正当な理由がなければ家賃の値上げはできない!
あなたが運営している賃貸物件の家賃を上げたいと思っても、正当な理由がなければ値上げできません。
大家が勝手な都合で家賃を値上げすれば、賃借人の生活が困窮してしまう可能性があるからです。
実際に、借地借家法第32条でも、家賃を上げる際に認められる正当な理由について定められています。
建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
引用元:借地借家法第32条
この章では、家賃の値上げが「認められる3つの理由」と「認められない3つの理由」に分けて詳しく解説していきます。
家賃の値上げが認められる3つの正当な理由
家賃の値上げが認められる正当な理由は、主に以下の3つです。
- 賃貸需要の増加による周辺の不動産価値が上昇
- 賃貸物件の管理費や固定資産税が上昇した
- 賃貸物件の家賃が近隣物件の相場より安い
賃貸需要の増加により周辺の不動産価値が上昇した
家賃の値上げが認められる正当な理由の1つ目は「賃貸需要の増加等による周辺の家賃相場が上昇」です。
家賃相場の上昇に伴って適正な家賃価格も上昇するため、割に合わなくなった賃料を同等まで値上げしたいという主張は、賃貸人側の正当事由に認められるからです。
実際に、前述した借地借家法第32条に「変動により不相当になったときは、増減を請求できる」と記述されています。
例えば、あなたの賃貸物件のあるエリアで、駅開発や街の再開発が行われて利便性が上がった場合、そのエリアに住みたいという人が増えます。
住みたい人が増えれば、家賃を上げてでも部屋を借りてくれるので、家賃相場も上がるのです。
実際に、2024年開業予定の「高輪ゲートウェイ駅」周辺の家賃相場は、開業を発表した2014年から現在までの約10年で「38%」も値上がりしています。
周辺物件の家賃相場を確認してすでに家賃相場が上がっているなら、「賃貸需要の増加に伴う家賃相場の上昇に家賃を値上げしたい」という理由を賃借人に伝えてみてください。
賃貸物件の管理費や固定資産税が上昇した
家賃の値上げが認められる正当な理由の2つ目は「賃貸物件にかかる管理費や固定資産税の上昇」です。
管理費や固定資産税は、「賃貸物件を維持し、賃借人の住環境を守るのに必要な費用」だからです。
実際に、前述した借地借家法第32条に「土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減」により家賃を値上げできると定められています。
例えば、固定資産税の金額は、以下のように計算されます。
※固定資産税評価額:国土交通省が公示する地価公示価格の7割を目処にした価格
上記のように、固定資産税評価額を決めているのは国土交通省なので、固定資産税の金額は国の方針で決まるということです。
つまり、あなたは「家賃を値上げするのは、国の方針で上昇した固定資産税を適切に支払い、賃借人の居住環境を維持するため」と主張でき、家賃を値上げする正当な理由として認められます。
また、物価が上昇すれば賃貸物件の管理費が上がるので、それも家賃を値上げする正当な理由となります。
例えば、賃貸物件の外壁が壊れたら業者に依頼して修繕しますが、物価が上がっていれば外壁の材料費や工事スタッフの人件費が高くなります。
つまり、あなたは「家賃を上げるのは、修繕費高騰への備えであり、必要な時に適切な修繕を行い、賃借人の「居住環境を守るためえるようにするため」と主張ができ、家賃値上げの正当な理由として成立します。
このように、「管理費や固定資産税の上昇」を正当な理由として掲げ、「賃借人の住環境を守るためです」と賃借人に主張すれば家賃を値上げできます。
賃貸物件の家賃が近隣物件の相場より安い
家賃の値上げが認められる正当な理由の3つ目は「賃貸物件の家賃が近隣物件の相場より安いこと」です。
周辺の賃貸物件と比べてあなたの物件の家賃が極端に安い場合、「適正価格ではない」からです。
例えば、あなたの賃貸物件と同条件の物件の家賃相場(=適正家賃)が「10万円」なのに、家賃を「7万円」しか取れていなければ、差額の3万円分の家賃の値上げが認められる可能性があります。
これは、前述した「借地借家法第32条」でも、「又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったとき」は家賃を値上げして良いと定められています。
ですから、「家賃相場に合わせたいから家賃を上げる」という理由は、大家の都合ではなく「法律に基づいた正当な理由」になります。
家賃の値上げが認められない3つの代表的な理由
この章では、前述した家賃の値上げが認められる正当な理由とは逆に、家賃の値上げが認められない3つの理由について詳しく解説していきます。
- 大家の経済的な都合による値上げ
- 家賃相場とかけ離れた値上げ
- 賃貸借契約に家賃増額を禁止する特約が記載されている
大家の経済的な都合による値上げ
家賃の値上げが認められない理由の1つ目は「大家の経済的な都合による値上げ」です。
大家の個人的な経済的事情によって、賃借人の生活が脅かされることはあってはならないからです。
例えば、以下のような理由は、大家の勝手な都合と見なされるので、家賃値上げの正当な理由として認められません。
- 家賃を上げてもっと儲けたいから
- 賃貸物件の収支が赤字だから
- 私生活で作った借金を返したいから
賃貸物件を収益化できておらず、経済的に困っている大家からしたら、「もう少しだけ収益を安定させたい」というのが家賃値上げの一番の理由だと思いますが、大家の個人的な事情で家賃を上げることはできません。
家賃相場とかけ離れた値上げ
家賃の値上げが認められない理由の2つ目は「家賃相場とかけ離れた値上げ」です。
相場に見合わない大幅な家賃の値上げは、賃借人の生活を困窮させてしまう可能性があるからです。
また、簡単に退去できない賃借人の弱い立場を利用して、不当に高い家賃をふっかけることはモラルにも反します。
例えば、あなたの賃貸物件と同条件の物件の家賃相場が「8万円」なのに、「15万円に値上げします」ということはできません。
相場からかけ離れた家賃を請求されたら、賃借人もさすがに生活できなくなります。
あなたの賃貸物件の収益が上がっていないことで「家賃を大幅に上げたい」と思う気持ちはわかりますが、相場からかけ離れた家賃への値上げはできません。
賃貸借契約に家賃増額を禁止する特約が記載されている
賃借人と結んだ賃貸借契約に「家賃の増額を禁止する」という内容が記載されている場合は、賃貸借違反になるので、家賃を値上げできません。
例えば、あなたと賃借人との間で、賃貸借契約書に「賃料を5年間据え置く」という文言を記載した状態で契約を結んでいる場合、どんな理由があろうと5年が過ぎるまでは家賃の値上げはできません。
あなたと賃借人との間で「値上げしない」という内容で賃貸借契約を結んだ以上、正当な理由があろうとなかろうと家賃の値上げはできません。
家賃値上げによるメリット・デメリット
家賃値上げによる大家のメリットとデメリットは以下の通りです。
家賃値上げというと、収益が増えるというメリットばかりに目がいきがちですが、その裏にはデメリットも潜んでいるので、よく確認してください。
家賃値上げのメリット | 家賃値上げのデメリット |
---|---|
家賃収益が増える |
|
上の表を見ていただけばわかるとおり、家賃の値上げを契機に、賃借人に契約解除を申し込まれる恐れがあります。
家賃が上がるのなら、今の家賃と同じ物件に移ろうと考える賃借人がいてもおかしくないためです。
経済的により困窮している賃借人の場合、契約解除の手順を踏まず、夜逃げされるリスクもあります。
賃借人に夜逃げされると家賃収入が途絶えるだけでなく、残された家財の処分や新たな賃借人の募集といった手間や費用も発生します。
また、値上げ交渉がもつれた場合、賃借人が感情的になり、現状の家賃の支払いすら拒否されるといった事態も起こり得ます。
こうしたリスクともいうべきデメリットがあることも踏まえ、家賃の値上げをするかどうかを判断するようにしましょう。
家賃の値上げ交渉の3つのステップ
家賃を値上げするには賃借人と交渉して、同意を得る必要があります。
家賃を値上げの交渉の流れは以下の通りです。
- 賃借人に家賃を値上げする旨を書面で「通知」する
- 賃借人と家賃の値上げについて「交渉」する
- 家賃値上げに双方が承諾したら「合意書」を結ぶ
それぞれ解説します。
賃借人に家賃を値上げする旨を書面で「通知」する
まずは、賃借人に家賃を値上げしたい旨を「書面」で通知します。
家賃値上げの通知は義務ではないですし、書面ではなく口頭でも大丈夫です。
ただ、あなたと賃借人との間で「家賃を値上げするって言いましたよね?」「いや、聞いてないですけど」といったトラブルに発展しかねないので、書面で伝えておくのが賢明です。
通知方法には「配達証明付きの内容証明郵便」を使います。
郵便物の内容、発送日、受け取った日付を証明できるので、仮に賃借人に「送られてきてないです」と言われても、送付した証拠として提示できるようになります。
賃借人へ家賃値上げの通知をするタイミングに決まりはなく、基本的にはいつ内容証明郵便を送付しても大丈夫です。
家賃値上げの効力は内容証明郵便が届いた日から発生するので、あなたが家賃を値上げしたい時期に合わせて内容証明郵便を送付してください。
ただ、賃借人の契約更新時期が近いなら「更新時期の1ヶ月前まで」には通知した方が親切です。
賃借人にこのまま契約更新するかどうかを考える猶予を与えた方が、いくらか心象は良くなるので、いきなり通知するよりかは家賃値上げに合意してもらえる確率は上がります。
家賃値上げに関する「内容証明郵便の書き方」は、以下の資料を参考にしてみてください。
賃料増額請求書
私は貴殿に、令和〇〇年〇月〇日から下記建物を家賃1カ月金〇万円で賃貸しております。賃貸を始めてからすでに〇年余りを経過しましたが、その間物価は上昇し、固定資産税などの租税公課も増額されています。
つきましては、令和〇〇年〇月分からの家賃を、1カ月金〇万円に値上げさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。記
所 在 〇〇区〇〇町〇丁目〇番地
家屋番号 〇〇番
種 類 居宅
構 造 木造スレートぶき2階建
床面積 45平方メートル令和〇〇年〇月〇日
賃借人と家賃の値上げについて「交渉」する
家賃を値上げするには、賃借人と「家賃の値上げに関する条件」を決め、承諾を取る必要があります。
大家が勝手に決めた条件で家賃の値上げを進めてしまうと、後に賃借人との間でトラブルに発展する可能性があるからです。
賃借人との交渉では、主に「家賃の値上げ幅」を話し合います。
家賃の値上げ幅に上限はありませんが、前述したように相場以上の家賃は正当な理由として認められないため、妥当な値上げ幅で交渉する必要があります。
家賃の値上げ幅を決めたら、その金額が正当である根拠をデータ(ネットで近隣相場を調査した結果や不動産会社に査定してもらった結果など)を示しながら、賃借人と交渉を行います。
賃借人に家賃の値上げを少しでも納得してもらうために、以下のような提案をして譲歩するのも戦略の一つです。
- 大家側で決めた値上げ額の見直しを行う
- 家賃の値上げ時期を一定期間遅らせる
- 次回の更新料を減額、または免除する
家賃の値上げ幅を妥当な金額に設定し、上記のような提案も行えば、賃借人は「引っ越し費用を払って退去するくらいなら、多少の値上げに応じてでも住み続けたい」と考えて、家賃の値上げに応じてくれる可能性があります。
交渉が成立して家賃を値上げできれば、あなたにとってこれ以上の成功はありません。
ですから、少しでも家賃値上げの成功確率を上げるためにも、管理会社をつけているならアドバイスもらいながら確実に賃借人との交渉を進めください。
家賃の値上げに双方が承諾したら「合意書」を結ぶ
賃借人との家賃値上げの交渉が成立したら、決定した家賃値上げに関する条件を元に、「家賃改定合意書(賃料改定合意書)」を結びます。
正式に合意書を結んでおけば、後になって「言った言わない」のトラブルに発展することはありません。
家賃改定合意書は、以下の内容が書いてあれば、どのような書式でも問題ありません。
- 対象物件の表示(登記の内容)
- 家主、入居者の氏名と住所
- 家賃変更の合意について締結する旨
- 現状の家賃と値上げ後の家賃
- 値上げ後の家賃の適用開始日
実際に家賃改定合意書を作成する際は、以下の資料を参考にしてください。
家賃改定合意書
賃貸人○○○○と賃借人○○○○は、これまで後記建物についての賃貸借契約(平成○○年○月○日付)に基づき、以下月あたり金○○○○円としてきた賃料を、平成○○年○月分以降に 1 ヶ月あたり金○○○○円に改定することに合意する。
なお、賃貸人○○○○は、平成○○年○月までには、賃料の増額請求をしないものとする。
記
《建物の表示》
所在 東京都○○区○○町○丁目○番○号
家屋番号 ○○○○番
種類 ○○
構造 ○○○○造○○建
床面積1階 ○○.○㎡ 2階 ○○.○㎡
平成○○年○月○日
東京都○○区○○町○丁目○番○号
(賃貸人)○○ ○○ 印
東京都○○区○○町○丁目○番○号
(賃借人)○○ ○○ 印
家賃の値上げを交渉を成功させる2つのポイント
家賃を値上げの交渉の流れがわかったところで、交渉を成功させるポイントをお伝えします。
家賃を値上げ交渉を成功させるポイントは以下の2つです。
- 不動産鑑定士に鑑定評価書を作成してもらう
- トラブルになっている場合は弁護士に相談する
それぞれ解説します。
不動産鑑定士に鑑定評価書を作成してもらう
家賃の値上げを賃借人に同意してもらうには、「正当な理由」にもとづいた値上げであることをわかってもらう必要があります。
そのために有効なのが、不動産鑑定士に鑑定評価書を作成してもらうことです。
不動産鑑定士は不動産鑑定のプロの立場から、客観的なデータをもとに、対象の物件の適正な家賃がいくらかを算出し、鑑定評価書を作成してくれます。
あなたが値上げしたい家賃が、鑑定評価書と同じであれば、「正当な賃料である」とプロのお墨付きをもらえたことになります。
専門家によるデータがあれば、賃借人も「大家の都合による値上げではないこと」をわかってくれるはずです。
ただ、鑑定評価書を作成してもらうのに30万円~50万円ほどかかるため、まずは鑑定評価書なしで交渉してみて、納得してもらえない場合に作成を依頼しても良いでしょう。
トラブルになっている場合は弁護士に相談する
家賃の値上げ交渉をする中で、賃借人が納得してくれないなどでトラブルが発生した際は、家賃トラブルに強い弁護士に相談しましょう。
そうした弁護士に相談すれば、状況に応じた打開策を示してくれたり、もし当事者同士の話し合いによる解決が難しい場合は、次章でお伝えする訴訟の手続きについて教えてくれるはずです。
ただ、次章でお読みいただけばわかりますが、裁判となると解決までに1年近い時間と百万円以上の費用がかかります。
ですから、そうした費用をかけず家賃値上げの問題から解放されたい場合は、賃貸物件を売却してしまうのも1つの手です。
売却については記事内の「家賃を値上げできないなら賃貸物件の「売却」も検討の価値あり!」で詳しく解説していますので、ご確認ください。
家賃値上げの交渉がまとまらない場合の2つの対処法
前章で家賃の値上げ交渉を成功させるポイントをお伝えしましたが、それでも交渉が決裂してしまうことはあります。
家賃の値上げ交渉がまとまらない場合の対処法は以下の2つです。
- 収益が黒字なら値上げを見送るのも1つの手
- 裁判所に「調停」を申し立てる
それぞれ解説します。
なお、家賃の値上げに同意してもらえないからといって、賃借人をむりやり退去させるようなことはできません。
賃借人は借地借家法で守られており、そのような行為は法律で禁じられています。
参照元:借地借家法第28条
ですから、交渉が決裂したとしてもこれからお伝えする方法を使って、冷静かつ合法的に事態の解決を図りましょう。
収益が黒字なら値上げを見送るのも1つの手
現状、家賃収益が黒字の場合は、さしあたり値上げを見送るのも1つの手です。
前述したように、値上げ交渉には賃借人の退去などデメリットもあります。
無理に値上げをおこなった結果、賃借人が退去し、家賃収入が減ってしまったり、赤字化してしまったら元も子もありません。
現状、黒字経営を続けていられるのであれば、そうしたリスクを避け、値上げに関しては次の機会を待つのも賢い選択です。
裁判所に「調停」を申し立てる
賃借人との家賃値上げの交渉が上手くいかなくても、裁判所に「調停」を申し立てれば、話が上手くまとまる可能性があります。
調停は,裁判のように勝ち負けを決めるのではなく,話合いによりお互いが合意することで紛争の解決を図る手続きです。
また、後述する「訴訟」を行うには、調停の手続きを行う必要があります。
参照元:裁判所HP「民事調停手続」
裁判官や調停委員といった公平性のある第三者に、家賃の値上げ理由が正当だど認めてもらえれば、賃借人も家賃値上げに納得してくれる可能性があるからです。
調停を行う際は、原則として物件の所在地を管轄する簡易裁判所に申立を行います。
その後、裁判官1人と民間の良識のある人から選ばれた調停委員2人以上で構成される調停委員会を交えて、当事者間で家賃の適正価格について話し合いを行います。
ちなみに、「賃借人(または大家)と顔を合わせたくない」と希望すれば、調停委員会とあなたのみで話し合うことも可能です。
賃借人の意見は、調停委員会が聞き取りしてくれ、その内容をあなたに伝えてくれます。
家賃の値上げに関して、調停委員会は不動産鑑定士の意見を重視する傾向があるので、当事者間の話し合いでは、お互いに近隣の家賃相場に関する鑑定書を提出する傾向があります。
基本的には、当事者は1ヶ月に1回のペースで簡易裁判所に出頭し、2~3回の話し合いを行います。
ですから、調停が終わるまで、少なくとも「3か月」ほどかかります。
調停申立を依頼する際には「弁護士費用」がかかります。
現在の家賃や値上げ予定額にもよりますが、着手金で20~50万円程度、報酬金も同程度で、合計「40~100万円」ほどの弁護士費用がかかります。
もし、調停で話がまとまらなかったり、あなたが調停の手続きをしても相手方が出席を拒否した場合は不成立の扱いになり、最終段階の「訴訟」へと進みます。(次の章で解説します)
調停で決着がつかなければ裁判所に「訴訟」を提起する
調停でも家賃値上げに関する話し合いがまとまらなければ、裁判所に「訴訟(民事訴訟)」を起こします。
民事訴訟とは,個人の間の法的な紛争,主として財産権に関する紛争を,裁判官が当事者双方の言い分を聞いたり,証拠を調べたりした後に,判決をすることによって紛争の解決を図る手続きです。
参照元:裁判所HP「民事訴訟」
「訴訟」による裁判所の判決には強制力があるので、家賃の値上げが認められるかどうかの明確な回答を得ることができます。
訴訟を起こす際は、調停と同じように家庭裁判所に家賃の値上げを請求する訴訟を申し立てます。
訴訟では、調停のように当事者間で話し合いをするのではなく、お互いに以下の3点のような証拠を出し合って、適切な家賃額を立証していきます。
- 不動産鑑定士の鑑定書
- 数年分の固定資産税証明書
- 近隣の類似物件の家賃一覧
また、調停と同様、訴訟を起こすにも「弁護士費用」がかかります。費用の相場は以下の通りです。
着手金 | 家賃の値上げ幅(円)×7年(84ヶ月)×5% |
---|---|
報酬金 | 家賃の値上げ幅(円)×7年(84ヶ月)×10% |
例えば、家賃を3万円値上げしたい場合、着手金は126,000円、報酬金は252,000円、合計378,000円の弁護士費用がかかることになります。
また、前述したように家賃値上げの証拠として提出する「鑑定評価書」の作成にも「30~50万円」ほどの費用がかかります。
このように、費用をかけて訴訟を起こせば、家賃の値上げする理由が裁判所から正式に認められ、晴れて賃借人の家賃を値上げできます。
ただ、裁判所を介してまで家賃を値上げするのは現実的じゃない
ただし、訴訟を起こしてまで家賃を値上げすることは、あまり現実的とは言えません。
裁判で家賃の値上げを立証するとなると、前述したように以下のような「弊害」があるからです。
- 「40~100万円前後」の弁護士費用がかかる
- 「30~50万円」の不動産鑑定費用がかかる
- 判決が下るまでに「3ヶ月~1年」ほどの時間がかかる
また、あなたが「訴訟を起こす」と言えば、余程の物好きな賃借人でなければ、賃貸借契約を解約して退去してしまいます。
普通の感覚の人なら、裁判なんて費用も時間もかかってて手続きも面倒だし、何より怖いからです。
そうなれば、家賃を値上げするどころか、あなたは家賃収入の減額、最悪は「収入ゼロ」になる可能性もあります。
これらを踏まえると、裁判をしてまで家賃の値上げすることが、必ずしもあなたにとって得策とは言い難いです。
もし、あなたの賃貸物件の収支が回っていないなら、家賃を値上げする以外の対策を検討してみてはいかがでしょうか。(次の章でご提案いたします)
家賃を値上げできないなら賃貸物件の「売却」も検討の価値あり!
前述したように、裁判をしてまで家賃を値上げするのは得策とは言えませんが、あなたの賃貸物件の収益が回っていないなら、早く手を打たないといけませんよね。
それなら、これ以上損しないうちにあなたの賃貸物件を売却しまい、まとまった現金を得ることも検討してみてください。
賃貸物件を売却すれば、家賃の値上げができないことで膨らんでいく損失を一瞬で回避できるからです。
一般的に、賃貸物件を売却する方法としては、「仲介業者に売却を依頼する方法」と「買取業者に直接買い取ってもらう方法」の2種類があります。
- 「仲介業者」に売却を依頼する方法
- 売主から不動産の売却依頼を受けた不動産会社が、チラシやネットを活用して一般の買い手を探し、契約・決済までを取りまとめる取引方法です。
- 「買取業者」に直接買い取ってもらう方法
- 売主の所有物件を、不動産会社が直接買い取ることです。仲介業者のように広報活動や買主探しを行うことはしません。
「仲介」と「買取」の違いについては以下の記事で詳しく解説しているので、イマイチ違いが良くわからないという場合は一読しておいてください。
結論から言いますと、収益化できていない賃貸物件なら「専門の買取業者に買い取ってもらう」ことをおすすめします。
専門の買取業者なら、収益化できていない賃貸物件でも「適正価格」で買い取ってくれるからです。
対して、仲介業者に売却を依頼しても、収益化できていない賃貸物件の場合は買い手が見つからず売れ残ってしまう可能性があります。詳しい理由は次の章から解説していきます。
なお、弊社は収益化できていない賃貸物件を専門に扱う買取業者です。
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仲介業者に賃貸物件を売却しても売れない!
あなたの賃貸物件が全く収益化できていない状態なら、「仲介業者」に売却を依頼しても売れません。
前述したように、仲介業者は一般の買い手を見つけてくるのが仕事ですが、見つけられるのは「儲かる物件を探している不動産投資家」だけだからです。
例えば、「立地や建物の状態が良く、黒字運営中の収益性の高い賃貸物件」なら不動産投資家はすぐに買ってくれます。
不動産投資家は、儲けることを目的に投資物件を探しているからです。
しかし、不動産投資家は「立地や建物の状態が悪く、赤字運営中の収益性の悪い賃貸物件」には見向きもしません。
賃貸物件はたくさん売りに出されているので、収益の取れない賃貸物件をあえて買う理由がないからです。
仲介業者は、不動産を売ることで得られる仲介手数料で儲けています。
ですから、「すぐに投資物件を買ってくれ投資家」と「すぐに売れる収益性の高い賃貸物件」しか相手にしてくれないのです。
よって、あなたの賃貸物件が収益化できている(=黒字化している)なら仲介業者に依頼して少しでも高く売却すべきですが、そうでないなら売れない可能性が高いので、次に解説する買取業者を選ぶべきです。
専門の買取業者なら適正価格で買い取ってくれる!
あなたの賃貸物件が全く収益化できていないなら、「専門の買取業者」に売却してもらうのがおすすめです。
専門の買取業者に依頼すれば、収益性の悪い物件でも「適正価格」で買い取ってくれるからです。
専門の買取業者は、賃貸物件の立地や建物の状態が悪く、家賃も安く、入居率も悪くても、「収益化できる物件」に再生して投資家に再販するノウハウを持っています。
例えば、弊社では、茨城県にある「火事でボロボロの一棟アパート」を高く買取した事例があります。
その物件は買取後に全部屋フルリフォームを行い、3ヶ月で満室にして、得意先の不動産投資家に売却できました。
このように、専門の買取業者に相談すれば、立地が悪く、利便性の低いボロボロの賃貸物件でも、適正価格で確実に買い取ってもらうことができます。
ただし、買取業者ならどこでも良いわけではありません。
もし悪徳業者に買取を依頼してしまえば、あなたの賃貸物件を不当な価格で安く買い叩かれる可能性があるからです。
よって、以下より、「優良買取業者の3つの選び方」についても解説していきますので参考にしてください。
- 査定額が高くて根拠も提示してくれる
- 買取実績が豊富
- お客様の声や口コミの評価が高い
査定額が高くて根拠も提示してくれる
あなたの賃貸物件について、買取業者に査定依頼を行った結果、査定額が高く、その根拠も提示してくれた場合は優良な買取業者だと思って大丈夫です。
査定を依頼した先が悪徳業者だった場合、顧客獲得のためにわざと査定額を高くことはありますが、査定額の根拠を語ることができないからです。
例えば、あなたが査定を依頼した買取業者に査定額の根拠を聞いて、以下のような回答があれば、優良業者と言えます。
- 近隣の取引事例から算出しました。
- 同じ条件の賃貸物件を以前にその価格で買い取っているからです。
対して、査定額の根拠を聞いても話をすり替えたり、こちらが納得できない曖昧な回答が返ってくる場合は、悪徳業者である可能性があります。
このように、優良な買取業者を選べばあなたの賃貸物件は高く売れやすくなりますし、何より安心感をもって買取手続きを進められます。
買取実績が豊富
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まとめ
今回は、家賃を値上げする正当な理由について、詳しく解説してきました。
家賃を値上げしたいなら、以下3つのいずれかの理由が必要です。
- 不動産価値が上がって賃貸需要が増加した
- 賃貸物件の管理費や固定資産税が上昇した
- 賃貸物件の家賃が近隣物件の相場より安い
そして、上記の理由についてを賃借人に納得してもらい、家賃値上げに関する条件の交渉を行い、「家賃改定合意書」を結ぶことで、晴れて家賃を値上げできます。
しかし、賃借人の中には家賃に値上げを拒否する人もいます。
その場合、最終的に家賃値上げの可否については「裁判」の判断に委ねることになりますが、裁判を行うには「100万円前後」の費用と「1年」ほどの時間がかかります。
そもそも、「裁判をする」と言った時点で、賃借人が賃貸借契約を解約して退去される可能性もあり。
そうなれば、家賃の値上げどころか収入がゼロになる可能性さえあります。
ですから、裁判をしてまで家賃を値上げしようとすることが、あなたにとって得策とは言い難いです。
ですから、今あなたの賃貸物件の損失が拡大しているなら、家賃の値上げではなく、賃貸物件を「専門の買取業者」に売却して現金化することも視野に入れてみてください。
専門の買取業者は、どんなにボロボロな賃貸物件でも再生するノウハウを豊富に持っているので、収益性の悪いあなたの賃貸物件でも「適正価格」で買い取ってくれます。
本文では「優良業者の選び方」も解説しているので、そちらを参考に優良業者をピックアップし、まずはあなたの賃貸物件の査定を依頼してみてください。
なお、弊社AlbaLinkは収益性の悪い賃貸物件に強い専門の買取業者です。
年間相談件数5000件、年間買取件数600件の買取実績(※)があり、他の業者が断るような賃貸物件でも、数多く買い取りしてきました。
※2023年1月1日~2023年10月25日現在の実績:相談/5,555件:買取/600件
また買取業者として上場も果たしており、社会的信用度も高い企業です。
「賃貸物件をできる限り高く売却し、経営不振から一刻も早く解放されたい」とお考えの場合は、ぜひ一度弊社へご相談ください。