事故物件とは?
不動産の取引において、最もトラブルに発展しやすいのは「隠れた瑕疵」です。
「瑕疵」というのはいわゆる欠陥のことで、これには大きく分けて3種類あります。
- 雨漏りや給排水管の故障など、建物の構造などに関わる「物理的瑕疵」
- 近隣の騒音や、臭気、嫌悪施設などの「環境的瑕疵」
- その物件で過去に事件や事故、自殺などで人が亡くなったという「心理的瑕疵」
いわゆる「事故物件」とは、3つ目の「心理的瑕疵」のある物件のことをいいます。
事故物件に告知義務はある?
宅地建物取引業法第31条、35条1項、47条1項では、不動産の取引を行う際は、買主や賃借人に対して契約前に物件に対する重要事項を告知する義務があると定めています。
- 物理的瑕疵
- 環境的瑕疵
は実際の生活に影響があるため告知義務があるのは当然ですが、過去に人が亡くなったという「心理的瑕疵」の有無についても、契約の判断に大きく影響するものとして、告知すべき重要事項にあたります。
そのため、過去にあった事件や事故、自殺などの告知を怠ると、「不告知」または「告知義務違反」とされます。
買主や賃借人に質問されたのに答えなかったという場合だけでなく、知っていたのに事実を伝えなかったという場合も告知義務違反となります。
後に事実を知った買主や賃借人から、精神的苦痛を理由に損害賠償請求される可能性もあります。
このような事態を避けるため、瑕疵については事前に買主や賃借人に告知する必要があるのです。
告知義務の条件とは?
過去にあった殺人事件や自殺、死亡事故などの心理的瑕疵のある事故物件について、これまでは告知すべき事故の範囲や期間について明確なルールがありませんでした。
そのため、どこまでを告知するかいつまで告知するかといった判断は、各不動産業者に委ねられてきました。
なかには、「一度別の人が入居すれば、それ以降は告知義務は無くなる」といった独自の解釈のもと、不動産会社の社員の住所を移転して架空の書類上の入居者とし、その後すぐに「告知事項なし」の物件として貸し出すといった「事故物件ロンダリング」も横行していました。
そこで、過去に人が亡くなった物件の賃貸契約・売買契約にあたっての告知義務についてまとめたガイドラインが国土交通省から公表されました。
ここでは、告知すべき事故や事件の範囲や期間が明確に示されているため、今後は事故物件に関するトラブルを未然に防ぐことが期待されます。
ガイドラインで示された内容は以下の通りです。
自然死や病死は告知義務なし
病死や老衰などの自然死については、一般的なものとして告知の必要はないとされました。
また、事故死であっても、階段からの転落、入浴中の転倒など日常生活で発生した不慮の事故による死亡についても、一般的なものとして病死と同じく告知義務事項の対象外とされています。
ただし、孤独死などで遺体の発見が遅れ、遺体の損傷が進み臭気や害虫が発生するなど、特殊清掃が必要となった場合には告知義務があるとされました。
他殺・自殺・事故死の場合の告知義務は発生から3年間(賃貸契約)
賃貸契約の場合、他殺や自殺、事故死について告知義務のある期間は事故の発生から3年間とされました。
マンションなど集合住宅の場合は、室内だけでなく、バルコニーやエントランスなどの共用部分も対象となります。
隣地や建物前の道路で起きた事故や事件については、告知義務の対象外となります。
死後一定期間が経過してから発見され、事故死や自然死か明らかでない場合も、告知義務はあるとされました。
賃貸契約は3年間、売買契約は期限なし
賃貸契約の告知義務期間は3年となっていますが、売買契約の場合はトラブルになった時の影響が深刻であることから、今回のガイドラインでは期限が設けられていません。
そのため、売買契約の場合は事故の発生が何年前であっても、告知義務があることになります。
自殺や他殺、火災などによる死亡事故だけでなく、特殊清掃が必要になった孤独死についても告知する義務があります。
事故物件化を忌避するオーナーの意向などによって、高齢者の住まいの確保が難しくなっています。
自然死や病死についての告知義務はないと確認されたことは、賃貸物件のオーナーにとっては良いニュースと言えます。
一方、近年増加している孤独死の場合、万が一遺体の発見が遅れて特殊清掃が必要な事態になってしまうと、3年間の告知義務が発生するため今後も注意が必要です。
アパートや一棟マンションなど賃貸物件の売買契約においても、3年が経過すれば新たな賃借人への告知義務はなくなるものの、事故物件として家賃を割り引いて入居した賃借人の家賃を上げることは難しくなります。
事故の発生から一定期間は収益価値が著しく落ちると予想されるため、告知義務はなくなりません。
公式サイト:https://wakearipro.com
多摩で事故物件の売却は難しい?
事故物件を売却する場合は、上記で示したように事故の内容について買主に告知する義務があり、その期間についての定めがないため何年前であっても告知義務はなくなりません。
自殺や他殺といった不吉な事件が起こった物件は、買主としても手を出したくないものです。
しかし、その分価格を割り引くことで、そうした事情を気にしない人が気に入って買ってくれることもあるため、「全く売れない」「取引できない」というわけではありません。
特に、立地条件の良い物件については、事故物件として価格が割引かれていることをメリットとして捉える人も一定数いらっしゃいます。
事故物件の減価率は?
減価率とは、相場と比べてどれくらいの割引率で売れるかという目安です。
事故物件の減価率は、人が亡くなった状況によって異なります。
- 自然死や病死の場合 相場の-10%程度
- 自殺の場合 相場の-20~30%程度
- 他殺の場合 相場の-30~50%程度
自然死や病死については、国土交通省から示されたガイドラインで告知の必要はないとされたため、減価はありません。
ただし、孤独死などで遺体の損傷が激しく、特殊清掃が必要になった場合は告知義務ありとされているため、この場合は-10%ほどが減価されます。
自殺や他殺の場合の減価率には、亡くなった状況によって–20~50%と幅があるものの、一般的には自殺よりも他殺の方が減価率が高くなります。
子供が亡くなったり、複数人が亡くなるような凄惨な事件であった場合は、-50%以上の減価率になることもあるようです。
また、自殺であっても、発見が遅れるなどして特殊清掃が必要になった場合には、減価率が-50%となった判例もあります。
なお、マンションの場合、自殺や他殺が自室で発生していなくても、隣接住戸や共用部分で発生している場合もあります。
その場合の減価率は、判例などによると相場の-10%程度です。
これらの減価率は、一般的に事故の発生直後が最も高く、時間の経過とともに少なくなっていきます。
ただし、売買契約の場合は告知義務自体がなくなるわけではないため、周辺相場と同じ価格で売却するのは難しいでしょう。
事前に特殊清掃をしておく
所有する不動産で事件や事故が起きた場合、一般的なハウスクリーニングではなく、必ず特殊清掃をしておくことが重要です。
亡くなった状況にもよりますが、亡くなってから時間が経つと遺体の臭いが近所に漏れて変な噂になったり、汚れが染み付いて取れなくなったりしてしまうことがあります。
近所で噂になってしまうと、たとえ告知をしていたとしても買主の心証は良くありません。
発覚後できるだけ早期に特殊清掃をすることで、契約後のトラブルも未然に防止することができます。
多摩の事故物件はどこで売れる?
事故物件は、ある程度価格を割り引くことで成約に至るケースがあるとご説明しました。
しかし、東京23区内の駅徒歩3分以内…などの特に優れた立地条件でない場合、一般的な仲介ではなかなかスムーズな成約に至らないのが実情です。
都心部であれば人の入れ替わりも激しいため早期に風化していく一方で、田舎や郊外のベッドタウンなどの住宅地ではご近所との人間関係が深い分、長期にわたって影響を受けるケースもあります。
インターネットサイトで事故物件の情報が公開されていることもあり、購入する本人は事故物件であることを気にしていなくても、親や親戚、友人など周囲の人にも知られてしまうため、躊躇してしまうという人も多くいます。
価格を下げてもなかなか売れない場合、売却期間が長くなるほど固定資産税や建物の維持費、マンションであれば管理費・修繕積立金などが重くのしかかります。
また、事故物件の所有者は亡くなった方の遺族であるケースも多く、そのような場合は、売却活動におけるさまざまな手続きにも大きな負担が伴います。
専門の買取業者に依頼
一刻も早く問題を解決したい場合は、専門の業者による不動産買取を依頼するのがおすすめです。
事故物件ということで相場より安くなってしまうことは否めませんが、価格に折り合いがつけばスピーディに現金化が可能です。
固定資産税や維持管理の負担、管理費・修繕積立金の支払いだけでなく、精神面での負担からも早期に解放されます。
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まとめ
人は必ず亡くなるものですが、事故物件となる心理的瑕疵は、所有している人にとっても買う人にとってもデリケートな問題です。
どのような解決方法が望ましいかは、亡くなった時の状況や所有者との関係などよっても変わってくるため、まずは専門の業者にご相談いただき、周辺の相場や減価率などを確認するところからスタートしましょう。
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