者全員持分全部移転について詳しく解説しました。
共有者全員持分全部移転は共有者全員の持分を1つにまとめて移転する登記手続きで、共有者全員で協力して売却する場合などに使われます。
共有者同士の関係性が良好であれば問題ないですが、相続などで共有持分を取得して他の共有者と面識がない場合や関係性が悪い場合は専門の買取業者に売却しましょう。
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