未成年者は不動産売買など法律行為ができない
前提として民法5条1項により、未成年者は単独での不動産売買など「権利や義務を発生・変更させる行為」ができません。
(未成年者の法律行為)第五条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。引用元:e-Govポータル/民法
まだ判断能力が十分でない未成年者が単独で不動産売買などの契約行為を行うと、未成年者自身が損害を受けるおそれがあるからです。
そのため未成年者が不動産売買などの契約行為を行うには、法定代理人の同意が必須です。
未成年者本人に代わって、財産などの保護や監督をする者。主に未成年者の親である親権者を指す。死亡や離婚により親権者がいない場合は、家庭裁判所から選任される「未成年後見人」を指す。
なお、共有持分の単独売却はもちろん、共有名義の物件を売却するのに必要な同意書にの署名捺印をすることも、未成年は認められませんのでご注意ください。
未成年者と不動産を共有してしまう状況とは
未成年者との不動産の共有は、主に「相続」によって起こります。
具体的にどのように未成年者と不動産を共有することになるのか、よくある2つのパターンをご説明します。
1つめは、不動産の所有者が亡くなり、配偶者と未成年の子どもが法定相続分通りに不動産を相続したケースです。
故人の財産を相続するにあたり、法的に定められた各相続人の取り分の割合
例えば子どもが2人の場合、法定相続分通りに不動産を相続すると持分は以下のようになり、配偶者は未成年者(自身の子ども)と不動産を共有することになります。
2つめは、不動産の共有者(成人)が亡くなり、共有者の持分が亡くなった共有者の子ども(未成年)に引き継がれるケースです。
例えば、一緒に不動産を相続して共有していた兄が亡くなり、兄の妻と17歳の息子に持分が引き継がれた場合、弟は未成年者(甥っ子)と不動産を共有することになります。
2022年4月より未成年は20歳未満から18歳未満へ
2022年4月の民法改正により、成人とされる年齢が20歳から18歳に引き下げられたため、不動産の売買も18歳から可能になりました。
未成年は18歳未満が対象なので、たとえ高校生でも18歳の誕生日以降は単独での不動産売買が可能です。
一方、飲酒や喫煙などが可能になる年齢は、20歳からと変わらないので、ご注意ください。
民法の一部を改正する法律(成年年齢関係)について
平成30年6月13日、民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げること等を内容とする民法の一部を改正する法律が成立しました。
民法の定める成年年齢は、単独で契約を締結することができる年齢という意味と、親権に服することがなくなる年齢という意味を持つものですが、この年齢は、明治29年(1896年)に民法が制定されて以来、20歳と定められてきました。これは、明治9年の太政官布告を引き継いだものといわれています。
未成年と共有している不動産を売却する方法
前提として、共有している不動産の全体を売却するには共有者全員の同意を得なければなりません。
ですが、未成年者は共有している不動産の売却にも独断で同意することはできません。必ず法定代理人の同意が必要になります。
以下では、共有者に未成年者がいる際の売却方法を5つご紹介します。
- 親権者の同意を得て未成年者本人が売主となる
- 親権者が売主となって代理で売却する
- 未成年後見人の同意を得て未成年者本人が売主となる
- 未成年者後見人が売主となって代理で売却する
- 未成年の共有者から持分を買い取る
1つずつ説明していきます。
親権者の同意を得て未成年者本人が売主となる
親権者が健在なのであれば、未成年者は親権者に売却の同意を得ることで不動産の売買取引が可能になります。親権者に同意を得たことの証明として同意書は必須です。
同意書には[物件を〇〇(買主の氏名)に売却することに同意します]などと書き、署名捺印(親権者)をします。
同意書のほかに必要な書類は、下記のとおりです。
- 未成年者の戸籍謄本
- 未成年者の本人確認書類
- 未成年者の住民票
- 未成年者の印鑑登録証明書
ただし、15歳にならないと印鑑登録ができないので、14歳以下ではこの方法では売却できません。
共有者が14歳以下の場合は、これからご説明する他の方法をとってください。
親権者が売主となって代理で売却する
親権者が未成年者に代わって不動産を売却することもできます(もちろん、共有不動産の売却に合意することも可能です)。
このとき、親権者は未成年者の同意を得る必要はありません。
ただし、本当に親権者であることを証明しなければならないので、売買契約を結ぶ際には戸籍謄本・住民票・本人確認書類が必要となります。
未成年後見人の同意を得て未成年者本人が売主となる
死亡や離婚などの事情で親権者がいないのであれば、「未成年後見人」を家庭裁判所に選任してもらう必要があります。
主に、18歳未満の児童の親権者がいないときに、親権者に代わって法定代理人となる者。祖父母や叔父叔母などの親族、あるいは弁護士や司法書士などが選任される。
未成年後見人が不動産の売却に同意をすれば、未成年者本人が売主となって取引を行うことが可能です。
なお未成年後見人が同意して売却する場合には、本人確認書類・住民票・印鑑登録証明書のほかに、未成年後見人が選任されていることがわかる戸籍謄本が必要です。役所に申請すれば取得できます。
未成年後見人が不動産の売却に同意をすれば、未成年者本人が売主となって取引を行うことが可能です。
なお未成年後見人が同意して売却する場合には、本人確認書類・住民票・印鑑登録証明書のほかに、未成年後見人が選任されていることがわかる戸籍謄本が必要です。役所に申請すれば取得できます。
未成年者後見人が売主となって代理で売却する
未成年後見人も親権者と同様に未成年の代理で不動産を売却できます(もちろん、共有不動産の売却に合意することも可能です)。
この場合、未成年後見人は未成年者の合意を得る必要はありませんが、未成年後見人である証明が必要です。
未成年の共有者から持分を買い取る
前述の通り、共有不動産の売却には共有者全員の合意が必須です。
そこで、未成年者含む他の共有者から持分を買い取って所有者を1人にすれば、所有者1人の独断で不動産を売却できるようになるので、共有者全員から合意を得る手間が省けます。
例えば共有者である未成年の子どもから、親が持分を買い取って親の単独名義にしたとしましょう。その場合、前述したような手段(法定代理人が売却に合意をしたり、未成年者に代わって売却したり)をとる必要はありません。
しかし、ここで注意しなければならないのは、未成年者の持分を法定代理人(親)に売却するのであれば「特別代理人」の選任が必要になる点です。
法定相続人である親と未成年の子どもの間に、利益相反(片方にとっては利益になるが、もう片方にとっては不利益になる)が起きるとき、法定相続人である親に代わって未成年の持分の売却を行う者。親族の中から選任されるのが一般的。
未成年者と親が共に第三者に不動産を売却するのであれば特別代理人は不要です。
一方、未成年者から親に持分を売却するのであれば、利益相反が起こるので特別代理人の選任が必須となります。
もし所有権を1本化して売却しようと考えているのであれば、特別代理人の選任はせずに、まずは弊社にご相談ください。
弊社は所有権が1本化されていない不動産もそのまま買い取ることができます。
未成年者と共有している不動産がいくらになるか、まずは弊社の無料査定をご利用ください。
共有者(未成年者)に売却交渉難しいならなら自身の持分のみ売却
不動産を共有している未成年者が、自身の子どもであるとは限りません。甥っ子や姪っ子・疎遠になっている親戚の子どもである可能性もあります。
共有者(未成年者)と疎遠である、関係性が浅い、仲違いしている等の場合は、不動産の売却のために共有者と密に連絡を取りたくないのではないかと思います。
共有者(未成年者)に売却交渉ができない、したくないのであれば、自身の持分のみを手放して、わずらわしい権利関係から解放されましょう。
そのようなことが本当にできるのか、不思議に思われるかもしれません。
一般的な不動産会社では難しいですが、共有持分物件の買取実績が豊富な専門業者であれば可能です。
弊社AlbaLink(アルバリンク)は、一般の不動産会社では取り扱えない共有持分もスピーディーに買い取れます。
持分の買取後は我々の豊富な買取経験を活かし、共有者様と丁寧に交渉・相談ができますのでご安心ください。売主様が持分売却後に責任を問われたりすることは一切ありません。
もちろん「まずは話だけ聞きたい」という方のお問い合わせも大歓迎です。
共有持分買取専門業者ならどのケースでも対応可能
共有持分など、特殊な不動産の取扱いに特化した買取業者は、弁護士や司法書士、税理士などの各種士業と連携していることも少なくありません。
不動産の相続手続きや売却手続き、必要に応じて節税対策などのアドバイスももらえます。共有不動産に関するどんな悩みも、気軽に相談してみましょう。
もちろん弊社も専門の弁護士・司法書士と連帯していますので、共有不動産の相続や売却について、全面からお客様をサポートすることができます。
どうぞお気軽にご相談ください。
未成年者が法定代理人の許可なく不動産を売却したら契約の取消が可能
法定代理人の同意を得ていない未成年者の法律行為は、取り消すことができます。
成年者と比べると、未成年者は取引の知識や経験が不足しているだけでなく、判断能力もまだまだ未熟なため、契約によって不利益を受けないように法律で保護されています。
あまり現実的な話ではありませんが、未成年者に両親がいなくて、さらに後見人と疎遠である場合など、心無い業者に騙されて勝手に売却してしまうことがないとは言えません。
以下の対処法をチェックしておきましょう。
売買契約は有効となるが取り消しができる
未成年者が勝手に売買したからといって、何もせずに即無効になることはありませんが、法定代理人によって契約を取り消すことが可能です。
どのように取り消すのかというと、親権者や未成年後見人には取消権があり、売買契約の効力を失わせて契約前の状況に戻せます。そうすることで登記も元通りに未成年者に戻り、購入代金も買主に戻ります。
当然、代金も返納しなければなりませんが、既に使った分は免除になり、これを現存利益といいます。
一方、不動産売買契約をそのまま成立させたい場合には、親権者または未成年後見人が買主へ売却すると追認してください。
追認すれば、未成年者が同意なしで勝手に契約した不動産売買契約が有効となります。
未成年者自ら取り消すこともできる
未成年者本人が契約を取り消すことも可能で、法定代理人が取り消した場合と同じように売買契約の効力を失わせ、契約前の状況に戻せます。
取り消しは口頭でも効力がありますが、後でトラブルが起きないとは限りません。トラブルを防ぐためにも、契約した不動産会社など事業者の代表者へ書面で提出すると安心です。
提出方法は、はがきに記入して郵便局の窓口へ持参し、特定記録郵便や内容証明郵便で送付すれば記録に残ります。受領証がもらえるので、大切に保管しておいてください。
記入したはがきは両面をコピーし、受領証と一緒に保管しておくと良いでしょう。
書き方がわからなければひな形があるので、そちらを参考にしてください。
■ 未成年者本人から通知を出すときの例
契約取消通知 私は○○年○○月○○日、貴社との間で○○○の売買契約を締結しましたが、契約時未成年者であり、親権者の同意を得ずに契約したものでありますので、契約の取り消しを通知いたします。
私が保管中の商品を返却いたしますので、送付先をご連絡ください。
また、私が支払いました代金○○○○円は、○○銀行○○支店普通口座○○○○号、
名義人○○○○あて至急振り込んでください。○○年○○月○○日大阪府○○市○○町○○番地
大阪太郎○○市○○町○○番地
○○株式会社
代表取締役○○○○様
■ 未成年者の親権者から通知を出すときの例
契約取消通知 私どもの子ども、大阪太郎(○○歳)が、○○年○○月○○日、貴社との間で○○○の売買契約を締結しましたが、契約時未成年者であり、親権者の同意を得ずに契約したものでありますので、親権者として契約を取り消します。
つきましては、契約時に支払った金○○○○円は○○銀行○○支店普通口座○○○○号、名義人○○○○あて至急振り込んでください。
なお、当方で保管中の商品を返還いたしますので、送付先をご連絡ください。○○年○○月○○日大阪府○○市○○町○○番地
大阪一郎○○市○○町○○番地
○○株式会社
代表取締役○○○○様引用:未成年者契約
取消権には時効がある
取消権の行使には時効があるので、注意が必要です。
法定後見人が売却の事実を知ったときから5年、または法定後見人が売却を知らなかった場合には売却から20年が経過すると、取消権が消滅します。
買主には催告する権利がある
未成年者が勝手に売却した事実が発覚した場合、買主はいつ取り消されるのかわからず不安な立場になってしまいます。
そのため買主は未成年者側へ、取消するのか追認するのかを決めるように催告できる催促権があります。
催促権とは、法定代理人に対して1か月以上の期間を定めて催告できる権利で、返事がなかった場合には追認したとみなされて売買契約が有効となります。
未成年者が法定代理人の許可なく不動産を売却しても取消できない例
未成年者が法定代理人の同意なく勝手に不動産を売却したとしても、下記のような取消ができない例外もあるので注意しましょう。
成年擬制(結婚している)の場合
未成年者であっても、結婚していると法律上は成年として扱われ、これを成年擬制といいます。
成年として扱われるため、法定代理人の同意なく売買契約が締結でき、売買契約はそのまま有効です。
未成年者が買主を騙した場合
未成年者が成年者であるかのように見せかけたり、偽の法定代理人の同意書を作ったりするなど、相手方を騙して契約した場合には取消権が認められません。
騙しているということがポイントとなるので、相手方が虚偽の事実を知っていた場合には取消権が認められます。
営業許可を得ている行為の場合
未成年者が宅地建物取引士の資格を所有している場合には、売買が行える状態であり、成人と同じように扱われるので取消権が認められません。
しかし、自宅を売却する場合には、法定代理人の同意が必要です。
未成年者の相続登記をするとき特別代理人は必要か
夫を亡くした場合、未成年の子どもと共有する予定の不動産売却を決めたものの、何から手を付ければよいか分からない状態に加えて心労もあり、遺産分割や相続登記がまだできていないというケースが多いです。
遺産相続では、未成年の場合には成人と異なるルールが適用されるので、下記のことに気をつけなければなりません。
遺産分割協議をするなら特別代理人の選任が必要
未成年者は法律行為ができないと民法で定められているため、単独で遺産分割協議に加わることができず、一般的な方法としては特別代理人を選任して同意を得る必要があります。
法定相続割合で登記するなら特別代理人の選任は不要
相続人に未成年者が含まれていても、法定相続割合で相続登記するのであれば特別代理人の選任は不要です。
法定相続割合での相続登記は、保存行為とみなされ、法定代理人(親権者)と未成年の子どもの間に利益相反が起きているとはみなされないからです。
保存行為とは、共有している不動産の状態を積極的に変えるのではなく、維持するための行為のことを指します。
法定相続割合での相続登記は保存行為の一つなので、特別代理人の選任は不要です。
まとめ
共有者に未成年者が含まれる場合の不動産の売却方法を解説しました。
未成年者は「不動産の売買」や「共有不動産の売却の合意」などを単独で行うことはできません。いずれも法定代理人の合意と合意を得たことを証明する手続きが必須です。
不動産を共有している未成年者が自身の子どもや身近な親戚なら、ためらいなくそれらの手続きを行い、共有不動産の売却に向かって動き出せるでしょう。
しかし不動産を共有している未成年者が、疎遠になったり仲違いしたりしている親戚であれば、不動産売却のために提案や相談をするのは大きな負担になってしまうでしょう。
後腐れなく共有関係から脱却したいのであれば、専門の不動産買取業者に自身の持分のみを直接売却するのが賢明です。
弊社AlbaLink(アルバリンク)は共有持分のみも確実に買い取れます。豊富な買取実績を活かし、お客様が納得できるお取引をすることをお約束します。
我々がお客様の肩の荷を1つ下ろすお手伝いができれば、非常に嬉しく思います。