違反建築物とは建築基準法などの法令に違反している建築物のこと
違反建築物とは建築基準法や都市計画法などの法令に違反している建築物のことです。
はじめから法令に違反して建築されたものもあれば、当初は満たしていたものの、無許可で増改築を行い、違法となっている建物もあります。
建築基準法違反5選
敷地に建物を建てる場合は、建築基準法によって基準を設けており、さまざまな規制を遵守する必要があります。
建築基準法違反となる違反建築物は、以下の主に以下の5つのケースが該当します。
それぞれの違反について詳しく解説します。
法令上の基準に違反している
建ぺい率・容積率(建築基準法 第52、53条違反)
建ぺい率や容積率がオーバーしていると建築基準法違反に該当します。
建ぺい率とは敷地面積に対する建築面積の割合のことで、建物を真上から見るとわかりやすいでしょう。
建ぺい率には防災や風通しなどを配慮する目的があり、50%や60%など用途地域によって建ぺい率が定められています。
計画的な市街地を形成するために用途に応じて分けられたエリアのこと
第一種低層住居専用地域や第一種住居地域、商業地域など13種類がある
容積率とは敷地面積に対して延床面積が占める割合のことです。
平面で考える建ぺい率と違い、容積率は立体的に考えるとわかりやすいでしょう。
容積率には居住できる人口を制限するなどの目的があり、100%や200%など建蔽率と同様に用途地域ごとに細かく指定されています。
建ぺい率と容積率ともに、住居がメインとなる住居系の用途地域であれば、暮らしやすい住環境にするために厳しく規制されていますが、店舗やオフィスがメインの商業地域などは比較的緩やかな規制となっています。
近年流行っているDIYで増改築する場合などは無許可で行っていることも多く、建ぺい率と容積率オーバーは違反建築物の代表的な例といえるでしょう。
防火規制(建築基準法 第61条違反)
防火規制を遵守していないことも建築基準法違反です。
防火地域とは市街地における火災の危険を防除するため定める地域のことで、建物を建てる場合は一定の基準を満たす必要があります。
都市計画法では周囲への延焼を防止するために市街地における火災の危険を防除するため定める地域として、防火地域と準防火地域を指定しています。
都市の健全な発展と秩序ある整備を図るための法律
防火地域と準防火地域は、階数や延床面積によっては耐火建築物や準耐火建築物にするなど建物が一定水準の防火性能を備えている必要があるのです。
鉄筋コンクリート造や鉄骨造などの耐火構造である建築物のこと
開口部を防火窓や防火ドア、防火ダンパー付き換気扇にすることなどが必要
耐火被膜した木造住宅などの建築物のこと
耐火構造よりも緩いが一定基準に適合する構造であることが必要
道路に建築物の一部がはみ出る(建築基準法 第44条違反)
道路に建築物の一部や門扉、塀などがはみ出していることも建築基準法違反となります。
また、建築基準法第42条第2項の規定により指定された道路に面する敷地では、道路の中心線から両側に2メートルの部分まで道路とみなされます。
そのため、既存の建築物や門、塀などがはみ出している場合には、セットバックする必要があるのです。
土地の境界線から一定の間隔を確保して建築物を建てること
用途地域の種類に応じた建築物でない(建築基準法 第48条違反)
用途制限に応じた建築物でない場合も建築基準法違反に該当します。
用途制限とは それぞれの用途地域ごとのルールに基づいて建築物を建築することです。
そのため、先述した用途地域の種類に応じた建築物を建てる必要があります。
用途地域は、各自治体が提供している都市計画情報をインターネットで確認することが可能です。
無届で建築物を建てる(建築基準法 第6条違反)
許可なく無届で建築物を建てることも建築基準法違反です。
建築物を建てる場合は、確認の申請書を提出して確認済証の交付を受ける必要があります。
たとえば、市街化区域や市街化調整区域に無届で建築物を建てるなどが該当します。
市街化調整区域に無届で建築物を建てる場合は、他の法令にも重複して違反している可能性もあるでしょう。
また、建築物とは住宅などの建物だけでなく、カーポートや物置なども対象です。
無届で増築する(建築基準法 第6条違反)
許可なく無届で増築することも建築基準法違反になります。
既存の建築物の面積を横に広げるよう増築する、2階建ての建築物を3階建てへ増築するなどが該当し、建ぺい率や容積率オーバーなど他の法令にも重複して違反する可能性もあります。
違反建築物として通報される理由
違反建築物として通報される場合は、近隣の住民からの通報がほとんどです。
近隣に住んでいるため、用途地域を把握していることが多く、違反建築物だと疑って役所などに問い合わせするのです。
また、新築や増改築など、確認済証の交付を受けた建築物の工事を始める場合は工事現場の見やすい場所に建築看板を設置する必要があります。
とくにDIYなどで自分たちの手で増改築を行う場合で建築確認の申請をしていないときは通報される可能性が高いといえるでしょう。
自治体によって建築パトロールが行われることがありますが、あくまで届出を出している工事現場をチェックしています。
住宅メーカーや工務店などが手がけている建売住宅やマンションなどを対象としているため違反建築物と発覚することはないといっても過言ではありません。
通報された場合のリスク
実際に違反建築物として通報されるとどうなるのか解説します。
違反建築物として通報されると自治体から違反建築物に対しての法的措置が取られ、改善する必要があります。
改善するためには、申請や改修などさまざまな費用が発生するケースもあるため、経済的なリスクが生じることになるでしょう。
最悪の場合では、建物を解体するケースも考えられ、解体費用は高額になります。
違反建築物として通報された場合の流れ
違反建築物として通報された場合は、以下のような順序で行われます。
それぞれ順番に詳しく解説します。
役所から呼び出される
違反建築物として通報された場合は、まず役所から呼び出されることになります。
近隣の住民などが違反建築物の疑いがあるため役所に問い合わせると、工事現場にいる大工などに建築主や施工会社が役所にくるよう書面が届きます。
直接役所に行き、違反建築物と発覚した場合は、工事を中止するよう口頭で工事の中止を告げられる(行政指導)でしょう。
工事の進捗状況によっても異なりますが、素直に工事を中止すれば、処分はそこまで大きくなりません。
工事停止命令が出される
役所での工事中止の行政指導を無視して、工事を進めると役所から強制力のある工事停止命令が出される(行政処分)可能性があります。
さらに行政処分にも従わない場合は、刑事罰または罰金を課される可能性があるのです。
また、違反が是正されるまでの間は、自治体から電気やガス、水道の各事業者に対して供給の停止が要請される場合もあるため、工事を進めることはできないでしょう。
工事施工者が営業停止処分される
工事停止命令が出された場合は、市役所は県庁に対して、工事の施工会社の処分を要請することになり、営業停止処分になる会社が多いです。
そのため、工事停止命令が出されても工事を続けるケースはほとんどありませんが、万が一工事を続けていた場合は、行政代執行の手続きに進むことになります。
所有者に代わって行政が解体などの強制的な措置を行うこと
是正を行う基準
行政代執行を免れるためには、どこまで建物の是正をすればいいか考えてみましょう。
建築物の定義は「土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱もしくは壁を有するもの」とされており、付属する門や塀、建築設備なども建築物に含まれます。
そのため、一般的には違反建築物を改善するための改修か解体が必要になってくるでしょう。
ただし、実際には行政代執行を行う市役所の判断に委ねることになります。
行政代執行が行われる
行政代執行が決定されると基本的に中止されることはありません。
市役所は解体工事において安全かつ素早く解体することを重視するため、行政代執行における解体費用は高額になります。
解体費用が支払われない場合は預貯金や不動産などが差押えされることになるため、行政代執行が決定される前までに対処することが重要です。
また、行政代執行が実施される場合は、全国的に大々的に報じられることになります。
違反建築物が通報されて是正措置命令が発令された事例
実際に違反建築物として通報されて、自治体から是正措置命令が発令された事例を紹介します。
【建築物の概要】
建築場所 | 横浜市戸塚区上矢部町 |
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用途地域 | 第一種低層住居専用地域 |
構造 | 鉄骨造、木造、一部コンクリート造 |
階数 | 地上4階建て |
延べ面積 | 1634.89㎡ |
用途 | 専用住宅、事務所、倉庫、共同住宅 |
【違反概要】
違反条項 | 建築基準法 第48条(用途制限) 建築基準法 第53条(容積率) 建築基準法 第52条(建ぺい率) 建築基準法 第20条(構造耐力) 建築基準法 第27条(耐火建築物)など |
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用途制限 | 事務所、倉庫として使用している部分が第一種低層住居専用地域の用途の制限に適合していない |
容積率 | 148.32%(法定容積率80%) |
建ぺい率 | 81.59%(法定建ぺい率40%、角地緩和50%) |
構造耐力 | 構造計算により安全性が確認されていない |
耐火建築物 | 階段部分と共同住宅部分が区画されていない |
【措置命令】
命令内容 | 建築基準法に適合するよう是正すること |
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通知 | 平成19年12月18日 |
命令発令日 | 平成20年1月16日 |
履行期限 | 平成20年4月30日 |
【指導経過】
平成9年6月3日 | 現地調査により違反建築物を確認する |
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平成9年6月5日 | 施工会社に工事停止命令を発令し、是正指導を行う |
平成10年5月27日 | 所有者に是正勧告書を送付する |
平成12年7月21日 | 工事が再開されたため工事停止を指示し、是正指導を行う |
平成13年4月~平成18年1月 | 工事が再開、是正指導が繰り返される |
平成18年3月~平成18年1月 | 事情聴取を行い、是正の検討を指示 移転の検討を指示 是正計画書の提出を求める |
平成19年11月13日 | 是正計画書の提出を求めるが、提出されず |
参照元:横浜市まちづくり調整局|違反建築物に対して是正措置命令を発令
上記の事例は、第一種低層住居専用地域内の住宅地において、工務店と共同住宅などの大規模建築物が違法に建築され、建築基準法に複数の重要な規定に違反しているため、横浜市から是正措置命令が発令されています。
違反建築物を所有するリスク5選
違反建築物を所有していると、以下の5つのようなリスクが生じます。
それぞれ詳しく解説します。
売却が難しい
違反建築物を所有するリスクとして、売却が難しいことが挙げられます。
違反建築物は法的な問題を抱えているため、好んで購入する買手はいないといえるでしょう。
また、仮に立地が気に入ったなどの理由で購入希望者が現れた場合でも融資がつきにくいため、売却できる可能性は低くなります。
違反建築物では住宅ローンが組めず、最近では金利の高いノンバンクでもコンプライアンスを重視し融資しないケースもあるのです。
罰則や法的措置の対象となる
違反建築物を所有していると罰則や法的措置の対象となるリスクもあります。
先述のとおり、違反建築物として通報されて発覚した場合は、所有者が罰則や法的措置の対象となる可能性が高いでしょう。
安全性が懸念される
違反建築物は安全性が懸念されることもリスクとして考えられます。
何が建築基準法違反に該当するかによって変わりますが、法規制を無視して建築されているため、構造や耐震性などの問題が発生している可能性があるでしょう。
周辺環境に影響を及ぼす可能性がある
周辺環境に影響を及ぼす可能性があることも違反建築物を所有するリスクです。
先述のとおり、違反建築物は構造や耐震性などの問題で安全性が懸念されるため、地震などの自然災害で倒壊する可能性があります。
建物が倒壊した場合は、周辺の住宅に損害を与える恐れがあるでしょう。
改善するためには多額の費用がかかる
違反建築物として通報されて自治体から指導があった場合は、改善するために多額の費用がかかります。
罰金などの費用に加え、申請や改修などさまざまな費用が発生するでしょう。
違反建築物として通報された場合はアルバリンクへ売却!
所有している物件が違反建築物として通報された場合は、アルバリンクに売却しましょう。
弊社アルバリンクは、他社で断られるような違反建築物や既存不適格物件などの訳あり不動産を全国から買い取っている業者です。
以下は、弊社が実際に買取を行った既存不適格物件の事例です。
【買取した既存不適格物件の概要】
物件の所在地 | 千葉県流山市 |
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駅距離 | 最寄り駅まで徒歩6分 |
買取価格 | 200万円 |
買取時期 | 2024年3月 |
接道義務を満たしていない再建築不可物件の売却依頼でした。売却を急いでおり、問い合わせがあった当月中の買取を希望されていました。
大規模な改築や用途変更は難しい物件でしたので査定結果は200万円でしたが、価格にも納得いただき、そのまま買取しました。
上記の方以外にも、多くのお客様から感謝のお言葉をいただいております(下記Googleの口コミ参照)。
弊社は2011年に創業以来、200件以上の再建築不可物件を買い取っている業者で、2023年に上場して社会的信用も得ています。
査定依頼をいただいても、無理な営業は行いませんので、ぜひ一度弊社の無料買取査定をご利用ください。
なお、違反建築物の賢い売却方法については、以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
まとめ
今回は、違反建築物と建築基準法違反について詳しく解説しました。
違反建築物は法的な問題を抱えている物件のため、所有しているとさまざまなリスクを抱えることになります。
所有している物件が違反建築物として通報された場合は、専門の買取業者に売却しましょう。
専門の不動産買取業者であれば、違反建築物でも1週間から1ヶ月間の短期間で現金化することが可能です。
なお、弊社アルバリンクも違反建築物をはじめとした訳あり不動産を全国から買い取っている業者で、「フジテレビ」を始めとする各メディアにも取り上げられた実績があります。
違反建築物を手放したくてお困りの方は、査定のみ、相談のみのお問い合わせでも受け付けておりますので、お気軽にご相談ください。