「老後の住まいに不安がある人」は持ち家・賃貸ともに9割以上
全国の男女500人に「老後の住まいに不安があるか」を聞きました。
その結果、「かなりある」「少しある」と答えた人の割合は、「持ち家」が98.9%、「賃貸」が97.7%でした。
持ち家でも賃貸でも、ほとんどの人が老後の住まいに関して不安を感じているとわかりました。
ただし、不安が「かなりある」と答えた人の割合は、持ち家が38.0%なのに対し、賃貸は49.3%と11ポイント以上高くなっています。
アンケート結果からは、「賃貸に住んでいる人のほうが、より強い不安を感じている」という現状が浮かび上がりました。
続いて、「持ち家」「賃貸」のそれぞれにお住まいの人に、具体的にどのような不安があるのかを聞きました。
老後の持ち家に関する不安1位は「維持管理が大変」
持ち家に住んでいる人に聞いた「老後の住まい」に関する不安の圧倒的1位は、「維持管理が大変(146人)」でした。
2位「住めなくなった際の手続き(51人)」、3位「住宅ローンを完済できるか(48人)」と続きます。
維持管理の大変さは、持ち家ならではの不安です。
また持ち家を買うと、住み替えに手間がかかるケースも多くなります。
そのため「暮らしにくくなって住み替えたくても、引越しできなさそう」「スムーズに売却手続きができるだろうか」といった不安をもっている人も多くなりました。
1位 維持管理が大変
- 収入がなくなって年金生活になったとき、「家の管理」「外壁」「リフォーム」などにお金をかけられるか不安です(40代 女性)
- ローンは終わっていますが、古くなるにつれて修繕費など多くかかるのが不安(50代 男性)
- マンション住まいなので、積み立て修繕費と管理費が値上がりしていくことを考えると、年金生活になったとき払いながら暮らせるか不安(30代 女性)
1位は「維持管理が大変」でした。
持ち家の場合、外壁塗装をはじめとするリフォームは、自己負担となります。
賃貸であれば、「住んでいる人が故意に壊した」といったケース以外では、修繕は大家さんの負担となります。
つまり維持管理にお金がかかるのは、持ち家ならではです。
分譲マンションでも将来的な修繕のために「修繕積立金」を支払う必要があります。
マンションが老朽化してくると修繕積立金が値上がりすることも多く、負担を心配している人が多くなりました。
丁寧に住んでいても、家が古くなるほど修繕が必要な箇所は増えていきます。
また庭があると植物の管理などの手間や労力もかかり、「高齢になると、自分でやるのはしんどいだろう」と不安をもっている人もいました。
豪雪地帯では雪かき・雪下ろしなどの労力もかかりますね。
さらに持ち家だとランニングコストとして固定資産税もかかってくるため、支払いを心配している人が多くなりました。
2位 住めなくなった際の手続き
- 将来別の場所に住みたいと思ったとき、引越ししにくい(20代 女性)
- 現在は転勤で地元から離れた地域に住んでいます。老後は地元に戻りたいので、「戻りたいタイミングで今の家が売れ、地元に家を買えるか」が不安です(40代 女性)
- 現在は夫婦で生活していますが、後継者がいないので二人とも亡くなったあとの処分が不安。老後の後始末とセットでサポートしてもらえる仕組みがあるとありがたいです(60代以上 男性)
2位は「住めなくなった際の手続き」です。
持ち家に住めなくなったときや引越しを希望するときには、「売る」「貸す」「取り壊す」といった処分を検討するケースが多くなります。
所有したまま空き家にすると、固定資産税や管理コストがかかり続けてしまうためです。
ただ、スムーズに処分できるかを心配している人も多数。
老朽化していたり交通アクセスが不便な土地だったりすると、購入希望者や賃貸希望者がなかなか見つからないことも考えられます。
「子どもに相続してもらうのか」など、死後の不動産の扱いについても考えておく必要があります。
3位 住宅ローンを完済できるか
- 完済する前にローンの利率が上がるのではないか(30代 女性)
- 今のペースでは、夫の定年までにローンを払い終わらないこと。払いきれなかった場合、住み続けられない可能性があるので不安です(40代 女性)
- 住宅ローンが残り20年分あり、健康なまま払い続けられるか不安です(50代 男性)
3位は「住宅ローンを完済できるか」でした。
「ローン返済が定年後も続く」「月々の負担額が大きい」と言った場合には、とくに不安が大きくなるでしょう。
今は問題なく返済できていても、突然の病気や解雇などで返済が難しくなることもあります。
また将来的な金利の上昇を心配している人や、「繰り上げ返済をしたいけどできなさそう」と不安を感じている人もいました。
ローン返済の負担が大きすぎると、老後の生活費が圧迫されてしまいます。
住宅ローンの返済が滞った場合には、家が差し押さえられて競売にかけられたり、自己破産することになったりします。
4位 年をとると暮らしにくそう
- 3階建ての2階リビングなので、将来足腰が弱ったときに不安(30代 女性)
- 車がないと生活しにくい場所で、立地に不安がある(40代 男性)
- 駅から遠いので、高齢でも歩けるのか不安(50代 女性)
4位は「年をとると暮らしにくそう」でした。
回答には「家そのものの問題」と「立地の問題」の2パターンがありました。
家の問題としては、「バリアフリーになっていない」「階段の上り下りが大変そう」などが挙げられています。
立地の問題としては、「周辺に坂道が多い」「車がないと生活できないエリアなので、免許返納後が不安」などがあります。
暮らしにくいから住み替えたいと思っても、住み替えの手続きがスムーズにいくかという不安が出てきますね。
また住みやすくリフォームしたくても、費用面で不安が残る人も多いでしょう。
5位 老朽化していくこと
- 「耐久性などの問題で、持ち家であってもずっと住み続けられる保証がない」という不安を感じます(30代 女性)
- 持ち家なのですが、かなり老朽化していて雨漏りなどの心配はあります(50代 男性)
「老朽化していくこと」が5位でした。
適切なメンテナンスをしないまま老朽化が進むと、雨漏りやひび割れといった不具合が出てくる可能性があります。
また適切にメンテナンスしていても、災害などで家が損傷を受けることも考えられます。
たとえ持ち家でも、「一生住み続けられるかわからない」という不安はあるようです。
また損傷したり老朽化したりした家は、手放したくても買い手が見つからないことも多いでしょう。
「実家を相続して住んでいる」「中古住宅を購入して住んでいる」など、現時点で老朽化がかなり進んでいて不安を感じている人もいます。
老後の賃貸に関する不安1位は「家賃を払い続けられるか」
賃貸に住んでいる人に聞いた「老後の住まい」に関する不安で最も多かったのは「家賃を払い続けられるか(103人)」でした。
賃貸は、住んでいる限りずっと家賃が発生するため、退職後の収入がない状態でも払い続けられるか不安に思う人が多いようです。
また、高齢になると契約更新や入居時の審査が厳しくなるケースもあることから、「賃貸に住み続けられるか(78人)」、「持ち家に住み替えるべきか(37人)」などを心配している人も目立ちました。
1位 家賃を払い続けられるか
- 老後収入がなくなったとき、家賃支払いが可能か。自分で家賃支払いなどの管理ができなくなったとき、どう対処すればいいのか(30代 女性)
- 家賃をずっと払い続けられるかが不安(40代 男性)
- 家賃の値上げと、退職後に家賃が払えるかが心配です(60代以上 男性)
1位は「家賃を払い続けられるか」でした。
賃貸だと、契約している間はずっと家賃を支払い続けることになります。
家賃を滞納してしまうと、退去を求められる可能性も。
持ち家でも維持管理費はかかりますが、ローン返済が終われば「住居を失う不安」はぐっと軽減されます。
一方賃貸では、「老後に収入が減少して家賃が払えなくなったらどうしよう」と不安になる人は多いようです。
また老後に「駅チカ」「バリアフリー」のような条件の良い賃貸に住みたいと考えている場合は、家賃も高くなることが予想されます。
家賃に関する不安を減らすためには、早めに老後の資金計画を立てておくことが重要です。
2位 賃貸に住み続けられるか
- 生涯賃貸に住み続ける予定だが、高齢になったときに希望する物件を貸してもらえるのか不安があります(20代 女性)
- 今の物件に住み続けたいのですが、建物の老朽化でおそらく老後までもちません。高齢になって物件を借りるときに、審査に通らないかもしれません(30代 男性)
- 自身が年老いて単身となった際に、現在の住居から退去を迫られないか(50代 男性)
2位は「賃貸に住み続けられるか」です。
高齢になると、賃貸物件の入居審査で落ちてしまうことも。
「保証人がいない場合、支払い能力に不安がある」「一人暮らしだと孤独死の可能性が高い」「認知症でトラブルになるのでは」と思われやすいためです。
高齢者向けの民間賃貸物件もありますが、数が少ないうえ、家賃が高めに設定されていることも多いです。
なお高齢を理由に契約更新を拒否されることはない(拒絶されても借り主が拒否できる)のですが、老朽化した賃貸物件は取り壊しになることもあります。
そのため引越しが必要になったとき、スムーズに新しい物件に入居できるか不安になる人は少なくありません。
老後に住み替え先となる賃貸物件を探すのが難しいときは、公営住宅・URを検討してみる方法もあります。
3位 持ち家に住み替えるべきか
- 「賃貸で住むよりも、持ち家でローン支払いのほうがいいのでは」と思っている。持ち家の建築ができるのか不安である(20代 女性)
- 一生賃貸に住むのか。将来的にマンション購入なども考えた方がいいのか(20代 女性)
- 現在賃貸に住んでいるが、いつまでも賃貸に住むわけにはいかないと思うので、少し不安になる。ただ実家は建物の老朽化があるだろうし、改築するにも費用がかかる(40代 女性)
3位は「持ち家に住み替えるべきか」でした。
現在賃貸に住んでいるものの、将来的には持ち家を建築・購入すべきか迷っている人もいました。
ただ持ち家は、買いたいと思ったときに気軽にすぐ購入できるものではありません。
資金の工面ができず、迷いや心配が募っている人も多くなりました。
実家を相続する予定があるとしても、実家が遠かったり古かったりすると、移るのは難しいかもしれません。
4位 年をとると暮らしにくそう
- 立地が悪いため、老後が心配(30代 女性)
- 今の住まいはバリアフリーではないので、「長く住むことはできないだろう」と漠然と考えている(40代 女性)
- 団地の5階に住んでいるので、年をとって歩けなくなったらどうしたらいいか心配です(50代 男性)
4位は「年をとると暮らしにくそう」でした。
持ち家同様に「家がバリアフリー化されていない」「立地の問題で、老後が不安」という2パターンがありました。
例えばエレベーターなしのマンションやアパートだと、2階以上に住んでいる場合には「荷物を持って階段の上り下りできるだろうか」と不安になる人も多いでしょう。
賃貸に住み続けたいが、バリアフリー面で不安な場合は、バリアフリー化された民間賃貸住宅や公営住宅への転居を検討してみてはいかがでしょうか。
立地面では「公共交通機関が使える」「周辺に坂が少ない」「医療機関まで近い」といったポイントをチェックしてみてください。
5位 自分が亡くなったときの扱い
- もしものことがあったとき、賃貸解約の手続きや片付けをしてくれる人がいない(20代 女性)
- 現在アパート一人暮らしだが、年を取ってから家の中で倒れて孤独死しないか不安(30代 女性)
「自分が亡くなったときの扱い」が5位でした。
身寄りがなく一人暮らししているなどの理由で、「賃貸住宅の居住中に死んだらどうなるのか」と不安を感じる人もいました。
親族がいれば手続きや片付けは親族または相続人が行うことになり、連帯保証人を立てていれば家賃・修繕費については連帯保証人が責任を負います。
頼れる人がいない高齢者の場合は、賃貸物件の解約手続きや遺品整理を委任するための「死後事務委任契約」を結んでおく方法もあります。
まとめ
持ち家でも賃貸でも、老後の住まいについて不安を感じている人が多いです。
ただアンケートの結果、より強く不安を感じているのは「賃貸に住んでいる人」だとわかりました。
賃貸だと「家賃が払えなかったり入居審査に落ちたりしたら、住まいを失う可能性がある」と考える人が多いからでしょう。
一方持ち家の場合は、ローンを払い終えてからも発生する「維持管理のコストや手間」に不安を感じている人が多数。
全体的に「家賃」「維持管理費やローン返済」など、金銭面で不安を感じている人が多いとわかりました。
不安を少なくするためには、持ち家でも賃貸に住み続ける場合でも、老後に向けた資金計画を立てることが大切です。