起こりがちな敷地境界線を巡るトラブル事例
実際に起こった、敷地境界線を巡るトラブルの相談事例を見てみましょう。
- 相続した土地の境界線が確定しておらず揉める
- 越境物を巡って争いが起きる
- 売却にあたって土地の面積が確定できない
相続した土地の境界線が確定しておらず揉める
親から土地を相続したものの、隣地との境界線が確定していなかったという事例です。
Aさんが亡くなり、Aさんの子であるBさんとCさんがAさんの土地を相続しました。
相続した機会に、BさんとCさんは今後の遺産分割協議(遺産の配分についての話し合い)に備えて土地の面積をはっきりさせておきたいと考えました。
実は隣地との境界が曖昧になっていたことがわかったため、隣地の人に話し合いを申し入れましたが、隣地にも相続が発生していました。
親同士が口約束で定めた境界線が明確な書面として残っておらず、隣地の相続人は話し合っても自分たちに有利な境界線を主張して譲りません。
そこで、BさんとCさんはやむなく調停制度を利用し、裁判所の力を借りて解決することにしました。
越境物を巡って争いが起きる
隣家の物が自分の敷地にはみ出していて、越境物が原因で争いが起きるという事例もあります。
Aさんの家の樹木が成長するにつれて隣地まで伸びてしまい、隣人Bさんの家の日当たりが悪くなるといった困りごとが起こっていました。
BさんはAさんに樹木を切ってもらうよう頼みましたがAさんが高齢ということもあり、なかなか動いてもらえません。
たまりかねたBさんは自分でAさんの樹木を切ってしまったところ、「人の物を勝手に切るとは何事だ!」とAさんが激怒して市役所の無料法律相談に相談し、そこから険悪な関係になってしまいました。
なお、樹木の越境については民法改正が入っているため3章で改めて解説します。
売却にあたって土地の面積が確定できない
売却する際に土地の面積が確定できないと、せっかく買受希望者がいても話が進まないこともあります。
Aさんが土地を売却する際、土地自体が広大で測量にかかる金銭的負担が大きくなるため、面積を測らないで売る「公簿売買」という方法を用いることになりました。
公簿売買の場合は、登記簿上の面積を前提にすることを売買当事者が了承した上で売買し、後日測量による誤差が生じても精算を行わないというのが原則です。
買受希望者のBさんに対して不動産業者が公簿売買についての説明をした際に、精算が不可能なことを知ると慎重な性格のBさんは「他の物件も探してみます」と不安な様子でした。
結局、進めかけていた売買の話は頓挫してしまいました。
このように、土地の面積が不明瞭だと、購入希望者が現れても、途中で売買手続きがとん挫してしまうことがあります。
ただ、専門の不動産買取業者に依頼すれば、面積が不明瞭な土地でも確実に、現状のままで売却できます。
弊社Albalinkも面積の定まらない土地の買取を積極的に行っておりますので、ぜひ一度弊社の無料買取査定をご利用ください(査定依頼をしたからといって、無理な営業などは行いませんのでご安心ください)
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敷地境界線にまつわる法律的なルール
敷地境界線にまつわる法律がどのように定められているかを確認してみましょう。
建造物は境界線から50cm以上の距離を保つ必要がある
建造物が境界線ぎりぎりに建築されると火災の拡大を招いてしまったり、風通しが悪くなるなど衛生上の問題につながるため、境界線からの距離を保つべき旨が民法に定められています。
(境界線付近の建築の制限)
民法第234条
建物を築造するには、境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければならない。
前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは、隣地の所有者は、その建築を中止させ、又は変更させることができる。ただし、建築に着手した時から1年を経過し、又はその建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる。引用元:民法第234条
上記のように、「境界線から50センチメートル以上」という具体的な数値が規定されています。
2項では、1項の規定に違反した建築に着手している場合の隣地所有者が、着手から1年以内であれば工事の差し止めなどを要求する権利があることを規定しています。
しかし、この民法第234条の例外といえる規定が建築基準法に定められています。
耐火構造を満たす場合には50cm未満でも良い
上記のように、境界線から50センチメートルの距離を保つことを義務付けている大きな理由として「延焼を防ぐ」ことがあるため、耐火構造を満たす場合には50センチメートル未満の位置に建築することが認められています。
(隣地境界線に接する外壁)
建築基準法第63条
防火地域又は準防火地域内にある建築物で、外壁が耐火構造のものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる。引用元:建築基準法第63条
上記に引用した民法第234条と建築基準法第63条は矛盾しているとも取れますが、そのような場合にはどちらが優先するのでしょうか。
上記の問題に限らず法律全般にあてはまるルールとして「特別法は一般法に優先する」というものがあります。
一般法とは「適用の対象がより広範囲」の法律、特別法とは「適用の対象が特定されている」法律をいいます。
民法は一般法の代表格といえる法律であり、建築基準法は特別法に該当します。
よって「耐火構造を満たす建物」の場合には民法第234条よりも建築基準法第63条が優先される、つまり外壁が隣地境界線に接することが認められることがあります。
地域に異なる慣習がある場合は50cm未満でも良い
民法第234条の例外として、境界から50センチメートル未満の建築を認めた条文もあります。
(境界線付近の建築に関する慣習)
第236条
前二条の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。引用元:民法第236条
地域における慣習によって、隣地境界線に近接して建物を建てる慣習がある場合は慣習を優先する、ということになります。
地域の伝統的工法や風土による例外を認めたものです。
窓や縁側などは境界から1m以上離すか、目隠しを設置する
窓や縁側などにより隣地が見える状態になっている場合、境界線から1m以上離す、あるいは目隠しを設置する旨の規定も設けられています。
(境界線付近の建築の制限)
民法第235条
境界線から1メートル未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓又は縁側(ベランダを含む。次項において同じ。)を設ける者は、目隠しを付けなければならない。
前項の距離は、窓又は縁側の最も隣地に近い点から垂直線によって境界線に至るまでを測定して算出する。引用元:民法第235条
厳格に解釈するなら「境界線から1m離れていれば目隠しがなくてもよい」とも取れますが、法律の規定に則ってさえいればトラブルにならないわけではありません。
社会常識から見て不適切な状態になっていれば裁判で負けることも考えられます。
必要に応じて隣人との話し合いを設けるなど、トラブルにならないための配慮が必要です。
上記に違反すると隣人から損害賠償を求められる恐れがある
民法第234条の「境界線から50センチメートル以上の距離」に違反している建築物を建ててしまうと、隣人から損害賠償を求められるおそれがあります。
地裁レベルの判例ではありますが、「隣人からの建物収去の請求は退けられたものの、損害賠償の請求が認められた例」を見てみましょう。
神戸地裁 平成15年6月19日判決
Xは、隣人Yが境界線から50センチメートル未満の位置に建築し始めた建物の工事に対し、50センチメートル以上離して建築する旨など、本件建物の建築廃止や変更を求めていた。
また、同時にXは自己の被った精神的苦痛に対する慰謝料の支払いも求めた。
しかし、判決では建物部分の収去請求を棄却し、20万円の慰謝料支払いのみを命じた。
理由としては以下のとおり。
1.Xによると、YらはXによる交渉の申し入れを無視して一方的に工事を強行したとのことであった。
しかし、Yは建物工事開始時にXより口頭で工事の廃止、変更を求められた際に建築工事業者のXを通じて説明を行っている。
2.本件工事より前に、Yは本件の建物と同じ位置にプレハブ車庫を建築したことがあり、その際はXより何らの意義申し入れもなかった。
3.Xが書面によって明確に本件の工事中止や変更を求めた際には、すでに本件建物は完成済みであった。
上記のように、建物収去請求を行った時期や工事時の状況によりどのような請求が認められるかの範囲は異なります。
ただ、やはり隣人との十分な話し合いを持たないままに工事を強行してしまうのはトラブルを招き、時には訴訟まで発展してしまう可能性があることを知っておかなければなりません。
敷地境界線トラブルの解決法
敷地境界線トラブルが発生してしまった場合、どのように解決したらよいのかを考えてみましょう。
敷地境界線トラブルの解決法は、以下の4パターンがあります。
- 確定測量を行い境界を明確にする
- 越境物を除去する
- 法務局や役所の無料相談を活用する
- 境界確定訴訟を提起する
確定測量を行い境界を明確にする
「確定測量」という手続きを経て、境界を明確にする方法があります。
境界を確定させることで土地の正確な価値を知ることも可能となります。
確定測量は専門士業である土地家屋調査士が行いますが、計測した結果を登記簿や公図に反映させることになります。
確定測量を行うにあたっては隣地所有者の立ち会いのもとに正確な面積を計測しなくてはなりませんので、もし隣地所有者が不明だったり、協力が得られないと進められません。
筆界特定制度
隣人の協力が得られない場合には「筆界特定制度」の利用も検討してみましょう。
「筆界特定制度」とは、筆界調査委員が、法務局職員とともに実地調査等を行って登記官に提出し、登記官が筆界を決める手続きです。
弁護士、司法書士、土地家屋調査士などの専門家から筆界特定を行うための知識、経験を有する者。法務局または地方法務局長が任命する。
公的機関によって強制的に筆界が決定されますので、必ず解決までたどり着けることになります。
筆界が決まるまでの期間は地方により6カ月~9カ月程度です。
また、筆界特定の手数料は土地の価格によって決められます。
下記、東京法務局のサイトから「申請手数料計算シミュレーション」を開くことができるため、必要事項を入力するだけで簡単に手数料を算出することが可能となります。
筆界特定自体の手数料は数千円程度と多額ではありませんが、別に土地の測量費用が必要になることもあり、別途50万円くらいかかることもあります。
隣人との摩擦を避ける、法務局にある資料を活用する、専門知識のある登記官が手助けをしてくれるなどのメリットを考えると、境界確定訴訟(詳細後述)を起こすよりも、使用しやすくスムーズな解決につながりやすいといえます。
越境物を除去する
隣地からの越境物がある場合、除去するための働きかけを早めにしておくことが大切です。
とはいえ、越境しているからといって無条件に隣人が除去してよいわけではありません。
民法で越境物の除去については以下のように定められています。
(竹木の枝の切除及び根の切取り)
民法第233条
土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。
前項の場合において、竹木が数人の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる。
第1項の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。
竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。
竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
急迫の事情があるとき。
隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。引用元:民法第233条
2021年の改正前には「隣の枝は切除してはならないが、根は切除可能」といった規定になっていましたが、所有者不明土地なども増加していることから、上記のように、枝についても催告など一定の条件を満たせば隣地所有者が切除することが可能になりました。
法務局や役所の無料相談を活用する
法務局の登記官や役所の弁護士といった専門家による無料相談を利用する方法もあります。
法務局には地図などの資料もあり、登記手続きの概要等を説明してもらうことが可能です。
また、紛争の予兆がある場合は弁護士に相談しておいた方が適切な対処方法がわかります。
どちらも基本的には予約制となっていますので、各地方法務局または市役所に相談日程などをまず電話で問い合わせてみることをおすすめします。
各地方法務局の所在や連絡先は下記、法務局のウェブサイトに記載されています。
境界確定訴訟を提起する
隣人との紛争になることも辞さず、とにかくしっかりと解決しておきたい人は裁判所に「境界確定訴訟」を提起する方法もあります。
境界確定訴訟には、次のような特徴があります。
- 裁判所が必ず境界を確定させるが、「所有権境界」ではなく「筆界(※)」である。
所有権を確定させるには別途「所有権確認訴訟」を起こす必要がある。 - 原告、被告となるのは必ず隣接する当事者であり、共有の場合は全員が原告被告となる必要があるが、勝訴、敗訴という概念はなく単に境界を確定する判決が出るだけである。
- 当事者の主張に関係なく裁判所が強制的に境界を確定するため、和解や調停で当事者が任意に境界を決めることはできない。
- いったん確定した境界を確定以降、争うことはできない。
なお、上記の筆界とは、土地登記の際に範囲を区画するものであり、所有者が変更することはできません。
また、境界とは筆界と同じ意味で用いられることもありますが「所有権の範囲を画する線」という意味で用いられることがあり、筆界とは異なる概念です。
筆界は所有権の範囲と一致することが多いですが、一致しないこともあります。
境界確定訴訟はあくまでも「訴訟」ですので隣人との対立構造は避けられないのですが、上記に解説した筆界特定制度では登記官が筆界を決めるため、隣人と険悪になる可能性は低いといえます。
また、境界確定訴訟を担当する裁判官が土地問題に詳しいとは限らないのですが、筆界特定制度では法務局の登記官が担当してくれるため、より的確な判断を下してもらえる可能性が高まります。
以上から、どちらかといえば当事者にとって使いやすく、優先的に選択すべきなのは筆界特定制度であるといえるでしょう。
境界線トラブルから解放されるには売却処分してしまうのが賢明
境界線の面倒なトラブルから解放されたい人は、土地を売却処分してしまうという手段もあります。
境界が不明確だったりトラブルが生じている土地を一般の買主に売却することは難しいのですが、不動産買取業者であれば、境界が確定していない、越境物があるなどの問題を抱えた土地でも買取が可能です。
いざ、隣人と境界確定訴訟をしようとすると弁護士費用などもかさみますし、心理的なストレスもかかってきます。
トラブルが深刻になる前に早めに不動産買取業者に相談し、物件を現金化すると同時に境界問題のストレスからの解放をはかることをおすすめします。
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まとめ
今回は敷地境界線が不明確であることによって起こるトラブルと、トラブルの対処法について解説しますた。
記事でもお伝えしたように、境界線トラブルを回避するためには境界確定訴訟や筆界特定制度などがありますが、隣人との対立構造を生まず、適切な資料をもとに判断してもらうためには筆界特定制度の方がより適切といえます。
ただし、境界線トラブルが起きる前に土地を手放したい場合や、すでに境界線トラブルに巻き込まれてしまっており、トラブルから解放されたい場合は、専門の不動産買取業者に土地を売却することをお勧めします。
専門の不動産買取業者であれば、境界線が不明確な土地であっても問題なく買い取れます。専門の不動産買取業者は、買取後に境界線を確定させ、運用・再販して利益を生み出すノウハウを豊富に持っているためです。
弊社Albalinkも年間600件以上の買取実績(※)がある訳アリ物件専門の不動産買取業者です。訳アリ物件専門ですから、境界線が不明確な土地の買取実績も豊富にあります。
※2023年1月1日~2023年10月25日現在の実績:相談/5,555件:買取/600件
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