高齢の入居者が少ない物件でも孤独死のリスクは減らない
孤独死は、主に「身寄りのいない高齢者が住居内でひとりで亡くなる」というイメージが強いかもしれません。
しかし、若い世代でも孤独死のリスクは増加しています。
日本少額短期保険協会がまとめた「孤独死現状レポート(3ページ目参照)」によると、孤独死が判明した約5,000人のうち、20〜50代の現役世代が40%を占める結果となりました。5000人のうち、60代以上の高齢者の割合は60%です。
孤独死と聞くと、高齢者が部屋で老衰によって亡くなるというイメージがあるかもしれません。
しかし現在では、年齢に関係なく孤独死のリスクが増加しているのです。
世代に限らず孤独死が増加しているため、貸主も「自分の物件は高齢者が少ないから安心」と油断すべきではありません。
万が一の事態に備えて、孤独死保険(入居者が死亡した際に家賃や原状回復費用などを補填してくれる保険)への加入などによって対策を講じる必要があります。
部屋を返却する際、入居前の状態へ近づけるために必要な清掃などに用いる費用。人が亡くなった部屋では体液や悪臭などが発生している事もあるため、通常のクリーニングではなく特殊清掃による原状回復が必要なケースもあります。
孤独死が発生後も賃貸契約は継続する
賃貸物件で孤独死が発生した場合、大家や管理会社などの貸主が賃貸契約を勝手に解除することはできません。
締結していた賃貸契約は、亡くなった入居者の法定相続人が引き継ぎます。
賃貸契約を解除する場合は、相続人の同意が必要です。
賃貸契約の相続人への引き継ぎについては「民法第896条」で定められています。
相続の一般的効力
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
亡くなった入居者に賃貸契約を引き継ぐ相続人がいない場合、相続財産清算人を選出します。
相続財産清算人とは、被相続人に相続人がいなかったり、全員が相続放棄をしたりした場合に選出する人物です。
被相続人の借金支払いや納税などを引き継いで管理します。
弁護士など専門知識がある人物を相続財産清算人として、家庭裁判所が選任します。
賃貸契約が継続している限り家賃も発生する
亡くなった入居者の賃貸契約を解除しない限り、家賃の支払い義務も相続人に引き継がれるため、貸主は請求できます。
貸主が請求できる家賃の金額は「部屋の明け渡しが完了し相続人から鍵が返却された日まで」の分です。
相続人には、被相続人の部屋を引き継いで使う予定がないのであれば、早めに賃貸契約の解除を促したほうが余分な支出は発生しません。
未払いの家賃は連帯保証人や相続人に請求可能
貸主は、賃貸契約継続中の家賃に加えて、亡くなった入居者が未払いだった家賃も連帯保証人や相続人に請求できます。
しかし、未払い家賃の金額が大きいと、相続人が相続放棄によって支払いを回避するケースもあります。
相続放棄によって未払い家賃の請求相手がいない場合は、先述の相続財産清算人を選出しましょう。
家庭裁判所に申し立てることで選任してくれます。
もし連帯保証人がいれば、相続人よりも先に貸主への家賃支払い義務が発生します。
連帯保証人が相続人も兼ねている場合は、連帯保証人としての支払い義務が優先されるため、仮に相続放棄をされても貸主は連帯保証人に対して家賃を請求可能です。
家賃滞納等の問題があれば貸主側から賃貸契約を解除できる
先述の通り、入居者の死後も賃貸契約は相続人に引き継がれるため、貸主は勝手に解除できません。
しかし、入居者の生前に「家賃滞納をしていた」などの問題行動があれば、貸主から相続人に対して賃貸契約解除を請求できます。
貸主から強制的に契約解除できる入居者の問題行動の例としては以下が挙げられます。
- 家賃の滞納が3ヶ月以上あった
- ペット禁止の物件でペットを飼育していたなどの契約違反
- 近隣住民との間に繰り返しトラブルがあった
- 部屋にゴミを溜めることで悪臭や害虫を発生させていた
- 部屋を貸主に無断で第三者に貸していた
- 騒音トラブルを引き起こしていた
ただし、部屋の中にある残置物(家電や私用品など故人の持ち物)については、賃貸契約解除後も含めて相続人に所有権があるため、貸主は勝手に処分できません。
相続人などの了承を得ず貸主が勝手に残置物を撤去した場合、器物損壊罪などに該当し損害賠償請求されるケースもあります。
上記のような残置物撤去に関するトラブルを引き起こさないよう、貸主は事前に入居者と「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を参考に契約を締結しておくとよいでしょう。
モデル契約条項を確認すると「入居者死亡後の賃貸契約解除」「残置物撤去」などについて、入居者が指定の受任者に委任することができます。
指定された受任者は、入居者の死後から少なくとも3ヶ月経過した時点で残置物を廃棄できます。
生活保護受給者が亡くなった場合、貸主が家賃を負担するケースが多い
入居者が孤独死した際、家賃を負担する順番については法的に「連帯保証人→相続人→大家や管理会社」という優先度が設けられています。
しかし、亡くなった入居者が生活保護受給者だった場合、貸主が家賃負担を強いられるケースも少なくありません。
生活保護の受給条件として親族や身内からの援助がないという内容が盛り込まれているため、状況的に相続人や連帯保証人を立てるのが困難なためです。
相続人や連帯保証人がいたとしても、相続人や連帯保証人に支払い能力がないケースも考えられます。
生活保護受給者の場合は、入居者の周囲の人物から支払いが期待できないため、貸主が家賃負担せざるを得ないことが少なくありません。
貸主の家賃負担を減らすための方法として「孤独死保険」への加入がおすすめです。
孤独死保険に加入しておくことで、入居者が孤独死した際に未払いの家賃や原状回復費用などが補填されるため、貸主の負担を軽減できるでしょう。
孤独死が起きた賃貸物件は原状回復費用や損害賠償を請求できる
入居者が孤独死した場合、貸主は相続人などに対して、未払い分も含めた残りの家賃を請求できます。
入居者の死因や状況によっては、貸主は家賃以外にも原状回復費用や損害賠償を相続人に請求できます。
入居者の死が単なる孤独死ではなく、自殺など「故人に過失がある」と認定されるケースでは、貸主は相続人に「原状回復費用」「損害賠償」を請求できます。
損害賠償請求金額は、「新たな入居者の募集時に減額した家賃分」「部屋の空室期間に大家に支払われるはずだった家賃額」をもとに算出されます。
自殺などで入居者が亡くなった場合、大家は事故の事実を次以降の入居者に告知しなければなりません。
人が亡くなった部屋に嫌悪感を抱く方もいるため、大家は入居者を集めるにあたって、家賃を減額するケースもあります。
場合によっては新たな入居者が見つからないこともあるでしょう。
実際に、「賃貸物件を選ぶ際に事故物件かどうかを気にする方」は約9割を占めていることが下記アンケート調査からわかります。
損害賠償請求では、上記のような家賃減額や空室期間の発生による貸主への損害を相続人に請求できます。
相続人に対して損害賠償請求が認められた判例としては以下が挙げられます。
賃貸住宅の浴室で自殺した借主の相続人(姉)に対して、4年間分の家賃減額分(84万円)と原状回復費用(浴室の交換費用約58万円)の支払い義務が発生しました。
事故物件の損害賠償責任を遺族が負うケースについては、以下の記事で詳しく解説しています。
自然死や病死の場合、損害賠償などは請求できない
貸主から相続人へ損害賠償請求ができるのは、入居者の死因が自殺など「本人に過失がある」と認定された場合です。
自然死や病死、日常生活での不慮の死などやむを得ない状況で死亡した場合、貸主は相続人に損害賠償を請求できません。
相続人に対する損害賠償請求が認められなかった事例としては以下が挙げられます。
入居者が布団の中で死亡しているところも発見されましたが、自殺をしたとは認められなかったことから、貸主から相続人に対する損害賠償や原状回復費用の請求は却下されました。
孤独死が事故物件にならない理由については、以下の記事で詳しく解説しています。
入居者の相続人が相続放棄している場合は家賃や賠償などを請求できない
未払い家賃のケースと同様に相続人は、相続放棄によって貸主への賠償請求支払いも回避できます。
連帯保証人がいれば、相続人よりも先に損害賠償金の請求相手となります。
「連帯保証人=相続人」というケースであっても、連帯保証人としての支払い義務が優先されるため、相続放棄した場合でも貸主に対して損害賠償をしなければなりません。
孤独死が発生した際の貸主の負担を軽減する方法
高齢者の入居者が多い物件では今後、孤独死の事故が増加するおそれもあります。
病死や日常生活における不慮の死などやむを得ない状況で亡くなっている場合、貸主は入居者の相続人に損害賠償などを請求できません。
賠償金を請求できないため、仮に家賃を減額して新たな入居者を募集する事態になっても、本来受け取るはずだった差額分は補填されず貸主に負担がのしかかります。
とくに生活保護受給者が建物内で亡くなった場合、相続人や連帯保証人がいないケースもあるため、残りの家賃すら請求できないことも少なくありません。
請求できなかった分の家賃も、貸主が負担する必要があります。
上記のように、孤独死が発生した場合は貸主に対して金銭的な負担が襲いかかります。
孤独死が発生した際の負担を軽減するために、「孤独死保険の加入」「家賃保証への加入」などの対策を講じておくことが重要です。
孤独死保険への加入
孤独死保険とは、孤独死によって生じる原状回復費用の支払いや家賃減額などの金銭的損失を補填する制度を指します。
孤独死以外にも、自殺や他殺などのケースで補填が可能です。
孤独死保険には、「大家加入タイプ」「入居者加入タイプ」の2種類があります。
孤独死保険の種類 | 補償内容 |
---|---|
大家加入タイプ | 孤独死が起きた際に「家賃・原状回復費用・遺品整理費用」を補償してもらえます。 |
入居者加入タイプ | 被保険者が入居者となり、孤独死が発生した際に相続人は「原状回復費用・遺品整理費用」の受け取りが可能です。 |
貸主は入居時の契約条件として、孤独死保険(入居者加入タイプ)への加入を設けることができます。
ただし、具体的な保険会社まで指定すると独禁法に違反する可能性があるため注意が必要です。
家賃保証への加入
家賃保証会社の中には、孤独死が発生した場合のプランや特約を用意しているところもあります。
孤独死に対応している家賃保証会社へ加入すれば、未払い家賃に加えて原状回復や残置物撤去に必要な費用も受け取りが可能です。
貸主が家賃を減額して新たな入居者を募集した場合は、減額分や空室期間の補償を受け取れるケースもあります。
終身建物賃貸借契約の締結
終身建物賃貸借契約とは、「入居者が死亡した際に賃貸契約を相続人に引き継がず解除する」ということを前提にして締結する契約のことです。
入居者の死亡によって賃貸契約が自動で解除されるため、「相続人が見つからず不要な契約が続く」という状況を回避できます。
不要な契約が続く状況を回避できれば、空室期間が生まれないため次の入居者探し期間を短縮可能です。
残置物の処分についても相続人の了承を得る必要はありません。
孤独死発見からの流れ
孤独死を発見したら、現場には立ち入らず以下の手順で対応していきましょう。
孤独死発見からの流れ
- 警察へ通報する
- 警察が現場検証を実施する
- 警察が身元確認の後、遺族へ連絡する
- 賃貸契約に関する遺族との話し合いを行う
- 部屋の明け渡しに向けて動く
入居者を見つけた段階で「まだ生死がわからない」という場合は救急車を呼びましょう。
救急隊によって入居者の死亡が確認されれば、改めて警察に連絡してくれます。
貸主が部屋に入ったとしても、むやみに室内の物品はいじらないでおきましょう。
警察が現場検証を行う際に、不必要に貸主の指紋などがあると事件性を疑われてしまいます。
なお、事故物件の対処法については、以下の記事で詳しく解説しています。
入居者の死亡が発生した場合は告知義務が発生する
孤独死も含めて、人が亡くなっている物件に対して嫌悪感を抱く方も少なくありません。
入居者が亡くなった事実を伝えずに新たな借主が住み始めた場合、貸主との間で損害賠償トラブルなどに発展するケースもあります。
上記のようなトラブルを防ぐために、貸主は「部屋で人が亡くなった」という事実を新たな入居者に告知しなければなりません。
参照元:宅地建物取引業法第35条・47条
自殺など入居者に過失があるものは告知が必要
貸主から新たな入居者へ告知が必要となるのは、自殺など「本人に過失がある」と認定されたケースです。
賃貸物件では、事故が発生してから概ね3年間は、新たな入居者に対して死亡の事実を告知しなければなりません。
告知を怠ると、入居者から家賃減額や引っ越し代金を請求されることもあります。
自然死や病死は告知が不要
新たな入居者への告知が必要となるのは、自殺など本人に過失があるケースです。
孤独死や日常生活における不慮の死の場合は、やむを得ない状況での事故であると判断できるため、新たな入居者への告知義務は発生しません。
ただし、自然死でも「発見までに時間を要した影響で、大規模な原状回復が必要になった」などの事情がある場合は、告知義務が発生するケースもあります。
自然死でも告知義務が発生するケースについては、以下の記事で詳しく解説しています。
家賃回収や入居者探しで苦労しそうなら売却も検討する
持ち物件内で孤独死が発生した場合は、亡くなった入居者の相続人に対して未払い家賃や原状回復費用などを請求できます。
しかし、相続放棄をされたり死亡した入居者に身寄りがいなかったりするケースでは、貸主が費用を負担しなければなりません。
死因が自殺の場合は新たな入居者に対して告知が必要なため、イメージの悪さから次の入居者が決まらず、空室期間が長引き家賃収入が低下することもあるでしょう。
家賃回収や次の入居者探しに苦戦し不動産経営が困難になるのであれば、売却することも視野に入れるべきです。
売却時は専門業者を利用することがおすすめ
売却時は不動産買取業者へ依頼すると、そのまま買い取ってもらえるためスムーズです。
わざわざ買主を探す必要もありません。
とはいえ「部屋で人が亡くなった」という事実がある以上、購入を渋る不動産買取業者も少なくありません。
告知義務がない孤独死や自然死だとしても、事故の事実があるだけで入居者からのイメージが低下するためです。
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Albalinkは孤独死物件も買い取れる
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まとめ
孤独死が発生した場合、貸主は相続人などに残りの家賃を請求できます。
入居者が亡くなった原因が、自殺など「本人に過失がある」と認定された場合は相続人に対して損害賠償請求も可能です。
ただし、相続人が相続放棄をしてしまうと家賃や損害賠償などを請求できないため、貸主の金銭的負担は膨らんでしまいます。
そもそも孤独死の場合は身寄りがいないケースもあるため、貸主の負担が大きくなるケースも少なくありません。
金銭的負担を減らすためにも、貸主は「孤独死保険への加入」など対策を講じることが必要です。
もしも家賃の回収が難しかったり、事故物件になったことで新たな入居者探しで躓いたりして賃貸経営が立ち行かなくなりそうな場合は、建物の売却も検討しましょう。
事故物件専門の買取業者であれば、人が亡くなった物件であっても問題なく買い取ってくれるケースがほとんどです。
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