事故物件とは
事故物件は下記の通り、大きく2つに分けられます。
1.心理的瑕疵物件
自殺や事件、火災や水害などによって人が死亡している事故物件のことを、心理的瑕疵物件といいます。
建物など物件そのものに欠陥があるわけではなく、物件で起こった自殺や事件などで死亡しているという事実に対して、心理的にその物件の契約を躊躇することが考えられます。
2.物理的瑕疵物件
壁のひび割れやシロアリ被害など建物自体の不具合が起きていたり、耐震強度不足など建物に構造上の欠陥がある事故物件のことを、物理的瑕疵物件といいます。
また、墓地やガスタンクなどの嫌悪施設と呼ばれるものが周辺にある、立地が影響する環境的瑕疵がある事故物件も物理的瑕疵物件に含まれます。
事故物件の告知義務とは
売却や賃貸をおこなう不動産が、自殺や殺人などが起きた事故物件である場合には、不動産業者は必ず買主や借主に報告しなければなりません。
これを「告知義務」といいます。
なぜ、事故物件であることを告知しなければならないのでしょうか。
事故物件には心理的瑕疵があるため、物件を契約するかどうかの判断に大きく影響すると考えられているからです。
しかし、宅地建物取引業法では告知をおこなう事故物件の範囲や、期間に関する決まりが定められていません。
不動産会社によって対応が異なる部分もあり、事故物件による心理的な負担は人それぞれ違うために、訴訟問題に発展したケースもあります。
明確な線引きが必要だということで、2021年に国土交通省によるガイドラインが公表されました。
告知義務が必要な範囲や期間だけでなく、病死や老衰などの自然死や不慮の事故死など、告知義務が必要とされない範囲についても具体的なルールが明示されたことで、事故物件の告知義務に関するトラブルを防ぐことができるでしょうか。
参考:国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」
実際に告知義務が発生する事故物件の売買契約や賃貸借契約を結ぶ際には、以下のように告知をおこないます。
1.告知方法
告知方法については、まずは物件の広告に「告知事項あり」と記さなければなりません。
また、実際に契約する段階になると、契約書と重要事項説明書にも「告知事項あり」と記して告知する必要があります。
具体的な告知方法が宅地建物取引業法で定められているわけではありませんが、広告に告知事項がある旨を記したうえで購入者や入居者を募集し、売買契約書や重要事項説明書の特記欄などへの抜け漏れのない記載に加え、口頭説明では相手の理解を確認するために、相手の言葉に直してもらう確認を行えば問題ないでしょう。
それだけでは不安だと感じた場合におすすめしたいのが、告知事項について別途書面を作成することです。告知事項について了承した旨の覚書を交わすという方法もあります。
2.告知内容
告知内容についても、明確なルールは定められていません。
誤解のないように、簡潔にわかりやすい告知が大切だといえます。
- 事件・事故の起きた時期
- 発生した場所
上記の2点について告知しましょう。
ただし、人によっては場所を知りたくないということも考えられるので、建物のどの部分で起こったのかは知りたくないと、入居者から申し出があった場合には伝える必要はありません。
3.告知が必要な期間
事故や事件が発生してから何年後まで告知義務があるのか、以前は明確に定められていませんでした。
そのために10年ほど経過した事故物件の告知がなかったことで、告知義務違反で裁判になった例もあります。
3年程度から7年程度など、不動産会社によっても考え方に違いがあり、特に心理的瑕疵物件については人によって感じ方が違うために判断が難しく、多くの不動産会社が戸惑いを感じていたことでしょう。
2021年10月に国土交通省によってガイドラインが公表され、告知義務の期間が明確になりました。
賃貸借契約の事故物件の告知義務は3年間とされていますが、売買の場合の期間は定められていません。
4.告知義務を怠るとどうなるのか
告知義務を怠り、事故物件に関する告知をしないで売買契約や賃貸借契約を成立させると、あとになって買主や入居者が事故物件である事実を知った場合に損害賠償請求されてしまうことがあります。
契約解除を求められることも考えられるでしょう。
損害賠償請求の相場
事故物件は買い手や借り手が見つかりにくく、販売価格や賃料を市場相場よりも下げる必要があると考えられます。
販売価格や賃料を下げなければ買い手や借り手が見つからないことから、できれば事故物件であることを隠したい、と考える人もいるでしょう。
しかし、事故物件であることを告知しないで売ったり貸したりすれば、損害賠償請求がおこなわれます。
また、事故物件の損害賠償といえば、告知義務違反だけではありません。物件を事故物件にしてしまった当事者にも責任があります。
本人は死亡しているので、遺族に対して損害賠償請求がおこなわれます。
1.売り主への損害賠償請求の相場
購入した不動産が事故物件だということが発覚した場合、購入者は売り主に対して損害賠償請求ができます。
このときの損害賠償の相場は、一般的に売買金額の3割程度といわれています。
2.借主への損害賠償請求の相場
賃貸物件に居住している人が自殺や事件によって死亡した場合や、孤独死で発見が遅れた場合には、その部屋は事故物件となってしまいます。
事故物件となれば、そのあとの借り手が見つかりにくくなり賃料も下げなければならないでしょう。
死亡してから放置されていた場合や事件によっては、物件の原状回復が必要です。
借主への損害賠償請求とは、事故物件となることで賃料が下がってしまうので逸失利益が請求されます。
また、原状回復がおこなわれた場合には原状回復にかかった費用が請求されますが、死亡してから放置された日数や、現場の状態によって金額が異なり、100万円を超えるケースもあるようです。
損害賠償請求を進めるには
損害賠償請求をすることを考えた場合、どうすればよいかわからなくて困ってしまうかもしれません。
損が賠償請求を進めるには、どうすればよいのかを解説しましょう。
弁護士に相談
まずは消費者生活センター等に相談してみても良いでしょう。消費者生活センターなら無料で相談に乗ってもらえます。特に、どのように弁護士に相談したら良いのか、そのポイントもまとめてもらえますので、効率良く弁護士に相談できることが期待できます。
訴訟を起こす場合には、専門的な知識が必要です。損害賠償請求をする場合も、逆に請求された場合にも、弁護士に依頼するのがおすすめです。
弁護士に依頼すれば、相手との交渉だけでなく手続きの代行もお願いできます。
まとめ
事故物件だということを告知すると、販売価格や賃料を下げる必要があるため、告知をしたくないと考えてしまうことがあるかもしれません。
しかし、事故物件であることがあとで発覚すれば、損害賠償請求や契約解除を求められる可能性が高いです。
これまでは、どこまでが告知義務が必要なのか、どの程度の期間告知を続けなければならないのかが明確でなかったために迷いがあったでしょう。
国土交通省によってガイドラインが公表され、迷いなく告知ができるようになりました。
また、親族がひとり暮らしをしている場合には密に連絡をとり、連絡が取れない日が続くような場合には様子を見にいくなど、孤独死を放置するような事態を避けるようにしましょう。
公式サイト:https://wakearipro.com