遺産分割協議とは、相続発生時に相続人全員で「遺産をどう分けるか」を話し合って決めることをいいます。
遺産分割協議では相続人同士で感情的なぶつかり合いが起きることもあるため、信頼できる相談相手の存在が重要です。
では、実際に遺産分割協議を経験した人たちは、誰に相談したのでしょうか。
今回は相続で遺産分割協議をしたことがある103人にアンケートを実施し、「遺産分割協議にあたり、誰に相談したか」を調査しました。
- 調査対象:相続で遺産分割協議をしたことがある人
- 調査期間:2025年11月4日~17日
- 調査機関:自社調査
- 調査方法:インターネットによる任意回答
- 有効回答数:103人(女性52人/男性51人)
- 回答者の年代:20代 9.7%/30代 21.4%/40代 24.3%/50代 27.1%/60代以上 17.5%
相続の遺産分割協議で「士業」を利用した人は73.8%

相続の遺産分割協議の際に「士業」を利用した人は73.8%。
遺産分割協議には法律など専門的な知識が必要となるため、士業を利用した人が多いのだと考えられます。
専門知識がないまま進めてしまうと、協議がうまくまとまらなかったり、誰かにとって不利な条件で合意してしまい、のちのちトラブルになったりする可能性もあるからです。
士業を利用しなかった理由としては「費用をかけたくない」が多く、「親族に知識のある人がいたから」などもありました。
相続の遺産分割協議における相談先1位は「司法書士」

相続の遺産分割協議における相談先の1位は「司法書士(33.0%)」、2位は「弁護士(25.2%)」でした。
次ぐ3位は「家族(17.5%)」、4位「税理士(15.5%)」、5位「行政書士(3.9%)」となっています。
士業に相談した人が多かったことから、上位5位までにランクインした相談先のうち、4つが士業。
とくに法律や相続に強い司法書士や弁護士が相談先として選ばれやすいとわかりました。
1位 司法書士
- 一番相続関係に詳しいと思ったから(20代 男性)
- 司法書士に相談すれば、税理士など必要な先生達にもつなげてもらえると思ったから(40代 女性)
- 土地の相続があるので、司法書士に依頼するのがよいと思った(60代以上 女性)
1位は「司法書士」でした。
司法書士は、「不動産登記や商業登記などの法律手続き」「裁判所・法務局に提出する書類の作成」などを代行する専門家です。
不動産の所有者が亡くなった際の相続登記を得意とする司法書士も多く、司法書士事務所が相続関連の広告や看板を出しているのもよく見かけます。
そのため、相続なら司法書士だろうとイメージした人も多くなりました。
司法書士に依頼することで、手続きや書類の不備が減ると期待でき安心できます。
司法書士は相続税の申告はできませんが、税理士と連携しているケースもあります。
2位 弁護士
- 法的に間違いがないことで、安心できるから(30代 男性)
- 相続内容と話し合いたい相手がかなり込み入っていて、始めから弁護士でないと進まないと思っていたため(40代 女性)
- 話がこじれてしまって、まとまりそうになかったので(50代 女性)
2位は「弁護士」でした。
「法的に間違いがない」「安心」という気持ちで弁護士を選んだ人が多くなっています。
司法書士も法律の専門家ではありますが、弁護士のほうがより業務範囲は広くなり、相続人間の紛争解決にも対応可能です。
そのため「話し合いがこじれた」「協議がかなり込み入った内容になることが予想された」「損害賠償請求も同時にあった」といった場合に、弁護士を選ぶ人が多くなっています。
つまりトラブルリスクが高かったり複雑な相続だったりする場合には、弁護士が相談先として選ばれやすい傾向にあります。
3位 家族
- 家族内で解決できる内容だったため、まずは自分たちで話し合うことが一番だと思いました。また専門家に依頼すると費用がかかるため、できる範囲で、自分たちで行いました(30代 女性)
- 相続税もかからない範囲で揉めなかったので、自分たちで書類を作れば問題ないと思った(40代 女性)
- 相続額が大きくなかったので、費用をかけたくないと思いました(60代以上 男性)
3位は「家族」でした。
家族を相談先に選んだ理由としては、「費用をかけずに済む」「家族間で解決できる程度だった」などが挙げられました。
具体的には「相続額が少ない」「家族関係が良好で、相続人間で揉めないと予想される」といった場合に、家族間のみでの話し合いが選択される傾向にあります。
少数ですが、親族に相続に詳しい人がいたというケースもありました。
身内に詳しい人がいれば、お金を払って相談する前に、まずは気軽に相談できるところにしてみようと思いやすいですね。
4位 税理士
- 税金についても相談したかったから(30代 男性)
- 相続税が多額になることが想定されたから(40代 女性)
- 遺言書があったため弁護士は不要だったので。相続税の計算が複雑すぎてわからず、税理士に頼りました(60代以上 男性)
「税理士」が4位でした。
相続税に対する不安や疑問が大きい場合には、税理士を選ぶ人が多くなりました。
税理士は相続税や贈与税の専門家だからです。
相続税の計算が複雑で、自分たちでは難しいという場合には、税理士が相談先となるのは自然な流れですね。
また、相続税や贈与税が発生するかどうかわからないときにも、税理士に相談できます。
財産の分割そのものより、節税や正確な税務申告が重要なテーマになる話し合いの場合に、税理士は頼れる相談先です。
5位 行政書士
- 値段が安価だし、知り合いに行政書士がいたので相談しやすかった(30代 女性)
- 知り合いに相談したら「行政書士に相談するのが一番スムーズ」と言われたので(50代 男性)
- 市町村でやっている行政書士による無料相談。相続の人数が少なく、相続の金額も少額だったので、お金をかけたくないと思った(60代以上 女性)
「行政書士」が5位。
行政書士には、「遺産分割協議書の作成」「相続人の調査」「財産目録の作成」などを依頼できます。
司法書士よりも対応範囲が狭く、不動産の名義変更や相続登記はできないので、不動産の相続がない場合におすすめの相談先となっています。
一般的には弁護士や司法書士に依頼するより安くなる傾向にあるため、費用を抑えたいという理由で行政書士を選んだ人もいました。
相続の遺産分割協議で優先したことは「被相続人の意向に従う」

相続の遺産分割協議で優先したことを聞いたところ、1位は「被相続人の意向に従う(27.2%)」でした。
2位は「法定相続分の通りにする(23.3%)」となっています。
スムーズにトラブル少なく遺産分割協議を終えたいという意向が読み取れます。
被相続人の意向や法定相続分といった、相続人全員で共有できる考え方の基準やルールがあると、協議の基盤になりますね。
また「平等」「相続人全員が納得」という回答からは、相続人間にトラブルの種を残したくないという思いが伺えます。
1位 被相続人の意向に従う
- 被相続人の意向。遺言書の作成はしていなかったが、生前に相続に関する希望を聞いていたため、相続人全員の合意のもとで遺産分割協議を行った(40代 女性)
- 両親がまずどうしたいか(50代 女性)
- 遺言書の内容を最優先に(50代 男性)
1位は「被相続人の意向に従う」でした。
遺言書の内容や、生前に確認していた被相続人の意向を大切にした人が多くなりました。
はっきりと確認できる個人の意思表示があったのならば、協議もスムーズになりやすいと考えられます。
ただなかには「遺言書はあったけど、姉が内容に反発した」という体験談も。
相続人全員が、故人の意向を大事にすると考えていることも、スムーズな協議の鍵です。
遺言書があれば遺産分割協議は基本的に不要ですが、相続人全員が納得していれば、遺言書があっても遺産分割協議を行えます。
2位 法定相続分の通りにする
- 法定相続分を優先した(20代 男性)
- 双方で遺産を譲り合うという気持ちがあったため、法定相続でしました(50代 男性)
2位は「法定相続分の通りにする」でした。
法定相続分とは、遺産の分割割合を決める目安として用いられる割合のことです。
民法で決められている目安なので、誰にとっても一番わかりやすく納得しやすい基準と言えます。
法定相続分の目安通りに分ければ、相続人間で交渉や駆け引きをする必要はありません。
法律の通りに分けるので、感情的な摩擦も生まれにくいメリットがあると考えられます。
3位 手続きのしやすさ
- 手続きのしやすさ。とにかくスピード性です(30代 男性)
- 早く終わらせたいと思っていたため、手続きのしやすさを優先しました(40代 女性)
- 専門的なことはわからないので専門家にまかせ、スムーズに手続きできることを優先した(60代以上 女性)
3位は「手続きのしやすさ」でした。
相続手続きでは慣れない書類作りが多く、必要な資料も普段あまり目にしないものになりがちです。
だからこそ、なるべくスムーズにわかりやすく進めたいという気持ちになるのですね。
家族間の話し合いを長期化させなければ、精神的なストレスも減ると考えられます。
4位 平等に相続する
- 実際残っている遺産(かなり使い込まれていました)を、使い込んだ人以外で均等に分けること(40代 女性)
- 父親が「遺産の独り占め」の被害者でしたので、私たち兄弟は二の轍は踏まないで等分すると腹をくくりました(50代 男性)
- 相続人の取り分が平等になるようにした(60代以上 男性)
「平等に相続する」が4位。
不公平な分割にはしたくないという理由で、相続人で平等に相続することを大事にした人も。
不公平な分割にしたくないと強く思う理由は、「身内に不平等を感じた経験のある人がいたから」などです。
均等に分ける方法はわかりやすいので、反対意見も出にくいと期待できます。
ただ不動産や美術品などの現物があると均等に分けるのは難しくなります。
5位 相続人全員が納得できる
- 家族全員が納得できる形で分けることを最優先にしました。今後の人間関係が円満に続くように、公平で透明な話し合いを心がけました(30代 女性)
- 相続人全員が納得できる形で円満に終わらせることを最優先にしました。遺言書の内容を尊重しつつも、感情的な対立が起きないように話し合いを重ねました(30代 女性)
「相続人全員が納得できる」が5位でした。
均等であるかや、遺言書の内容を正確に履行するかも重要ですが、最終的には相続人全員が納得できる形を優先した人もいました。
均等分割以外で納得感のある分け方としては、例えば「被相続人の介護に関わった度合で、金額に偏りをつける」などが考えられます。
全員が納得できる形を選ぶ理由としては、「感情的な対立や人間関係の悪化を招かないため」が挙げられました。
相続人同士でしっかりと話し合いをすることが、納得感のある決着にたどり着くためのポイントです。
まとめ
相続時の遺産分割協議について相談する場合には、専門性への安心感という点で、相談先として士業を選ぶ人が多くなっています。
冷静な第三者を入れることによって、手続きがスムーズになり、家族間のトラブルも予防しやすくなると考えられます。
相談できる士業としては、弁護士、司法書士、行政書士、税理士があります。
「協議で揉めそうなら弁護士」「不動産の相続があるなら司法書士」「相続税については税理士」など、相続の状況によって相談先を決めるのがおすすめです。
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