不動産の差押え登記をされた場合に起きる2つのこと
所有している不動産が差押えられた場合は、以下の2つのような状態になります。
それぞれ詳しく解説します。
なお、差し押さえられた不動産の売却方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
自由に売却できない
登記簿に差押え登記がされると、所有者であっても不動産の売却が制限されます。
差押えされた不動産は金融機関や公的機関の管理下にあるため、競売や公売に掛けられる可能性があるのです。
そのため、売却の意向がある場合は、差押え登記の解除が必要です。
差押え登記の解除方法については、後ほど詳しく解説しますが、差押えされたまま放置すると強制的に売却される可能性があります。
所有している不動産が差押えされた場合は、できるだけ早く解除する必要があります。
差押え登記された通知が届く
所有している不動産が差押えの対象になった場合は、差押え登記された通知が届きます。
さらに差押えの対象になった証拠として、登記事項証明書上に「差押」という記載がされることになります。
登記事項証明書は誰でも法務局で取得できるため、第三者に知られ、金融業者などから営業の案内が届くことになるでしょう。
すぐに公売にかけられるわけではない
所有している不動産が差押えられても、すぐに公売にかけられるわけではありません。
ただし、税金の滞納などで公的機関が差押えしている状況で滞納期間が続く場合は、行政も公売という手段で税金を回収することになります。
公売が決定する滞納期間や滞納金額には明確な規定がなく、案件ごとに行政が判断します。
金融機関による不動産の差押え
金融機関が不動産を差押えする2つのケース
金融機関が不動産を差押えするのは、以下の2つのケースです。
それぞれ詳しく解説します。
担保権者として差押えをする
金融機関が担保権者として不動産を差押えする場合は、もともと抵当権を設定しているため、配当の優先権があります。
そのため、ローンの滞納が続き、返済の目処がたたない場合は、金融機関は資金回収のため競売にかけることになるのです。
たとえば、住宅ローンを貸している金融機関が不動産を競売した場合は、優先的に負債を回収することになります。
一般債権者として差押えをする
金融機関が一般債権者として不動産を差押えする場合は、他の債権者と同等の立場となるため、基本的に債権額に応じた配当を受けることになります。
債権額が一番多い債権者が競売を開始して、金融機関は参加することになります。
差押え解除のための要件
金融機関が差押えを解除して抵当権を抹消するためには、残債務や遅延損害金等の全額弁済が原則的です。
不動産を売却することによって抵当権を抹消する場合は、売却金額がローン残高を上回る必要があります。
売却金額がローン残高よりも少ない場合は、不足分を補う必要がありますが、ローンを滞納している人には難しいでしょう。
そのため、全額弁済できないものの、不動産を売却するために金融機関から抵当権を抹消することを承諾してもらうしかありません。
ただし、あくまで金融機関から承諾を得て売却するだけで、債務自体が減額されるわけではありません。
債務者は不動産売却後も金融機関にローン残額を返済する必要があり、このことを任意売却といいます。
金融機関の承諾を得て一般の市場で不動産を売却すること
金融機関はできる限り競売を避けたい
金融機関によって不動産を差し押さえられ、返済の目処が立たない場合は競売にかけられることになります。
ただし、金融機関はできる限り競売を避けたいのが本音です。
競売の手続きには手間と費用がかかり、通常の売却と比較しても安い売却金額となってしまうからです。
そのため、現実的には競売を避けるために返済が厳しい債務者に対して、金融機関は任意売却を勧めています。
なお、任意売却のメリットについては、「住宅ローンの返済が難しい場合は不動産業者に相談する(任意売却)」で詳しく解説します。
法務局に嘱託するまでの差押え解除の流れ
不動産売却(任意売却)によって差押え登記の抹消をするには、以下の順序で行います。
- 債務者が依頼した不動産会社に金融機関と交渉してもらい、差押え解除の条件を決めて合意をもらう
- 売買代金決済日までに差押え解除の書類を準備してもらうように金融機関に依頼する
- 司法書士が差押え取り下げ書類と他の売買必要書類を確認して決済当日に決済する
- 代金決済後、金融機関の担当者は入金を確認し、裁判所に差押え取り下げ書を提出する
- 裁判所は書類の不備がないか確認した上で、法務局に差押え抹消登記を嘱託(委任)する
なお、司法書士は抵当権抹消登記と所有権移転登記を行いますが、差押え抹消登記は法務局が行うことになるため、完了まで時間がかかることがあります。
債務の弁済以外の差押えを解除する2つの方法
債務の弁済以外の差押えを解除する方法は、以下の2つです。
それぞれ詳しく解説します。
個人再生手続き
個人再生手続きとは、借金などの返済ができなくなった人が裁判所に再生計画を認めてもらい、借金を大幅に減額してもらう制度のことです。
個人再生手続きでは基本的に住宅ローンは対象外ですが、住宅資金特別条項の制度を活用すれば、住宅ローンの支払いを継続することで、住宅の差押えを防ぐことが可能です。
ただし、住宅ローンを継続して支払い続ける必要があり、住宅ローン以外の債務も必要になります。
差押禁止債権の範囲の変更
差押禁止債権の範囲の変更とは裁判所に申し出ることによって、差押えの範囲を縮小する方法です。
差押えによって生活が成り立たなくなる場合などに、裁判所に申立てすることによって、差押えの範囲が少なくなる可能性があります。
ただし、あくまで裁判所が決定するため、差押えの範囲が変更できない場合もあります。
公的機関による不動産の差押え
一方、公的機関が不動産を差押えするのは、「国による国税滞納処分」と「市区町村による地方税滞納処分」が主なケースになります。
差押えされる要件については国や自治体、税金の種類によって異なるため、どのくらい滞納したら差押えされるかはわかりません。
一般的には国税で1ヶ月程度、地方税で2ヶ月程度とされていますが、実際にはもう少し時間がかかっているのが実情です。
ただし、税金を滞納して差押えされると解除するのは困難となるため、早めの対処が重要となります。
差押えを解除するためには、滞納した税金の完済が原則ですが、どうしても一括での支払いが難しい場合は、分納を約束することで差押えが解除される可能性もあります。
差押え解除のための要件
公的機関による不動産の差押え解除は、「国税徴収法」の規定に従って行われます。
国税の徴収に関する手続きを定めた国税徴収法では、本来の目的である滞納の解消以外の事由も含めて、「解除しなければならない場合」と「解除することができる場合」について、以下のように定めています。
差押えを解除しなければならない2つの場合
差押えを解除しなければならない場合は、以下の2つです。
滞納が解消された場合
国税などが納付された場合は、滞納が解消されたことになるため当然差押えは解除されます。
無益な差押えがされている場合
差押えの対象となる財産の金銭的価値がない場合や、たとえ価値があったとしても財産上に滞納された税金よりも優先する抵当権等が設定されている場合は、滞納された税金の徴収が見込めないため、差押えの解除事由となります。
参照元:国税庁|無益な差押えの禁止
差押えを解除することができる3つの場合
差押えを解除することができる場合は、以下の3つです。
差押超過となっている場合
差押超過とは、債務に対して差押えされている財産の価値が超過していることで、国税徴収法によって解除要件として規定されています。
参照元:e-Gov 法令検索|国税徴収法 第79条第2項第1号
適当な財産を提供した場合
原則として、換金に便利な財産であって換価代金から滞納国税の全額を徴収することができる財産を提供した場合は差押えが解除されます。
参照元:e-Gov 法令検索|国税徴収法 第79条第2項第2号
公売しても入札がなかった場合
公売に付しても見積価額に達しない額による入札や公売保証金の提供がない入札、もしくは入札がない場合は差押えが解除されます。
差押え解除の流れ
公的機関による差押え解除は、基本的に金融機関と同様で、交渉によって差押え解除の条件を決定し、差押え解除の承認を得た上で、決済日までに必要書類を作成してもらう流れです。
ただし、行政の場合は、役所の担当者が売買の代金決済当日に、裁判所ではなく法務局に差押え取り下げの書類を提出します。
金融機関による差押え解除は司法書士が申請しますが、公的機関による差押え解除は、役所の担当者が申請することも違いといえます。
差し押さえ解除にかかる日数
また、滞納していた税金等を完納した場合は、差押えの解除にかかる期間は1週間程度です。
ただし、不動産売却によって滞納税金を完納する場合は、物件の引渡しと同時に残金の決済と所有権移転登記の手続きを行うため、1か月以上の時間を要する可能性があります。
住宅ローンの返済が難しい場合は不動産業者に相談する(任意売却)
どうしても住宅ローンの返済が難しい場合は、不動産業者に相談しましょう。
住宅を購入する人は住宅ローンを組む人がほとんどですが、住宅ローンの返済に困っている方は少なくないのが実情です。
実際、弊社が行ったアンケート調査によると、住宅ローンを組んで後悔している理由は「ローンの返済に困った」が1位となっています。
引用元:訳あり物件買取プロ|全国377人にアンケート調査!住宅ローンを組んで後悔しているのは全体の約2割、後悔している理由とは?
しかし、滞納した住宅ローンを一括返済できない場合でも、任意売却を活用すれば差押え登記を解除できます。
先述のとおり、任意売却は債権者である金融機関は競売を避けられるだけでなく債務者にもメリットがあります。
任意売却は競売と違い、相場の価格で売却できる可能性があるため、住宅ローンの残債を多く減らせます。
また、競売は新聞やインターネットなどで競売物件情報が公開されるため周囲の人に知られる可能性がありますが、任意売却であれば内密に売却できます。
そのため、住宅ローンの返済が難しい場合は、任意売却に詳しい不動産会社に相談して金融機関から任意売却の承諾を得ることをおすすめします。
ただし、任意売却は通常の不動産と同様に一般の市場で売却する方法です。
したがって、駅から徒歩で10分以内など立地条件が良くなければ早期売却は難しいでしょう。
実際、弊社がおこなったアンケート調査では、マイホームを購入する際に「立地」を優先した方の割合がもっとも多い結果となりました。
ただし立地条件の悪い不動産でも、専門の買取業者なら短期間で買い取ってくれるので、期限が差し迫っている任意売却を成功させたいのなら、仲介ではなく買取を検討することをおすすめします。
また、差し押さえられた不動産の任意売却については以下の記事でも詳しく解説していますので、併せて参考にしてください。
任意売却の相談はアルバリンクがおすすめ
住宅ローンの返済が厳しく任意売却の相談をしたい方は、アルバリンクに相談しましょう。
弊社アルバリンクは訳あり不動産を全国から買い取っている業者で、不動産に関するさまざまな悩みの相談を受け付けています。
年間で5,000件を超えるご相談をいただき、以下のように実際にご利用いただいたお客様からもありがたいお言葉を頂戴しております。
所有している不動産が差押えされてお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。
まとめ
今回は、不動産の差押え登記の抹消について詳しく解説しました。
不動産の差押え登記を解除してもらうためには、基本的には残っている残債を一括返済する必要があります。
しかし、ローンなどを延滞している人には現実的には難しい方法のため、不動産会社に相談して任意売却しましょう。
ただし、任意売却は通常の不動産売買と異なり、専門的な知識と経験が必要になるため、不動産会社選びが重要となります。
弊社アルバリンクも任意売却の経験が豊富な不動産会社で、かつ、訳あり不動産を全国から買い取っている業者で、「フジテレビ」を始めとする各メディアにも取り上げられた実績があります。
所有している不動産が差押えされてお困りの方は、査定のみ、相談のみのお問い合わせでも受け付けておりますので、お気軽にご相談ください。