敷地権とは土地・建物がセットで登記されている権利形態
敷地権とは、マンションなどの集合住宅で土地・建物がセットで登記されている権利形態を指します。
マンションに関する用語を以下にまとめました。
用語 | 概要 |
---|---|
区分建物 | マンションなど、一棟の中に複数の独立した部屋がある建物 |
区分所有権 | 専有部分(各部屋)を自由に使用できる権利 |
区分所有者 | 区分所有権の所有者 |
共有持分 | 複数人が一つの不動産を所有や使用する権利 |
戸建て住宅の場合は、土地・建物を別々に登記します。
マンションなどの区分建物は、各区分所有者が土地・建物を一体化させて登記をおこないます。
一体化させる理由は、「敷地権が必要になった背景」で解説しますが、度重なる登記手続きの過程で権利関係の把握が難しくなるためです。
そのため、昭和58年に改正された区分所有法第22条によって土地・建物をセットで登記し、別々に処分ができないよう定められたのです。
敷地権と敷地利用権の違い
敷地権が「土地・建物を一体化する権利形態」であるのに対し、敷地利用権は「敷地を利用できる権利」である点が両者の違いです。
マンションの部位で分けると、部屋を利用できる権利が「区分所有権」、敷地を利用できる権利が「敷地利用権」です。
マンションなどの集合住宅は一つの土地に対して複数の独立した部屋がある性質上、敷地・共用部は各区分所有者の共有となります。
つまり、各区分所有者は敷地利用権の共有持分をもっており、敷地を自由に利活用まではできないが住人として使用はできるといった具合です。
一般的には専有部分の床面積の割合に応じて、各区分所有者がもつ敷地利用権の持分割合が変わります。
敷地利用権の割合については、記事内の「敷地権割合の調べ方」で解説しているのでご確認ください。
敷地権と所有権の違い
敷地利用権は「権利形態」であるのに対し、所有権は「権利そのもの」である点が両者の違いです。
戸建て住宅の場合は「分離処分できる所有権」をもちますが、マンションは「分離処分できない所有権」を有します。
マンションの場合、各区分所有者は、専有部分の所有権・敷地の共有持分・共用部分の共有持分という3つの権利をもちます。
敷地権と非敷地権の違い
マンションには、敷地権・非敷地権の2つの権利形態が存在します。
敷地権が土地・建物を「セットで登記する」のに対して、非敷地権は戸建て住宅のように「別々で登記する」という違いがあります。
つまり、非敷地権のマンションは「部屋を残して土地のみ売却する」といったように別々に処分が可能です。
別段の定めがあれば敷地利用権と区分所有権は分離できる
区分所有法第22条では、以下のように明記されています。
敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない。
つまり、管理規約に特約などがあれば区分所有権・敷地利用権は分離処分をしてもOK、という内容です。
ただし、実務上は「非敷地権ではあるが分離処分はできない」といった文言が管理規約に記載されているマンションが多い傾向にあります。
敷地権が必要になった背景
そもそも敷地権が必要になった理由には、「登記手続きのミスを防ぐ」という目的があります。
法改正前は、区分所有権・敷地利用権が別々に登記されており、敷地利用権は一冊の登記簿にまとめられていました。
そのため、相続があれば所有権の移転・購入があれば抵当権の設定といったように、各部屋の権利移動がすべて記載され、登記の記載ミスが多発したといわれています。
大規模マンションになると総戸数100戸以上になるため、区分所有者の数だけ登記が増えるとミスが続出しやすいのはいうまでもありません。
上記のように、登記のミスによるトラブルを未然に防ぐために法改正で敷地権の規定が設けられ、権利関係を極力シンプルにしている背景があるのです。
敷地権がないマンションも存在する
敷地権がないマンション(非敷地権)が存在するのは、以下のようなケースです。
- マンションが法改正前の昭和58年以前から存在していた
- 法改正以降に建築されたが、管理組合の否決があった
現在では多くのマンションに敷地権は設定されていますが、設定せず所有し続けている方も少なくありません。
敷地権がないマンションは、下記のような理由で市場で売れにくいといわれています。
- 管理組合が機能していない
- 分離処分による権利トラブルが起こりやすい
- 登記簿の取得が煩雑になる
- 住宅ローンが組みにくい
上記のような理由から、敷地権がないマンションは買主にトラブルを懸念されて売れにくい傾向にあるのです。
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敷地権割合の調べ方
敷地権割合とは、区分所有者がもつ敷地利用権の割合です。
マンションの敷地権割合は、建物の登記簿謄本の「表題部(敷地権の表示)」の「敷地権の割合」の欄で確認が可能です。
敷地権割合は管理規約などで別段の定めがない限り、専有部分の床面積の比率によって決められます。
登記簿謄本の見方については、以下の記事で詳しく解説しています。
敷地権割合の計算方法
敷地権割合の計算式は、下記のとおりです。
床面積の算出方法には以下2つがあります。
- 壁芯面積
- 壁・柱の中心から計測された建物の面積。広告などで多く採用されている
- 内法面積
- 壁の内側部分から計測された建物の面積。住居スペースと同じ広さになる
上記のうち、一般的に敷地権割合の計算で採用されるのは「壁芯面積」です。
マンションの総戸数が10戸・専有面積60㎡の部屋が10戸の場合、敷地権割合の計算式は下記のようになります。
60㎡ × 10戸 = 600㎡
60㎡ ÷ 600㎡ = 0.1
上記の計算例では、敷地権割合が1/10であると算出できました。
敷地権が関わる2つの税金
マンションの敷地権に関わる税金は、以下の2つです。
固定資産税
固定資産税とは、毎年1月1日時点で不動産を所有する者に課せられる税金です。
敷地権の評価額および固定資産税は、以下の計算式で算出できます。
敷地権の評価額 = マンション全体の敷地の評価額 × 敷地権割合
固定資産税 = 課税標準(敷地権の評価額) × 1.4
上記にくわえて、都市計画税がかかる地域の場合、「課税標準 × 0.3%」も毎年課税されます。
たとえば、2,000万円の評価額であれば固定資産税が28万円・都市計画税が6万円です。
固定資産税・都市計画税の算出のベースとなる評価額は、毎年4月〜6月頃に送付される「固定資産税納税通知書」で確認できます。
ただし、次項で解説する「住宅用地の特例」の適用によって、固定資産税・都市計画税の税額は軽減されます。
住宅用地の特例で課税標準を減額できる
マンションの固定資産税は住宅用地の特例により、税額を減額できます。
住宅用地の特例とは、住宅の敷地として利用している土地に適用される税の軽減措置です。
これにより、敷地の200㎡以下の部分に1/6・200㎡以上の部分に1/3の評価額の減額が適用されます。
小規模住宅用地は「住宅1戸につき200㎡」であるため、マンションの大半は評価額が1/6まで減額されます。
自身の敷地権の評価額が2,000万円の場合、以下の計算式となります。
【住宅用地の特例:適用なし】
2,000万円 × 1.4% = 28万円
【住宅用地の特例:適用あり】
2,000万円 × 1/6 × 1.4% = 約4万6,666円
上記のように、評価額2,000万円の敷地に住宅用地の特例が適用されると、固定資産税は約23万3,000円も節税できるのです。
相続税
相続税とは、正味の相続財産から基礎控除額を差し引いた後の残額に課せられる税金です。
以下の計算式で遺産額が残っている場合に、相続税は発生します。
マンションの相続税は以下の計算式で算出できます。
マンション全体の敷地の評価額は、相続税路線価を用いて算出します。
引用元:国税庁|路線数の説明
路線価は1㎡あたりを1,000円単位で表記しているため、250Dと記載されていれば、路線価は25万円です。
たとえば、路線価が25万円・マンションの敷地1,000㎡の場合、以下のようにして評価額を算出します。
マンション全体の敷地の評価額 = 路線価 × マンションの敷地全体の面積 より、
25万円 × 1,000㎡ = 2億5,000万円
上記のように算出したマンション全体の敷地の評価額に、敷地権割合を乗じると、自身の敷地権の評価額の確認が可能です。
相続税の発生の有無は、国税庁の「相続税の申告要否判定コーナー」で、法定相続人の数・相続財産を入力すれば、おおよその判定を受けられます。
不動産の相続税については、以下の記事で詳しく解説しています。
小規模宅地の特例で相続税評価額を減額できる
相続税は、小規模宅地の特例により税額を減額できます。
小規模宅地の特例とは、一定要件を満たす場合に、相続した土地の評価額を最大80%減額できる制度です。
小規模宅地の特例は、土地の区分によって減額割合・限度面積が決まっています。
区分 | 減額割合 | 限度面積 |
---|---|---|
特定居住用宅地等(被相続人が住んでいた宅地) | 80% | 330㎡ |
・特定事業用宅地等(被相続人が事業をしていた宅地 ・特定同族会社事業用宅地等(被相続人の同族会社が事業をしていた宅地) |
80% | 400㎡ |
貸付事業用宅地等(被相続人が第三者などに貸していた宅地) | 50% | 200㎡ |
居住用の宅地については330㎡までの部分で評価額が80%減額されます。
たとえば、相続した宅地の評価額が3,000万円・敷地面積300㎡の特定居住用宅地等だった場合、600万円まで相続税の圧縮が可能です。
小規模宅地の特例の概要については、以下の記事でも詳しく解説しています。
まとめ
本記事では、マンションの権利に関する以下の内容を解説しました。
- 敷地権が設定されているマンションは、土地・建物の分離処分ができない
- 区分所有者は専有部分の所有権・敷地の共有持分・共用部分の共有持分の3つの権利を有する
- 敷地権設定されていないマンションは売却が難しい
- マンションの相続は、固定資産税・相続税の特例が利用できる可能性がある
記事内でもお伝えしたとおり、マンションの相続では節税効果の高い特例を利用できるケースがあります。
ただし、マンションを所有している限り、毎年の固定資産税にくわえて毎月の管理費・修繕積立金などのランニングコストがかかり続けます。
今後活用する予定がないのであれば、専門の不動産買取業者に売却するのも検討しましょう。
専門の買取業者であれば、マンションの維持費の負担からスピーディーに解放されるうえ現金化もできるためです。
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