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【不動産を共有で相続したメリット・デメリット】共有解消法と売却法を解説

共有名義不動産

相続した親の不動産を共有名義で相続したものの「売却を提案したら兄弟とトラブルになるのではないか」と悩んでいませんか?

不動産を複数人で共有することで税金や維持費の負担を軽減したり、相続の公平性が保てるといったメリットがあります。

しかし、共有状態の相続不動産を放っておくと、後で思いもよらぬトラブルへと発展する可能性があることをご存知でしょうか。

不動産を共有名義で所有するのは「売却できない」「維持・管理費で揉める」などデメリットが多いため、なるべく早急に共有状態を解消するのが望ましいです。

そこで今回の記事では相続済みの共有名義不動産のメリット・デメリットの他、ケース別の売却方法や高く売るコツを解説します。

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目次
  1. 相続した不動産を共有のまま所有するメリット
    1. 税金や管理費などを全員で負担できる
    2. 売却する場合に譲渡所得控除が増やせる
  2. 相続した不動産を共有のまま所有するデメリット
    1. 共有者全員の同意がないと全体売却できない
    2. 共有者の過半数の同意がないとリフォームや賃貸することができない
    3. 共有者が税等を払えない場合に立て替えの必要がある
    4. 次の相続発生で権利関係がさらに複雑に
  3. 共有状態の相続不動産を売却する方法
    1. 相続人全員で協力して不動産全体を売却
    2. 他の相続人に売却
    3. 他の相続人から買取る
    4. 土地なら分筆
    5. 自身の共有持分のみを専門業者に売却
  4. 共有名義の不動産を高く売る方法
    1. 全体売却で高く売る方法3選
      1. 信頼できる不動産会社を見つける
      2. 売り出し価格は相場より少し高めに設定
      3. 最低限のハウスクリーニングを入れる
    2. 持分売却で高く売る方法3選
      1. 一緒に売却できる共有者と協力する
      2. 共有者全員の情報を明確にする
      3. 複数社に査定を依頼する
  5. 共有名義の不動産売却時の必要書類と費用
    1. 全体売却の場合
      1. 必要書類
      2. 費用
    2. 持分のみの売却の場合
      1. 必要書類
      2. 費用
  6. 相続した共有名義の不動産にかかる税金
    1. 相続時にかかる税金
      1. 登録免許税
      2. 相続税
    2. 売却時にかかる税金
      1. 譲渡所得税・住民税
    3. 相続不動産に関連する特例
      1. 取得費加算の特例
      2. 居住用不動産の3,000万円特別控除
      3. 相続空き家の3,000万円特別控除
  7. まとめ

相続した不動産を共有のまま所有するメリット

不動産を共有名義にすることで、主に税金や管理費の負担が少なくなります。

まずは不動産を共有する2つのメリットについて確認していきましょう。

税金や管理費などを全員で負担できる

共有不動産は、各共有者の金銭的な負担が少ないというメリットがあります。

単独名義だと所有者が1人で税金や管理費を支払わなければなりませんが、複数名で共有することで負担が分散されるからです。

たとえば不動産の固定資産税が10万円だった場合、兄弟3人で共有しているのであれば1人あたり約33,000円の負担で済みます。

一人では固定資産税や維持費を支払えない場合でも、不動産の権利を複数人で共有すれば負担が少なく、管理しやすくなるでしょう。

売却する場合に譲渡所得控除が増やせる

複数人で不動産を共有していると、全体売却する際に譲渡所得控除を増やせます。

マイホーム(居住用財産)の売却・譲渡で得た利益から取得費など差し引き、残った譲渡所得を3,000万円まで控除できる仕組みがあることをご存知でしょうか。

不動産を売って手元に残ったお金が3,000万円以内であれば、税金負担が0円になるということです。

そしてこの3,000万円特別控除は共有者ごとに適用されるため、例えば夫婦2人で所有しているマイホームなら6,000万円、3兄弟で共有しているなら9,000万円まで控除されます。

このように複数で共有している不動産は売却の際の譲渡所得控除が増やせるため、税金の負担を減らせるというメリットがあるのです。

相続した不動産を共有のまま所有するデメリット

不動産を共有することで維持費や税金負担が軽減されるメリットがありますが、下記のように様々なデメリットがあります。

共有者全員の同意がないと全体売却できない

共有とは、共有者全員で一つの不動産を所有している形式なので、共有者全員の同意がなければ全体売却ができません。

民法第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。

引用元:e-Gov 法令検索

例えば不動産を売却する場合は、9割の持分を持つAさんと1割の持分を持つBさんがいたとして、「9割持っているAの意見が優遇される」といったルールはないので注意してください。

1割でも持分を所有している人がいれば、全体売却の際に必ずその方の同意が必要になります。

2人で共有している場合は、2人が合意さえすれば売却できます。

しかし、これが3~4人と増えていくと「家に住みたい」「賃貸にすべきだ」と意見が分かれはじめるでしょう。

ですので、共有する人数が多いほど意見も割れやすくなり、全体売却が困難になっていくのです。

共有者の過半数の同意がないとリフォームや賃貸することができない

共有持分でひとつの不動産を所有している場合、その管理方法を巡ってトラブルになるケースがあります。

なぜなら共有者の過半数の同意がなければ不動産の活用方法を決められないからです。

民法第二百五十二条 共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。

引用元:e-Gov 法令検索

例えば不動産の活用方法として、以下のような意見が出てくる可能性があります。

  • 不動産を貸し出す
  • 物件をリフォームする

ちなみに「過半数」とは人数ではなく、持分割合が1/2を超えるという意味ですので間違えないように注意しましょう。

例えば4人で1/4ずつ共有している場合、2人が同意しただけでは1/2を超えていないので過半数の同意という条件を満たしていません。

この例ですと例えば「賃貸にしよう」という案に4人中3人が同意して初めて過半数の同意を得られたということになります。

物件に対する将来のイメージは共有者ごとに異なる場合が多いので、相続した実家を別の形に応用したいと考えている方は注意が必要です。

共有者が税等を払えない場合に立て替えの必要がある

共有者は、持ち分に応じて固定資産税等の管理費用を支払う義務を負います。

第二百五十三条 各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。

引用元:e-Gov 法令検索

たとえば不動産の固定資産税を支払う必要がありますが、これは共有持分の比率によって分割されます。

各共有者それぞれが管理費等を納める場合に、1人の共有者が管理費等を支払えない場合は、不可分債務(不可分債務にあたるかどうかは個別に判断されることになります)であれば、他の共有者が払えなかった分の管理費等を支払う義務があります。

不可分債務
当事者が複数いる場合の債権・債務関係の1つで、分割することができない債務のこと。不可分債務には性質上不可分である場合と、当事者の意思表示などによって不可分である場合の2通りがある。

よくある事例は代表者一人が固定資産税を全額支払い、後で他の共有者から徴収するといった方法です。

しかし、「共有者の一人が仕事を失って収入が不安定になり、固定資産税の支払いが難しくなる」といったことも考えられるでしょう。

そうなると支払いができなかった共有者以外の他の共有者が、支払いができなかった共有者の税金を負担したり、残りの共有者で分割したりして不公平感が生まれやすくなります。

途中で誰かが税金や維持費を払えなくなるとトラブルのきっかけになるため、万が一の際の対応を共有者間で話し合っておく必要があるでしょう。

次の相続発生で権利関係がさらに複雑に

共有者が亡くなることで次の相続が発生し、さらに権利関係が複雑になっていくのも共有状態のデメリットのひとつです。

長男と次男で1つの不動産を共有している例で考えてみましょう。

長男が亡くなってしまった場合、長男の配偶者や子どもに持分が相続されます。

長男が配偶者と子ども3人の家族だった場合、最終的に次男、長男の配偶者、3人の子どもの計5人で1つの不動産を共有する形となります。

もしも長男と、次男の家族がそこまで関係性が深くなかったり、むしろ仲が悪かったりすると話し合いがまとまる可能性はかなり低いでしょう。

このように時間が経つほど共有者の相続が連続し、権利関係がどんどん複雑になっていくというリスクが発生します。

共有状態の相続不動産を売却する方法

共有状態は時間の経過や環境の変化によって様々なトラブルに発展する可能性があるため、なるべく早く解消するのが理想的です。

ここからは共有状態の相続不動産を売却する5つの方法をそれぞれ解説します。

相続人全員で協力して不動産全体を売却

共有状態の不動産は、相続人全員で話し合って不動産全体を一括で売却するのが理想的です。

全体売却であれば希望価格で売り出せるため、高額査定が期待できます。

3,000万円の不動産を兄弟3人で共有している場合、全員で協力して売却できれば1人1,000万円が手元に残りますので、共有者全員の同意が得られるのが最良かつ理想的な方法です。

このように、それぞれの持分をバラバラで売るよりも、不動産全体を一度に売却した方が最終的な利益が大きくなります。

全体売却を行う際は、売買契約の締結や不動産の引き渡しの際に共有者全員が立ち会う必要があるので注意してください。

遠方に住んでいて同席が難しい方は、委任状を作成することで別の人に立会を依頼することも可能です。

他の相続人に売却

自分の持分を他の相続人に売却することで共有状態から抜け出すことができます。

2,000万円の不動産を2人で共有していたとしたら、1,000万円で他の相続人に持分を売却し、買取した人が単独名義で所有するといった方法です。

共有状態でトラブルが発生してしまうと、長期的に精神的・金銭的な負担がつきまとうため、面倒事を避けたい方は他の相続人に売却しましょう。

自分の持分を放棄することも可能ですが、せっかく手放すのであれば売却して少しでも現金になる方が良いのではないでしょうか。

他の相続人へ売却する際は、自分の持分の価値を知ることが大切です。

  • 安すぎると損をする
  • 高く提示すると売れなくなる

お互いに気持ちの良い取引をするためにも、事前に相場を確認しておきましょう。

おおよその相場は「不動産全体の価格×持分割合×1/2~1/3」で算出できますので、あとはお互いに話し合って納得できる金額を決めるだけです。

ですので、共有状態から早く脱したい場合は、他の相続人へ持分を売却することも検討してみましょう。

他の相続人から買取る

他の相続人から共有持分を買取することで、あなたの持分割合を増やしたり単独名義にしてしまう方法もあります。

トラブルを防ぐには他の共有者から持分を買取して単独名義にするのが理想的ですし、単独名義であれば自分の意思で不動産を一括売却できるようになります。

また、時価より遥かに安い買取価格を提示すると、差額分を贈与したものとみなされて贈与税が発生する可能性があります。

明確な金額の基準はありませんが、時価額の1/2以下だと課税対象になりやすいでしょう。

税金関係のトラブルを避けるために、不動産鑑定士に相談して持分を査定してもらうという方法もあります。

土地なら分筆

相続した不動産が土地なら、分筆(分筆登記)して各自で売却することができます。

分筆登記とは、登記簿に登録されている1つの土地を2つ以上に分割することです。

土地は家と違い物理的に分割することができるため、300坪の土地を3兄弟で100坪ずつに分けることができます。

例えば「◯◯1丁目1番地」の土地を「◯◯1丁目1番地1」「〇〇1丁目1番地2」という形で土地を分割して番号を振るイメージですね。

それぞれの土地を所有者が単独で権利を持つので、自由に売却することも可能です。

ただし、公平に土地を分筆するためには土地を測量したり、境界線を確定させて登記を行うなど、手続きに手間とお金がかかるのがデメリットになります。また、相続対象の土地があまり広くない場合は文筆してしまうと建物が建てられない土地になってしまう場合もあり、土地の資産価値が大幅に下がってしまう可能性があるのもデメリットです。

自身の共有持分のみを専門業者に売却

他の共有者とのトラブルを避けたい場合は、あなたの共有持分だけを専門業者に買取してもらうことも検討してみましょう。

第二百四十九条 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。

引用元:e-Gov 法令検索

共有状態は権利関係が複雑になりやすいため、売却の合意や不動産の管理方法をめぐってトラブルに発展しやすいです。

共有者同士で争いになれば解決に手間と費用が掛かるため、長期化・泥舟化する可能性も十分に考えられます。

トラブルが起きていない場合でも、「誰がどうやって管理するのか」「維持費をどう負担するのか」と考えるべき問題が非常に多いです。

共有状態にしておくよりも、ご自身の持分を専門業者へ買取してもらったほうが長期的に見てストレスが少なく済みます。

共有名義の不動産を高く売る方法

共有名義の不動産は、最終的な利益が大きくなるので全員の合意の上で全体売却するのが理想的です。

ここからは共有者の合意が取れて全体売却する方法と持分のみを売却する方法を紹介します。

全体売却で高く売る方法3選

先ほど解説したように、不動産を高く売却したいなら全体売却するべきです。

土地や建物の一部の持分だけでは土地や物件を活用しにくいため、一般的な不動産を探している層には需要が少なく、売却価格も低くなる傾向があるからです。

全体売却であれば通常物件と同じく需要が高いため、金額も高くなりやすいですし話もまとまりやすくスムーズに現金化できるでしょう。

信頼できる不動産会社を見つける

共有名義の不動産は権利関係が複雑で話がこじれやすく、売却を依頼する不動産会社の力量が問われますので、信頼できる業者を見つけましょう。

  • 疑問に対して親身に解説してくれる
  • 査定額の根拠を明確に伝えてくれる
  • 免許番号で営業年数を確認する

不動産の売却については分からないことも多いかと思いますので、こちらの疑問に親身に回答してくれる担当者かどうか、対応の姿勢を見ておきましょう。

売却を考えるにあたって、提示された査定額が「なぜこの金額なのか」を明確に説明できる業者であれば、誠実な対応が期待できます。

具体的な回答が得られれば複数社に査定を依頼する場合でも比較するポイントが明確になりますので、最終的に納得できる形で売却が決まるのではないでしょうか。

また、不動産会社のHPや広告に必ず記載されている「宅地建物取引業免許番号」から営業年数を確認するという方法もあります。

免許番号は例えば「国土交通大臣(3)第12345号」といった表記がされており、注目すべきはカッコの中に書かれている数字です。

カッコ内の数字は免許の更新回数を表しており、5年ごとに更新されます。

つまり数字が多いほど資格の更新を繰り返しており、営業年数が長く経験が豊富であるということですから、信頼できる不動産会社を選ぶ指標のひとつになるでしょう。

売り出し価格は相場より少し高めに設定

共有名義の不動産を少しでも高く売りたい場合は、相場よりも少し高めな売り出し価格を設定しましょう。

購入希望者が値引き交渉をしてきたり、売り出し価格より低めの購入希望額を提示したりすることが多いからです。

ですので、それを見越して先に相場より高めに設定しておくと、相手の購入希望額とこちらの売却希望額が一致しやすくなります。

かと言って満足する希望価格だけを見ていても「いつまでも話が決まらない」ということになりがちです。

ですので共有者と話し合いをして最低売却価格を決めておきましょう。

最低売却価格を共有者同士であらかじめ決めておけば、売却するべきか迷った時の判断がしやすくなります。

最低限のハウスクリーニングを入れる

不動産を売却する前に、最低限のハウスクリーニングを入れておきましょう。

前提として、不動産を売却する際に「ハウスクリーニングしなければならない」という義務はありません。

しかし家の見栄えが良いほうが査定が高額になる、買い手の印象が良くなるというメリットがあります。

汚れが目立っていると購入希望者が値下げ交渉をしてくる可能性があるため、結果的に少々安い金額で手放すことになってしまうでしょう。

特に長年住んだ家の水回りを一般の方がキレイにするのは難しいので、プロに任せるべきです。

大きな買い物において「印象」は非常に重要ですから、ハウスクリーニングをして最低限キレイな状態にしておけば買い手が付きやすく、スムーズに契約が決まります。

持分売却で高く売る方法3選

全体売却が難航しそうな場合でも、各所有者が自分の持分だけを売却することは可能です。

しかし全体売却よりも査定額が低くなりやすいため、少しでも高く売る方法を確認しておきましょう。

一緒に売却できる共有者と協力する

全体売却が出来ない場合でも、一緒に売却できる共有者と協力して持分の割合を増やしてから売却すると、高い金額で売ることができます。

記事の前半でも解説しましたが、3,000万円の不動産を3人で共有していたとして、1人が1/3の持分を売却しても査定額が1,000万円になることはほぼありません。

目安として通常不動産売却の1/2程度、500万円前後の査定が出るのではないでしょうか。

持分が少ないほど利益が見込みにくく、買取業者にとっては他の共有者との交渉が難航するリスクもありますから、査定額も消極的になります。

ですので、不動産全体に対して売却する持分割合が大きくなるほど、査定額は高くなります。

例えば3兄弟のうち1人が全体売却を拒否した場合、残る2人で協力して2/3を売却するイメージです。

自分が持っている1/3の持分だけを1人で売るより、他に売却に同意している共有者と合わせたほうが査定額を上げやすくなります。

共有者全員の情報を明確にする

持分売却の査定額を上げたい場合は、共有者全員の情報を明確にして買取業者に伝えておきましょう。

情報が多いほど、他共有者との売却を進める交渉の材料が明確になるからです。

  • 各自の持分割合
  • 氏名
  • 住所
  • 性別
  • 続柄

分かる範囲で良いので、買取業者の担当者に伝えておくと交渉のイメージが湧きやすくなることから、査定額を上げてもらえる可能性があります。

逆にこういった情報が全くない場合や、共有者同士がかなり険悪な場合は買取業者も消極的になります。

複数社に査定を依頼する

持分のみを売却をする際は、複数社に査定を依頼しましょう。

なぜなら依頼する不動産会社によって買取金額に大きな差が出るためです。

「A社の見積もりを材料にB社に交渉する」といった方法も選べるため、なるべく3社以上の専門の買取業者に査定を依頼してみてください。

いくつかの査定額を比較してみることで、理想に近い上限額や現実的な落とし所の金額が見えてくるのではないでしょうか。

共有名義の不動産売却時の必要書類と費用

共有名義の不動産を売却する際は、売却の方法によって必要な書類と費用が異なります。

ここからは共有名義の不動産を全体売却・共有持分のみを売却する際に必要な書類や費用をそれぞれ解説していきます。

全体売却の場合

共有者全員が合意して不動産を全体売却する場合、物件や土地に関する書類と、共有者全員が準備する書類が必要になります。

必要書類

土地と物件を売却するにあたり必要なのは以下の2点です。

  • 登記済権利証または登記識別情報
  • 土地測量図・境界確認書 (土地の場合)

登記済権利証とは物件の権利を所有していることを証明する書類で、売却の際に必ず必要になります。

土地を売却する際は「土地測量図・境界確認書」を準備して土地の面積と隣地との境界を証明しなければなりません。

また、売却の際は共有名義者全員が以下の書類を準備しておく必要があります。

  • 身分証明書(運転免許証・マイナンバーカードなど)
  • 実印
  • 印鑑証明書
  • 住民票

誰かが必要書類や実印を忘れると全体売却の手続きが進められないので、忘れ物がないように注意してください。

費用

不動産の全体売却にあたり、以下の費用負担が発生します。

  • 仲介手数料(不動産会社に依頼した場合)
  • 印紙税(売買契約書にかかる税金)
  • 登録免許税
  • 譲渡所得税

誰がどれくらいの費用負担をするのか前もって話し合いをしておかないと、後になって揉める可能性が高いです。

基本的にはそれぞれの共有持分割合に応じて売却にかかった費用を分担するのが一般的ですね。

登録免許税と譲渡所得税に関しては後ほど詳しく解説します。

持分のみの売却の場合

全体売却ではなく持分のみを売却する場合、4つの書類と売却費用が必要になります。

必要書類

  • 不動産の権利証
  • 土地測量図及び境界確認書(土地の場合)
  • 身分証明書と住民票
  • 印鑑・印鑑登録証明書

全体売却を行う時と同じ必要書類が必要になりますが、単独で売却する場合は自分の分だけ準備できていれば手続きを進められます。

費用

  • 譲渡所得税
  • 登録免許税

自分の持分だけを売却する場合、売却に必要な費用はすべて自身で負担しなければならないので注意しましょう。

相続した共有名義の不動産にかかる税金

共有名義の不動産は相続時と売却時で異なる税金が発生します。

各税金はご自身で申請・納付する(もしくは税理士に依頼)する必要がありますので、事前に確認しておきましょう。

相続時にかかる税金

共有持分を相続する際は登録免許税と相続税が課されます。

遺産を相続するにあたり不動産所有者が変わるため、所有権移転登記をする必要があります(登録免許税)。

遺産を相続するにあたっては相続税も支払わなければなりません。

ここからは各種税金の詳細や事例を交えた計算方法を確認していきましょう。

登録免許税

登録免許税とは不動産を登記する際に発生する税金のことです。

登記することで自分が物件の所有者であることを自分以外の人に対して示すことができます。

登記しなければトラブルが発生した際に権利者であることを証明することが難しくなるため、必ず手続きを完了させておきましょう。

課税価格は「固定資産評価証明書」に記載されている固定資産税評価から1,000円未満を切り捨てた金額となります(固定資産評価証明書が手元になければ市・区役所で取得できます)。

登録免許税は以下の計算で算出します。

登録免許税=課税価格×0.4%

例えば固定資産税評価額が12,345,678円だった場合、1,000円未満を切り捨てた12,345,000円が課税価格です。

1,234,000円×0.004=49,380円

なので、この事例で納めるべき登録免許税は49,380円となります。また不動産登記をする際に、司法書士等に登記を依頼する場合には司法書士費用も別途かかりますので、ご注意ください。

相続税

相続税は亡くなった方の遺産を引き継ぐ際に発生する税金のことです。

基本的には自分で計算して税務署に申告する必要がありますが、難しければ税理士に依頼して作成してもらいましょう。

相続する財産が基礎控除額の範囲内であれば、相続税は発生しません。

【基礎控除額】3,000万円+(法定相続人数×600万円)

基礎控除額を超えた財産分が課税対象となります。

では、父が残した9,000万円の遺産を、配偶者と子供2人が相続したケースで計算してみましょう。

正確な税額は利用した減税制度や状況によって違うため、あくまでのひとつの参考として確認してください。

基礎控除額は3,000万円と相続人1人につき600万円と解説しましたので、

3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円

この事例における基礎控除額は4,800万円となります。

9,000万円-4,800万円=4,200万円

基礎控除額を差し引いた4,200万円を元に、相続税の総額を計算しましょう。法定相続分は配偶者に遺産の1/2、残る遺産を子供に等分という形になりますね。

配偶者:4,200万円×1/2=2,100万円
子供:4,200万円×1/2×1/2=1,050万円ずつ

按分した金額に、相続税の税率と控除額を当てはめて計算しましょう。

課税価格が1,000万~3,000万円以下の場合の税率は15%、控除額は50万円なので、

  • 配偶者:2,100万円×15%-50万円=265万円
  • 子供:1,050万円×15%-50万円=107万5千円ずつ
  • 相続税の総額は265万+(107万5千円×2)=480万円

相続税は実際に各相続人が取得する財産に応じて配分されるのですが、この事例では法定相続による遺産分割ですので、以下のように配分されます。

配偶者:480万円×1/2=240万円
子供:480万円×1/2×1/2=120万円ずつ

このケースでは相続した財産が1億6,000万円以下であるため「配偶者控除」の対象となり、配偶者は相続税がかかりません。

ですので今回計算したケースですと、子供2人がそれぞれ120万円ずつの相続税を支払うことになります。

売却時にかかる税金

相続した不動産を売却する場合は譲渡所得税・住民税が発生します。

具体的な事例を交えて、税金の計算方法を確認していきましょう。

譲渡所得税・住民税

共有持分を売却して利益が手元に残った場合は、各共有者が指定された期限内に確定申告を行い、所得税を収めなければなりません。

譲渡所得税は、譲渡所得金額=収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額で計算します。

例えば不動産を3,000万円で取得し5,000万円で売却、登記や譲渡費用にそれぞれ100万円がかかっているケースで考えてみましょう。

5,000万円-(3,000万円+100万円+100万円)=1,800万円
このように譲渡所得金額が3,000万円以下の場合、後ほど解説する「3,000万円特別控除」によって、税金負担は0円になります。
譲渡所得金額が3,000万円を超えた場合、物件の所有年数によって異なる税率を乗じて税額を算出しなければなりません。

税金の支払額は持分を所有した年数によって「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」の2つに分類されます。

  • 所有期間5年以下(短期譲渡所得):所得税率30%、復興特別所得税0.63%、住民税9%
  • 所有期間5年以上(長期譲渡所得):所得税率15%、復興特別所得税0.315%住民税5%

所有期間は相続した日ではなく、亡くなった親(被相続人)が不動産を購入した日から売却までの期間を指します。

しかし、譲渡所得税は基礎控除と各種特例を適用することにより一般的には非課税となるケースが多いです。

最後に、相続不動産に関連する特例の詳細を確認していきましょう。

相続不動産に関連する特例

相続不動産に関連して税負担が少なくなる特例があります。

「取得費加算の特例」「3,000万円特別控除」の内容を確認していきましょう。

取得費加算の特例

「取得費加算の特例」とは被相続人が亡くなった日から3年10ヶ月以内に相続した不動産などを売却した場合、所得税を軽くできる仕組みのことです。相続税を負担した相続人が特例を利用することができます。

例として、「3,000万円の不動産(所有から5年超え)と8,000万円の預貯金の合計1億1千万円の遺産を相続して、1,000万円の相続税を払った」という例で計算してみましょう。

3,000万円の物件を売却した際に取得費として加算できる相続税は「課税価格×売却した不動産の相続税評価額/相続税の課税価格」で計算できるので、

1000万円×(3,000万円÷1億1千万円)=270万円

このケースで取得費に加算できる相続税は270万円です。

これを踏まえて、1,000万円で購入した物件の売却価格が3,000万円、仲介手数料100万円を譲渡費用として負担したケースで譲渡所得を計算しましょう。

【譲渡所得】売上金額-(物件の購入金額+取得費加算される相続税+譲渡費用)

上記の計算式に今回の例を当てはめると、

3,000万円-(1,000万円+270万円+100万円)=1,630万円

1,630万円の譲渡所得に、長期譲渡所得の税金が課されるため、

1,630万円×20.315%=331万1,345円

相続税を計算する際は1,000円未満の端数があれば切り捨てされるため、331万1,000円を納めるということになります。

【取得費加算の特例がない場合】

3000万円-(1,000万円+100万)=1,900万円
1,900万円×20.315%=385万9,850円
1,000円未満の端数を切り捨てした385万9,000円を納める必要があります。

【取得費加算の特例あり・なしの差額】

385万9,000円-331万1,000円=54万8,000円

今回の事例で取得費加算の特例がある場合、54万8,000円お得になるということが分かりました。

このように取得費が加算されることで譲渡所得が減りますので、結果的に税金の負担が軽くなるというわけですね。

居住用不動産の3,000万円特別控除

居住用不動産を売却・譲渡して得た利益(譲渡所得)から3,000万円が控除されるこの特例は、住居の所有期間にかかわらず適用できます。

つまり譲渡所得が3,000万円以下だった場合は、税金負担が0円になるということです。

譲渡所得が3,000万円を超えた場合は、「短期譲渡所得」「長期譲渡所得」の税率で計算します。

記事の冒頭で解説したように、共有者1人につき3,000万円の控除が適用されるため、複数人で共有すると税金負担が軽減されるのが特徴です。

相続空き家の3,000万円特別控除

空き家になった家をリフォームして耐震基準を満たす、もしくは取り壊しの後に物件や土地を売却すると、3,000万円の特別控除を適用できます。

相続空き家の3,000万円特別控除を適用するには以下の条件すべてに該当している必要があります。

  • 被相続人が亡くなる以前に一人暮らしだった
  • 昭和56年5月31日以前に建てられた一戸建て
  • 相続~売却までの間空き家だったこと
  • 耐震基準を満たすリフォームもしくは更地にして土地を売却

適用できる期間についても以下の条件を満たしていなければなりません。

  • 2023年12月31日までに売却していること
  • 相続から3年が経つ年の12月31日までの売却であること

相続空き家の控除が受けられるタイムリミットは2023年の12月31日です。

租税特別措置法第三十五条 3 相続又は遺贈による被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等の取得をした相続人が、平成二十八年四月一日から令和五年十二月三十一日までの間に、次に掲げる譲渡をした場合には、第一項に規定する居住用財産を譲渡した場合に該当するものとみなして、同項の規定を適用する。

引用元:e-Gov 法令検索

2019年に被相続人が亡くなった場合、2022年の12月31日までにすべての条件を満たして売却できれば、3,000万円の特別控除を受けられます。

まとめ

今回の記事では、親の遺産を共有名義で引き継ぐメリット・デメリット、高く売るポイントや売却に必要な書類などを解説しました。

共有名義には税金や維持費を軽減するメリットはあるものの、売却の際に意見がまとまらない、共有者間での費用負担に偏りが出るなどのデメリットがあります。

遺産を巡って仲の良かった兄弟間に亀裂が入ったり、親族と疎遠になるといったトラブルに発展するのは避けたいところです。

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監修者
株式会社AlbaLink代表取締役の河田憲二です。同社は地方の空き家などの売れにくい不動産に特化して買取再販を行う不動産業者です。同社が運営しているサービスサイトである「訳あり物件買取ナビ」の運営者も務めています。同社は東京証券取引所東京プロマーケット市場にも上場している不動産会社です。

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