底地の買取相場は一概にいくらとは言えない
底地の買取相場は更地価格の1割〜5割程度と幅が広いのが特徴です。
価格差が大きい理由は、借地人との契約形態・契約の残存期間・誰に売却するか等の要素によって価値が大きく変動するからです。
まずは、底地の概要・借地の概要と、買取相場が安い理由を解説します。
底地とは
底地とは、第三者が建物を所有する権利を持つ土地です。
地主は底地の所有者ではあるものの、実際に土地を使う権利は借地人が持っているため、自由に土地を活用できません。
その代わり、底地の所有者は借地人から毎月の地代・更新時の更新料・譲渡時の手数料などを受け取れるメリットがあります。
借地とは
一方、借地とは建物を建てるために他人から借りている土地です。
底地と借地は同一の土地を指し、貸し手の視点では底地・借り手の視点では借地と呼ばれます。
また、土地を貸して地代等を受け取る権利を「底地権」、借りた土地を使用する権利を「借地権」と呼びます。
更地価格より買取相場が安い理由
更地に比べて底地の買取価格が低くなる理由は、借地権による使用制限にあります。
借地契約が続いている間、地主には以下のような制約があります。
- 底地を購入しても土地を自由に活用できない
- 借地人から得られる地代収入が少なく収益性が低い
- 借地人との間に地代トラブルが起こる可能性がある
このように、底地は自由な土地活用ができない上に収益性も低いというデメリットを抱えています。
そのため、購入者にとっては通常の更地よりも魅力が低く、買取価格も下がりやすい傾向にあるのです。
価格が下がる理由の詳細は、「底地の売却額が更地よりも安い3つの理由」で解説します。
底地の買取相場は4つの要素で決まる
底地の買取相場は、以下4つの要素で決まります。
実勢価格の概要と調べ方
底地の買取相場を算出するための最初のステップは、実勢価格を把握することです。
この章では、実勢価格の概要と調べ方を解説します。
土地の実勢価格とは
実勢価格とは、不動産市場で実際に取引が成立した価格です。
当事者間で実際に合意された価格であるため、市場動向をもっともリアルに反映した信頼度の高い数値といえます。
実際の売買価格は土地の利便性や売主の売却事情によっても異なりますが、相場観の把握には役立ちます。
土地の実勢価格の計算方法は5つある
土地の実勢価格の計算方法は、主に以下の5つです。
- 不動産ポータルサイトの販売事例から調べる
- SUUMO・アットホーム・LIFULL HOME’Sなどで類似物件の売り出し価格を参考にする
- 地価公示・都道府県地価調査から調べる
- 毎年公表される、国土交通省による「公示地価」、各都道府県による「基準地価」を参考にする
- 相続税路線価から調べる
- 国税庁が公開している路線価(相続税評価額)から土地の評価額を算出する
- 固定資産税評価額から調べる
- 市区町村が固定資産税を課税するために定めている土地の評価額。固定資産税納税通知書に記載されている評価額の約70%が公示地価といわれている
- 取引事例から調べる
- 過去の土地売買における実際の成約事例を閲覧して参考にする
上記の中でもっとも簡単なのは、不動産ポータルサイトを使って近隣の類似物件と比較する方法です。
もし、不動産ポータルサイトに類似物件がなければ、過去の取引事例から調べる方法もあります。
取引事例から実勢価格を調べる方法
国土交通省が運営する「不動産情報ライブラリ」でも取引事例が公開されており、実勢価格を確認できます。
不動産情報ライブラリで、実勢価格を調べる手順は以下の4ステップです。
- 「データの検索・ダウンロード」をクリックする
- 調べたい地域を入力する
- 不動産の種類を「土地」に絞る
- 調べたい時期を選択して、「一覧表示」をクリックする
上記のように、不動産情報ライブラリを利用すると成約価格や土地面積、接道状況など、更地の売却に関する詳細な情報がわかります。
底地権割合を調べる
底地権割合とは底地権・借地権の価値を合わせた総額のうち、底地権が占める割合です。
この割合がわかると、土地全体の評価額から底地の価格をおおよそ算出できます。
底地権割合とは
底地権割合とは、借地として貸している土地のうち、地主側に残る権利の価値の割合です。
反対に、借地人が持つ権利の割合を借地権割合といい、通常は借地権割合・底地権割合を足すと100%になります。
底地権割合は、「土地全体1(100%) – 借地権割合」で算出でき、その割合については相続路線価図で確認ができます。
引用元:国税庁|路線価図の説明
路線価図の道路上に記されている数字は、土地1㎡あたりの相続税評価額を1,000円単位で表記したものです。
数字の隣のアルファベットは借地権割合を示しています。
「300C」であれば、評価額は1㎡あたり30万円・借地権割合は70%・底地権割合は30%とわかります。
実際に底地の価格を計算してみる
実際に底地の価格を、実勢価格5,000万円・借地権割合が60%の例で計算します。
実勢価格 × 底地権割合(1-借地権割合) = 底地評価額より、
5,000万円 × 0.4(1 – 0.6) = 2,000万円
相続税路線価は実勢価格の約8割水準で設定されているため、
2,000万円 ÷ 0.8 = 底地価格:2,500万円
上記の計算例では、底地価格は2,500万円程度と算出できました。
借地権の種類によって相場は変わる
ここまでの計算で底地の市場相場は算出できましたが、これはあくまで一般的な目安に過ぎません。
実際の取引価格は、借地権の種類によって大きく変動します。
借地権には「普通借地権」と「定期借地権」「使用貸借」の3種類があります。
普通借地権
普通借地権とは、契約の更新ができる借地権を指します。
普通借地権の底地の買取相場は、通常の土地と比べて大幅に安い価格で取引される傾向にあります。
理由を一言で言うと、普通借地権で土地を貸し付けているのであれば、地主の意思で土地の完全な所有権を取り戻せないからです。
普通借地権の存続期間は一般的に30年ですが、借地借家法により借地人の権利が強く保護されているため、30年以降の契約の更新も、基本的に地主は拒否できません。
底地所有者(地主)の土地に対する自由度が低いのは当然のことですが、土地を自由に使えるようになるのがいつになるか、全く見当がつかないのが「普通借地権」です。
定期借地権
定期借地権とは、契約の更新ができない借地権を指します(借地人が継続して土地を使い続けたい場合は、地主の合意のもと、再契約しなければなりません)。
定期借地権で貸し付けている土地(底地)の買取相場は、契約期間の残存期間が短いほど高額になります。
理由は、定期借地権の契約期間が満了したら、底地所有者は土地の完全な所有権を手に入れられるからです。
なお、契約期間が満了し、土地の完全な所有権が返ってきてから売却すれば、通常の土地と同様の価格で売り出せます。
定期借地権の契約満了時期が迫っているなら、契約を解除してから通常の土地と同様に売り出すのも賢い方法でしょう。
使用貸借
使用貸借とは、無償で土地を貸している状態を指します。
たとえば、親が所有する土地に子どもが家を建てるようなケースは使用貸借に該当します。
使用貸借で土地を貸し付けている場合、地主はいつでも賃借人に退去を命じることができます。
使用貸借で貸し付けている土地を売却したいのであれば、借地人を退去させてから、通常の土地と同様の価格で売り出しましょう。
借地権についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事もご参照ください。

売却先によって買取相場は変わる
底地の売却価格は、下記のように「誰に売るか」によっても変動します。
借地人に買取してもらうなら更地価格の50%程度
借地人に底地を売却する場合、更地価格の50%程度での取引になるのが一般的です。

これは、借地権割合が通常30%〜90%の範囲で設定されており、多くのケースでは40%〜60%となるため、底地権割合も同様の割合になるのが理由です。
近隣の更地価格が5,000万で借地権割合が50%だった場合は、2,500万円が借地人への売却相場となります。
また、借地人は土地の完全所有権を手に入れられるため、建て替えや売却などが自由に行えるようになります。
こうした借地人のメリットが大きいこともあり、第三者に売却するよりも借地人に売却するほうが、買取価格は高額になる傾向にあるのです。
ちなみに、このような限定的な状況下で成立する相場を、不動産業界では「限定価格」と呼びます。
借地人への売却で限定価格が成立することが最大のメリットです。
ただし、借地人との関係が良好でなければ売買は成立しません。
また、買取交渉の過程で価格面や条件面でのトラブルが発生するリスクもあるため、慎重な対応が求められます。
第三者に買取してもらうなら更地価格の10%程度
第三者に売却する場合は更地価格の10%程度と、価格がもっとも安くなります。
借地人の建物が建っている土地は、利用用途が限定されるからです。
地代収入を目的とした不動産投資家に売却する方法もありますが、まとまった地代収入が見込める物件でなければ選ばれにくい傾向にあります。
大規模なショッピングセンターやオフィスビルなどは高い収益が見込める一方、戸建て住宅のような月数万円程度の地代収入だと投資対象からは外れるでしょう。
専門の底地買取業者への売却は10~20%程度
専門の買取業者(第三者)に売却する際の相場は、更地価格の10%〜20%程度です。
近隣の更地価格が5,000万で借地権割合が50%だった場合は、500万円〜1,000万円が底地買取業者への売却相場となります。
借地人に売却するより金額は安価になるものの、借地人との関係が良好でない場合も買い取ってもらえるので、もっとも現実的な方法といえます。
また、2社間での取引であるため、売却の可否がすぐにわかる・短期間で売却できるなどのメリットもあります。
短期間で・手軽かつスムーズに底地を売却したい場合は、専門の底地買取業者に依頼しましょう。
弊社AlbaLinkも、底地などの特殊な不動産に特化した専門の買取業者です。
権利関係の調整も弊社で行うので、丸投げ状態でご依頼いただいて構いません。
「まずは相談だけしたい」「話だけ聞きたい」という方も、お気軽にご相談ください。
なお、売却相手別の底地の価格相場は以下の記事で詳しく解説しているので、併せて参考にしてください。

底地の売却額が更地よりも安い3つの理由
底地を売却しようとしても、更地価格の10%ほどとなってしまうことが一般的です。
なぜ底地の売却額は安いのか、その背景には以下3つの理由があります。
それぞれの理由について、詳しく見ていきましょう。
底地を購入しても土地を自由に活用できない
底地を利用できるのは、土地を借りている借地人のみです。
たとえ第三者が底地を購入したとしても、その土地に家を建てるなどの活用はできないのです。
借地人との契約も基本的には解除できません。
借地借家法では、普通借地契約の存続期間を30年と定めています。
(借地権の存続期間)
第三条 借地権の存続期間は、三十年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。
借地権の契約期間が満了したとしても、借地人が利用する建物がある限り契約は自動更新されます。
(借地契約の更新請求等)
第五条 借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者が契約の更新を請求したときは、建物がある場合に限り、前条の規定によるもののほか、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。
地主と借地人がともに同意すれば途中解約は可能ですが、基本的に地主側からは解約できないといっても過言ではありません。
一般の第三者にとって底地を購入するメリットはほぼないといえるでしょう。
そのため底地を売りに出したとしても売却は難しく、売れたとしても更地価格と比べてかなり安価になってしまうのです。
借地人から得られる地代収入が少なく収益性が低い
底地は購入しても自由に活用できませんが、借地人から継続的に地代収入や更新料、建て替えや増築時の承諾料などを得られます。
賃貸経営と比べると建物の維持管理費がかからず、固定資産税や都市計画税といった税金のみのコストで運用可能な点はメリットです。
地代収入はそこまで高いわけではありません。
目安は固定資産税・都市計画税の3~5倍程度ですが、地代は借地契約時に定められるものであり、底地を購入した際にもそれは引き継がれます。
ともすれば地代が周辺相場よりも大幅に安くなっている可能性もあります。
ただし地代を値上げするには「周辺の地代が上がっている」「固定資産税が上がった」などの根拠が必要です。また、借地人の承諾がなければ地代は上げられません。
(地代等増減請求権)
第十一条 地代又は土地の借賃(以下この条及び次条において「地代等」という。)が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
また、更新料は更地価格の3~5%が相場ですが、法律で支払い義務が定められているわけではないので、契約書に更新料について明記されていない場合は請求できません。
建て替え・増築承諾料の相場も更地価格の3~4%ほどですが、そこまで頻繁におこなわれるものではないため、こちらの収入もそこまで期待はできないでしょう。
底地を所有することで地代などの収入を得られたとしても、固定資産税などの支出を差し引くとわずかな金額のみしか残らないため、必然と買取価格も安くなってしまう傾向にあるのです。
借地人との間に地代トラブルが起こる可能性がある
権利関係が複雑な底地はさまざまなトラブルが発生しやすい土地でもあります。
たとえば「借地人が地代を支払ってくれずに困っている」地主の方もいるでしょう。
あまりにも滞納が続くようであれば裁判で借地契約を解除できますが、かなりの手間と時間を要します。
また、契約更新時の更新料の支払いを巡ってトラブルが起こるケースがあります。
更新料の相場は更地価格の3~5%程度が相場ですが、借地人のなかには高額な更新料の支払いを拒否する方もいるでしょう。
基本的に更新料の支払いについては法律で明確に定められているわけではないので、契約書に明記されていない限り、借地人は地主に更新料を支払う必要はありません。
更新料に関するトラブルを未然に防ぎたい場合は、借地契約書に特約としてしっかりと記載しておく必要があります。
こうしたトラブルが発生する可能性がある点も、底地の売却価格が安い理由といえます。
底地の売却時にトラブルが起こらないようにする方法について知りたい方は、以下の記事もご参照ください。

底地を安心して高く売る方法
底地を売却先には、借地人・第三者・専門の買取業者の3つの選択肢があり、もっとも高値で売れるのは借地人です。
しかし、借地人への売却は価格交渉などでトラブルになるリスクがある上、相手に購入の意思がなければ成立しません。
そこでおすすめなのが、専門の底地買取業者への売却です。
底地買取業者は底地の価値を高めて再販することを目的としているため、一般的には敬遠されがちな物件でも積極的に買い取ってもらえます。
トラブルを回避しながらスピーディーに底地を現金化したい方は、専門の底地買取業者への依頼を検討しましょう。
弊社AlbaLink(アルバリンク)も、全国の底地を積極的に買い取っている専門の買取業者です。
これまで多数の底地・借地案件を取り扱ってきた実績があり、ご利用いただいたお客様からも高い評価を得ております。
底地をトラブルなく、高額で売却したい方は弊社までお問い合わせください。
株式会社AlbaLinkは東京証券取引所のTPM市場に上場している不動産会社です。





