事故物件の定義
事故物件とは、買主や借主が心理的な抵抗を感じる不具合・欠陥(瑕疵)がある物件のことで、心理的瑕疵※物件とも呼ばれます。
※心理的瑕疵とは
不動産の取引において、買主・借主に心理的な抵抗が生じる恐れがある事象・事柄のこと。
具体的には、以下が起こった物件は心理的瑕疵があるとされ、事故物件として扱われます。
- 自殺
- 他殺
- 火災
- 特殊清掃が必要な死
参照元:国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関する
ガイドライン」
一方で、人の死があったからといってすべて事故物件になるわけではなく、常生活で起こり得る以下のような自然な死であれば事故物件に該当しません。
- 病気や老衰などの自然死
- 階段からの転落や入浴中の溺死などの不慮の事故
- 食物の誤嚥
参照元:国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関する
ガイドライン」
ただし自然死でも死後時間が経って発見され、特殊清掃が必要になった場合は事故物件扱いです。
現在、心理的瑕疵のある事故物件に当たるかどうかの判断は、2021年に国土交通省が示した「ガイドライン」を基準に行われます。
ここからは事故物件を所有する方に向けて、事故物件の注意点を解説します。
事故物件になった時点で資産価値が10~50%下がる
事故物件になってしまっても売却自体は可能です。
ただし事故物件は敬遠されやすく、事故物件となった時点で物件価値がかなり下がってしまいます。
事故物件は一般の買い手がつきにくく、売却時に相場よりも大幅に値下げしないと売れないからです。
実際、事件の内容によって物件の値下がり率は以下のように変わります。
- 孤独死:10%~20%
- 自殺:30%~50%
- 殺人:50%
孤独死はある程度仕方がないとしても、殺人は周囲へ与える影響が大きく、近隣住人の記憶に何10年も残る場合があります。
入居者にとっては、隣人と交流するうえでストレスになる可能性が高いでしょう。
なお弊社が男女500人を対象に行ったアンケートで「心理的瑕疵物件に住むことへの抵抗感」を質問したところ、回答は以下のようになりました。
引用元:AlbaLink【500人にアンケート調査!許容できる心理的瑕疵物件のレベルランキング】みんなが選ぶダントツの第1位は?
事故物件に住むことに対し何らかの「抵抗がある」と答えた人が85.8%いることが分かります。
さらに983人を対象に行った別のアンケートで「許容できる事故物件の範囲」を訊ねた結果は以下のとおりです。
引用元:AlbaLink「ブームの兆し!事故物件はあり?なし?983人にアンケート調査をしてわかった年収別の超意外な傾向とは?」
「孤独死」と「事故死」まではOKと答えた人が多いのに対し、「自殺」「他殺」「焼死」は大半がNGで、ほとんど受け入れられないことが分かります。
そのほか、死因以外に事故物件が敬遠される理由として「事故物件検索サイトで住所が公開されているのでは?」という心配もあるようです。
なお死因による物件価値の下落率については、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
瑕疵を告知しないと契約解除や損害賠償請求を受ける
事故物件のもう1つの注意点は、心理的瑕疵を告知せずに売却すると「契約不適合責任※」を問われ、買主から契約解除や損害賠償を請求される可能性があることです。
※契約不適合責任とは
売買契約の目的物が種類や数量、品質において契約で定められた内容を満たしていなかった場合に、売主が負う法的責任のこと。
事故物件に該当する事件があったと知っていたにもかかわらず、その事実を売主が買主に告知しなければ、契約不適合責任として以下を請求される恐れがあります。
- 修理や代替品提供
- 損害賠償
- 減額
- 契約解除
なお告知の必要性(告知義務)については、「事故物件を解体・建て替えしても告知義務は残る」で詳しく解説します。
中には「過去の死は誰にも知られるはずはない」「売却価格を下げたくない」と、事件を告知せず売却しようとする売主もいるかもしれません。
しかし近隣住人は事故の事実を知っているので、買主が入居してから事故の事実は必ず人づてで耳に入ります。
さらに近年はインターネットでも事故物件情報が拡散されているため、どちらにしても買主に事件を隠し通すことは不可能です。
結果的に、トラブルと契約不適合責任でかえって大きな損失を被ることになるので、告知は怠らないようにしましょう。
なお買主がどうやって事故物件を見分けるのか、知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
事故物件を建て替える3つのメリット
心理的瑕疵を抱えた事故物件はそのままでは売却できず、売れたとしてもかなり価格が安くなってしまいます。
適正価格に少しでも近付けたければ、事故物件を建て替えて価値を高めるしかありません。
事故物件を立て替えるメリットは以下の3つです。
後述するデメリットと併せて、売却前に事故物件を建て替えるかどうかの参考にしてください。
買い手がつきやすくなる
事故物件を建て替える1つ目のメリットは、買い手がつきやすくなることです。
建て替えれば少なくとも事故の心理的不快感は払拭できるので、そのままの状態よりは買い手がつきやすくなります。
実際に一度取り壊され、新しい建物に建て替わっていれば「事故物件でも気にしない」と考える人も少なくありません。
ちなみに、弊社が行ったアンケートで「事故物件に住むのは『あり?』『なし?』」で「あり」と答えた人が全体の28.6%でした。
引用元:AlbaLink「ブームの兆し!事故物件はあり?なし?983人にアンケート調査をしてわかった年収別の超意外な傾向とは?」
「事故物件もあり」の理由に「綺麗に清掃されていればよい」とコメントがあったことからも、立て替えて家屋が刷新されていれば、買い手が付きやすくなることが予想できます。
自由な間取りに設計できる
事故物件を建て替える2つ目のメリットは、自由な間取りに設計し直せることです。
リフォームのみでは、床や壁はきれいになっても、間取りや家の構造までは変えられません。
しかし家を建て替えれば、家屋の構造ごと再構築できるので、若い世帯向けの流行りの間取りに変更したり、最新の設備を設置したりすることも可能です。
事故物件を建て替えれば、賃貸やシェアハウスなど建物の用途そのものを見直すこともできるため、運用の可能性も広がるでしょう。
比較的資金調達がしやすい
事故物件を建て替える3つ目のメリットは、比較的資金調達がしやすいことです。
建て替えでは使える住宅ローンの種類が多く、古い住宅ローンが残っているかどうかで以下の選択に分かれます。
- 古い住宅ローンを完済している(抵当権が抹消されている)場合:一般的な住宅ローンに再度申し込める
- 古い住宅ローンが残っている場合:建て替えローンを利用する
建て替えローンは建て替え費用と残債を一本化して借り換えるローンのため、複数の返済を管理する必要はありません。
リフォームローンよりも低い金利で融資を受けられる点もポイントです。
なお、建て替えた事故物件に自分で住む場合は、要件を満たせば住宅ローン控除を受けられるケースもあります。
ただし2024年1月~12月31日までに建築確認を受ける新築住宅については、以下の「省エネ基準を満たす住宅」以外は控除を受けられなくなりました。
「認定長期優良住宅」「認定低炭素住宅」「ZEH水準省エネ住宅」「省エネ基準適合住宅」のいずれかで申請しなければならないため注意しましょう。
参照元:国土交通省「住宅ローン減税」
事故物件を建て替える5つのデメリット
続いて、事故物件を建て替えて売却するデメリットも解説します。
率直にいうと、事故物件を建て替えるメリットよりもデメリットのほうが多いといえます。
それぞれの事情や売却の都合に合わせて慎重に検討しましょう。
事故物件は建て替えで資産価値が上がるとは限らない
事故物件を立て替えるデメリットの1つ目は、建て替えで資産価値が上がるとは限らないことです。
先述したとおり事故物件になった時点で買主に心理的な抵抗感を感じさせるため、物件の売却価格はすでに相場よりも30%~50%ほど下がっています。
すでに資産価値が下がっているので、建て替え費用をかけると損になる可能性が高く、そのまま売却するよりもトータル収支が低くなる恐れがあります。
というのも事故物件を建て替えるには解体しなければならず、多額の解体費用がかかり、さらに多額の建築費用がかかります。
トータル支出が売却益を上回り収支がマイナスになる可能性があるので、数千万円かけて売却するのと、事故物件としてそのまま売却するのとどちらがよいか、検討が必要です。
なお事故物件を建て替えずに、そのまま専門の買取業者に売却する方法もあります。
事故物件専門の買取業者であれば、一般の買主に敬遠される事故物件でも問題なく買い取ってくれるので、一度相談してみるとよいでしょう。
弊社AlbaLinkも、事故物件の買取を得意とする訳あり物件専門の不動産買取業者です。
無料相談も承っていますので、事故物件の売却にお困りの方はお気軽にご相談ください。
事故物件を解体・建て替えしても告知義務は残る
事故物件を立て替えるデメリットの2つ目は、たとえ事故物件を解体・立て替えても告知義務はなくならないことです。
更地化や建て替えで、物件に対する心理的な抵抗は弱まるかもしれませんが、人が亡くなった事実は変わらないため、告知義務はなくならないのです。
例えば、過去に以下のような裁判事例があります。
東京地裁八王子支部 H12.8.31
事案:
約50年前に当該物件で凄惨な殺人事件が発生、その後建物は取り壊されていた。事件の存在を知った買主は、その事実を知っていた売主・仲介業者に対し、説明義務違反を理由として損害賠償を請求した。
判断:
農山村地帯における事件は、約50年を経過しても近隣住民の記憶に残っていると考えられ、買主が居住し近隣住民と付き合っていくことを考えると、本来の性質を欠く隠れた瑕疵である。売主らには瑕疵を告げなかった説明義務違反があることから、買主の請求に対し、売主に対して信頼利益の損害として売買代金の返還を認めた。
参照元:国土交通省「心理的瑕疵の有無・告知義務に関する裁判例について」
判例からは、建物が取り壊されても告知義務はあると判断されていることがお分かりいただけるでしょう。
告知義務の詳細についてはこのあと解説します。
告知義務とは
事故物件を売却する際には、心理的瑕疵が生じる事故の内容をありのまま買主に伝える義務があり、これを「告知義務」といいます。
事故物件の売却においては、物件の心理的瑕疵は買主の心理や判断に重大な影響を与えるため、瑕疵の事実を買主へ告知する必要があるのです。
心理的瑕疵には冒頭で解説した不自然な死のほか、物件近隣の「嫌悪・迷惑施設の存在」「暴力団構成員の居住」なども含まれます。
ただし、心理的瑕疵の捉え方は人によって異なり、国交省のガイドラインで「告知義務はない」とされる死因や事象であっても、買主によっては心理的抵抗を感じる可能性はあります。
売却後に「知っていたら買わなかった」と買主とトラブルにならないためにも、告知すべきか判断に迷うグレーゾーンの内容は、不動産業者の担当者に相談しましょう。
専門家である担当者(宅地建物取引士)が瑕疵を判断し、買主に適切に説明してくれるからです。
なお、告知義務の詳細は以下の記事でも解説しているので、参考にしてください。
告知義務が生じるケース
告知義務が生じるケースを整理しました。
- 自殺や殺人など、自然死以外の死
- 死後時間が経ち特殊清掃が行われたケース
老衰による死や病死、階段での転落、浴室での溺死など日常生活の不慮の事故死は、心理的な抵抗感が低く、告知義務はありません。
これらは買主や借主の契約時の判断に大きく影響する可能性は低いとされているからです。
とはいえ、実際には買主によって心理的瑕疵の捉え方は異なるため、売主は告知義務の有無を自己判断せず、売却を仲介する不動産業者に伝えることが大切です。
事故物件の売却時に不動産業者の担当者が買主へ告知事項を説明するため、心理的瑕疵に当たりそうな内容は不動産業者に伝えておきましょう。
告知義務が残る期間
結論から言うと、売買契約に関していえば、事故物件の告知義務に期限や時効はありません。
賃貸契約の告知義務がおおむね事故後3年までとされていることから、3年と記憶している方が多いかもしれませんが、売買契約では経過年数にかかわらず告知が必要です。
なお賃貸借契約でも「事件性、周知性、社会に与えた影響等が特に高い事案」に関しては、告知が必要とされています。
参照元:国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関する
ガイドライン」
実際に事故後年数の経過した物件の売買を巡って、以下のような裁判がありました。
【東京地裁 H29.5.25の判例】
事案:
買主は賃貸借の目的で本件土地建物の売買契約を締結したが、決済前に隣人より12年前に建物内で首吊り自殺があったことを聞き、売主に契約解除を請求。売主は本件事故の3年後に本件土地建物を競売で取得していたが、事故については長年経過していたことから買主に告知しなかった。
判断:
立地条件や買主が事故を知った経緯、建物が建て替え不可であったことを勘案すると、12年の経過によって自殺に対する嫌悪感が法的保護に値し得なくなったとはいえない。
よって、買主の契約解除請求を認める。
参照元:国土交通省「心理的瑕疵の有無・告知義務に関する裁判例について」
判例にもあるとおり、心理的瑕疵の判断には時間の経過よりも、物件個別の事情や地域性が優先される場合があります。
つまり、売り時を待っても事故物件の価値は上がらないということです。
むしろ事件の風化を待てば建物が老朽化する分、価値が下がってしまうでしょう。
近隣住民へのあいさつ回りが必要
事故物件を立て替えるデメリットの3つ目は、近隣住民へのあいさつ回りが必要になることです。
特に解体工事では、住宅街の真ん中で家一軒を丸ごと壊すことになります。
区画へ重機が入り、騒音や振動などで近隣に迷惑をかける可能性が高いため、近隣へのあいさつ回りをするのが一般的です。
具体的には、施主が工事施工担当者とともに、近隣住民へ以下の説明を行います。
- 騒音や振動が出ることへのお詫び
- 工事への協力のお願い
- 工事内容と期間の説明
もしあいさつ回りを怠ると、近隣からのクレームによって工事に支障が出てしまう恐れがあります。
抗議の矛先が工事の施工会社へ向かえば、最悪工事を中断することにもなりかねません。
また、ここで近隣の関係性を悪化させてしまうと、売却後の買主にまで影響が及んでしまう可能性があります。
そのため、解体工事前のあいさつ回りを「忙しいから」と省略したり、簡単な通知だけで済ませるのは避けましょう。
もしあいさつの仕方が分からず不安な場合は、慣れている解体工事施工会社の担当者に相談することをおすすめします。
解体後に地盤調査が必要
事故物件を立て替えるデメリットの4つ目は、解体後の地盤調査が必要となることです。
地盤調査とは、建物を安全に建てられる地盤かどうかをチェックする調査で、地盤自体の支える力や、地盤沈下を起こさない抵抗力などを測定します。
地盤調査は2000年の改正建築基準法で義務化されており、新築時だけでなく建て替えでも家を一から建てる以上、地盤調査が必要です。
地盤調査をしなければ法律上、住宅工事に着工できなくなるため注意しましょう。
地盤調査の方法には主に以下の3種類があり、土地の状態に合わせて適切な調査方法を選びます。
- ボーリング調査
- SWS試験(旧スウェーデン式サウンディング試験)
- 平板載荷試験
地盤調査の費用相場は約5万〜10万円程度ですが、調査の方法によって金額が異なります。
地盤調査で土地が基準値を満たしていれば、そのまま建物を建てられますが、基準値を下回った場合には「地盤改良工事」が必要です。
地盤改良工事には別途費用がかかりますが、それについては後述します。
そもそも建て替えできない可能性がある
事故物件を立て替えるデメリットの5つ目は、土地によってはそもそも建て替えできない可能性があることです。
土地によっては、すでにある建物を解体撤去した後、法律上新たな建物を建ててはならない土地があり、これを「再建築不可物件」といいます。
具体的には、建築基準法で定められた基準「幅員4m以上の道路に2m以上接していること」を満たしていない土地のことです。
上記の基準(接道義務)は緊急車両が入れるよう設けられましたが、旧建築基準法下では接道義務を満たさない物件も多数建築されており、法改正の結果、再建築不可となる物件が生じてしまったのです。
もし事故物件が再建築不可物件だった場合、一度解体してしまうと、そもそも家の建て替え自体ができません。
さらに解体後土地だけの状態で所有し続けると「住宅用地の特例」の対象外となり、固定資産税が最大6倍に跳ね上がるてんにも注意が必要です。
かといって更地にして土地だけで売却しようにも、家を建てられない土地を買いたい人はなかなか現れないでしょう。
そのため解体する前に再建築不可でないかどうかチェックしておく必要があります。
以下の書類を用意し、土地の所在する市町村の役所で調べておきましょう。
- 登記事項証明書
- 公図
- 地積測量図
- 建物図面
もしくは自治体のホームページで「指定道路図」を確認すれば、事故物件の接している道路が「建築基準法上の道路」かどうかが分かります。
ただしデータが新しいとは限らず、接道義務以外の再建築不可は分からないので、役所の窓口で聞くほうが確実です。
再建築不可物件についての詳細を知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
事故物件の建て替えにかかる6つの費用
実際に建て替えるかどうかを判断するうえでは、メリット・デメリットに加えて何にいくらかかるのか、費用の面から判断することも大切です。
ここでは事故物件の建て替えにかかる5つの費用を解説します。
参考までに、国土交通省「令和5年度住宅市場動向調査報告書」によると、一戸建ての建て替え建築費用の平均は5,745万円との統計が出ています。
売却にともなう建て替えが割に合うかどうか、検討が必要といえそうです。
解体費用の相場は90万円~240万円
事故物件の建て替えにかかる1つ目の費用は、解体費用です。
建物の構造などにより異なりますが、木造住宅の解体費用は坪3万円~5万円程度が相場といわれます。
30坪の建物を解体する場合の構造別費用相場は以下のとおりです。
- 木造…約90万円~150万円
- 鉄骨造…約110万円~200万円
- 鉄筋コンクリート造…約150万円~250万円
解体費用は作業の手間と難易度によるため、構造が頑丈なほど高くなります。
なお上記は建物本体の解体費用のみで、ブロック塀の撤去などは含まれていない点に注意しましょう。
そのほか、解体費用は以下の要因によっても左右されます。
- 重機の侵入可否
- 廃棄物の量
- 地中埋没物(浄化槽や井戸など)の有無
- 建材中のアスベストの有無
事故物件の築年数が古い場合は、建材にアスベストが使われている可能性があり、アスベストの撤去には追加で費用が必要です。
解体工事では整地まで行うため、地中のコンクリート片や瓦礫の撤去料金が後から加算される可能性もあります。
また作業料金は工期が長引くほど高くなるので、梅雨のような天候不順時に依頼すると高額になってしまうでしょう。
なお解体費用を抑えるポイントについては、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
登記費用は約20万円
事故物件の建て替えにかかる2つ目の費用は、登記費用です。
家屋の建て替え時には以下の4種類の登記が必要になります。
登記の種類 | 概要 | 費用の目安 |
---|---|---|
建物滅失登記 | 更地となり登記簿に建物が滅失した事実を登記 | 4万~5万円 |
建物表題登記 | 建て替えた新しい建物の住所や構造、面積などを登記 | 8万~9万円 |
所有権保存登記 | 建て替えた新しい建物の所有者を登記 | 2万~3万円 |
抵当権設定登記 | 新しい建物に住宅ローン借入の抵当権を設定するための登記 | 3万~5万円 |
これらの登記費用のトータルは約20万円です。
なお登記手続きは自分で行うことも可能で、費用を節約したい場合は法務局へ以下の書類を持参し、手続きを行ってください。
- 登記申請書
- 本人確認書類
- 印鑑証明・実印
- 住民票の写し
- 所有権証明書
- 建物図面・各階平面図
- 公図
- 表題登記完了証または登記事項証明書
ただし住宅ローンを利用する場合の「抵当権設定登記」については、書類に不備があるとローンの手続きができなくなる恐れがあるため、専門家へ依頼するほうが安心です。
抵当権設定登記を司法書士へ依頼する場合の費用相場は、5万~10万円ほどかかります。
他の登記についても、書類をすべて整備する手間と時間を考えたら、20万円かけて丸ごと依頼するほうが賢明かもしれません。
地盤改良工事は30万~180万円
事故物件の建て替えにかかる3つ目の費用は、地盤改良工事費用です。
先述したとおり、地盤調査で土地が基準を満たさなかった場合は、地盤改良工事を行わないと建物を建てることができません。
参照元:e-Gov法令検索「建築基準法施行令第38条第3項」
地盤改良工事の費用相場は以下のとおりです。
工法 | 坪あたり費用 | 30坪換算総額 |
---|---|---|
表層改良工法 | 1万~2万円 | 30万~50万円 |
柱状改良工法 | 2万~3万円 | 50万~80万円 |
鋼管杭工法 | 4万~6万円 | 100万~180万円 |
上記のどの工法を使うかは、地盤調査の結果を見て判断されます。
つまり地盤改良工事費用は、地盤調査の結果を見るまで分からず、事前に予算を立てられないため注意が必要です。
もし新しい家屋の設計が進んでから、予想外の地盤改良工事費用がかかって予算オーバーになった場合は、他の工事を減額するしかありません。
そのため事故物件の建て替えを計画する段階から、地盤改良工事費用を見込んでおくことが大切です。
設計・建築費用は坪あたり50万円
事故物件の建て替えにかかる4つ目の費用は、設計・建築費用です。
事故物件を解体後、建物を新築する費用相場は坪あたり50万円程度です。
ただし設計・建築費は建物のグレードや設計、デザインなどにより幅があります。
依頼先によっても費用相場は異なり、工務店や一流ハウスメーカーなどへ依頼すると上記よりもさらに高額になります。
ちなみに住宅金融支援機構の「フラット35利用者調査」による2023年度の全国の平均建築費は3,861万円でした。
家屋の建築費用には地域差もあり、首都圏では4,190万円、三大都市圏以外では3,623万円となっています。
お祓い費用は3万~8万円
事故物件の建て替えにかかる5つ目の費用は、お祓いの費用です。
お祓いとは、事故物件にまつわる供養を行うことで厄災を取り除く儀式を指し、一般的には神社やお寺に依頼します。
お祓いの費用相場は自然死で3万円、自殺で5万円、他殺であれば8万円前後です。
結論から言うと、事故物件のお祓い(供養)は義務ではありません。
しかし事故物件が多くの買主や借主に不吉な心象を与えている以上、お祓いを行っておくほうが安心でしょう。
お祓いで死者を適切に弔えば、購入や賃借を検討している人は事故物件への心理的抵抗が和らぎ、売主・貸主への信頼感にもつながります。
神社によってはお祓い証明書を発行してくれるところもあるので、売却時の物件案内に掲載するとよいでしょう。
なお、お祓いの必要性と費用については、以下の記事でも詳しく解説しているので参考にしてください。
事故物件を建て替えしないで活用する4つの方法
せっかく高額な費用をかけて事故物件を建て替え・更地化するのなら、心理的瑕疵に関係なく活用できる方法を考えたいところです。
ここでは建て替え以外に、心理的瑕疵に囚われず事故物件を活用できる方法を紹介します。
駐車場にする
事故物件を活用する1つ目の方法は、駐車場にすることです。
駐車場なら人が住むわけではないので、心理的瑕疵とは無関係に事故物件の土地を運用できます。
事故物件を更地化して駐車場にするメリットは以下のとおりです。
- 初期費用が安い
- 狭い敷地でも始められる
- 管理の手間がかからない
月極駐車場なら、整地や舗装をして駐車環境を整備すれば済むため、数万円の初期費用で始められる場合もあります。
維持管理費もアパートやコイランドリーなどに比べればはるかに少額です。
ただし一見ローリスクの駐車場でも、収益化するにはそれなりの経営手腕が必要で、以下のリスクに対処しなければなりません。
まず駐車場は小規模宅地の特例適用外となるため、事故物件そのままのときよりも固定資産税は高くなり、最大6倍にアップします。
また、コインパーキングの場合は、精算機その他の機器トラブルなどで24時間対応が必要です。
一方月極駐車場では賃料滞納や不正駐車を防ぎにくく、収支が圧迫されるケースも少なくありません。
今後は相続不動産で駐車場運営を始める競合が増えると予想され、よほど入念な市場調査を行わないと、収益化は難しいといえそうです。
貸倉庫・トランクルームにする
事故物件を活用する2つ目の方法は、貸倉庫・トランクルームにすることです。
荷物を置くだけなら、事故物件でも心理的瑕疵を気にする必要はなく、立地もそれほど選びません。
トランクルームは敷地に収納スペースを設置し、契約期間に応じて荷物を預かるサービスで、平均的な初期費用は約200〜800万円といわれています。
事故物件のキャパシティに応じて、コンテナタイプかコインロッカータイプを選ぶとよいでしょう。
コインロッカータイプなら簡単なリフォームと防犯カメラ程度の設置で済むため、初期費用を抑えられます。
敷地が広めの住宅地ならトランクルーム、郊外なら貸倉庫という選択肢もあります。
ただし貸倉庫・トランクルームも小規模宅地の特例適用外となるほか、コンテナ自体にも固定資産税がかかり、税負担は重くなるため注意が必要です。
収支予測で税負担を見落としていると、資金繰りに失敗する恐れがあります。
また、もしトランクルームを一般的な賃貸借契約でなく倉庫業として運営する場合には、国土交通大臣の登録および許認可が必要です。
もし無登録で倉庫業を営業してしまうと、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金に処されるため、注意しましょう。
借地として事業者に貸す
事故物件を活用する3つ目の方法は、借地として事業者に貸すことです。
更地化して土地を賃貸するなら、事故物件でもそれほど心理的瑕疵を気にせずに済み、事業を運営する労力もほとんどかかりません。
事故物件の立地が交通量の多い街道沿いで、車が出入りしやすい土地であれば、活用したい事業者は多いはずです。
例えば、以下の業態へテナント用の土地を貸すと考えるとイメージしやすいでしょう。
- スーパー
- 量販店
- コンビニ
- ファミレス
- スポーツジムなどのフランチャイズ事業
これらの運営会社に「事業用定期借地」として貸し出せば、安定した賃料収入が期待できます。
ただし事業者向け土地賃貸は、基本的に車でのアクセスが良い立地で、敷地が広くなければ成立しません。
また通常は敷地を丸ごと貸すためリスクを分散できず、退去されると収入が0になる点にも注意が必要です。
民泊にする
事故物件を活用する3つ目の方法は、民泊にすることです。
民泊(住宅宿泊事業)とは、民家の全部または一部を宿泊用に提供する宿泊サービス形態のことです。
従来の旅館よりも緩めの要件で宿泊事業を運営できるため、近年注目を集めています。
事故物件を宿泊施設にすれば、居住ほどには利用者に心理的瑕疵が及ばないうえ、外国人であれば気にする人もいないでしょう。
事故物件が観光地の近くにあるか、交通の便が良い場所なら、集客次第で収益化も可能です。
なお民泊を始めるには「住宅宿泊事業法第3条第1項」に定められた届出をする必要があり、法に定める要件を満たす必要があります。
【設備要件】以下のすべてを備えていること
- 台所
- 浴室
- 便所
- 洗面設備
【居住要件】以下のいずれかを満たすこと
- 現に人の生活の本拠として使用されている家屋
- 入居者の募集が行われている家屋
- 随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋
参照元:国土交通省「住宅宿泊事業法(民泊新法)とは? | 民泊制度ポータルサイト『minpaku』」
ただし、民泊事業は観光地やアクセスのよい場所など、外国人にニーズがある土地でなければ収益化できない可能性があります。
また宿泊者のマナーが悪いと近隣に迷惑がかかる点にも注意点です。
なお、民泊は旅館業との兼ね合いで、宿泊させる日数が年間180日を超えてはならないと定められています。
180日を超えて民泊を営業した場合、旅館業法違反として6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金に処されるため注意が必要です。
参照元:>住宅宿泊事業者編 |「民泊制度ポータルサイト『minpaku』」
言い換えると年間稼働率はMAX50%ということになり、初期投資の回収が進みにくいかもしれません。
なお民泊の運営ノウハウについては、以下の記事で詳しく解説しているので、事故物件の立地が良い方は参考にしてください。
事故物件は専門の買取業者にそのまま売却できる
ここまで事故物件を建て替えるメリット・デメリットと諸費用、活用するさまざまな方法を解説してきました。
結論、費用や手間、時間をかけて家屋を立て替えなくても、事故物件専門の買取業者ならそのままの状態で買い取ってくれます。
専門の買取業者は事故物件を買い取ってから、再販のためにもっとも有益なリフォームを行うので、売主側で物件の解体や建て替え、リフォームをする必要はありません。
さらに事故物件の心理的瑕疵も把握した買取業者が直接物件を買い取るため、譲渡先とトラブルになる心配もありません。
専門の買取業者へ売却すれば、売主の契約不適合責任が免責されることもメリットです。
そして優良な専門買取業者ほど、豊富な買取・再販ノウハウを活かしてどんな事故物件でも高額・スピーディーに買い取れます。
弊社AlbaLink(アルバリンク)は、事故物件などの訳あり物件を専門に買い取る不動産買取業者です。
これまで弊社では、他社では断られるような事故物件を多数買い取ってきました。
実際、弊社は下記のように「孤独死」「自殺」「溺死」などさまざまな事故物件を全国から買い取っています。
上記の買取金額を見ていただけばわかる通り、弊社は事故物件であっても物件全体の価値を適切に評価し、適正価格で買い取っています。
買取業者の中にはホームページなどで「事故物件を買い取ります」とアピールしておきながら、実際はタダ同然の買取価格しかつけない業者も存在します。
弊社がそうした業者とは違うことが、この買取価格を見て頂けばわかっていただけると思います。
実際、事故物件をはじめ、弊社に物件の買取依頼をしていただいたお客様からは「思った以上の高値で買い取ってもらえた」「もっと早く依頼すれば良かった」といった感謝の言葉を多数いただいております(下記Google口コミ参照)
また、弊社はお客様からの評価が高いだけでなく、不動産買取業者としては数少ない上場企業でもあり、社会的信用も得ています。
そのため、事故物件というデリケートな対応が求められる物件も、売主様のプライバシーを守りながら、速やかに高値で買い取らせていただきます。
信頼できる買取業者に安心して事故物件を売却したい方はぜひ一度弊社の無料買取査定をご利用ください(査定依頼をしたからといって、無理な営業などは行いませんのでご安心ください)。
事故物件だけでなく再建築不可や権利関係の複雑な物件など、さまざまな「訳あり物件」の買取実績が豊富なため、他社で断られた古い空き家でも価格を付けて買取が可能です。
事故物件の心理的瑕疵で売れずにお悩みの方は、ぜひ弊社へご相談ください。
まとめ
事故物件の建て替えには解体費や建築費、地盤改良工事など多額の費用がかかります。
反面、売却価格は、一度事故物件になった時点で心理的瑕疵により大幅に下落し、事故の内容によっては相場の50%以下にまで下がってしまいます。
事故物件の告知義務は、解体・建て替えをしたり、お祓いをしても消えることはなく、物件の価値もほとんど上がりません。
居住目的以外で事故物件を活用する方法もありますが、いずれも高度な運営ノウハウを求められるため、取り組むには入念な準備と戦略、それなりの覚悟が必要です。
もしお金や手間など多くのリスクを負わずに事故物件を手放したいなら、事故物件専門の買取業者へ売却するのがベストです。
専門の買取業者なら、一般の買主が敬遠する心理的瑕疵のある事故物件でも、問題なく買い取ってくれます。
なぜなら専門の買取業者は買い取った物件を再生・再販する豊富なノウハウを持っていて、事故物件を収益に変えられるからです。
弊社AlbaLinkは、事故物件などの訳あり物件を専門に扱う買取業者です。
他にも築年数の進んだ空き家や再建築不可物件、共有持分などのさまざまな訳あり物件を買い取ってきた実績があります。
そのため他社で断られたような事故物件でも、豊富なノウハウを活かして高値で買い取ることが可能です。
事故物件を建て替えてでも売却したいとお考えの方は、ぜひ弊社へお気軽にご相談ください。
専門のスタッフが最善の解決策を提示させていただきます。