敷地境界線を巡るトラブルの原因と対処法
敷地境界線を巡るトラブルの原因を対処法とともに解説します。
境界が確定していない
敷地境界線を巡るトラブルの原因として、境界が確定していないことが挙げられます。
先祖代々の土地で確定測量を行っておらず、境界が確定していない土地も少なくありません。
境界標や境界杭がなければ、境界が確定していない可能性が高いでしょう。
境界が確定していない場合は、土地家屋調査士に確定測量を依頼することをおすすめします。

土地又は家屋に関する調査及び測量を行う専門家のこと
土地家屋調査士に依頼する手順は、以下のとおりです。
- 土地家屋調査士に電話やメールで問合せし、調査の目的や範囲、希望日時などを伝える
- 土地家屋調査士が現地や登記簿、図面などを確認して、調査にかかる費用や期間を算出する
- 契約書の内容を確認し、土地家屋調査士と契約を締結する
- 隣地所有者立会いのもと、土地家屋調査士が現地で測量を行う
- 土地家屋調査士が測量や調査の結果をもとに、図面を作成する
- 土地家屋調査士が図面と報告書を提示する
- 土地家屋調査士が登記用図面と登記申請書を法務局に提出する
- 土地家屋調査士に測量や調査に費用を支払う
日本土地家屋調査士会連合会のサイトから、全国の土地家屋調査士が探せますので、参考にしてください。
確定測量を行う場合は隣地所有者の立ち会いが必要なので、隣地所有者が不明な場合や協力が得られない場合は進められません。
隣人の協力が得られない場合には「筆界特定制度」の利用を検討しましょう。

「筆界特定制度」とは、筆界調査委員が、法務局職員とともに実地調査等を行って登記官に提出し、登記官が筆界を決める手続きです。
弁護士、司法書士、土地家屋調査士などの専門家から筆界特定を行うための知識、経験を有する者。法務局または地方法務局長が任命する。
越境物がある
なお、越境物の覚書の作成方法は、以下の記事をご覧ください。

境界線の認識が違う
お互いの土地の境界線についての認識が違うことも敷地境界線を巡るトラブルになりやすい要因です。
「ブロック塀の中心か外かで認識が違っている」「境界標が移動している」など理由はさまざまですが、とくに古い土地では隣地所有者との間で認識が違っていることが多いのです。
境界線についての認識の違いを解決するには、話し合いが最善策です。
測量図などの資料を出し合い、お互いの言い分を聞いて冷静に話合いできれば解決できる可能性は高いでしょう。
ただし、話し合いで解決できなければ、裁判に発展する可能性があります。
納得がいかなければ、「境界確定訴訟」を提起する方法もあるため、土地の境界トラブルに強い弁護士へ相談しましょう。
敷地境界線トラブルの事例と解決法
敷地境界線トラブルが発生してしまった場合、どのように解決したらよいのかを考えてみましょう。
実際によくある敷地境界線トラブルの事例は、以下の3つです。
【事例1】境界線の認識の違いで相続した土地が売却できない
Aさんは親の土地を相続しましたが、活用する予定がないため、売却することにしました。
古い土地だったため、境界確認を隣地所有者に依頼したところ、境界線の認識違いが発覚しました。
Aさんは親から聞いていたブロック塀の外側が境界という認識でしたが、隣地所有者はブロック塀の中心が境界だと主張しています。
法務局に測量図が存在していなかったため、土地家屋調査士に確定測量を依頼しました。
結局Aさんの主張が正しく、ブロック塀の外側が境界でした。
隣地所有者にも納得してもらい、無事売却できました。
【事例2】境界杭の紛失によって揉める
Bさんは先祖代々の家を建て替えようとしたところ、隣地との境界杭がないことに気づきました。
隣地所有者に確認したところ、相続が発生しており、親から聞いていた境界線とは違う境界を主張してきました。
境界線が明確な書面として残っておらず、隣地の相続人は話し合っても自分たちに有利な境界線を主張して譲りません。
Bさんはやむなく、弁護士に境界確定訴訟を依頼しました。
実際に裁判が始まると、客観的に認められないような主張をできなくなったため、隣地所有者は争う姿勢を見せませんでした。
測量結果に基づく判決が出され、Bさんが親から聞いていた境界線に杭を打ち直すことになり、無事解決しました。
【事例3】越境物によって揉める
Cさんは隣地からの越境物によって、家の日当たりが悪くなるといった困りごとが起こっていました。
隣地の樹木が成長してCさんの所有地まで伸びており、日当たりが悪くなっていたのです。
Cさんは隣地所有者に樹木を切ってもらうよう頼みましたが、高齢ということもあり、なかなか動いてもらえません。
Cさんは自分では解決できないと考え、もともと住み替えも検討していたため、専門の買取業者に依頼することにしました。
専門の買取業者であれば、敷地境界線トラブルが発生している状態でも、現況のまま売却できます。
専門の買取業者は、弁護士や土地家屋調査士など各専門家と連携をとりながら、越境物によるトラブルを解消して買い取った不動産で収益化できるからです。

なお、弊社AlbaLink(アルバリンク)は、敷地境界線トラブルが発生している物件をはじめとした訳あり不動産を取り扱う専門の買取業者です。
敷地境界線トラブルが発生してお困りの方は、お気軽にご相談ください。
>>【境界線が不明確な土地でも高額売却可能!】簡単査定はこちら
敷地境界線にまつわる法律的なルール
敷地境界線にまつわる法律がどのように定められているかを確認してみましょう。
建造物は境界線から50cm以上の距離を保つ必要がある
建造物が境界線ぎりぎりに建築されると火災の拡大を招いてしまったり、風通しが悪くなるなど衛生上の問題につながるため、境界線からの距離を保つべき旨が民法に定められています。
(境界線付近の建築の制限)
民法第234条
建物を築造するには、境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければならない。
前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは、隣地の所有者は、その建築を中止させ、又は変更させることができる。ただし、建築に着手した時から1年を経過し、又はその建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる。引用元:民法第234条
上記のように、「境界線から50センチメートル以上」という具体的な数値が規定されています。
2項では、1項の規定に違反した建築に着手している場合の隣地所有者が、着手から1年以内であれば工事の差し止めなどを要求する権利があることを規定しています。
しかし、この民法第234条の例外といえる規定が建築基準法に定められています。
耐火構造を満たす場合には50cm未満でも良い
上記のように、境界線から50センチメートルの距離を保つことを義務付けている大きな理由として「延焼を防ぐ」ことがあるため、耐火構造を満たす場合には50センチメートル未満の位置に建築することが認められています。
(隣地境界線に接する外壁)
建築基準法第63条
防火地域又は準防火地域内にある建築物で、外壁が耐火構造のものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる。引用元:建築基準法第63条
上記に引用した民法第234条と建築基準法第63条は矛盾しているとも取れますが、そのような場合にはどちらが優先するのでしょうか。
上記の問題に限らず法律全般にあてはまるルールとして「特別法は一般法に優先する」というものがあります。
一般法とは「適用の対象がより広範囲」の法律、特別法とは「適用の対象が特定されている」法律をいいます。
民法は一般法の代表格といえる法律であり、建築基準法は特別法に該当します。
よって「耐火構造を満たす建物」の場合には民法第234条よりも建築基準法第63条が優先される、つまり外壁が隣地境界線に接することが認められることがあります。
地域に異なる慣習がある場合は50cm未満でも良い
民法第234条の例外として、境界から50センチメートル未満の建築を認めた条文もあります。
(境界線付近の建築に関する慣習)
第236条
前二条の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。引用元:民法第236条
地域における慣習によって、隣地境界線に近接して建物を建てる慣習がある場合は慣習を優先する、ということになります。
地域の伝統的工法や風土による例外を認めたものです。
窓や縁側などは境界から1m以上離すか、目隠しを設置する
窓や縁側などにより隣地が見える状態になっている場合、境界線から1m以上離す、あるいは目隠しを設置する旨の規定も設けられています。
(境界線付近の建築の制限)
民法第235条
境界線から1メートル未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓又は縁側(ベランダを含む。次項において同じ。)を設ける者は、目隠しを付けなければならない。
前項の距離は、窓又は縁側の最も隣地に近い点から垂直線によって境界線に至るまでを測定して算出する。引用元:民法第235条
厳格に解釈するなら「境界線から1m離れていれば目隠しがなくてもよい」とも取れますが、法律の規定に則ってさえいればトラブルにならないわけではありません。
社会常識から見て不適切な状態になっていれば裁判で負けることも考えられます。
必要に応じて隣人との話し合いを設けるなど、トラブルにならないための配慮が必要です。
上記に違反すると隣人から損害賠償を求められる恐れがある
民法第234条の「境界線から50センチメートル以上の距離」に違反している建築物を建ててしまうと、隣人から損害賠償を求められるおそれがあります。
地裁レベルの判例ではありますが、「隣人からの建物収去の請求は退けられたものの、損害賠償の請求が認められた例」を見てみましょう。
神戸地裁 平成15年6月19日判決
Xは、隣人Yが境界線から50センチメートル未満の位置に建築し始めた建物の工事に対し、50センチメートル以上離して建築する旨など、本件建物の建築廃止や変更を求めていた。
また、同時にXは自己の被った精神的苦痛に対する慰謝料の支払いも求めた。
しかし、判決では建物部分の収去請求を棄却し、20万円の慰謝料支払いのみを命じた。
理由としては以下のとおり。
1.Xによると、YらはXによる交渉の申し入れを無視して一方的に工事を強行したとのことであった。
しかし、Yは建物工事開始時にXより口頭で工事の廃止、変更を求められた際に建築工事業者のXを通じて説明を行っている。
2.本件工事より前に、Yは本件の建物と同じ位置にプレハブ車庫を建築したことがあり、その際はXより何らの意義申し入れもなかった。
3.Xが書面によって明確に本件の工事中止や変更を求めた際には、すでに本件建物は完成済みであった。
上記のように、建物収去請求を行った時期や工事時の状況によりどのような請求が認められるかの範囲は異なります。
ただ、やはり隣人との十分な話し合いを持たないままに工事を強行してしまうのはトラブルを招き、時には訴訟まで発展してしまう可能性があることを知っておかなければなりません。
境界立ち会い時の注意点
敷地境界線の立ち会い時には、以下のポイントに注意しましょう。
- 原則として、本人が立ち会いに行く
- 立ち会い時間は遵守する
- 納得したうえで署名捺印を行う
立ち会いに遅れてしまうと隣地所有者との話し合いに影響が出る可能性があるため、運転免許証または個人番号カードなど顔写真付きの身分証を持参して約束の10分前には現地にいましょう。
また、将来に渡って境界が確定してしまうため、内容をよく確認して納得したうえで署名捺印を行うことをおすすめします。
なお、隣地所有者と敷地境界線の立ち会いを行う際は、土地の境界確定業務を行っている土地家屋調査士に依頼しましょう。
土地家屋調査士の依頼方法については、「敷地境界線を巡るトラブルの原因と対処法の境界が確定していない」の中に記載していますので、参考にしてください。
まとめ
今回は、敷地境界線が不明確であることによって起こるトラブル事例について解説しました。
敷地境界線が明確でない土地を所有している場合や相続する場合は、トラブルに巻き込まれる可能性があります。
境界線トラブルが起きる前に土地を手放したい場合や、すでに境界線トラブルに巻き込まれてしまっており、トラブルから解放されたい場合は、専門の不動産買取業者に土地を売却することをおすすめします。
専門の不動産買取業者であれば、境界線が不明確な土地であっても問題なく買い取ることが可能です。
専門の不動産買取業者は、買取後に境界線を確定させ、運用・再販して利益を生み出すノウハウを豊富に持っているためです。
弊社Albalinkも境界線トラブルのある土地の買取実績がある訳アリ物件専門の不動産買取業者です。訳アリ物件専門ですから、境界線が不明確な土地の買取実績も豊富にあります。
他社に買取を断られた土地であっても買取り可能ですので、ぜひ一度弊社の無料買取査定をご利用ください。
株式会社AlbaLinkは東京証券取引所のTPM市場に上場している不動産会社です。




