空き家購入には「新築に比べて安い」「リフォーム前提で購入し、自分好みの家にできる」「購入やリフォームに際し、自治体から補助金が出る」といったメリットがあります。
ただ、空き家購入に際しては不安を抱える人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は全国の男女433人を対象にアンケートを実施。
「空き家を購入する際に不安なこと」や「空き家購入の不安をなくすために知りたいこと」などについて聞きました。
- 調査対象:全国の男女
- 調査期間:2025年2月27日~3月13日
- 調査機関:自社調査
- 調査方法:インターネットによる任意回答
- 有効回答数:433人(女性270人/男性163人)
- 回答者の年代:10代 0.5%/20代 15.0%/30代 32.7%/40代 27.3%/50代 18.7%/60代以上 5.8%
空き家を購入する際に不安なこと1位は「費用が高くなりそう」
全国の男女433人に「空き家を購入する際に不安なこと」を聞いたところ、1位は「費用が高くなりそう(41.6%)」、僅差の2位は「建物の状態が悪そう(41.3%)」でした。
コスト、快適性、安全性に対して不安を抱いている人が多くなりました。
費用面については、空き家だと「建物の状態がわかりにくいので、リフォーム費用の計画を立てにくい」という面もあります。
また「前住人の人となり」など情報不足についてのコメントもあり、空き家についての明確な情報が手に入りにくいことが不安を大きくしていることもわかりました。
1位 費用が高くなりそう
- 古い家のイメージなので、リフォーム代や修繕費がかかりそうなこと(30代 女性)
- 空き家であった期間により、修繕費などの費用が高額になる点(40代 男性)
- 建て替え時期がすぐに来そう。「結局新築を購入したほうが安上がりになるのではないか」という金銭面での大きな不安(50代 男性)
1位は「費用が高くなりそう」です。
空き家だと相場に比べて安く購入できる可能性があります。
しかし、安く買っても修繕費用がかさんで、結局コストが高くつくのではという不安を感じている人も。
空き家であった期間が長く、適切なメンテナンスがされていないと、劣化が進みやすくなるからですね。
上記のような場合には、購入後実際に住むまでに、大がかりなリフォームが必要になることも考えられます。
一方築年数が浅かったり、適切に管理されてきたりした空き家では、修繕費が抑えられるケースもあります。
2位 建物の状態が悪そう
- 長期間放置されていた場合、シロアリがいたり、カビが発生したりしているかもしれないと不安になります(40代 男性)
- 設備の老朽化や、住んでから不具合がわかること(50代 女性)
2位は「建物の状態が悪そう」でした。
手入れされていない空き家は老朽化が進みやすいので、カビやシロアリといった不具合を心配する人も多数。
床下や配管など、見えない部分の不具合はパッと見て確認できないので、不安になるのも当然です。
建物の状態があまりに悪いと、購入後に「雨漏り」「外壁や内壁のはがれ」といった、目に見えてわかる不具合が発生する可能性も。
建物の状態が悪いほど、修繕費用やメンテナンス費用もかかってくるため、経済的な負担も大きくなります。
3位 耐震性は十分か
- 東京在住ですが、実際に長野県へ空き家を見に行ったことがあります。暖房などの設備や耐震性などが気になりました(40代 男性)
- 災害に強い地盤かどうか、耐震基準を満たしているかなど、家が本当に安全なのかが気になります(50代 女性)
3位は「耐震性は十分か」でした。
地震の多い日本では、住宅の耐震性能はしっかりと確認しておきたいもの。
しかし空き家の築年数が古いと、現行の耐震基準を満たしていない可能性があります。
耐震性に不安がある場合は、耐震診断を受けたうえで、必要であれば耐震補強をするのが一般的。
耐震補強にも費用がかかりますので、費用面での不安にもつながります。
4位 事故物件ではないか
- 事故物件であるかどうかが一番気になります。サイトなどで調べることもできますが、「記載漏れ」「軽微な事故」で情報を得られない可能性もあります(40代 男性)
- 心理的瑕疵物件でないか心配です(50代 女性)
4位は「事故物件ではないか」となりました。
事故物件とは一般的に、事件や事故、自殺、孤独死などにより、入居者が部屋で死亡した物件を指します。
事故物件であっても気にしない人もいますが、「この部屋で前住人が孤独死し、長期間発見されなかった」などと知ると、いい気持ちはしない人が多いでしょう。
そのため「事故物件ではないか知りたい」「空き家になった理由を知りたい」と考える人も多くなりました。
5位 周辺環境が良いか
- 近隣に若い世帯がいなさそうなので、子どもの騒音トラブルなども発生しやすそう(30代 女性)
- 周辺の安全と治安(50代 女性)
- 近所にどのような人がいるのか。地域の付き合い方やルール(40代 男性)
「周辺環境が良いか」が5位です。
周辺環境とは「治安」「騒音の有無」「周辺に暮らしている住民の層」などで、快適な生活環境のために重要な要素となります。
過疎地の空き家になっているなら、コメントにあるように「周囲に子どもの同級生がいるか」「子育てに理解がある地域か」などが気になります。
6位 前住人の人となりがわからない
- 前は誰が住んでいて、どんな状況で放置していたのか(40代 男性)
- 以前住んでいた住人がどんな人だったか気になります。以前の住人と間違われてトラブルに巻き込まれないか心配です(40代 女性)
「前住人の人となりがわからない」が6位でした。
空き家には前の住人がいるものの、購入前に前の住人と直接会えるとは限りません。
空き家を相続した人(直近でその家に住んでいなかった人)が売り主になることも多いからです。
前住人の情報が不明だと、過去の管理状況や実際の住環境に不安を感じる人も多いとわかりました。
7位 防犯性が十分ではない
- 確実に不安になるのはセキュリティ。空き家は放置されているイメージが強いため、どうしても気になってしまう(10代 男性)
- 鍵などのセキュリティに関するところがリフォームされているのか(40代 女性)
「防犯性が十分ではない」が7位となりました。
例えば古い日本家屋の場合は、開口部が大きいため、侵入されるリスクが高いとされています。
セキュリティ対策をしようにも、古すぎてすぐには十分な対策ができないことも。
また、「空き家であった期間に、不審者が住みついていたかも」「犯罪に使われていたかも」といった不安を抱えている人もいました。
空き家購入の不安をなくすために知りたいことは「リフォーム費用の相場」
「空き家購入の不安をなくすために知りたいこと」の1位は「リフォーム費用の相場(38.3%)」で、4割近くから回答を集めました。
2位「周辺環境の良さ(27.0%)」、3位「建物の状態(26.1%)」、4位「空き家になった理由(25.6%)」が続きます。
リフォーム費用、補助金、税金など「お金に関する項目」と、周辺環境、建物の状態など「生活に直結する項目」が多くなっています。
また「空き家になった理由や期間」「前の住人」「過去の修繕箇所」「築年数」など、建物の履歴について把握しておきたいと考える人も多いとわかりました。
建物の履歴を把握することが、安心感につながると推測できます。
1位 リフォーム費用の相場
- 修繕費用の目安など。物件ごとに違うだろうけど「この規模ならこれくらい」などがわかると嬉しい。修繕するときに依頼できる業者なども知りたい(20代 女性)
- リフォームや配管の整備にかかるトータルの値段(30代 女性)
1位は「リフォーム費用の相場」です。
空き家購入でかかる費用の中でも、とくに購入後の支出に注目している人が多いとわかります。
ネット記事なども参考にできますが、「自分が買いたい物件では、実際どれくらいリフォーム費用がかかるのか」は掴みにくいです。
そのため不動産業者などに、物件に合わせた見積もりを提示してほしいと考えている人が多くいました。
2位 周辺環境の良さ
- 閑静な住宅街なら、どのような年齢層の人が多く住んでいるかリサーチすると思います。空き家になった理由が持ち主の高齢化なら、尚更です(30代 女性)
- 周辺に騒音や悪臭などを出す工場などがないか。トラブルを起こしそうなやっかいな近所の住人がいないか(40代 男性)
2位は「周辺環境の良さ」でした。
具体的には「住人に嫌悪感を与える忌避施設の有無」「近隣住民の年齢層」などです。
音、臭い、明るさなどの表面的な周辺環境については、自分で確認できます。
昼と夜では感じ方が違うことも多いので、自分の目で調査する場合には、時間帯を変えて何度か現地に行ってみることをおすすめします。
また「近所迷惑な住民がいないか」「ゴミ出しマナーはいいのか」などは、「不動産会社」「売り主」「近隣の住民や商店」などに確認可能です。
ただ売り主や近隣住民に聞き込みする場合には、失礼でしつこい聞き方にならないよう注意しましょう。
3位 建物の状態
- 専門家による鑑定結果と、物件の状態を保証する書類(40代 女性)
- 専門家による建物診断情報。シロアリの被害など、建築物の見えない劣化までチェックしてほしい(50代 女性)
3位は「建物の状態」となりました。
築年数の古い空き家や、空き家期間が長かった家だと、建物の状態が気になりますよね。
専門家による診断や写真など、建物の状態が明確にわかるものを求める人も多くなっています。
売り主や仲介業者からの情報に加え、中立的な第三者からの情報があるとより安心できることがわかります。
つまり売り主が手間をかけてでも第三者に空き家の検査を依頼しておくことで、買い手の心理的ハードルは下がると予想できます。
4位 空き家になった理由
- 前に住んでいた人が、どのような理由でいなくなったかが気になります(30代 女性)
- なぜ空き家になっているのかや、何年住んでいないのか、また過去に事件がなかったかも知りたいです(60代以上 男性)
4位は「空き家になった理由」でした。
空き家になった理由を知ることで、事故物件を回避でき、管理状態や周辺トラブルの把握にも役立つからです。
例えば「古すぎて倒壊が怖い」という理由だとリフォーム費用が高くなり、「立地が不便すぎる」という理由だと自分にとっても不便だと考えられます。
空き家になった理由によっては、空き家が売れにくくなることがわかりました。
なお空き家になった経緯については、売り主や仲介業者から教えてもらえる可能性があります。
5位 補助金の知識
- 自治体から出る補助金(40代 男性)
- 空き家のリフォームに補助金は出るか(50代 女性)
「補助金の知識」が5位です。
自治体によっては「空き家の購入」や「空き家の建て替え・リフォーム」に対して補助金を出しています。
そのため購入したいと考えている空き家が立地する自治体に、空き家関連の補助金があるかどうかは重要な情報です。
補助金の情報は、空き家が立地する自治体のWebサイトなどで調べられます。
6位 前住人について
- 前に住んでいた人の家族構成(30代 女性)
- 以前住んでいた人の暮らしぶりについて(40代 女性)
6位は「前住人について」です。
前住人の生活スタイルや使っていた嗜好品などによっては、部屋に汚れや臭いがついたりすることもあります。
あまり家の手入れに熱心でない人だったなら、資産価値が下がってしまうな不具合が隠れている可能性も考えられます。
そのため前住人について知りたい人も多くなりました。
7位 税金の知識
- 税金などを含めて、年単位でどれくらいの費用がかかるのかといった情報(30代 男性)
- 税金に関する知識(40代 女性)
「税金の知識」が7位です。
不動産を所有すると、固定資産税がかかります。
固定資産税はランニングコストになるので、維持費として予算を組んでおく必要があります。
また「現行の耐震基準を満たしていない空き家は、住宅ローン控除を受けられない」という点にも注意が必要です。
なお控除を受ける場合には、空き家が耐震基準を満たしていると証明する書類が必要となります。
8位 過去の修繕箇所
- これまでのリフォーム歴がわかるもの(30代 女性)
- 空き家がどの程度リフォームされた状態であるかなどの情報は絶対に必要だと思います(50代 男性)
「過去の修繕箇所」は8位でした。
リフォーム履歴を参考にすることで、重複してリフォームすることがなくなり、費用を節約できる可能性があります。
またリフォームの内容を知ることで、不具合がきっちり解消されているかも推測できます。
例えば「浴室リフォームの際に、腐っていた土台まで交換した」といった履歴があれば安心です。
また増築履歴がある場合には、違法建築になっていないかの確認も必要となります。
空き家を購入するうえで重要なポイントは「物件の購入価格」
「空き家を購入するうえで重要なポイントは何か?」を聞いたところ、ダントツは「物件の購入価格(48.5%)」でした。
2位「立地の便利さ(30.3%)」、3位「築年数が許容範囲か(25.4%)」、4位「周辺環境の良さ(25.2%)」と答えた人も多くなっています。
空き家ならではのポイントとしては、リフォーム費用や建物の状態が挙げられます。
建物の状態や築年数は「物件の購入価格」や「リフォーム費用」とも密接に関わりますので、コスト面を重要視している人が多いこともわかりました。
1位 物件の購入価格
- 個人的に価格が一番重要だと思います(20代 女性)
- 修繕費用を考慮してもお得であること(30代 男性)
1位は「物件の購入価格」です。
「新築に比べて安くお得に購入できること」を重用している人が多数。
修繕費用や維持費がかかる可能性も高いことから、空き家の購入に際しては「より安くお得に」「購入費用を抑えて修繕費費用をねん出する」という意識が強くなるのだと考えられます。
「空き家購入にかかる総コストの中で、購入価格が予算内か」という視点になるのですね。
2位 立地の便利さ
- スーパーや駅・バス停が近くにあるか(20代 女性)
- 立地。スーパーや病院が近くにあるなど、自分にとって生活しやすい環境であることが第一(30代 女性)
2位は「立地の便利さ」でした。
公共交通機関や商業施設が遠い立地だと、生活が不便になってしまいます。
また不便な立地だと、売却したくなったときになかなか買い手がつかない可能性も。
「相続したものの、田舎すぎて相続人が住めない」という理由で空き家になっているケースもあります。
そのため、とくに地方の空き家では「利用しやすい公共交通機関の有無」や「インフラの整備状況」を確認しておきたいですね。
3位 築年数が許容範囲か
- 築年数はもちろん大事だと思います(30代 女性)
- 建築年月日。1981年以降の耐震基準を満たしていることが最低条件(50代 女性)
3位は「築年数が許容範囲か」となりました。
1981年6月1日を境に、適用される耐震基準が異なります。
耐震基準改正以降の建物であれば一定の安全基準は満たしていると考えられますが、築年数が古い物件では耐震リフォームの有無を確認する必要が出てきます。
そのため「新しい耐震基準を満たしている築年数」を重視している人も多くなりました。
また築年数がかなり経っていると、リフォームの必要性も高まってくるので、メンテナンス費用を考えるうえでも築年数は重要です。
建て替えずに住むことを考えている場合、コスト面からも安全性の面からも、築年数は重要な指標となります。
築年数は「登記簿謄本」「建築確認通知書」などで確認可能です。
4位 周辺環境の良さ
- 周辺に問題のある家がないかどうか(30代 女性)
- 周辺環境です。生活の利便性や治安は、将来的な資産価値に大きく影響します(40代 男性)
- 治安の良さ。教育に適した環境か否か(50代 女性)
4位は「周辺環境の良さ」でした。
周辺環境の良さは、立地同様に、空き家以外の購入でも重視されます。
「治安が悪い」「周辺住民が騒がしい」「地域活動に馴染めない」といった場合には、住み始めてからストレスを感じてしまう可能性があるからです。
また日当たりや風通しなども住み心地に関わりますので、自然の環境についてもチェックしておく必要があります。
5位 建物の状態
- 建物の状態と修繕の必要性について。長期間使用されていない空き家の場合、構造的な問題や設備の老朽化が進んでいる可能性が高いから(20代 女性)
- 一番大事なのは家の状態だと思う。「手を加えずに住めるか」「リフォームが必要なら、どの程度必要なのか」が重要(40代 男性)
「建物の状態」が5位です。
建物の状態によって、かかってくるリフォーム費用が変わるからですね。
また、購入価格が妥当かどうかの判断にも、建物の状態は大きく影響します。
そのため「空き家になってからも定期的にメンテナンスされていたのか」「適切なリフォームがされていたのか」などをチェックする必要があると感じている人も多くなりました。
ただ素人が建物の状態について判断するのは難しいため、専門家に住宅診断を依頼するのがおすすめです。
6位 リフォームにかかる費用
- 購入後に予想以上の修繕費用がかかると大きな負担を抱えることになるから、必要な修繕やリフォームの内容・費用を把握しておくことが重要だと思う(20代 女性)
- 修繕費用が予算内に収まる物件かどうか(30代 男性)
6位は「リフォームにかかる費用」となっています。
空き家を購入する際には、自身でのリフォームを前提にする人が多くなっています。
そのためリフォームにかかる費用を重要視する人も多数。
事前にしっかり建物の状態を把握しておけば、「予想外の劣化が判明してリフォーム費用がかさむ」という可能性を下げられます。
7位 災害への強さ
- 立地や地盤の強さ。ハザードマップのどのランクにかかっているか(40代 女性)
- 耐震性。災害時に洪水や津波などで被害を受ける心配がないかどうか(60代以上 男性)
「災害への強さ」が7位でした。
安全に住まうためには、災害への強さも大切です。
いくら家を安く購入できても、災害に対する不安があると、ストレスを感じてしまいます。
建物自体の耐震性を気にしている人もいれば、地盤を気にしている人もいました。
長年放置された空き家は基礎部分の劣化が進んでいるケースもあるため、購入前に耐震診断を行うと安心です。
また地盤など土地の問題を確認する際は、ハザードマップなどが役立ちます。
まとめ
多くの人が空き家購入に対して「費用が高くなりそう」「建物の状態が悪そう」「耐震性に不安がある」といった不安を感じています。
不安の背景には「修繕費用の見積もりが難しい」「老朽化した空き家が多い」「空き家についての情報が手に入りにくい」といった状況があると考えられます。
不安を解消する方法は「近隣住民や不動産会社を通じて空き家や前住人の情報を入手する」「専門家による診断を受ける」「事前に資金計画を立てる」などです。
診断結果などをもとに、購入とリフォームにかかる費用の計画をしっかり立てておくことで、かなり不安は軽減されます。