間口とは
「間口」とは、接面道路に面している土地や建物の幅を言います。
間口が広い=接面道路に面している幅が長いということになります。間口が広ければ、人と車の出入りがしやすくなります。
更に、接面道路側の開放感や風の通りもよくなり、日当たりも確保できます。
土地は、一般的に道路に面する部分を「間口」、間口に対して垂直方向に延びる部分を「奥行」と表記します。
尚、土地が角地の場合は、2面以上の道路に面しますが、一般的には道路に面する幅が長い方を間口と表記することが多いです。
理由は、日本では間口が広い家や土地を好む傾向があるので、不動産を売却する上では間口を広く表記する方が印象は良いのです。
また建物建築時は、間口いっぱいに建てることはできず、隣地境界線からは最低50㎝以上離す必要があります。
仮に、隣地住宅との距離が近すぎると、通風の確保や自然光の取り込みが難しくなり、住環境が悪くなります。
よって、自治体や地域によっては50㎝以上隣地境界から離し、より住環境が守られているケースもあります。
間口の測定方法
一般的に間口の測定は、メートル単位で表記します。
家を建築するには、間口2m以上を確保する必要があります。
これを接道義務といいます。接道義務を果たさないと建築許可は下りません。
尚、間口は必ずしも道路に面する長さではなく、道路に接している土地の一番狭い部分が2m以上必要というのが注意点です。
では、間口はどの位あればよいのでしょうか?
一般的な一戸建て住宅で、玄関わきにリビングダイニングが配置されているような間取りだと、建物の間口は6mが理想です。
したがって、土地の間口は左右50㎝距離を離す必要があるので、7m~8m程度確保したいところです。
1.間口が狭い宅地の評価額の算出方法
間口は土地の評価にも影響します。
一般的に、相続税の評価額は「路線価×面積」にて求められます。
仮に間口が狭く土地が歪な形状であれば、整形地に比べて土地の使い勝手が悪くなります。
したがって、このような土地の路線価には評価の調整が入るのです。
間口が狭い宅地の評価額算出方法を下記に表記しますが、少し複雑な計算になります。
まず、「間口狭小補正率」とは間口が狭い土地に用いられる補正数値です。
この数値は、地域区分や間口の長さにより変わり、路線価に1以下の数値を掛けて補正を行います。
尚、間口が狭いとどのくらいの評価減になるかというと、住宅地の場合は8m未満の間口になると補正が入り、4m未満の間口になると補正数値は0.9、つまり10%の評価減となるのです。
次に「奥行長大補正率」とは、間口の幅が狭いのにも関わらず、奥行きが長い形状の土地についての補正となります。奥行長大補正率が適用されるケースは、奥行の長さを間口の長さで割った数値が、「2」以上の場合です。
例えば、奥行きが20mで間口が10mの土地は、20÷10=2となるので、奥行長大補正率が適用となります。
尚、この数値も土地の区分や奥行÷間口の数値により変わってきます。
仮に、住宅地で数値が2の場合の補正率は0.98、6以上になると0.90であるので10%の評価減となります。
- 10m(奥行)÷4m(間口)=2.5 →奥行補正率0.98
- 間口4m→間口狭小補正率0.94
- 評価額=300,000円(路線価)×0.94(間口狭小補正率)×0.98(奥行補正率)×50=13,818,000円
評価額は、13,818,000円となります。
間口が狭い旗竿地のメリット
「旗竿地」とは、細長い路地を通った先にある奥まった土地のことです。
土地の形が竿に括り付けられた旗のような形をしているのが、言葉の由来となります。
旗竿地は奥まった土地であり一般的に四方に隣接地があります。
接面道路からは細長い路地がある分離れてしまうので、通風や日当たりが悪くなり、開放感を得ることはできません。
新築一戸建ての分譲地の場合、旗竿地は価格が一番割安になる傾向があります。
住宅地では、全ての土地に間口の長さを確保することはできず、土地を効率よく使うには旗竿地は必ず発生します。
この間口が狭い旗竿地には多くのメリット・デメリットがあります。まずは、旗竿地のメリットです。
1.周辺より土地価格が割安
まずは、土地価格が割安になることです。
好立地の住宅街では、間口が広い土地よりも7割~8割程安くなることもありお得です。
駅の徒歩圏など、好立地に住宅を建設する場合に、お得な旗竿地をあえて探すこともあるようです。
2.奥まった立地で静かな環境
次に、旗竿地は道路から奥まったところに立地するので、車の騒音など気にならず静かな環境となります。
また、道路に面していると通行人の目線が気になることがありますが、旗竿地であればプライバシーも守られます。
更に、敷地が奥まっているので子供が道路に飛び出して事故に遭う心配もありません。
間口が狭い旗竿地のデメリット
続いて、旗竿地のデメリットです。
間口が狭い旗竿地には、多くのデメリットが存在します。
旗竿地は土地価格が割安などのメリットはあるものの、デメリット部分もよく理解し、その特性を十分に理解しなければなりません。
1.再建築不可の場合も
先述で触れたように、都市計画地域において建築基準法では、住宅を建築する条件として間口2mの確保が義務付けられています。
したがって、これから建築する住宅は、必ず間口2m以上を取らないといけません。
では、建築が古い時代の住宅で間口2m未満の場合はどうなるのでしょうか?
この場合、再建築不可物件となります。
これは、現況の住宅であれば以前の法規に則り建築されているので違法にはなりませんが、既存住宅を取り壊し新しい家をこのままの土地の状態で建築すると、違法となるのです。
つまり、この土地に家を新しく建てるには、隣地を買収するなど、間口を2m以上確保する必要があるのです。
しかし、隣地を買収できるチャンスは頻繁にはなく、更に間口確保のために必要な分だけ土地を買収ができるケースは稀です。
よって、このような間口2m未満の場合、土地の利用が制限されます。
仮に、相続したとしても税金の支払いだけが付きまとい厄介です。
また、売却しようと思っても住宅を建築できない土地であるので、その土地単体での売却は難しく、市場価値を下げてしまう要因にもなっています。
また、同じようなことが道路幅員にもあります。
新しく住宅を建設する場合、4m以上の幅員がある道路に面する必要があります。
つまり、間口は2m以上、道路幅員は4m以上あることが建築条件になるのです。
幅員が狭い場合はどうする?
では、幅員が狭い場合にはどうすればよいのでしょうか?
この場合は、道路中心線から2mの所までセットバックすることで自ら解決できます。
例えば、幅員2mの道路であった場合、道路中心線が現在の幅員2mの丁度真ん中を通っているとすれば、当該敷地では1mのセットバックが必要となるのです。
尚、セットバックが必要な土地を購入した場合は、建築できる住宅部分が狭くなるというデメリットもあります。
この道路幅員に関しても、昔の古い住宅街では幅員が4m未満の道路はありますが、現況では違法ではありません。
間口は2m、道路幅員は4mが必要な理由は?
では、なぜ間口は2m、道路幅員は4m必要なのでしょうか?
その理由は、地震や火災が起きたとき、消防車や救急車などの緊急車両を通しやすくすることと、住民等の避難経路の確保です。
間口が広ければ、救急車が路地に入りやすく、避難経路も広くなるのでより安全に移動ができます。
また、道路幅員を4mにすることで大型の消防車が住宅街に入ることができるので、消火活動や救助活動を円滑に行えます。
経路が狭いとこれらの活動がしにくく、被害の拡大や二次災害の危険性などが高まります。
2.費用がかかる
旗竿地は、土地の取得費が整形地より安価であったり、相続時の評価も下がります。
よって、一見費用的にはお得な部分が多いように思えます。
しかし、いざ旗竿地に家を建築しようとすると、実は割高になるケースが多いのです。
例えば、その土地に古家があれば、建物を解体しなければなりません。
建物の解体費用は、建物の規模感や構造などで費用が変わるのですが、それに加えて解体のしやすさが費用面ではポイントになるのです。
建坪30坪程度の間口が広い一戸建てと、同様の広さの一戸建てであるが旗竿地の一戸建てでは、解体費用が変わります。
理由は間口が広ければ重機を敷地内に入れやすく解体が容易にできます。また、解体で出た廃材の積み込みや搬出がしやすいので解体工事の効率が良いのです。
しかし、旗竿地の一戸建ては重機を入れることが難しく解体自体に手間が掛かります。
また、その解体した廃材の搬出にも重機が使えず、廃材を搬出するトラックも敷地近くに停めることができないので、解体工事自体が非効率なのです。時間と手間が掛かる旗竿地の解体は割高になってしまいます。
また、同じようなことが建築時にも言えるのです。
間口が狭いことで重機が入れ辛く材料の運搬にも時間が掛かります。
更に、旗竿地で土地が変形していると、設計自体も難しくなるので建築費用は総じて割高です。
つまり、間口が広く土地が整形地であれば、解体費や建築費は安く済むケースがあります。
※解体費や建築費は工事を行う業者により費用はまちまちであるので、上記は一般的な見解となります。
3.ライフラインや電気工事に手間がかかる
旗竿地は、ライフラインや電気工事に手間が掛かります。
まず、ライフラインで言うと水道管は一般的に公道の地下に本管が埋設されています。
その本管から買主の負担で引き込み工事を行います。
この引き込み工事は、引き込み管が長いほど工事費用は高くなります。
従前地に住宅があれば、その時に引いた引き込み管を使用することも可能ですが、築年数が古い物件であった場合は引き込み管が劣化していることもあります。
よって、水道の引き込み工事費が必要で、且つ費用が数十万円程度掛かります。
次に、電気工事に関しては、公道上に設置してある電線から同じように引き込みをしなければなりません。
これも公道からの距離があると、途中に電線を中継する支柱の設置が必要です。
よって、支柱の設置費用が掛かってしまうことや、仮に支柱を建てずに電線を直接自宅に引き込んでしまったことで、隣家の土地をまたがりトラブルになるケースもあるのです。
このように、旗竿地はライフラインの引き込み工事でも高額な費用が掛かってしまいます。
4.駐車スペースを確保しにくい
次に、駐車場のスペースを確保しにくいことです。
仮に、間口が2mであると、車の車幅は概ね1.85mであるので車路としてはギリギリです。
したがって、車が通りにくいのと、細長い路地に車の駐車スペースを作ると人や自転車が通ることが難しくなります。
また、奥の敷地部分に駐車スペースを作った場合、駐車時の後退距離が長いので一苦労です。
旗竿地は、駐車スペースが確保しにくいのと、駐車スペースを確保したとしても大変停めにくくなるケースが多いのです。
5.売却しにくい
ここまで、旗竿地のデメリットを挙げてきました。
ここまでデメリットが多い土地は、売却しにくくなるのは必然です。
よって、周辺相場よりも安くなるのが一般的なのです。
旗竿地が売却しにくい理由は、先述でも触れていますが、周辺を他の建物に囲まれていることによる、通風や日当たりの悪さ、開放感がないからです。
また、駐車スペースが確保しにくいなど土地利用に制約があり、土地の利用の仕方や建物の配置など設計に工夫が必要になるからです。
また、旗竿地の細長い路地部分も当然に土地面積に入るため、実際建物が建築できる面積は狭くなります。
尚、同じ旗竿地であっても間口が3m以上あるような場合は、駐車スペースが十分確保でき、公道から奥地に敷地があることで、静かな環境で暮らせるというメリットもあります。
よって、売却がしにくいかは間口の幅と土地の形状、つまり土地の活用がしやすいか、建物を建築しやすいかによって変わってきます。
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間口が狭い旗竿地を売却するには
では、間口が狭い旗竿地を売却するには、どうすればよいのでしょうか?
先述のように間口が狭いから土地を利用しづらく売りにくいというのが、旗竿地のデメリットでした。
よって、そのデメリットを払拭できるような対策が必要です。
1.隣地の買取
まずは、隣接地を買い取る方法です。
間口の広い隣接地を買い取ることができれば、一気に活用しやすい土地に変身します。
土地の評価や実際の売買も相場通りにできる可能性が高くなります。
仮に、隣地の所有者が引っ越しや不動産の相続にて、土地の売却を考えているのであれば、買取ができる千載一隅のチャンスです。
2.隣地への売却や等価交換を打診する
次に、隣接地の所有者への売却や等価交換を打診することです。
間口が狭い土地は、普通に売却しても買い手がつく可能性は低くなります。
よって、隣接地の所有者に土地を引き取ってもらう方法もあります。
3.買取業者へ依頼する
最後に、買取業者への売却依頼です。
旗竿地を買い取る不動産業者もあります。
一般的に買取業者に買取を依頼すると、早くて1週間程度で現金化ができます。
相続で旗竿地である実家を相続したが、相続税を払うために(相続税は相続発生から10か月以内に現金で納付しなけらばならない)売却するのであれば、買取は早期に現金化できる一番良い方法です。
間口2m未満の再建築不可物件でも買取可能なケースもあります。このような旗竿地を買い取った不動産業者はその後土地をどうするのでしょうか?
詳しく説明いたします。
隣地の土地を一部買取する
幾つか方法があるのですが、一番多いのは隣地所有者と交渉し間口を2m確保できるよう隣地の土地一部を買い取る方法があります。
仮に間口が1.5mであった場合、間口2m確保できるように隣接地の0.5m分を買取、細長い路地部分を確保する方法です。
買取が土地の一部になるので、全て買取より交渉はしやすいのですが、境界をずらすことになるので手間が掛かります。
新たに測量や境界確認の立会いをお願いすることになり、隣地の所有者には何かと面倒な手続きがあるので、相手の気持ちを考慮しながら交渉を進めていきます。
隣地の土地を一部借りる
隣地の買取が難しい場合は間口を確保できる土地分を借りる方法もあります。
隣地所有者と土地の賃貸借契約を結び土地を借りることで、間口2mが確保できれば再建築が可能となります。
再建築不可物件を買取、隣地の買取などが早期で難しい場合は、既存建物の活用法を考えます。
例えば、一戸建てあればリフォームを施し借家として貸し出す方法や、都市部であればシェアハウスなど新たな活用法が模索できます。
また、更地にして駐車場として活用する方法もあります。
但し、再建築不可物件の間口は狭いため、そもそも車が通れる土地であるか、また旗竿地の奥地に駐車スぺースを複数台分確保できるかなど確認が必要です。
まとめ
間口の広さは、その土地の価値を決める重要な要素です。
間口が広ければその土地の評価額は高く、反対に間口が狭ければその土地の評価は低くなります。
間口は、一般的に広さがある方が人や車の出入りがしやすいことや、日当たりや通風が確保しやすいなどメリットが多くあります。
反対に間口が狭い土地は、土地が細長く変形地であったりするので、住宅であれば設計が難しく土地活用にも工夫が必要になります。
更に、間口が狭く奥まっている旗竿地の活用はもっと難しくなります。
土地は整形地ばかりではなく、間口が狭い変形地や旗竿地は住宅街であればよくある形態です。
土地の購入や売却などを考える場合には、このような土地の特性を十分に理解しつつ検討を慎重に進めることが必要です。
旗竿地は購入時は割安、売却時も安いと頭に入れて取引をすることをおすすめします。
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