相続で意見が分かれた土地の相続&売却方法【行政書士が徹底解説】

共有名義不動産

土地の相続をめぐり、親族で意見が一致しなかったり、不動産以外の財産がないために分け方に困っているという状況はよく起こることです。

相続についての意見が分かれてしまうというのは、そもそも基本的な相続のルールをわかっていなかったり、不動産の価値を高すぎ、低すぎに見積もっている相続人がいることが原因になっている場合も考えられます。

土地を無理に維持することで相続人の間の関係が悪化するなどの状況にもなりやすいため、場合によってはむしろ売却して公平にお金で分ける方がよいこともあります。

土地相続トラブルの原因となる要素は何か、相続人にとって納得のいく分け方や売却のためにどのような手続きを踏めばよいのかなど、遺産分割協議(相続人の話し合い)をする前に正しく知っておくべきことがあります。

本記事では

  • 前提として、法律的には誰にどのくらい相続権があるのか
  • 相続についての意見が分かれた場合にどのような方法が考えられるのか
  • 土地を売却するならどのような手順を踏めばよいのか

などを解説します。

ただし、もしあなたが一刻も早く土地の相続をめぐる親族同士の争いから逃れたいのであれば、詳しくは本文で解説しますが、あなたが相続した分の土地(共有持分)のみ専門の不動産買取業者に売却してしまうのが一番手っ取り早いです。

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目次
  1. 土地の相続の基本ルール
  2. 土地の相続で親族同士の意見が分かれる主なケース
    1. 遺言書が無い
    2. 長男が継ぐべきだと主張する
    3. 遺産が不動産のみ、現金が少ない
    4. 土地の評価方法が一致しない
    5. 相続人が寄与分を主張する
    6. 特別受益を主張する
  3. 相続人同士で意見が分かれた際の選択肢
    1. 遺産分割協議をして、土地を相続する方法を決定する
      1. 他の遺産と帳尻を合わせて分配する
      2. 土地を売却して代金を分配する【換価分割】
      3. 土地を相続する相続人が他の相続人に現金で精算する【代償分割】
      4. 土地を分筆して切り分ける【現物分割】
    2. 遺産分割協議がどうしてもできない場合は「共有名義」として相続する
      1. 共有名義はリスクが多いため避けるべき
      2. 訴訟で解消する方法もある
      3. 最終手段は自身の共有持分を専門の不動産買取業者に売却する
  4. 相続人同士の意見がまとめられない土地は専門の不動産買取業者に任せよう
    1. 弁護士や司法書士などの士業との連携が豊富
    2. 相続手続きなどもワンストップで相談できる
    3. 最終手段として自身の共有持分を買い取ってくれて、権利関係から離脱することが可能
  5. 相続した土地を売却する際の注意点
    1. 売却の取りまとめ役を決める
    2. 最低売却金額を決めてから不動産業者に依頼する
    3. 売却で出た利益には譲渡所得税がかかる
    4. 相続から3年以内に売却した場合は譲渡所得税の軽減特例が利用できる
  6. 相続した土地を売却する際の流れ
    1. 遺産分割協議を行う
    2. 相続登記を行う
    3. 不動産業者に相談する
    4. 売買契約を締結する
    5. 決済・登記
  7. まとめ

土地の相続の基本ルール

土地などの相続財産については、誰がどのように相続するかの基本的ルール(=法定相続人、法定相続分)が民法により定められています。

もちろん、土地以外の相続財産(建物、現金、預貯金、車両、有価証券など)を分ける際も下記ルールが基本となります。

(配偶者の相続権)
第890条
被相続人の配偶者は、常に相続人となる。

引用元:WIKIBOOKS(民法第890条)

(法定相続分)
第900条

  1. 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
  2. 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各2分の1とする。
  3. 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、4分の3とし、兄弟姉妹の相続分は、4分の1とする。
  4. 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする。

引用元:WIKIBOOKS(民法第900条)

上記の条文を解説していきます。

配偶者は婚姻期間の長短に関わらず、被相続人の死亡日に籍が入っていれば、必ず相続人となります。

配偶者以外の人たちの相続には順位がつけられており、配偶者がいる場合は配偶者と共に相続人となります。(第一順位~第三順位相続人)

順位については「第一順位の人が誰もいなければ第二順位に、第二順位も誰もいなければ第三順位に」という順番で相続人が決まっていきます。

第一順位(子)については、子がいれば子は嫡出子、非嫡出子(婚外子)、実子、養子(戸籍上養子縁組している者)に関わらず全員が相続分を持ちます。

配偶者と子が相続する場合は全体の2分の1を配偶者が、残りを子の数で等分にします。

第二順位(直系尊属、親もしくは祖父母)については、被相続人に子供がおらず片方でも親が生存していれば親が、親が両方すでに死亡していれば祖父母の生存している者が相続人となります。

配偶者と直系尊属が相続する場合は全体の3分の2を配偶者が、残り3分の1を直系尊属の数で等分にします。

第三順位(兄弟姉妹)については、被相続人に子供も直系尊属もいない場合は被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。

配偶者と兄弟姉妹が相続する場合は全体の4分の3を配偶者が、残りを兄弟姉妹の数で等分にします。ただし、半血兄弟(父母のどちらかのみを同じくする兄弟)の相続分は、全血兄弟の2分の1です。

土地の相続で親族同士の意見が分かれる主なケース

土地の相続で、親族の話し合いを試みても意見が分かれてしまうケースにはどのようなものがあるのか確認してみましょう。

遺言書が無い

被相続人(亡くなった人)による遺言書がなかったケースです。

遺言書というのは、もっぱら被相続人の希望や理由が記されていることから、相続人にとっても遺産分割の方法について納得しやすく、文句を言いづらくなることも多いものです。

逆に、被相続人の意思がわからなければ色々な憶測を生むこととなります。

「生前に親は自分に継がせると言っていた」と主張する相続人に対し「その後私が介護をしたからその話はなしだ」など、他の相続人からの反論が出てきて収拾がつかなくなることがあります。

長男が継ぐべきだと主張する

長男が「自分は長男だから全部相続するのは当然だ」と主張するケースです。

終戦直後までは日本の法律では「家督相続」といって、当然に長子が財産や戸主の地位を相続するという決まりがありました。

当然、今では長子が独占するなどというルールはないのですが、家を継ぐことにこだわる世代だとまだ家督相続の感覚が抜けない人もいるため、他の相続人とまったく話が噛み合わないこともあります。

遺産が不動産のみ、現金が少ない

遺産が極端に不動産に偏っており、現金や預貯金が少ないためバランスが取れないケースです。

不動産を持つことを重んじる日本では、このパターンも非常に多くみられます。

不動産をどうしても手放さず保持しようとすると各相続人に不公平が生じるため、名義を親の代のまま放置するという状況になりがちです。

土地の評価方法が一致しない

遺産分割協議を進める前提として、土地をいくらくらいに見積もるのかについて意見が一致しないケースです。

土地価格の評価方法については、次のように色々な基準が存在します。

何を見ると分かるか? 主にどのような場面で使われるか?
市場価格(時価) 不動産業者の査定(会社により若干差が出る) 不動産売買、遺産分割協議
路線価(時価の約80%) 路線価図(インターネットや税務署で閲覧可能) 贈与税や相続税の算出、遺産分割協議
固定資産税評価額
(時価の約70%)
固定資産税評価証明書や納税通知書(市区町村長の税務課で取得可能だが基本、所有者か相続人しか請求できない) 固定資産税の算出、登録免許税(登記の際に納める税金)の算出、遺産分割協議

遺産分割協議にあたって何を基準に土地の評価を出すのかという点は、法的に明確な決まりがありませんので、極端に言えば法定相続人全員が納得さえしていればどの価格を用いてもよいことになります。

使うべき価格についてのはっきりとした決まりがないことから、法定相続人の間でそれぞれ自分に都合の良い価格を主張してまとまらないことがあります。

相続人が寄与分を主張する

相続人のうち誰かが「自分には寄与分があるから相続分を増やせ」と主張してくるケースです。

寄与分というのは被相続人の財産の維持や増加に特別の寄与をした人について、相続分の上乗せをする制度です。

(寄与分)
第904条の2
共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。

引用元:WIKIBOOKS(民法904条の2)

例えば、「無償で」家業を手伝ったり、被相続人の介護を行っていたといった場合です。

妻としての貢献などは「特別の寄与」とは認められません。

寄与した本人は「特別の寄与」であると主張し、他の人は否定する、といったやりとりになることは十分考えられます。

特別受益を主張する

相続人の誰かが他の人に対して「親の生前に特別受益を受けているのだから相続分を減らせ」と主張してくるケースです。

特別受益とは、「婚姻、養子縁組、生計の資本」としての贈与を受けた相続人が相続分の前渡しを受けていたとみなして、相続分を減らす制度です。

すべての贈与が特別受益にあたるのではなく、「私立大学の医学部に進学させてもらった」「家や土地をもらった」など、相続人間で著しい差が生じているのが典型的な例です。

通常の生活費などは含まれませんが、中には線引きが難しいケースもありますので意見の食い違いにつながりやすいといえます。

相続人同士で意見が分かれた際の選択肢

相続人同士の意見が一致しない場合にはどのような解決方法が考えられるのでしょうか。

遺産分割協議をして、土地を相続する方法を決定する

もし、遺産分割協議が可能なのであれば、しっかりと話し合い納得した上で土地の相続方法を決定するべきです。

他の遺産と帳尻を合わせて分配する

不動産以外の相続財産(現金や預貯金など)がある場合には、不動産を相続できない人に現金を分配するなど、全体として帳尻を合わせる形で分配する方法です。

ただ、これは不動産以外に目ぼしい財産がない場合には用いることができない方法です。

土地を売却して代金を分配する【換価分割】

土地全体を売却して売却し、代金を相続人で分ける「換価分割」とよばれる方法です。

例えば「相続した土地を3,000万円で売却した場合に、法定相続人である兄弟二人で1,500万円ずつ売却代金を分ける」といった形になります。(実際には売却代金から諸費用等を差し引きます))

相続された土地はいったん相続人の共有状態になっているため、売却は法定相続人全員が合意することが必要です。よって、売却に反対する人がいない場合に限って可能となります。

土地を相続する相続人が他の相続人に現金で精算する【代償分割】

誰かが土地を相続し、不公平になった分を他の相続人に現金で精算する「代償分割」とよばれる方法です。

例えば「不動産しか相続財産がないため、長男が3,000万円相当の不動産を相続して次男には長男の手持ち現金1,500万円を渡す」といった形になります。

どうしても不動産を自分が受け継ぎたい、手持ち現金があるので他の人にお金を渡しても構わないという人がいる場合に用いる方法です。

土地を分筆して切り分ける【現物分割】

土地そのものを分割(=分筆)して物理的に分ける「現物分割」とよばれる方法です。

土地は、一筆(登記簿の単位)があまりにも狭いと利用価値が限定されることから、もともとの広さがある土地を持つ人に限られる方法ではありますが、土地を保持したままで相続することが可能となるメリットがあります。

遺産分割協議がどうしてもできない場合は「共有名義」として相続する

遺産分割協議が難しいケースでは、最後の手段として「共有名義」で相続する方法もあります。

共有名義というのは、登記簿に2人以上の名前が入るケースで、「持分2分の1」などが記入されます。

例えば2分の1ずつの共有名義になっている場合、物理的に半分ずつを使用できるというわけではなく、共有者のいずれも自分の持分の範囲内で不動産全体を利用することが可能です。

よって、どちらか1人が独占的に利用している状況であれば、利用している人は利用していない人に2分の1相当の賃料を払わなければならない理屈となります。

例えば「法定相続分(民法で定められた相続分)」で登記したり、土地を相続したいと主張する人が2名以上いる場合には相続したい人の共有に登記するというものです。

ただし、共有に伴うリスクや共有状態の解消方法も知っておくべきです。

共有名義はリスクが多いため避けるべき

不動産を共有にすることは非常にリスクが多いため、避けるべきといえます。

1つめとして「土地の利用方法や処分について意見が分かれた時に、各共有者の希望通りの活用ができなくなる」ということが挙げられます。

行為の種類 合意が必要な共有者の数
変更(処分)行為 共有者全員の合意が必要
管理行為 共有者の持分価格の過半数でできる
保存行為 各共有者が単独でできる

例えば、売却であれば「変更行為」にあたるため、共有者全員の合意が必要です。

また、「賃貸借契約の解除」など、不動産の性質を変えない管理行為は共有者の持分の過半数の同意が必要です。

その他、共有不動産にかかる利用の制限等について、詳しくは下記記事を参照してください。

共有名義のデメリットとメリットに隠されたウソ|共有解消の5つのシナリオ
この記事では、親子や夫婦などの共有名義で不動産を所有するデメリットを徹底解説します。多くのデメリットが潜む不動産の共有名義を解消する方法と手順についても詳しくお伝えするので、ぜひ参考にしてください。

2つめとして「管理費や固定資産税を誰が負担するかで揉める」ということが挙げられます。

管理費や固定資産税は、本来であれば共有者全員が持分に応じて負担すべきものです。

しかし、例えば固定資産税は市町村から共有者の中の代表者一人に納税通知書が送付される形になるため、代表者が立て替えた後に、清算を求めても払わない人が出てくる可能性があります。

また「自分はほとんど土地を利用することがないから払いたくない」などと言い出す人が出てきて揉めることも考えられます。

3つめとして「共有のまま放置すると将来、子供や孫に迷惑がかかる」ということが挙げられます。

例えば現在では2人の共有になっていても、その子供がそれぞれ2人ずついれば将来法定相続分通りに相続すると4人の共有となります。

上記のように「共有者全員、あるいは持分の過半数」の同意がなければできない行為は、共有者の人数が増えたらますます難しくなります。

訴訟で解消する方法もある

どうしても遺産分割協議がまとまらない場合には、裁判所の力を借りて調停や審判に持ち込む方法があります。

遺産分割協議がまとまらない場合や、そもそも相手方が話し合いに応じてくれない場合には裁判所にまずは調停を申し立てることが基本です。

調停が調わない場合にはその先の審判とよばれる手続きに移ります。

審判では、当事者の出した資料等に基づいて裁判官が一定の判断を下します。

また、遺産分割協議の前提となる事項(例えば相続人が誰か、相続財産の範囲など)について争いがある場合には、まず争われている論点について訴訟を行い、決着をつけてから遺産分割協議を行う流れとなります。

最終手段は自身の共有持分を専門の不動産買取業者に売却する

いったん共有にしてしまった権利関係から抜けたい場合には、自分の共有持分のみを共有持分買取専門の不動産業者に売却するという手段もあります。

上記のように、共有不動産は「全体の」売却を行うには全員の合意が必要ですが、自己の持分のみを売却する場合には各共有者が自分の判断で行うことが可能です。

持分のみの売買では一般の買い手がつくことはまず考えられませんが、不動産買取業者に対しての売却であれば現金化までが速やかに完了します。

他の共有者に知られないように売却し、面倒な共有関係から離脱することを望む人にとっては有効な選択肢となります。

弊社Albalinkでも持分のみの買取を行っております。共有関係から抜け出したい方は一度弊社にご相談ください。買取後の他の共有者との話し合いも弊社が行いますので、ご安心ください。

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相続人同士の意見がまとめられない土地は専門の不動産買取業者に任せよう

土地の相続をめぐり相続人同士の意見が食い違ってしまった場合、ひとまず土地の相続に詳しい不動産買取業者に相談することが解決への近道です。

弁護士や司法書士などの士業との連携が豊富

相続問題は法律や手続きに関する知識が必要になりますが、相続に詳しい不動産業者であれば、弁護士や司法書士などの専門家とのネットワークが構築されています。

相続人だけで考えていると判断ミスなども起こりやすいのですが、法律専門家の意見を参考にしながらアドバイスしてくれる不動産業者に任せれば安心です。

相続手続きなどもワンストップで相談できる

土地を売買するには先に相続登記の手続きを行わなければなりませんが、専門の不動産買取業者であれば具体的な手続きについても連携している司法書士がいるため、すばやく進めることが可能です。

通常の仲介などを行っている不動産業者は、相続絡みの案件は知識がないことや面倒なことから取り合ってくれないこともあります。

しかし、相続を進めなければ売却できない=現金化できないことから、相続に強い不動産買取業者に任せることには非常に大きなメリットがあります。

最終手段として自身の共有持分を買い取ってくれて、権利関係から離脱することが可能

もし、相続人全員で土地全体を売却しようとしても意見がまとまらない場合、最終手段として不動産買取業者に共有持分を買い取ってもらい、権利関係から離脱することが可能です。

相続人の間で話し合いが成立しなかったり、関係が険悪になっている場合には、もはや裁判所の手を借りる以外打つ手がありません。

自分の持分を現金化したいが他の相続人と関わりたくないという人にとっては早めに持分のみを不動産業者に売却してしまうことにより、土地の共有関係の煩わしさから逃れることが可能です。

弊社Albalinkでも土地の共有持分を買い取ることができます。土地の共有関係から早く逃れたい方はぜひ一度ご相談ください。

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相続した土地を売却する際の注意点

相続した土地を売却する際は、どのようなことに注意するべきか考えてみましょう。

売却の取りまとめ役を決める

共有名義の土地を売却する場合は全員の合意が必要であるため、書類の準備や実印の押印などは全員が行いますが、不動産業者との窓口となる人を決めておくことが大切です。

もし、複数いる相続人のうち遠方に住んでいる人がいるような場合には、相続登記を行う段階で名義を誰か1人にしておく方法もあります。

相続人のうち1人の名義にしておいて売却し、代金を相続人で分ける場合(換価分割)には、贈与税の課税を避けるため遺産分割協議書の記載に注意しなくてはなりません。

いったん1人が相続した後に他の人に代金を渡すことにより「みなし贈与」と解釈されることがあるからです。

贈与税課税を避けるため「換価分割のために〇〇に相続させる」という趣旨の記述を遺産分割協議書に含めておかなければなりませんが、間違いのないように行政書士等に遺産分割協議書の作成を依頼する方が無難です。

最低売却金額を決めてから不動産業者に依頼する

不動産業者に依頼する前提として最低売却金額を決めておきます。

相場となる金額からあまりにもかけ離れていては売却自体が不可能になるため現実的な金額に設定することは必要ですが、逆に売り急ぎすぎて安く買い叩かれないようにすることも大切です。

売却で出た利益には譲渡所得税がかかる

土地を売却したことにより利益が出た場合には「譲渡所得税」の対象となります。

譲渡したことによる「利益」の計算方法は次のとおりです。

①譲渡価額-②取得費-③譲渡費用-④(家屋の場合は)特別控除=課税される譲渡所得金額

①の「譲渡価額」とは売却した金額です。

②の「取得費」とは、仲介手数料なども含めた購入代金です。取得費が明確にならない場合には「売却した金額の5%」をみなし取得費とします。

③の「譲渡費用」とは、譲渡する際にかかった仲介手数料などです。

④の「特別控除」とは、特別控除というのは、「一定の条件を満たす住宅を売却する際に、売却益から一定の金額を差し引くことができる」制度です。

上記の計算式で算出した譲渡所得金額に対し、次の税率で譲渡所得税がかかります。

売却した年の1月1日時点での保有期間 所得税 住民税
5年以下(短期譲渡所得) 30% 9%
5年超え(長期譲渡所得) 15% 5%

なお、所得税には、基準所得税額×2.1%の復興特別所得税が付加されます。

相続から3年以内に売却した場合は譲渡所得税の軽減特例が利用できる

相続から3年以内に売却した場合、要件を満たすと譲渡所得税の軽減を受けることが可能になる場合があります。

上記で「譲渡所得」を計算する際に「取得費」という項目があり譲渡価額から差し引くことを解説しましたが、取得費の中に「相続税として支払った金額を含める」ことが認められます。

要件は以下の通りです。

  1. 相続や遺贈により財産を取得した人であること
  2. その財産を取得した人に相続税が課されていること
  3. その財産を相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡(売却)していること

つまり、上記要件を満たすと利益から差し引ける金額が増えるということになります。ただし、税額計算や軽減措置の適用の判断をする際には必ず税理士に相談するようにしましょう。

相続した土地を売却する際の流れ

相続した土地を売却する場合、全体としての流れがどうなるのか確認してみましょう。

遺産分割協議を行う

戸籍等で法定相続人全員が確定していることが前提として、全員で遺産分割協議を行い、名義を誰にするかを決定します。

もし戸籍の取り寄せも未了であれば行政書士等に依頼して職権で取得してもらう方が手続きの進行は速くなります。

相続登記を行う

令和6年4月1日より相続登記が義務化されます。

(1)相続(遺言も含みます。)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。
(2)遺産分割が成立した場合には、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、相続登記をしなければなりません。
(1)と(2)のいずれについても、正当な理由なく義務に違反した場合は10万円以下の過料(行政上のペナルティ)の適用対象となります。

なお、令和6年4月1日より以前に相続が開始している場合も、3年の猶予期間がありますが、義務化の対象となります。
不動産を相続したら、お早めに登記の申請をしましょう。

相続登記は自分で行うことも可能ですが、売買契約前に相続登記を終えることが望ましいといえるため司法書士に依頼するのが確実です。

なお、相続登記は上記の「遺産分割協議に基づいて」行う他、「遺言書がある場合は遺言書に従って」「法定相続分で」登記するパターンがあります。

それぞれに添付書類などが異なりますが、下記記事に詳しい解説がされていますので参照してください。

共有持分の相続登記を司法書士が簡単解説!申請手順や登記後のリスクを網羅
売れない訳あり不動産の情報メディア

不動産業者に相談する

相続登記を終えて名義人が決定したら不動産業者と売却についての打ち合わせを行います。

上記のとおり、共有で登記した場合には全員が契約や決済などに協力しなくてはなりませんが、1人の名義にした場合は1人だけの関与で済みます。

売買契約を締結する

買主が決定したら売買契約を締結します。

共有名義になっている場合は基本的に共有者全員が決済に立ち会いますが、仕事などで欠席せざるを得ない場合は欠席者から他の共有者に対して委任状を出します。

委任状のフォーマットは不動産業者や司法書士からもらえることが多いため、指定の箇所に署名押印を行います。

一般的には契約の段階で買主は売主に手付金を交付します。

決済・登記

上記の手付金を除く残代金を支払う手続きである「残金決済」を行います。

買主が銀行などの融資を受ける場合には融資を行う銀行に売主、買主、不動産業者、司法書士など関係者が一堂に会して行われます。

融資金で買主は売主に代金を支払い、同日中に売主から買主への所有権移転が行われます。

相続登記から売買の代金決済、登記まで一連の流れはケースにより異なりますが、早く手続きを終わらせて現金化するためにも「遺産分割協議をなるべく早くまとめる」「最初から相続に詳しく士業と連携している不動産業者に依頼する」などがポイントになります。

どうしても遺産分割協議がまとまらない場合には「共有持分の不動産業者への売却」も含めて検討してみましょう。

まとめ

今回は土地の相続をめぐり、親族で意見が一致しなかったり、不動産以外の財産がないために分け方に困っている方に向け、相続の方法や、売却する場合の手順について解説しました。

土地の相続は記事でも述べたように、親族同士で意見がぶつかり、スムーズにいかない場合があります。そうした場合は、遺産分割協議(親族同士の話し合い)を行い、土地を売却し、そのあとに売却代金を分ける(換価分割)などの方法を取ることができます。

しかし、どうしても親族同士の意見が合わない場合は、ひとまず共有で相続しておき、自分の共有持分だけを不動産買取専門業者に売却するという手段もあります。専門の買取業者であれば、自分の持ち分だけ買い取ってもらえるため、親族同士のもめごとから抜け出せます。

弊社Albalinkも訳アリ物件専門の買取業者として、共有持分の買取を行っております。実際、24名で共有している土地の共有持分(1/24)を150万円で買い取った実績もあります。

土地の相続で親族の意見が折り合わず、売却もできずに困っている方は、ぜひ弊社にご相談ください。あなたの共有持分を買い取らせていただき、その後の共有者との話し合いも全て弊社で行わせていただきます。弊社に売却していただいた時点で、土地の相続で頭を悩ませることはなくなるということです。

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監修者

佐久間祐希 行政書士・宅地建物取引士

プロフィールページへ

行政書士・宅地建物取引士
東京都台東区にて行政書士SLオフィスを営んでいます。
相続をはじめとする皆様の身の回りの問題や行政手続きに関するお悩みを解決するため、親身になってサポートいたします。
専門的な知識と経験を持った行政書士が真摯に対応いたします。

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