悪質な入居者を退去させないと弊害がある
悪質な入居者は、オーナーの賃貸経営だけではなく、近隣住民の良好な住環境まで奪ってしまいます。
この章では、悪質な入居者が住み続ける以下3つの弊害について解説します。
- 騒音などに耐えられなくなり他の入居者が退去する
- 評判が悪くなって入居者が現れなくなる
- キャッシュフローが回らなくなる
騒音などに耐えられなくなり他の入居者が退去する
悪質な入居者を退去させないと、質の良い他の入居者が退去してしまいます。
例えば、入居者トラブルでもっとも多いと言われているのは騒音トラブルです。
弊社が行ったアンケート調査でも「近所迷惑な人の特徴」はダントツで騒音となっており、音がきっかけで近隣トラブルは発生しやすいことがわかります。
大音量の音楽・大声・洗濯機などの生活音が、深夜・早朝問わず室内に鳴り響くと、近隣住民の生活に支障をきたします。
日常的に続けば、毎日我慢を強いられた近隣住民は耐えられなくなり、引っ越してしまう恐れがあります。
そうすると、また入居募集を始めなくてはならない上に、募集開始からすぐに入居が決まる保証もありません。
悪質な入居者が住み続ける限り、安定した賃貸経営は望めなくなります。
評判が悪くなって入居者が現れなくなる
悪質な入居者がいると、悪い評判が出回って入居付けが難しくなる可能性があります。
不満を抱えた入居者から、知人への相談やSNS、口コミサイトなどを通じて悪い評判が拡散されてしまうこともあります。
賃貸物件を探す人に悪い評判が届いてしまうことで、入居付けが難航する恐れがあるのです。
キャッシュフローが回らなくなる
キャッシュフローとは事業運営におけるお金の出入りのことで、キャッシュは現預金を指します。
賃貸経営では、入居者が常にいれば安定した家賃収入を得られます。
しかし、家賃を支払わない・マナーの悪さで近隣住民を追い出してしまう悪質な入居者がいると、支出と収支のバランスは崩れ、キャッシュフローが悪化するのです。
キャッシュフローが円滑に回らなければ、賃貸経営はやがて倒産に追い込まれてしまいます。
入居者を強制退去させるには条件を満たす必要がある
賃貸借契約では借主の立場が上であるため、「退去は妥当な判断である」と認められるような正当事由が必要です。
どのような項目が正当事由にあたるのか、詳しく見ていきましょう。
3つの正当事由
借地借家法28条でオーナーの正当事由に該当するとされているのは、以下の3つです。
- オーナーに物件を使用せざるを得ない事情がある(貸主の家族が住む・賃貸業を辞めてオーナー自身が住む等)
- オーナーに物件を売却せざるを得ない事情がある(売却しなければ、生活や事業が困難である等)
- 建物が深刻な老朽化を抱えており、修繕や建て替えの必要性がある
貸主・借主の双方の事情を考慮した末、正当事由が認められるか否かが判断されます。
強制退去させるには、正当事由が借主の権利を上回っていなければなりません。
借主側に過失がある場合は退去が認められることも
オーナーに正当事由がない場合でも、借主側に過失があれば退去が認められるケースもあります。
それぞれ該当する状況を見ていきましょう。
家賃滞納が続いている
賃料を支払わないのであれば、借主が債務不履行を犯しているので強制退去が認められます。
債務不履行とは、契約によって約束されていた義務を果たさないことです。民法第541条では、以下のように明記されています。
第五百四十一条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
条文にある「相当な期間」に、◯ヶ月という決まりはありませんが、一般的に3ヶ月以上家賃滞納が続けば、契約解除事由に該当すると言われています。
ただし、家賃滞納には支払い忘れや病気など多くの事情が考えられるので、1ヶ月分滞納しただけでは契約解除はできません。
近隣住民に迷惑をかけている
悪質な入居者が近隣住民に迷惑をかけており、なおかつ下記の2点に該当していれば退去が認められる可能性が高いです。
- 賃貸借契約書にトラブルに関する記載がある
- 入居者本人がトラブルの元凶になっている状況を認めている
例えば、騒音トラブルであれば、賃貸借契約に「賃借人は騒音をたてたり風紀を乱すなど近隣の迷惑となる一切の行為をしてはならない」など記載があれば、用法遵守義務が適用されます。
用法遵守義務とは、賃貸借契約に基づいた用法に従って目的物を使用しなければならない義務のことです。
これに違反して、大音量の音楽を流す・大声を出すなどの騒音で近隣住民に迷惑をかけていれば、用法順守義務違反に該当して契約解除できる可能性が高いと言えます。
契約違反の行為をしている
ペットの飼育や営利行為など契約違反を犯している場合も、用法遵守義務が適用されます。
これらを違反して迷惑行為に及んでいる場合には、強制退去の対象と認められやすくなります。
悪質な入居者を退去させる3つの方法
入居者側に明らかに問題があっても、法に沿わない強制的な立ち退きを行ってはなりません。
国土交通省の社会資本整備審議会 住宅宅地分科会 民間賃貸住宅部会「最終とりまとめ」 案参考資料では、立ち退きをめぐってオーナーが提訴された事例の数々が紹介されています。
この章では、合法的に悪質な入居者を退去させる3つの方法をご紹介します。
- 任意で話し合いを持ちかける
- 法的措置を取る
- 弁護士に相談する
任意で話し合いを持ちかける
まずは、悪質な入居者へ「部屋を明け渡してほしい」と、任意で話し合いを持ちかける方法です。
オーナーが入居者に解約を求める際には、原則として解約日の6ヵ月前までに告知しなければならないと、借地借家法第27条で定められています。
そのため、申入れからすぐに退去となるわけではないので留意しましょう。
なお、前述した契約違反などの条件を満たしているのであれば、話し合いを省略していきなり法的措置も可能です。
悪質な入居者が明け渡しを拒否するようであれば、次に解説する交渉材料を提示しましょう。
交渉材料
退去の交渉材料として、立ち退き料を渡す方法もあります。
立ち退き料とは、貸主側の事情で退去を求める場合に、借主の損害を補填する意味合いで支払うお金のことです。
立ち退き料に明確な決まりはなく、一般的には「家賃6ヶ月分+引っ越し費用」が相場とされています。
ただし、任意の話し合い・交渉にも応じない場合は、他の方法への移行が必要です。
入居者との交渉術や立ち退き料については、以下の記事で詳しく解説しています。
法的措置を取る
法的措置を取れば、上記の条件を満たしていなくても裁判所が総合的な状況を加味して、具体的な指示を受けられます。
例えば、「借主は立ち退きに応じる。その代わり、貸主は引っ越し費用などの名目で立ち退き料を支払うこと」などです。
なお、法的措置に移行するために以下のステップを済ませておきましょう。
- 借主へ内容証明郵便の送付する
- 明渡訴訟を裁判所へ提起する
判決による債務名義が下りれば、強制退去が可能になります。
債務名義とは、権利の存在を証明し、その権利を強制的に実現しても良いことを裁判所が許可した公的な文書のことです。
弁護士に相談する
立ち退き交渉が困難・裁判が不安、といった場合には弁護士に相談する方法もあります。
賃貸問題に強い弁護士に相談すれば、上記の方法以外にも、さまざまな視点から解決方法を提示してもらえます。
弁護士に依頼する費用相場は、下記のとおりです。
- 着手金:25万円〜30万円
- 報酬:45万円〜50万円
その他、問題解決にかかった交通費・書類作成代などが実費として必要となるので、合計で70万円〜85万円程度かかります。
入居者を強制退去させる際の注意点
ここまでは、悪質な入居者を退去させる方法についてご紹介しました。
退去が成立したとしても、オーナーにはお金をはじめとした様々なデメリットが伴います。
ここでは、注意点を解説するので、デメリットを把握した上で退去させるか否かの判断をしましょう。
- 高額な費用がかかる
- 家賃を回収できる保証がない
- 次の入居者が確保できる保証がない
高額な費用がかかる
法的措置を取った場合、強制執行にかかる費用は大きく分けて以下の3つです。
- 裁判所へ支払う予納金:10万円程度
- 執行業者へ支払う費用:ワンルームで40万円~約60万円程度・一軒家で100万円程度
- 弁護士に依頼する費用:70万円〜85万円程度
法的措置で退去させる場合には、120万円〜195万円程度の費用がかかります。
民事執行法第42条では、強制執行にかかった費用は入居者の負担になるとされています。
しかし、あくまではじめに支払うのは貸主で、後日借主から確実に回収できる保証はありません。
強制退去にかかる費用の目安については、以下の記事で詳しく解説しています。
家賃を回収できる保証がない
裁判所に差し押さえの申立てをして、債権名義の取得ができていれば財産を差し押さえることが可能です。
ただし、家賃の回収には相手の財産情報を把握していて、なおかつ相手に財産があることが前提です。
例えば、差し押さえしやすいのは給与債権です。給与を差し押さえられれば、借主の勤務先から毎月一定額を回収できます。
ただし、民事執行法第152条で原則手取り額の4分の1までしか差し押さえできないと定められているので、いきなり全額回収はできません。
また、仮に初回の差し押さえが成功しても、勤務先には差し押さえの事実が知られるので、これをきっかけに借主が解雇になる可能性もあります。
差し押さえできる権利を持っていても、借主に滞納分の家賃を支払えるほどの財産がなければ、それまでにかかった費用は無駄になってしまいます。
次の入居者が確保できる保証がない
問題行動を起こす借主に退去してもらったはいいものの、次の入居者がすぐ確保できるわけではありません。
一般的に、年間を通して入居が決まりにくいシーズンとされているのは6月〜7月頃です。
このあたりの時期は、進学や就職、転勤などのライフステージの変化が世間一般では少なく、転居が行われにくい傾向にあります。
反対に、もっとも入居が決まりやすいのは、ライフステージの変化で部屋探し・引っ越しがアクティブに行われる1月〜3月頃です。
もし、借主の退去したタイミングが入居が決まりにくい6月頃であれば、空室期間が半年以上続いてしまう恐れがあります。
不動産管理業者に委託しておけば、幅広いサポートを受けることが可能
投資物件の管理には「オーナー自らが管理する」「管理会社に委託する」の2択があります。
管理会社に委託すれば、日々の管理業務はもちろんのこと、入居者の審査からトラブル時の対処まで任せられます。
不動産管理業者へ委託する費用相場は、賃料の5%〜10%程度です。
賃料が10万円だとすると、毎月5,000円〜6,000円程度が収益から差し引かれますが、悪質な入居者によるトラブルを未然に防ぎやすくなります
入居者トラブルでお困りなら最終手段として売却も検討しよう
入居者トラブルの対処法の最終手段として、不動産買取に投資物件を売却するのも1つの手段です。
不動産買取とは、売主の物件を直接買い取る業者のことです。
買い取った不動産の難点を、ある時はリフォームなどで物理的に修繕し、またある時は弁護士などの専門家と連携を取って法的な措置を施し、再販することを目的にしています。
買取業者は、そのままではとても売れない不動産を再生する技術に長けているので、悪質な入居者が居る状態でも問題なく買い取れます。
悪質な入居者との話し合いや法的措置などに、手間・費用をかけたくない場合は買取業者への依頼を検討しましょう。
なお、弊社Albalink(アルバリンク)は、問題を抱えた投資物件であっても適正な金額をつけて買い取れる買取業者です。
投資物件としてマイナスな事情があっても、弊社の再生技術で収益物件に変換できる自信があるので、強気な価格で買取可能です。
これまでも数多くのトラブル物件を買い取っており、Google口コミでも多数の好意的な評価を頂いております。
入居者トラブルでお悩みの売主様は、ぜひ一度弊社にご相談ください。
まとめ
本記事では、悪質な入居者がもたらす弊害や強制退去させる方法について解説しました。
法律上、権利が強い借主を退去させるのは容易ではありません。
退去させる方法は、当事者間の話し合いや法的措置などありますが、問題行動を起こし続けている悪質な入居者の強制退去は一筋縄にいかないことが予想されます。
もし、「話し合いや裁判沙汰は避けたい」とお考えでしたら、平均1週間〜1ヶ月程度で売却できる不動産買取業者に相談しましょう。
なお、弊社AlbaLink(アルバリンク)は、入居者とのトラブルがある・収益性が低いなど、問題を抱えた投資物件でも買取可能です。
立ち退きのトラブルにお悩みでしたら、解決に向けたアドバイスも可能です。
無料相談・無料査定は随時行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。