親に「相続してほしい」と言われても、正直断りたい遺産や遺品がある方もいるのではないでしょうか。
親にとっては大切な財産であったり、先祖代々受け継いできたものであったりしても、自分にとって価値があるとは限らないからですね。
相続することで扱いに困ってしまうものもあります。
今回は全国の男女500人にアンケートを実施。
「親から相続したくないもの」や「相続したくないものを回避するためにできること」について聞きました。
- 調査対象:全国の男女
- 調査期間:2025年1月28日~2月4日
- 調査機関:自社調査
- 調査方法:インターネットによる任意回答
- 有効回答数:500人(女性340人/男性160人)
- 回答者の年代:10代 0.6%/20代 16.4%/30代 34.4%/40代 30.0%/50代以上 18.6%
親から相続したくないもの1位は「不動産」
「親から相続したくないもの」を聞いたところ、圧倒的1位は「不動産(54.4%)」で、全体の半数以上を占めました。
2位は「お墓(20.4%)」です。
不動産やお墓など、動かすのが難しいものが上位になりました。
車も含め、物理的に大きいものが多かったのも特徴です。
1位 不動産
- 田畑、山。管理が大変だから。両親ですら把握しきれない土地を、私が管理できるとは到底思えない(20代 女性)
- 両親が土地を相続して、固定資産税に困っていたのを見てきたから(30代 女性)
- 親所有のマンション。築30年以上経過しているので、資産価値がないため(40代 男性)
1位は「不動産」です。
「実家や田畑を相続しても、自分で住んだり使ったりはしないから」という声が多数。
実家とは離れた場所に生活拠点がある場合には、相続しても実家へ戻るのは難しいですよね。
また「田舎すぎる」「古い」といった理由から、売ったり貸したりできないためいらないという声も。
不動産の場所や資産価値によって、相続の意向も変わってくるとわかりました。
アンケート結果からは、実家や両親が所有している土地に資産価値を見出せない人が多いと推測できます。
2位 お墓
- 県外に住んでいるため、お仏壇やお墓の掃除が大変だからです。毎月お墓掃除のために帰省はできません(20代 女性)
- 独身で子どもなしなので、将来管理するにも限界があると感じる。今後どうするか決めるのに苦悩しそう(40代 女性)
- 費用がかかるし、お寺さんとの付き合いも大変(50代以上 男性)
2位は「お墓」でした。
家から遠いなどの理由で管理が難しいため、お墓を継ぎたくない人が多くなっています。
また、自分が継いでも自分の次に継ぐ人がいないという理由で、相続をためらっている人も複数いました。
ただ、墓じまいをするにしても親戚に了解をとりつける必要があるので悩ましいという声も。
お墓は不動産ではありませんが、心情として簡単に移せるものではないので、苦労すると考えている人も多いようです。
なお正確に言うとお墓は相続財産には含まれないので、相続するのではなく承継し、相続税などもかかりません。
3位 借金
- 自分がつくっていない借金なのに、なぜ自分が返すのかよくわからないから(10代 女性)
- 予想外の金額だと対応に困ってしまうから(30代 女性)
- 生活に余裕がないから、借金は困る(50代以上 男性)
3位は「借金」でした。
相続する場合には、プラスの財産だけではなくマイナスの財産も相続することになります。
自分がした借金でもないのになぜ自分に負担がかかるのかと、割り切れない気持ちになる人がほとんどでしょう。
「知らないうちに親が借金をつくっていて、相続で苦労した人を見た」という体験談も寄せられました。
4位 骨董品
- 価値がわからず、処分に困るから(30代 男性)
- 実家は広いから骨董品を置いていても不便はないが、私の家は置くスペースがないため、もらっても困る。売るにも手間暇がかかりそうで、面倒だから(30代 女性)
- 骨董品は売ってもあまりお金になりません(50代以上 女性)
4位は「骨董品」となりました。
骨董品は興味のない人が見ても、価値がわかりません。
また、被相続人が高価なものと信じていたとしても、実は偽物で二束三文かもしれません。
そのため相続にあたっては、骨董品の鑑定を依頼して評価額をもとに申告するという手間がかかります。
大きなものだったり数が多かったりすると、置き場所に困るという人もいました。
5位 車
- 父親は車好きだが、自分は興味がないため、相続しても持て余してしまう(20代 女性)
- 車を運転したくないし、駐車場など維持費がかかるから(30代 男性)
- 自分の車を持っているので、置き場がない(40代 女性)
「車」が5位です。
普通車の所有者が亡くなった場合には、相続人への名義変更手続きが発生します。
しかし「車をもらっても使わない」「自分の車があるのでいらない」という人も多くなりました。
相続した普通車を使わない場合には、相続後に売却したり廃車にしたりできます。
相続や廃車が嫌な人は、親に免許返納や事前の廃車をお願いすることも検討しておくといいかもしれませんね。
親から相続したいものは「お金」
- 財産。妹とぴったり半分にできるものは相続したいです(20代 女性)
- 実家。自分や家族が過ごした思い入れのある場所であり、自分が生きている間もずっと維持していきたいと思うから(30代 男性)
- 場所的に問題なければ家か土地。まだ乗れれば車。利用価値を考えて、今後活用できるものならいいと思います(30代 女性)
- 金。現金ではなく資産価値が高いもの(40代 女性)
- 現金。手間もかからず葬儀費用などとしてすぐ使用できるため(50代以上 女性)
親から相続したいもののダントツは「お金(43.8%)」。
具体的には現金や預貯金です。
2位「不動産(24.0%)」と答えた人も多くなっています。
なお「相続したいものは何もない」と答えた人も多く、19.0%いました。
お金を相続したい理由としては、「兄弟姉妹で分けやすいので揉めにくい」「使いやすい」「楽」などのコメントが挙げられています。
実家や車を相続しても、現物を兄弟姉妹でぴったり半分にするのは難しく、売却して利益を分けるにしても手間がかかります。
そのため、揉めにくいことや手続きが楽なことを重視している人が多くなりました。
また「相続したくないもの」で1位だった不動産は、「相続したいもの」でも2位に。
古かったり田舎だったりして資産価値が低く活用しにくい不動産は相続したくない人が多い一方、「価値や活用法があるなら実家や土地を残してほしい」と考える人も多いとわかりました。
相続したくないものを避けるための対策は「事前に家族で話し合う」
では、「相続したくない」と思っているものを「相続せずに済む」ためにはどうしたらいいのでしょうか。
500人に「相続したくないものを避けるための対策」を聞いたところ、もっとも多かった回答は「事前に家族で話し合う(54.0%)」で、半数以上から回答を集めました。
2位「生前整理してもらう(33.2%)」、3位「相続放棄をする(14.2%)」が続きます。
親の生前にできる対策を挙げた人が多くなっています。
「生前に相談したり生前整理をお願いしたりしてできるだけ対策しつつ、どうにもならなければ最終的に相続放棄」と、複数の対策を組み合わせて考えている人もいました。
1位 事前に家族で話し合う
- 親や兄弟と相続について話し合いをしておく(30代 女性)
- 相続したくないものは、親にはっきりと伝えておくことだと思います(40代 男性)
- 親との話し合いが必要です。ただ親が話のできない相手だと、結局子どもが尻ぬぐいすることになります(50代以上 女性)
1位は「事前に家族で話し合う」です。
家族で話し合うことで、親や兄弟姉妹の希望を把握でき、自分の希望も伝えられます。
例えば「実家は相続したくない」「お墓を相続しても管理が難しい」といった事情を伝えることで、親も対策を考えるようになるでしょう。
「相談できないまま親が亡くなったので、お墓のことを話し合っておけばよかったと後悔している」という体験談もあり、事前相談の重要性が伺えます。
また認知機能が衰えてしまうと、正常な判断を下すのが難しくなってしまうので、親が元気なうちに相談することが重要です。
2位 生前整理してもらう
- 生前整理を促しています(30代 女性)
- 親が生きている間に墓じまいをする。田や畑は売却していく(40代 男性)
- 親に生前整理してもらえるよう、相続について理解してもらう。換金できるものは現金化してもらう(50代以上 女性)
2位は「生前整理してもらう」でした。
生前整理は終活の一環で、生きているうちに財産や身の回りのものを整理することです。
財産リストを作成し、財産をどうしたいか決め、不要となるものは生前に売却して現金化したり、相続人に売却を依頼したりします。
親が生前整理を進めておくと、財産を相続する子どもは精神的にも、時間、労力的にも楽になります。
3位 相続放棄をする
- 生前整理は厳しいと感じたため、相続放棄を考えています(30代 女性)
- 話し合いはあまり期待できません。相続放棄でいいです(40代 女性)
- 親の顔を見るのも嫌なので、死んだことがわかったら相続放棄の手続きを取ろうと思っていまする(50代以上 男性)
3位は「相続放棄をする」でした。
話し合いや生前整理ができないため、相続放棄しようと考えている人も複数いました。
事前の対策ができないので、自分の手間を減らしたり親の借金から自分を守ったりするために、相続放棄するという結論に至ったと推測できます。
相続放棄すると「自分がいらない財産」だけではなく、すべての財産を放棄することになりますので、相続したい財産がある場合には注意が必要です。
また相続放棄の手続きには期限があるので、早めの手続きが必要となります。
4位 遺言書を作成してもらう
- 遺言書を作成してもらうことは必須だと思います。親に「自分が死んだ後のことを考えて」というのは心苦しいですが、兄弟姉妹がいる限り、はっきりさせないと後々嫌な気持ちになるだろうなと感じています(20代 女性)
- 遺言書に、誰に何を残すかを明記してもらう(40代 男性)
- できるなら遺言書の作成をお願いする(50代以上 男性)
4位は「遺言書を作成してもらう」となりました。
例えば実家を相続したくない場合には、「自分ではなく兄弟姉妹に実家を残す」と遺言状に書いてもらう必要があります。
家族で話し合っても、口約束だと「言った言わない」「話が違う」といったトラブルになる可能性があるからですね。
自筆の遺言状だと無効になってしまう可能性もあるので、不備のないよう「公正証書遺言にしておきたい」という人もいました。
5位 財産の状況を確認する
- 親の財政状況を理解しておくことが必要だと思う(20代 女性)
- 事前に隠し事はないか確認しておく。催促状などが来てないかも確認して、借金がありそうかどうか把握。預貯金の確認(40代 女性)
- 相続の対象となるものを把握する(50代以上 男性)
「財産の状況を確認する」が5位です。
「親にどんな財産があるのか」や「借金がないか」を事前に把握しておこうという人もいます。
財産の状況によって、「生前整理を進めたほうがいいかも」「手続きについて調べておいたほうがよさそうだ」といった対策ができるからですね。
もし借金の額が大きく、相続するとマイナスになってしまうと事前にわかったら、相続放棄についても調べを始められます。
まとめ
相続したくないものの1位は実家や土地などの「不動産」でした。
ただ「資産価値がある不動産は相続したい」という人もいて、「不動産だから嫌」というわけではなく、不動産の中身で判断されているとわかります。
反対に相続したいものとしては、現金や預貯金などの「お金」が1位に。
兄弟姉妹で分けやすいというメリットがあるうえ、不動産などのように管理や売却の手間もかからないからですね。
そのため親には生前整理をして不動産などを処分し、お金のかたちで財産を残してほしいと考えている人も多くなりました。
スムーズにストレスをできるだけ減らして相続手続きをするには、上記のような希望について、親子で話し合うことが重要です。