ゴミ屋敷を理由にすぐに退去命令は出せない
アパートをゴミ屋敷にした住人に退去命令を出して、すぐに退去してもらうことは難しいでしょう。
借地借家法28条により、賃借人(住人)の「賃貸に住み続ける権利」は守られているためです。
賃貸人は賃借人との賃貸契約を解除する場合は、正当な事由があると認められないと契約解除できません。
なお、契約解除の正当な事由として、主に以下の3つが挙げられます。
- 信頼関係の破綻
- 建物建て替えが必要
- 賃料の滞納が続いている
「ゴミ屋敷にすること」は信頼関係の破綻に該当するといわれています。
ただし、実際に退去させるには、信頼関係が破綻したことの証明が必要です。
具体的には、「期限を決めて片付けるよう注意したが、改善がみられない」ことを証明しなければなりません。
ゴミ屋敷にした住人を退去させるには、退去させるだけの正当な事由を示す必要があります。
ゴミ屋敷から入居者を退去させる流れ4STEP
前述したとおり、ゴミ屋敷から住人を退去させるには、正当な事由があることを証明しなければなりません。
ここでは、住人を退去させるだけの正当な事由を証明するための手順を紹介します。
具体的な手順の流れは以下のとおりです。
- 口頭や書面で注意する
- 内容証明郵便で通達文を送る
- 明け渡し訴訟をする
- 強制執行の手続きをする
法律知識が必要な手順もありますので、実際に退去させる際は、弁護士をはじめとする法律の専門家に相談しましょう。
口頭や書面で注意する
ゴミ屋敷になっていることを把握したら、住人にゴミを撤去するように口頭または書面で注意しましょう。
ただし、住人はゴミを捨てずにため込むことが常態化している可能性があります。
そのため、1回だけの注意では改善されないことが多いでしょう。
改善を促すためにも、1回だけでなく複数回注意しましょう。
なお、複数回にわたって注意することは、住人に対して何度も注意してきたという証拠を作るうえでも重要です。
内容証明郵便で通達文を送る
複数回注意しても改善が見られない場合、内容証明郵便で通達文を送りましょう。
内容証明郵便とは、郵便物の内容を証明するサービスのことで、以下の項目を記録・証明ができます。
- 文書の内容
- 宛先・差出人
- 発送日・受取日
契約上や法律上で強い意思表示をする場合に有効で、明け渡し訴訟する際の証拠として提出可能です。
通達文には、「〇月〇日までに部屋および共用施設のゴミを処分してください。期日までに処分されていない場合、契約解除となります。」という内容を記載します。
内容証明郵便で通達文を送った後、期日までに改善が見られなかった場合、「信頼関係の破綻」という条件を満たし、契約解除が可能です。
通常の書面での注意をしても、改善が見られなかった場合、内容証明郵便で通達、住人を退去させる準備をします。
明け渡し訴訟をする
内容証明郵便で設定した期限内に対応が見られない場合は、契約解除となり、住人に退去を求められます。
契約解除後も入居者が退去しない場合は、明け渡し訴訟を起こし、強制的に退去させます。
明け渡し訴訟をする時は、物件所在地の管轄の裁判所に訴訟の提起をします。
後日、裁判所に出廷する日程の案内が届きます。
被告である住人の主張を退けるような主張と法的な根拠を示すことができれば、オーナーの主張が認められ、住人に退去するよう判決が下されます。
強制執行の手続きをする
退去の判決が下されたにもかかわらず、住人が物件に居座り続けることもあります。
上記の場合、強制執行の手続きをすることで、住人を強制的に物件から退去させることが可能です。
まず、物件所在地の管轄の裁判所に申し立てをします。
申し立てが受理されると、裁判所から住人に対して「明け渡しの催告」をします。
明け渡しの期限は、原則催告した日から1か月間です。
期限が来ても、住人が退去しない場合は強制執行により、住人を強制的に退去させます。
強制執行がされると、裁判所の職員が建物内に残されている住人の家財道具を強制的に搬出します。
家財道具の搬出後、住人が部屋に入れないように鍵を交換することで、強制執行は完了です。
ゴミ屋敷から住人を退去させた後にかかる費用の内訳
ゴミ屋敷から住人を退去させた後、部屋を元通りにする必要があります。
その際、かかる費用は主に以下の2つです。
- ゴミの撤去費用
- 修繕費
ゴミの撤去費用
ゴミを撤去するためにかかる費用は以下のとおりです。
間取り | 費用相場 |
---|---|
1R、1K | 3万円〜5万円 |
1DK、2K | 5万円〜9万円 |
1LDK、2DK、3K | 9万円〜14万円 |
2LDK、3DK、4K | 14万円〜18万円 |
3LDK、4DK | 18万円〜21万円 |
4LDK〜 | 21万円〜 |
上記は、床から50cmくらいまでの高さまでゴミがたまっている場合の費用相場です。
さらにゴミがたまっているときは、上記金額以上の支払いが生じる可能性があります。
修繕費
住人が退去した後、貸主は劣化・汚損した箇所を修繕して、次の借主に明け渡します。
修繕にかかる費用は以下のとおりです。
項目 | 費用 |
---|---|
壁紙 | 1,000~2,000円/㎡ |
フローリング(クッションフロア) | 2,000~3,000円/㎡ |
キッチン | 15,000~25,000円 |
浴室 | 12,000~20,000円 |
ゴミ屋敷の退去命令を出した住人に原状回復費用を請求できる?
貸主は、ゴミ屋敷の片付け費用や修繕費の全額を退去させた住人に請求できません。
国土交通省のガイドラインによると、原状回復とは、借主が借りた当時の状態に戻すことではないと定義づけています。
経年劣化や通常の使用による損耗に対する修繕費用は貸主負担で、借主には請求できません。
貸主が住人に原状回復費用として、請求できる費用は以下のとおりです。
- ゴミの撤去費用
- 借主の故意・過失による損耗に対する修繕費
また、原状回復費用として借主に請求できる修繕費は、建物や設備の経過年数を考慮して、居住年数が多いほど借主負担の割合が減少する仕組みとなっています。
借主が長期間居住している場合、修繕費の大半が貸主負担となる可能性が高くなります。
参照元:「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について|国土交通省
ゴミ屋敷となった部屋を修繕した際に生じた費用は、原則貸主負担と考えたほうがいいでしょう。
なお、ゴミ屋敷の修繕費負担をはじめ賃貸管理に嫌気が差した方は、不動産買取業者への物件買取を依頼することをおすすめします。
アルバリンクは、ゴミ屋敷となった物件をはじめ訳ありの賃貸物件を買い取ってきた実績があります。
賃貸物件の処分を検討している方は、アルバリンクへぜひお問合せください。
ゴミ屋敷の退去命令を出す前に貸主がやってはいけないこと
ゴミ屋敷の住人を退去させるには、前述したとおり法的な手続きに則ることが必要です。
住人を退去させる手続きを取らずに、自力で解決しようとすると、トラブルの原因となります。
最悪の場合、住人から訴えられるリスクもあります。
住人を退去させる前に貸主がやってはいけないことは、主に以下の3つです。
- ゴミの処分
- 自力で住人を退去させる
- ドアに張り紙をする
ゴミの処分
住人のゴミ処分は、住人の断りなく貸主がしないようにしましょう。
貸主が住人のゴミを勝手に捨てる行為は、所有権の侵害に該当します。
明らかにゴミに見えたとしても、入居者が「ゴミではない」を主張した場合、処分は不可能です。
モノ(ゴミ)を勝手に捨てられたことに対して、住人が被害届を出したら、罪に問われる可能性もあります。
ただし、強制執行後にゴミを処分することは可能です。
前述した住人を退去させる流れに則り、賃貸契約の解除、強制的に住人を退去させた後に、ゴミを処分するようにしましょう。
自力で入居者を退去させる
貸主自らが住人を退去させる行為は、やってはいけない行為の1つです。
カギの交換や水道・電気等のインフラを止めるなど貸主自らの手で住人を退去させる行為は、「自力救済」という不法行為の対象です。
もし、自力救済をした場合、住人に損害賠償を請求される恐れがあります。
賃料滞納を理由に、貸主が借主の家財道具の処分、借主の立ち入りを不可能にしたことに対して、貸主は借主に損害賠償金として176万円の支払いが命じられています。
法的な手続きに則らず、自力で解決しようとすると、自分自身が加害者として賠償請求されるリスクがある
ドアに張り紙をする
ゴミ屋敷の住人が住んでいる部屋のドアに張り紙を貼り、注意する行為は控えましょう。
上記行為は、名誉毀損にあたる可能性があります。
ドアへの張り紙は、ほかの住人に「この住人は部屋をゴミ屋敷にしている」という事実を公開することで、その住人の名誉を傷つけてしまうためです。
実際に、ドアへの張り紙による滞納賃料の催促が名誉毀損であると判断され、借主の慰謝料請求が認められた事例があります。
無用なトラブルを引き起こさないためにも、ドアへの張り紙による注意は控えましょう。
まとめ
この記事では、ゴミ屋敷の住人を退去させる手続きの流れと片付け・修繕にかかる費用、貸主がやってはいけないことを紹介しました。
ゴミ屋敷の住人を退去させる手続きの流れは以下のとおりです。
- 口頭や書面で注意する
- 内容証明郵便で通達文を送る
- 明け渡し訴訟をする
- 強制執行の手続きをする
上記の流れに則らず、「住人を無理やり退去させる」「張り紙での注意」など自力で解決しようとした場合、住人とのトラブルのもとになります。
最悪の場合、住人に訴えられて、損害賠償を請求されるリスクもあります。
なお、ゴミ処分の費用は住人に請求できますが、修繕費の大半は貸主負担です。
ゴミ屋敷となったことが原因で部屋の劣化が激しくなった場合、元通りにするために修繕費の負担が重くのしかかるでしょう。
もし、賃貸の管理に嫌気が差した際は、アルバリンクにご相談ください。
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また、ゴミ屋敷をはじめ家財道具がそのまま残っている状態でも買取可能です。
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