増え続ける「空き家問題」と社会におけるデメリット
空き家が社会問題視されている背景として、年々その数が増加している点が挙げられます。空き家の所有者には適切に維持・管理をおこなう義務がありますが、実際には放置された空き家がほとんどで、近隣の方に迷惑をかけているのが現状です。
ここでは、空き家の数がどのくらい増えているのか、放置された空き家が社会にどのような悪影響をおよぼしているのかについて解説します。
55年間で全国の空き家数は16倍に
総務省の「平成30年住宅・土地統計調査」によると、2018年時点における空き家の数は848万9,000戸にのぼっています。1963年時点の空き家数52万2,000戸と比較すると、55年間でおよそ16倍にまで数が増えていることが分かります。
引用元:平成30年住宅・土地統計調査
今後もさらに空き家の数は増え続けると予測されており、2033年には2,150万戸、全国の住宅の3戸に1戸が空き家になると見られています。
社会におけるデメリット
空き家を放置すると、所有者にさまざまなリスクが生じるばかりか近隣の方にも大きな被害を与えてしまいかねません。景観上・衛生上・保安上の3つの観点から、放置空き家がもたらすデメリットを見ていきましょう。
景観上の問題
人の出入りがなく、また適切な管理もおこなわれていない空き家は老朽化が進み、外壁や屋根などが大きく傷んでしまいます。また、樹木が建物を全面的に覆い尽くすように生い茂ったり、庭に雑草が繁茂したりするなど、周辺の景観を損なってしまいかねません。
このように景観を害する空き家が存在する場合、その地域全体が「管理されていない」と見なされてしまい、周辺の不動産価格の下落につながる恐れがあります。
衛生上の問題
誰も住んでおらず、老朽化した空き家には家庭ゴミや家電製品などを不法投棄されることがあります。するとネズミなどの害獣が発生し、糞尿などによって衛生環境が大きく悪化しかねません。悪臭が発生することもあるでしょう。
ハチが巣を作り、近隣の方に被害を与えることも考えられます。
保安上の問題
人の出入りがない空き家は、犯罪者にとっては格好のターゲットとなり得ます。いつの間にか空き家が振込詐欺の拠点として使われてしまったり、放火犯に狙われたりとさまざまな犯罪を誘発させる恐れがあります。
また、空き家が台風や地震などで倒壊して道路をふさいでしまうなど、保安上危険な状態を現出する可能性も否めません。
空き家を放置する所有者にとってのデメリット5選
ここまで、放置空き家が社会に与える悪影響について解説してきました。空き家の管理は、ほかでもない所有者自身がおこなわなければなりません。空き家を放置すると、以下のデメリットが生じる点は押さえておく必要があるでしょう。
- 放置すると急速に老朽化が進行する
- ランニングコストがかかり続ける
- 近隣住民に危害を与えれば損害賠償の恐れが
- 特定空き家に指定されると固定資産税が最大6倍になる
- 行政代執行によって強制的に家屋を解体される
それぞれのデメリットについて、詳しく解説します。
放置すると急速に老朽化が進行する
誰も住む者がおらず、換気や通水などがおこなわれなくなった家は急速に劣化します。室内に湿気が溜まってカビが繁殖したり、構造部材が腐ったりしかねません。また、雨漏りが発生して雨水が建物の内部に侵入すると、さらに老朽化が加速します。
空き家を放置すればするほど資産価値は低下し、ますます売却できない状況が現出されます。老朽化した家屋を再び人が住める状態にするには多額の修繕費が必要な点も、デメリットと言えるでしょう。
ランニングコストがかかり続ける
空き家を所有し続ける限り、土地と建物に課される固定資産税・都市計画税を納め続けなければならない点もデメリットのひとつです。
固定資産税・都市計画税は、土地・建物ともに以下の計算式で求めます。
都市計画税=固定資産税評価額×0.3%
固定資産税評価額は、毎年自治体から送られてくる固定資産税の納税通知書を見れば確認できます。もし納税通知書が手元にない場合には、自治体で固定資産課税台帳を閲覧すると確認可能です。
また、居住用の家屋が建っている土地には「住宅用地の特例」と呼ばれる軽減措置が適用され、固定資産税が最大で6分の1に減額されます。
住宅用地の面積 | 固定資産税額 | 都市計画税額 |
---|---|---|
200㎡までの部分(小規模住宅用地) | 固定資産税評価額×1/6×1.4% | 固定資産税評価額×1/3×0.3% |
200㎡超の部分(一般住宅用地) | 固定資産税評価額×1/3×1.4% | 固定資産税評価額×2/3×0.3% |
参照元:東京都主税局「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)」
たとえば、敷地面積が100㎡、土地の固定資産税評価額が1,200万円、建物の固定資産税評価額が1,000万円のケースにおける固定資産税・都市計画税は以下のとおりです。
「土地の固定資産税=固定資産税評価額×1/6×1.4%」「土地の都市計画税=固定資産税評価額×1/3×0.3%」の計算式より、
土地の固定資産税=1,200万円×1/6×1.4%=2万8,000円
土地の都市計画税=1,200万円×1/3×0.3%=1万2,000円
「建物の固定資産税=固定資産税評価額×1.4%」「建物の都市計画税=固定資産税評価額×0.3%」の計算式より、
建物の固定資産税=1,000万円×1.4%=14万円
建物の都市計画税=1,000万円×0.3%=3万円
合計:2万8,000円+1万2,000円+14万円+3万円=21万円
つまり空き家を何の用途にも使っていない場合であっても、上記のケースでは毎年21万円の税金を納め続けなければならないということです。
また、空き家の維持・管理には以下の費用もかかります。
項目 | 年間の費用相場 |
---|---|
水道光熱費 | 約3万円 |
保険料 | 約1~5万円 |
清掃費 | 約1~2万円 |
メンテナンス・修繕費 | 約10万円 |
交通費 | 約1~10万円 |
空き家の維持・管理を自分でおこなうのが難しい場合には業者に委託するのもひとつの方法ですが、年間で6~12万円ほどの費用がかかる点は覚悟しなければなりません。
近隣住民に危害を与えれば損害賠償の恐れが
前述のように誰も住まなくなった家は老朽化が進む一方であり、最悪の場合には倒壊するリスクがあります。もし地震や台風などによって屋根や外壁の一部が剥がれて通行人に被害を与えたり、倒壊して隣家を損傷させたりした場合には、空き家の所有者としての管理責任が問われて損害賠償を請求される恐れがある点に注意が必要です。
実際、雨で地盤が緩んだ影響で崩壊した石垣によって隣家が全壊した事例において、裁判所は「石垣の保存について通常有すべき安全性を欠いていた」として石垣の所有者に約364万円の損害賠償を命じています(広島地方裁判所平成10年2月19日判決)。
特定空き家に指定されると固定資産税が最大6倍になる
空き家の所有者として適切な管理を怠り、自治体から「そのまま放置すると保安上危険・衛生上有害となる恐れがある、周辺の景観を著しく損なっている」と判断された場合には「特定空き家」に指定される可能性があります。
特定空き家に指定され、自治体から現状を改善するよう「勧告」を受けた場合には住宅用地の特例が適用されなくなり、固定資産税と都市計画税が大幅に上がってしまう点に注意が必要です。
たとえば、敷地面積が100㎡、土地の固定資産税評価額が1,200万円、建物の固定資産税評価額が1,000万円のケースにおいて、特例が適用される場合とされない場合とで比較してみましょう。
「土地の固定資産税=固定資産税評価額×1/6×1.4%」「土地の都市計画税=固定資産税評価額×1/3×0.3%」の計算式より、土地の固定資産税=1,200万円×1/6×1.4%=2万8,000円
土地の都市計画税=1,200万円×1/3×0.3%=1万2,000円「建物の固定資産税=固定資産税評価額×1.4%」「建物の都市計画税=固定資産税評価額×0.3%」の計算式より、建物の固定資産税=1,000万円×1.4%=14万円
建物の都市計画税=1,000万円×0.3%=3万円合計:2万8,000円+1万2,000円+14万円+3万円=21万円
【住宅用地の特例が適用されない場合】
「固定資産税=固定資産税評価額×1.4%」「都市計画税=固定資産税評価額×0.3%」の計算式より、
土地の固定資産税=1,200万円×1.4%=16万8,000円
土地の都市計画税=1,200万円×0.3%=3万6,000円
建物の固定資産税=1,000万円×1.4%=14万円
建物の都市計画税=1,000万円×0.3%=3万円
合計:16万8,000円+3万6,000円+14万円+3万円=37万4000円
上記のケースでは、特例の有無によって16万4,000円も納税額に差が生じることが分かりました。自治体から特定空き家に指定されるのを防ぐには、空き家の所有者として適正に管理することが欠かせません。
2023年末から「管理不全空き家」が制定され規制が強化される
2023年6月14日、国は空き家対策にさらに力を入れるべく、「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」を公布しました。具体的には、管理が不十分で壁や窓の一部が割れていたり、雑草が生い茂っていたりして特定空き家になる恐れがある家を「管理不全空き家」に指定するというものです。
もし所有している空き家が管理不全空き家に指定された場合は、特定空き家と同様に住宅用地の特例が適用されなくなり、固定資産税・都市計画税額が大幅に上がってしまいかねません。
改正法の施行日は、公布から6か月以内です。管理不全空き家に該当する家は全国で50万戸にのぼると試算されており、これまでは問題視されていなかった空き家でも住宅用地の特例が解除される可能性があります。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
行政代執行によって強制的に家屋を解体される
自治体から特定空き家に指定されると、まずは改善へ向けて「助言」や「指導」がおこなわれます。それに応じなかった場合には「勧告」がおこなわれ、前述のように住宅用地の特例措置が解除されます。
それでも対応しないと、今度は空き家の状態を改善する「命令」が下されます。命令に従わなかった空き家の所有者には、50万円以下の罰金が科される点に注意が必要です。
命令が下されたにもかかわらず、その後も空き家の放置を続けた場合、自治体は行政代執行により強制的に空き家を解体できるようになります。
国土交通省の調査によると、2015年から2021年までに特定空き家に指定された家の数は3万3,943件にのぼり、そのうち行政代執行が講じられたのは140件にのぼります。解体工事にかかった数百万円にのぼる費用は空き家の所有者が全額負担しなければならないため、特定空き家に指定されないよう、早めの対策を講じることをおすすめします。
行政代執行によって空き家が解体されるリスクや回避方法について知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
空き家放置のデメリットを解消するための対策
ここまで解説してきたように、空き家の放置にはデメリットしかありません。空き家が遠方にあって管理をおこなうのが難しい、余計な税金を納めたくない、今後も利用する予定がない場合には、以下の対策を講じるとよいでしょう。
- 収益物件として活用する
- 解体して更地にする
- 家屋が残っている状態で売却する
ただし、賃貸経営をおこなって確実に収益を上げるのは難しいと言わざるを得ません。入居者の維持が難しいことにくわえ、築年数の経過に応じて家賃が低下するリスクがあるためです。
また、多額の費用をかけて空き家を解体し、更地にしてから売りに出したとしても買い手が見つかるとは限りません。立地によっては、いつまでも売れ残ってしまいかねないでしょう。
空き家を放置するデメリットから確実に解放されたい場合は、家屋が残っている状態のまま不動産買取業者に売却することをおすすめします。
ここからは、それぞれの対策について詳しく解説するとともに、空き家を不動産買取業者に売却するメリットをご紹介します。
収益物件として活用する
空き家を賃貸物件として活用すれば、毎月家賃収入を得られるメリットがあります。
しかし空き家を人が住める状態にするには、初期投資として多額のリフォーム費用が必要です。家や設備にかかる修繕費・メンテナンス費も、自身で負担しなければなりません。入居者の募集や建物のメンテナンスなどの管理業務を管理会社に委託する場合は、家賃収入の3~5%ほどの手数料を支払う必要もあります。
黒字化するまでに時間がかかる点は、覚悟しなければならないでしょう。
また、賃貸需要が見込める立地でなければ入居者がいつまでも見つからず、家賃収入を得られないリスクもあります。
解体して更地にする
築年数が古く、建物の状態も悪い空き家の場合は、解体して更地にするのも選択肢のひとつです。
建物を取り壊せば、自治体から特定空き家に指定されることはありません。屋根瓦の飛散や建物の倒壊などによって近隣の方に被害を与えてしまい、損害賠償を請求されるリスクも避けられるでしょう。
ただし、更地にすると住宅用地の特例が適用されなくなるので、固定資産税・都市計画税が大幅に上がってしまいかねません。
また、一般的には老朽化した家屋があるよりも更地にしたほうが売れやすいと言われており、不動産業者の中には売却に際して解体工事を勧めるところもあります。
しかし更地にしても、そもそもの需要が見込めない立地の場合には売却は難しいと言わざるを得ません。よほどの好立地でない限り売れ残るリスクは高く、数百万円にのぼる解体費用がそのまま負債としてのしかかる恐れがあります。
家屋が残っている状態で売却する
コストや手間をかけずに空き家を手放したい場合には、建物が建っている状態のまま売却するのがおすすめです。
地方にある、駅から遠いなど一般の買い手からの需要がない空き家を売却するのは困難ですが、空き家専門の不動産買取業者に依頼すれば問題なく買い取ってもらえます。
不動産買取業者は、買い取った空き家にリフォームを施してから賃貸物件として貸し出したり、再販したりして収益を上げる不動産会社です。空き家専門の不動産買取業者は空き家を再生して活用する豊富なノウハウを有しているため、たとえ建物の状態が悪い場合でも適正価格で売却できます。
売却に際して、売主側で高額なリフォーム費用や解体費用を負担する必要はありません。また、不動産買取業者が直接購入するので、一般の不動産業者に依頼するときのように買い手を探す必要がなく、短期間で現金化が可能な点もメリットです。
空き家買取のメリットや売却価格については以下の記事で詳しく解説しているので、併せて参考にしてください。
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信頼できる不動産買取業者の選び方
一口に不動産買取業者といっても、マンションの買取に特化していたり、一戸建ての買取を専門としていたりとその特徴は千差万別です。
所有している空き家を少しでも高く売りたいのであれば、空き家の買取に特化している不動産買取業者を選びましょう。空き家の買取実績が豊富な不動産買取業者には買い取った空き家を活用するノウハウがあるので、より高値で買い取ってもらえます。まずは、ホームページなどで空き家の買取実績が豊富かどうかを確かめましょう。
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残念ながら、不動産買取業者の中には高額な査定価格を提示して顧客を引きつけ、契約を断れない段階になって値下げを強要するような悪質なところも存在しているのが現状です。
そこで信頼できる業者かどうかを見極めるためにも、査定価格を提示されたら根拠を聞くことをおすすめします。
悪質な買取業者が提示する査定価格にはまったく根拠はないので、問いただしてもはぐらかされるのがオチでしょう。
一方で信頼できる業者であれば、査定価格を算出した根拠を具体的な数字を用いて説明してくれます。たとえば、周辺の取引事例や地価、リフォーム代をはじめとする商品化にかかる経費などです。
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※2023年1月1日~2023年10月25日現在の物件査定に関する相談実績5,555件
まとめ
人の住まなくなった空き家は老朽化が急速に進み、所有期間が長引くほど売却しにくくなる傾向にあります。また、所有し続ける限り、固定資産税や維持費を負担しなければなりません。自治体から特定空き家に指定されると固定資産税が最大で6倍になり、最悪のケースでは強制的に解体されて費用を徴収される点にも注意が必要です。
空き家の放置には、デメリットしかありません。今後も空き家を利用する予定がないのであれば、なるべく早い段階で売却を検討しましょう。
老朽化が進んで建物の状態が悪い空き家であっても、不動産買取業者に依頼すれば短期間で買い取ってもらえます。
弊社AlbaLink(アルバリンク)でも全国の空き家を買い取っておりますので、空き家の処分にお困りの方はぜひお気軽にご相談ください。
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